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ふぁるでぃあにっき。  作者: コミヤマミサキ
8月 ~なつやすみ~
91/444

2-87 神秘の森

 ふと気づくと目の前に猫がいる。

 おなじみにピンクのハチワレ君だ。



 ああ、また猫精霊か。



 近所のネコの様に視線はこちらに合わない。猫は目が合うと喧嘩になるんだったっけ?

 体を斜めにして、でも意識はこちらにかたむけてる感じ。


「にゃー。」



 お久しぶりです、元気にしてましたか?


「にゃー。」


 そうですか。


 この前のお礼がしたいんですが、何がお好きですか?

 鰹節とか?


「「「「「「にゃーー!」」」」」」


 えっ!?ちょっと急に数が増えすぎじゃないですかね?


 あっ!


 ちょっと!全員で乗らないで!


 アーーーッ!!!



 ・・・




 ・・・








 ―――――――――――――――――――――


 なんか物凄くカラフルな何かを見たような・・・???


 頭がぼんやりしている。


 そして、背中がなんかごつごつして痛い。


 自分は横になっているのか?


 あと、なんかすごく重い。


「スゥ・・・」


 カラフルじゃないけど、何か黒っぽいでかいネコが乗ってる?

 かと思ったらアレだ。これティラ君か。


 自分が担いでいたのが、闇の中にボスっとしてグルグルして、自分の上に落ちてきた感じですかね?


 PTリストを確認すると、ティラ君のHPがほとんど回復しててホッとする。

 ただの気絶だろう。ティラ君の半分割ってたHPが完全回復するって、どれくらい時間が経ったのだろうか。システムから時計を呼び出すと、リアルで21時前。あれからファルディアで1時間経ってないくらいかな?思ったより短かった。


 レティナさんもHPがちゃんとあるので、この辺に居ると思うんだけど・・・。

 ティラ君を起こさない様に、なるべくゆっくりと体を起こす。幸いティラ君は起きなかったので、そのままそっと仰向けに地面に寝かしておく。背中がゴツゴツするのは勘弁してくれ。



 ていうか、ここは何処だ?


 ゴツゴツとした硬い地面。辺りを見渡すと、とても暗く、それこそ先ほど入ろうとしていた洞窟の様な趣きである。自分達が居るところは洞窟の窪んだようなところで、背後には先ほどズボッとした同じような黒い不可解な闇がある。・・・これは出口?入口?って事なんだろうか?出入口と仮定した場合、ここちらが安全地帯側だろう。多分・・・。

 自信はないけれど、今度は反対側を見に行くと、岩の影にレティナさんがうつ伏せで倒れてたのでホッとする。


「レティナさん。」


 声をかけてみるが、起きる様子が無い。目が届かないと危ないので、こちらもよっこらせと担いで、ティラ君の横に並べておく。


 さて、これで一息付けた。


 背後には、もわっとした闇。こちらを仮定出入口とする。そして逆サイドに伸びている洞窟。気配察知にも第六感にも少し反応がある。すぐ近くにはいないけれど、敵対生物がいる。そして、これは結構な強さだと思う。

 うーんどれくらいだろう?一人では少なくともやりたくない。多分、ツチノコより強い。

 自分は割とほぼソロで単純な戦法なのだ。要は自分の火力が相手に通らなければそれでジ・エンドだし、相手の方が早くて命中が高ければやはりジ・エンド。相手の回避が高くてもジ・エンドだ。削り切れなくてもジ・エンド。紙装甲高火力というものは、先手必勝極火力でごり押ししてるだけである。もっとも、小手先の技術の積み重ねはしているけれども・・・。


 入口に近いここは安全地帯なのかな?しばらく見張っていたけれど、こちらの方に敵が近寄ってくる気配は無い。奥に進めばすぐに敵に遭遇しそうだが、ティラ君やレティナさんは安全に休めそうでホッとする。

 さて、どうしようかな・・・と思ってシステムを開いてると、ふと、文字さんの通知が沢山来ている事に気づく。


【特殊エリア:神秘スイッルの森ダンジョンに突入しました。】

【プレイヤーで初めてダンジョンに突入しました。】

【ヘルプにダンジョンの項目が追加されます。】

【称号:『初めてダンジョンに突入したもの』を獲得しました。】

【ダンジョンでは通常の空間とは違った時の流れになりなります。詳しくはヘルプの項目をご確認ください。】


 ・・・は?


 思わず3度見をする。


 は?


 ダンジョン?マジで?


 確かに、ゲームにはダンジョンはつきものですが。


 ですが。


 いくらなんでも唐突過ぎやしないか?


 いやしかし、ここがダンジョンの入口だとすると、入り口付近の魔物の気配を鑑みるにもっと推奨レベルが上なわけで、もっと先のコンテンツを運良く?運悪く?偶然見つけてしまった感じなのか?


 でもさ、プレイヤーの先行って今レベル40くらいでしたっけ?以前と大分差が詰まってる。その後トップ層の話をあまり聞かないけれど、本当にステータスがスカスカだったのか?内田も確か32くらいだったような気がする。自分達もそんなにはレベルが低すぎるという事はないから、多分・・・先取すぎてしまったんですかね???

 ツチノコのレベル帯を見るに、もしかしたらこのダンジョンの推奨レベル50でもおかしくはなさそう。


 まぁとりあえず、ダンジョンの仕様も分からないと何とも言えないので、ヘルプを呼び出してみることにする。


【悪意のダンジョン:霧向こうの世界とファルディアが繋がったことによる時空の歪みや綻び、悪意などのエントロピーが泡となって漏れ出したもの。その殆どが月神セレネーツァによって封じられているが、稀に大きな泡となってダンジョンとして形を成す事がある。ダンジョンは速やかに潰したほうが良いとされる。放っておくと、周囲の歪みを吸収し拡大・増殖する。一方でダンジョンでは普通にはない経験値や稀な資源、珍しい魔物なども湧き、冒険者にも旨味がある。ダンジョンによって時間の進み方が違うので注意が必要である。】


 と、雑な説明が書いてある。

 セレネーツァ様が力を使い果たして眠りについたって、本当に世界のためだったのか―、などと思ったり。ユイベルト様は確か”世界の犠牲”って言ってたと思うけど、ユイベルト様も神様なのに”犠牲”って言いきっちゃうのも凄いよね。この世界の神様のポジションが謎である。ユイベルト様は影族のついでに世界を守ってるのかなぁ?・・・他の神様はともかくユイベルト様はそんな気がしないでもない。


 ユイベルト様の価値観はともかくも、ダンジョンは速やかに潰した方がいいのかぁ。

 ありがちにダンジョンを放っといたら暴走スタンピートでもするのかなぁ?


 そんな事になったら、影族の人たちが大喜びしてしまいますね・・・?


 あと気になった事といえば、そもそもどうやってダンジョンって潰せばいいの?

 中のモンスターを全部倒せばいいってこと?

 それともダンジョンコアみたいなのがあって、それを壊すの?

 それとも中のアイテムとか資源を全て採りつくす?


 その辺が書いておらず判然としない。

 でも、書いてないって事は色んなパターンのダンジョンがあるのかもしれない。

 ボスを倒せっていうパターンかもしれないしねぇ?


 とりあえず、やってみないと分からないなぁこれは。



「ん・・・。」


 おっと、誰か起きた模様。

 この気配はレティナさんか。


「おはようございます。気分はいかがですか?」

「あれ…私?おはようございます?」


 起き抜けで混乱している様だが、レティナさんからはしっかりした応答がある。

 多分大丈夫そうかな?


「大丈夫ですか?どこか痛い所とかないですか?」

「痛い?背中が痛いですが・・・ここは?何でこんな真っ暗なんです?」


 ああ、そうか。レティナさんは闇視も暗視もなさそうだしなぁ。

 真っ暗なのか、このダンジョンは。

 でも下手に火をつけて窒息死とかないかなぁ?ガスが漏れだしていて爆死とか嫌だしな。


「ちょっと火を焚いても安全か分からなくてそのままにしていますが、ここら辺は安全ですよ。奥へ行くと強いモンスターがいるみたいですね。」

「いるみたいですね・・・ってそんな・・・あれ?ティラさんは?」

「左隣に寝てますよ。」

「あっホントだ。温かい。」


 確かに冷たかったら死んでいるけれど、凄い確認方法だと思って少し笑ってしまう。

 しかしながらプレイヤーは冷たくなるまで死体では転がってないとは思いますがね。


「ここは・・・?なんか洞窟かと思って暗闇に飛び込んだら、黒い塊の何かで、グルグル~ッと回って・・・どこです?」

 と、少し意識がはっきりしてきたのか、普通の疑問を持った様子。


「ここはですね、ダンジョンらしいですよ。」


「は?ダンジョン?」


「ダンジョン。」


「ダンジョンって、良く漫画とかゲームで聞くあの?」


「多分そのダンジョンですね。」

 他にダンジョンがあったらそれはそれで面白いが。

 ああ、でもラテン語では地下牢っていう意味だったか?フランス辺りにありそうだよね。実物ダンジョン。でもきっとカタゴンべと同じ感じなんじゃないかなぁと思うんだけど、きっと味わいがあると思う。しかし何でまた「迷宮」って意味でダンジョンって言葉が選ばれたんだろうね?それはそれで不思議。


「・・・冷静に考えて、ダンジョンってどんなところかよく知りませんでした。」

 と、真剣な顔で言うレティナさん。

 うん、きっと彼女なりに真面目に考えた結果なんだと思うけれども。


 笑うやろ。


「まぁ、自分もよく知ってるとは言い難いですが・・・ゲームだと”迷宮”って感じですかね?」

「・・・そんな迷宮に関して造詣ぞうけいが深くないので。」

「造詣が深かったら、ある意味怖いですね?」

 ダンジョンマスター?レティナさんはダンジョンマスターを目指しているのか?


「まぁ・・・ゲームによって仕様が違いますから何とも言えないですが、見た事も無いような洞窟やフィールドがあって、宝箱があったりして、最後ボスを倒したりして終わる事が多いですねぇ?」


 そんなところだよね・・・・?ゲームだからね。


「何で宝箱があるんでしょう?盗賊の隠し財産とかですか?」

 それはそれで夢があっていいのだけれども。

「大体ファンタジーな世界が多いので、毎回盗賊が隠し財産を作るのは大変じゃないかなって思います、デス。」

 ダンジョンの奥深くに伝説の武器をしまい込む盗賊・・・。実はそのゲームは盗賊がラスボスなのではないかと言う気がするが、レティナさんの言い分ももっともである。ダンジョンって『誰が』ダンジョンに宝とかを隠したんだろう。その辺の説明が全くないよねぇ。というか何でそもそも宝箱にしまうんだろうね?

 まぁ宝箱に入っていた方が夢はありますが・・・。


「不思議ですね?」


 心底不思議そうな顔をしているレティナさん。

 彼女は割と現実的な人間かもしれないなどと思いつつも。


「ゲームなので、やはり報酬を可視化したかったのでしょう。」

 と、クソつまらない返事をしてしまう。

 最近自分の事を変っていう人もいるけど、自分はホントつまらない人間だなぁって思うんだよね。もっと気の利いた面白い事を言える人間にあこがれるのだけれども。


「そもそもこのダンジョンに宝がある?」


 と、割り込んでくるティラ君の声。


「いつの間に起きたんですか?」

 体はまだ寝た時のままであるので、意識が戻ってそれほど時間が経ってないだろう。


「さっき。ダンジョンの話で目が覚めて、システム見た。」

「なるほどね。」


 話が早くて助かりはしますが。


「体は大丈夫ですか?結構HP削れてましたが。」

 一瞬でHP半分削られたからね。いくら紙装甲とはいえ、強烈なダメージを食らっている。体に異常があってもおかしくない・・・というかゲームじゃなければ死んでてもおかしくはない。何で死んでないかって言うと、結局ゲームだからとしか言いようがないのだけれども。


「まだ、ちょっと変。でも異常はない。ありがと。」


 珍しくティラ君がお礼を言う。それに驚いてつい、普通に返してしまう。


「どういたしまして。」


 ティラ君も少し弱気なのかもしれないな。


「システムに書いてある通り、ヘルプを読んだところ報酬がある事もある・・・といったニュアンスですね。というか、毎回仕様が違いそうな気もします。資源が多かったり、ボスが居たりとかそんな感じなんですかね?」


 疑問形にしているが、やってみないと分からないだろうなとは思っている。

 それでも、予想をすることによって心の準備はできるだろう、と言ったところ。


「やってみなければわからなそう。」

「全然イメージがわきません。」

「まぁそうですよねぇ。」


 自分も実は全然わかってないんですがね。


「とりあえず、この先の魔物はツチノコより強そうでしたが・・・。」

「まじか。」

「それは、さすがに無理そう。」


 無理と言われると、途端やってみたくなる天邪鬼な気持ちが頭もたげますが、一人ではないので思うだけに留めておく。


「とりあえず、敵のレベルだけでも確認できるといいんですがね。」

「明るい所行きたいですね。」

「出口はあの闇?」

「そうだと思いますが、出たら二度と戻れない可能性もあって何とも。」

「火玉」

「あっ。」

「あっ。」


 途端明るくなる洞窟。

「レティナ・・・。」

 残念な子を見る様な目で見るティラ君。


「確かに、レティナさんだけ真っ暗だと怖いのかもしれませんが・・・。」

「え?あれ?ダメでした?」

「最悪、ガスでどっかーんを考えました。」

「その火玉どこにやるの?」

「ごめんなさい。えーとどうしましょうか?」


 キシャ―!


「わぁ・・・。」


 ここは安全地帯じゃなかったのか。

 はたまた、レティナさんの魔力か明るさを感知したのか。火や熱に反応した可能性もある。


 どでかい蝙蝠の様な生き物が1匹ブーンと飛んでくる。

 威圧感が凄い。

 ついでに、第六感さんもちょっと嫌な感じと言っている。


「これは・・・。」

「やるしかないですかね?」

「ごめんなさいごめんなさい、・・・でも私、真っ暗になったらなにもできないかも。」


 まずは光源からなのかなぁ?

 こんな序盤で真っ暗という事は、何種類か光源がゲームの中にあると思うのだけれども。

 光魔法とか松明とか魔道具とかね。


 キシャー!


 蝙蝠は先ほどと同じ威嚇音なのに、ピリピリとした感じが伝わる。

 HPバーがわずかに削れる。

 全体ダメージか。地味に嫌らしいし、何かデバブがあるかもしれない。


「とりあえず、やばかったら、その暗闇に飛び込みましょう。いつでも逃げられるようにしておいて。・・・ティラ君いくよ。」


「あいよ。」

 既にティラ君は矢をつがえ、蝙蝠の羽根を傷つける。

 怒る蝙蝠。



「私どうしたら!?」


「レティナさん、なるべくしばらく魔法使わないで。」


「えっ!?」


「多分長期戦になる。バーを見て回復メインで。MP回復し続けて。気配希釈全開。」


 ツチノコだって大変なんだから、それ以上となると一瞬で死んだりする可能性があるよね・・・。

 うまく回せたとしても、こちらの与えるダメージは小さく、確実に消耗戦になりそうだ。そうすると、レティナさんがいつもの様に攻撃魔法を使うと、多分敵視がレティナさんにいってレティナさんから死ぬ未来が見える。

 

 とりあえず腹をくくり、ティラ君に傷つけられて高度を下げた蝙蝠を斬りつけに自分も走り出した。





可逆不可逆可逆不可逆可逆不可逆・・・

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