2-82 再会
結局その日、保護した影族の人は計4人になった。
2人目の人は自分を見た瞬間泣き出した。
解せぬ。
誤解がとけない様なので、担いで門番さんの所に連れてった。
・・・あれ?ハラスメント行為になるのかなぁ?まぁ死んじゃうと問題だし、野営毛布を巻いて担いだから許されるような気がする?でもすごく疲れた。
自分VITは少ないのだ。
門番さんに引き渡した時に、新人さんは泣き止んで「あれ?あれ?」ってなってた。
うん、まぁPKに攫われたと思ってたんでしょうからねぇ・・・。
3人目は「畜生ぉおおおお!」という雄たけびを上げながら、やはりこちらも殴りかかってくる。
板。どこまで罪深いのか。板。
珍しくAGIが少ない方で、STRとDEX振りなのか?クリティカル一発狙いなのか?ちょっと面白くなってしまって散々避けたところ、本人がPNT切れして倒れたので、結局また毛布で担いで送るハメになった。
なんかとても辛い仕事の様な気がしてきた。
4人目はプレイヤーじゃなかった。
タダの普通のNPCの人で、きょとんとした様がとてもかわいかった。
これがどうして街で「チ―――ビ!」などと知らない人を罵るような好戦的な子になるのか・・・皆目見当がつかない。
「ここは危ないから、明るい場所に行きましょうね。」と言うと、伝わったか伝わってないのか分からないけど、何かウキウキと付いてきてくれた。
動物みたいでかわいらしい。
『今日は大漁だな!』
と仕事が終わった段階で、門番さんたちが言ってくれた。
同族は魚枠なんですかね・・・?
いつもだと1日で一人も来ないことが多いとか。これで増えたと言われる影族。うーん人口少ないね。
あとはお茶をいただいて、門番さんたちと少し喋って帰ることにする。詰所の方でも腕章を返し、兵隊さんたちが『またこいよー』と言ってくれた。
街は完全に夜の街になってたし、そろそろ夕飯の時間だけど・・・・何か忘れてる気がする。
・・・。
・・・。
チュートリアル、また行かなかったよねぇ・・・・・・・
完全に忘れてた。
・・・。
えーい、今日はログアウト!
―――――――――――――
夕飯を食べてログインすると、レティナさんからメールの返信が来てた。
リアルでは夜だが、ファルディアでは丁度朝になる辺りだ。
「(´・ω・`)」
無音なんで、文字で見たら絵文字だけだった。
何、その微妙な感じ。
「なぜ、しょぼん」
と返すと
「人が心配したのに、何その軽い感じーーーー!」
と叫ばれました。
はい、自分が悪いです。ごめんなさい・・・。
とりあえず、暇なら会います~?みたいな感じになって、アルシオンの上層で会うことになった。
待ち合わせ場所は、この前、自分が影変化を練習してたちょっとした広場というか空き地だ。
「ほんと!サクさん酷いです!全体的に色々酷いです!何であんなババババーンでビューっていなくなって!心配したのに!何でそんな、のほほほーんとしてるんですか!」
そして、会う早々また怒られた。
「はい・・・。」
確かに、あのクソ鳥はインパクト強くて、自分もよく考えたら何で死んでないのかが不思議な所ですよねぇ?
「何で自分は死ななかったんですかね?」
「馬鹿じゃないですか?」
まぁ普通プレイヤーは死んだら生き返るんですがね。
「一応言っておきますけど、生き返るから心配じゃないとかないですからね?遠くに飛ばされて不便じゃないかとか色々気も揉んだんですからね。」
「ああ・・・確かにアポリアで兵隊さんに捕まったりして大変でしたね・・・。」
「ホント、馬鹿じゃないですか?」
ちょっとレティナさんが涙目だ。
うーん。これは、うーん。
「ごめんなさい。」
自分が悪いです。ごめんなさい。
ちゃんと、頭を下げておく。
心配してくれなんて言ってないとか、そういうことを言っちゃいけない。
男の友情はまた形が違うけれど、クラスの女性の友達も、男よりも親身になって心配してくれる人って多いんだよね。生き物の感覚が違うっていうか。
で、それはより自分の事を親しく思ってくれているという事で有難いよね。
テルメさんもそうだったですけど、みんな優しいなぁ。
もし仮に内田がとんでもない所にワープしたら、自分ならとりあえず笑って・・・、どうするかな?その後、帰る方法をため息つきながら一緒に探す?・・・そんなとこですかね?
男はやっぱり方法に走りがちだよね。方法を考える前に心配しちゃうのが女性っていうか。
「それは、舎弟がわるい。」
と、唐突に声が割り込む。
「もう出られたんですか(チッ」
一応舌打ちをしておく。舎弟なんて言うのは、あの人しかいない。
レティナさんは突然声が割り込んできて、びっくりしてる。
それもそのはずで、姿が見えない。
気配は上にあるけど。
「紹介?」
「おまわりさーん!」
犯人はこいつです。何だか分からないけれど全般的に多分そう。
「ひどい。」
ドサァっと上からティラ君が降ってくる。ビクッとするレティナさん。
全く困った人ですね。
仕方ないので、レティナさんが怯えない様に先に紹介する事にする。
「えっと、レティナさん。こちらは変な黒小人のティラ君です。遠隔物理職の人ですね。で、ティラ君上から不謹慎にものぞき見をしていて知ってると思いますが、こちらレティナさん。種族は半妖精ですね。ゲームは不慣れみたいなので優しくしてあげてください。」
「わかった。」
「えっと、こんにちは?初めまして?」
「はじめました。よろしく。」
「えっと、二人はどういうご関係です?」
と、恐る恐ると言った感じで聞いてくるレティナさん。
どういうご関係・・・?
「どういうご関係?」
ティラ君も首を捻ってる。ゲームで仲がいいなんてフレンドしかないと思うのだが。
「不本意ながら共闘したら、不本意ながら仲良くなってしまいました?」
「そんな事をいうなら、レティナとは?」
「”友達になんかなれるわけない”って言われて、ガチクソむかついて、お友達はじめました?」
「そんな事言ってないですから!そんな事言ってないですから!!!」
慌てて止めてくるレティナさん。大体変わらないと思うのですが・・・。
ティラ君が痛い子を見る様な目で、レティナさんを見ている。
うん、まあ、本人の自業自得だと思う。
「・・・わぁ。」
「ホントに違いますから!」
「むしろほとんど違わない様な・・・」
「サクさんは黙ってろ。」
「はい。」
時々レティナさんが怖い。
「サクも変だが、レティナも変。」
「失礼な。レティナさんほどではありません。」
真剣に友達なんていないなんていう痛い子と、一緒にしないでいただきたい。
「サクさんは、黙ってろ。」
「はい。」
幼女激おこぷんぷんになっていて涙目になっていた。この辺でやめるか。
「まぁそれはさておき、ティラ君は変ですが悪い人ではない・・・?いや、どうだろう?微妙?」
「ひどい。」
「多分、大丈夫な気がする?」
「ひどい。」
「まぁ主観は人それぞれなので、適当にどうぞ。」
と、雑な説明をすると、『ぇえ~・・・そんな感じでいいの~・・・』といった顔でレティナさんがこちらを見ている。
まぁ言いたいことは何となく分かる。
「どんな善人でも自分が気に食わなければ友達にはなれませんし、どんな悪人でも気の合う人はいますしね。」
「その流れだと、ティラ悪人。」
「違うと言い切れないところが微妙。」
要注意人物で、捕まってますからねぇ。
かといってレッドではないんですが。
しかし、真っ白だからと言って善人とも限りませんしね。
結局、名前の色もただの物差しでしかないわけで。
「そう言えば忘れてた。これ。」
そう言ってティラ君が一枚の紙をこちらに渡してくる。
「何ですか?」
読むと、”保護観察処分中の身元引受人同意書”と書かれている。
・・・おい。
半眼でティラ君を見ると・・・影族なので半眼かどうかは外見からでは分からないけど、オーラは伝わったのかもしれない。
「仕方ない。知り合い、サクしかいない。」
「まぁ。」
そうですけどね。
よく読んでみると、しばらく一緒にPTを組んで、1か月ばかり見張ってろみたいな感じ。
嫌ではないです。可能性的にはコレに同意しなくても、ティラ君とPTを多く組む可能性は十分ありえます。だがしかし。強制されると『え―――』と言いたくなる不思議。
そして微妙に恥ずかしい。ksg。
「ラフィーが。サクが頭下げに来たから、書いてもらえって。」
「あの野郎。」
余計な事喋りやがった。くそう。恥ずかしいから黙っておけばいいものを。
口止めしてないけど。
「えっと?」
レティナさんが首をかしげている。
うーん、何て言ったらいいでしょうね?
「ティラ君は職業柄、賞金稼ぎをしてたけど、その関係でペナルティーがついて、今その解除のための書類を手伝わされてます?」
「暗殺者・・・。」
「暗殺者って言うと、字面だけだと完全に悪人だから、オブラートに包んであげたのに。」
「悪を討つ。かっこいい。」
「わかったわかった。某ダークヒーローにあこがれて悪者退治してたら、街に入れなくなったバカ小人はこの人です。」
「ひどい。」
レティナさんは潔癖症な所があるから、せっかくオブラートに包んであげたのに小人に粉砕された。
「ああ、某忍者軍団みたいな感じですね!」
レティナさんがキラキラとした目でティラ君を見る。
えっ!?何その例え。自分も知らないんですけどそれ。
「レティナ、団塊の世代じゃ。」
あ、そんな時代の話なのか。
「うち、お爺ちゃんがよく時代劇見てるんですよ。」
なるほどね。外国人さんが好きそうな奴ね。
そんなこんなで。
仕方ないので、ティラ君の書類を書いてあげ、ティラ君はそれを意気揚々と衛士詰所に揚々と提出しに行った。
その間にレティナさんのレベル上げの進捗など聞く。
レティナさんのレベルはいま20らしい。
えっと、前会った時は十歳前後だった気がする(※レベルを歳で例えている)。
わぁ。だいぶ頑張りましたね。
「サクさんは今幾つですか?」
えっと今幾つだったっけ?
システムを見てみる。
「レベル28ですね。」
まだまだといったところ。スキル上げもしていたしね。
しかしレティナさんはブーーーとむくれている。
「ずるい。」
「その言い方ティラ君みたいなんで、やめてください・・・。」
あんなの、二人にもなったら困りますからね。
「まぁ、レティナさんは後衛だし、自分よりは少し上げ辛いかもしれないですね。ゲームにも慣れてないですし。」
「それはそうですが、魔法使うのって憧れがあるじゃないですかー。」
「そう言う人もいますよね。魔法職って前衛ありきになるので、PTで友達とワイワイやる人向きなんですよね・・・。」
魔法職でソロって大変ですよねぇ・・・。INT極振りしてどの程度の火力がでるかと、適正MOBのHPと、ファルディアだと他のパラメータがどの程度必要になるか分からないから何とも言い難いというか。
極振りじゃないとソロで魔物退治はキツイ。かといって、極振りだとソロ行動がきついっていうね。
速力2極振りはただ単に足の速さでカバーしてるだけだからねぇ。
一番いいのは固定を作って、各々補いながらやる方が俄然強いのだ。
・・・そういえば、セイさんもソロっぽかったけど、自分よりレベル高そうだったな。生産にも手を出してるし、何レベルあるんだろう?
「う~~~。」
レティナさんが唸っている。
「かといって、自分も毎日一緒にいれるってわけでもないですしね。」
自分も割とソロ活動も好きなもので、ずーっと一緒にいなきゃいけないっていうのは嫌なんですよね。
「それは分かってますし、私も一人の時間も好きです。SSとか撮りたいですし!」
あ、レティナさんも写真部なのか。
「・・・フレンドになると「毎回PTに誘うべき!」って真顔で言う人がいるんですよ。」
「えぇ・・・それはちょっと、きついカモ。」
「自分も向いてないですね。まーそこら辺の価値観が同じ人と遊んだ方が楽ですよね。」
一緒にいたい人同士が一緒にいるなら問題ないけれど、自分の価値観を世間の常識として「いるのがあたりまえ!」って言われるのは違うわけで、揉める原因になりやすい。
だから固定みたいな契約みたいなPTが流行るんだけどね。
活動曜日と時間とやる事とルールをきっちり決めるタイプ。
あとは・・・そうだ。
「あとはペット?」
「ペットですか?」
「ガタイのいいペットを飼って、初めは経験値を分け合うので不味いと思いますが、慣れたら盾の様な動きをしてもらって、その間にレティナさんが滅ぼすパターンを作ればいいんじゃないですかね。」
「わぁ、そんな事ができるんですね!」
できそうだけど、実装されてるか知らないんだよね。ありそうだけど。
ハウジング実装されているかも分からないのに強引に作ってる人がいるから、力押しでは行ける気がするけど、その分試行錯誤が必要になるし初心者には決して向いていない。
「ただ、問題があって。ペットを御しきれない場合、逃げられたり噛み付かれたりして終わりそう。」
そして、ペット職は自分で殴るよりもペットの仕様迄完全に理解していないといけないので、他の職業よりテクニカル職だ。
「無理じゃないですか――――!」
叫ぶレティナさん。
しょうがないなぁ、もう。
「とりあえず、無難にまずはレベル上げ行きますかね・・・。」
自分とレベルは少し離れちゃったけど、こっちに来る経験値分を減らせばなんとか?うーんどうだろ?下手するとレティナさんのステータスが落ちそうだし。
折角だからティラ君を巻き込みますかね。
どうせ、しばらく一緒にいなきゃいけないんだし。
いや、違うな。順番が違うか。
「手伝う?」
再び空から黒小人が降ってくる。
もう行って戻ってきたのか。早いな。しかしなぜ空から降りたがるのか。
「確かに、手伝ってくれると助かりますが・・・。」
うーんと考える。
これからイベントもある。
自分もイベントに向けて金策もしたい。
ティラ君もしたいことがあるだろう。
なるべく全ての人が得する事をするか、順番で事に当たるかが一番妥当性があるだろう。
「ちょっと考えてみます。レティナさん。」
「は、はい。」
慌てて返事をかえしてくる。
「ステータスはINT振りメインですよね?」
「そうですねー。まとめサイトでその様な事を読んだので、そのつもりです。」
「今度、ティラ君がレベル上げ手伝ってくれるそうなので、頑張って早急にお勉強しておいてください。」
「はい?」
「レベル上げてもお勉強しないとINTって上がらないんですよ。自分もうっかり本を読むとINTが上がって大変困っています・・・。」
あーそれ、ティラも困ってる、と後ろでティラ君がボソボソいってる。
やっぱ困るよね、あれ。
勉強はステータスが上がりづらくなったジョブチェンジ前に行うべきなんでしょうかね?
「勉強?」
「何でもいいのでギルドなどで本を読んだり、本屋で本を買って読んだり、とにかく読めばいいんじゃないですかね?他にもあるかもしれないので頭が良くなりそうな行動を事前にいっぱいしておいてください。攻略サイトでやり方を調べてくれてもいいです。ただ、魔法使いと精霊使いは違うものなので、そこは気を付けてください。場合によっては伸ばし方が違う可能性があります。」
「うへぇ。はい。でも、勉強は得意分野です。」
そうですか。どこかの内田とは大違いですね。
「ティラ君。」
「はいよ。」
なんだね、その返事。
「イベントまでにやりたい事がいっぱいありそうですが、一番やりたいことは?」
「金策。の、為の薬草探し。」
「薬草!」
レティナさんが予想外に食いつく。興味があったんでしたっけ。
「じゃあ、レティナさんはティラ君にお礼がてら薬草採取でも手伝ってみてはいかがです?」
「いいの?」
「いいんですか?」
「さぁ?やる事にもよるし、その辺ティラ君にしか分からないでしょう?二人できめてください。」
はーい!となってる二人。意外と仲良くなれそうですかね?
「自分は強いて言えば金策がしたいですかね?」
月光属性のアイテムとかアイテムとかアイテムとか買えたらいいなってなってるので。
「なので、少しくらい経験値が不味くても、数をこなしてドロップを増やしたいですね。」
「ガンガン行くか。」
ティラ君のガンガン・・・恐ろしい。
「ガンガンです・・・か?」
レティナさんは分かってない模様。
「今日はこれで解散して、各々準備しましょう。レティナさんは明日までにできるだけ勉強しておいてください。自分もギルドとかで情報を集めないと・・・お二人の明日の都合はいかがです?」
そんなわけで、明日は久しぶりにレティナさんと、ティラ君で狩りに行くことになりました。
さて、どうなりますかね?
影の軍団()




