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ふぁるでぃあにっき。  作者: コミヤマミサキ
8月 ~なつやすみ~
85/444

2-81 生誕の間

 影の街を見ながら、長い階段を下りていく。


 上層では燦々(さんさん)と日が照っていたのに、下層は昼間の方が薄暗い。

 ただ、天井の光源付近では日光の強い光がキラキラと眩しく反射をし、街に幾筋もの光芒、天使のはしごをかけている。しかしそれも、影の街全体には行き届かない。街の中心部は比較的明るいが、壁際に行けば行くほど暗くなる。当たり前であるが。

 むしろ、天井の日光の光が強い分、月光よりもコントラストや境界がはっきりして街の明暗が分かれている気がする。


 その様が、街が静かな事もあいまって、下層の街が廃墟になったか様に見える。

 しかも、住人は殆ど”影”である。

 ある意味退廃的というかなんというか”滅び”を感じさせる。

 こういう雰囲気は好きな人はきっと好きだと思う。そういえば、ファルディアでも写真部っていうのが居ると聞いたことがある。ファルディアの美術監修にアーティストの人が入ってるらしくて、そのファンの層や、純粋に旅行したいけど忙しい人たちがネット上で風景のSSを上げているらしい。どちらかと言えばプロよりの人も多くて、人物系のSSを取る人とはまた雰囲気が違うとの事。そういう人が喜びそうな風景だなって思う。


 だが魔力感知を取っていると、見える景色が一変してしまう。

 その辺でしゃがんでる影の人は完全に酔っぱらって寝ているし、あっちのあの人はお金を賭博ですった人。そこで佇んでる二人は偉い人に怒られて立たされてるだけの人たちである。

 影族は総じてそんなノリである。魔力感知で見ると退廃的ではあるが、廃墟感はない。どちらかといえば二日酔い感になってしまう。魔力感知も考え物だな、と思ってしまう。

 まぁ、元より影族の自分は闇視があるので、ギャップは感じないが、後から取った別種族の人は可哀想だなと少し思ったりする。例えば次のお祭りの時で好きになった人とかはねぇ。



 などと考えながら、街をのんびりと歩きながら城に向かう。


 今日の階段の当番の人も、どこか見覚えがある人だった。『あ!お前何だっけ!・・・ラッキーボーイ!』と言われたから多分ゴブリン祭りの参加者かなんかだと思うけれども。違っててもあの日酒場にいたとかそういう感じだと思う。挨拶だけしておく。

 よく考えたら昨日(ファルディアでは一昨日だが)来た時も夜だったので、この街は夜しかちゃんと歩いたことがない。昼はこの街にとって夜だから、今は夜を歩いているようなもの?

 何となくこんがらがってくるが、雰囲気だけ廃墟感を楽しみながら城に着く。


 城の門番の人も3人ほどいるが、どことなく、そのうちの2人に見覚えがある。闇視の力だろうか?どうみても外見は黒い人なんだけれども、装備とかではなく何となくこの思考パターンに見覚えがある、と思ってしまう。影族は目で相手の魔力を区別しているのかもしれない。全員ほぼ同じ外見だしね。


「こんにちは。えっと、上層ギルドから依頼を受けてやってきました。これが依頼書になります。あと、追加で自分チュートリアル・・・生まれた後の城での講習?を受けてないんですけどどうしたらいいか聞きに来ました。」


 自分の声にブッっと吹き出す方々。きたないなぁ。


『やべー。』『えっとギルドの件はご了承しました?後のはどうすりゃいいんだコレ?』『依頼やってもらってる間に聞いて来ればいいんじゃね?』『それだ。』

 兵隊さんも割とフランク・・・。

 定形のところはちゃんとしているけれど、何か変わったことがあるとすぐ素が出る模様。で、質が悪い事に、自分は割かしこの影族という種族のそういうところは好きなんだよなぁ・・・。


「えっと、じゃあ依頼の仕事をしてますので、その間にどうすればいいのか講習の件については調べていただけたらと思います。」

『おっけー』『まかせろ。』『じゃなかった、かしこまりました?』『とりあえず、ご案内します、だな!』

「はい、お願いします。」

 どうやら混乱してるみたい?とりあえず現場まで案内してくれるというので、ひとりの影族さんについていく。

『がんばれよー』

 と、残りのお二方が手を振ってくれたので、振り返しておく。



 映画とかでしか見た事ないような、立派な門扉を開ける様なことはなかった。門扉の横についていた詰所への入り口の様な所から城の中に入っていく。

 そりゃそうか。あの門を開けるだけでも相当な労力がかかりそうだ。

 そして中は予想通り兵隊さんの詰所だ。椅子とか机とか、武器とかなんか装備とか色々置いてある。


『ギルドへの依頼の受注者通しまっす。』

『へーい。』『あ、これ腕章。』『あ、こいつ、”繋がりませんっ子”だ。』


 繋がりませんっ子・・・。

 自分を連れてきた門番の方が、詰所にいた方に自分が持ってきた申請書を渡している。

 自分は渡された腕章を服に付ける。

 渡された方はカリカリと書類に記入している。出入りの記録なんだろうな。


『へー、こいつがー。』『意外とまだ生きてるな。』『やっぱ変な奴は変なんだな。』


 感想が駄々洩れなのも、どうかと思ってきた・・・。


「えっとその節はお世話になりました・・・?」

 のでしょうかね。見た事あるって事は、地下での捕獲組の方でしょうか?一応お世話になったのでお礼を言っておく。


『よせやい。俺は何もしてないし。』『礼儀正しいやつだな。』『仕事の説明は下の係だから、向こうで詳しく聞いてくれー』


「はい、わかりました。お邪魔して申し訳ありません。」


『またなー。』『危険はないと思うが気を付けろよ~。』

 こちらもフランクな方々でした・・・。

 門番さんはずんずんと、城の奥に進んでいく。


『こっから階段急だから気を付けろよー。よく新人が足を踏み外すんだよ』

「へー。」

 そして、親切だ。

 下の階に降り、薄暗い城の中を歩く事5分余り。


 見覚えのある門扉へとたどり着く。

 門扉の前には門番さんが二人いる。

『ギルドの人連れてきたー。』

『何か見た事あるな。』

『”ユイベルト様のお気に入り”じゃね。』

『ああ、あれか。あれは傑作だったな。』

 何か方々でいろんなあだ名がついているようですが、完全な間違いがない所が怖い。

 確かに称号までついちゃってるし・・・!


「ハハッ・・・。」

 苦笑してると、自分を連れてきてくださった門番さんが

『じゃあ、俺戻るわ!がんばれよ!』

 と、足早にきた道を戻っていった。

 取り残される感が強い自分。え?投げっぱなしで行っちゃうの?


 そんなこちらの戸惑いはお構いなしに、こちらの門番さんたちもマイペースに続ける。


『中の巡回の人だよな。』『生誕の間を巡回してもらって、生まれた奴がいたら連れてきてくれりゃーいいだけだから。』『じゃ、がんばって。』

 という雑な説明の後、門をちょっと開けて肩を叩かれ行けと門の外に押し出される。


 あれ?説明って、たったそれだけ?

 えっ!?ちょっと、アレ?


 困惑している間に、ギギギーっと門は閉じられてしまう。

 就業時間とか大まかに分かってはいるけど、ちゃんと聞いてないし、ここって・・・火とか焚いてもいいのかなぁ?ガスとか出てたら引火しそうだし、うーん・・・。


 でも、火を焚いていいんだったら、はじめから焚かない?最低でも扉の前に炎があればここに生まれた人は本能で来るよね。でも焚かないなら『あえて焚いてない』と考えたほうが無難かな。多分生誕の間は光源禁止ってとこだろう。そう思っておく。


 ふと、システムウインドウを見ると、右下にタイムバーが出て時間が減っている。

 恐らく、これが就業時間だと思われる。ファルディアで8時間くらい。休憩とか入れていいのかなぁ?


 仕方ない、と覚悟を決め前を向く。

 久しぶりに来た『生誕の間』。前回は殺され殺されてたから、まじめに観た事はなかったけれど。

 ゆっくりと奥に向かって歩き出す。

 相変わらずここは完全な闇だ。

 そして、相も変わらず白黒だが見えている影族の目もおかしいよなって思う。

 まぁ原理はおそらく魔力も読んでるんだろうけれども。


 硬い岩を踏みしめる自分の足音だけが響いて洞窟内をこだまする。


 そういえば、全部見て回った事が無かったけれどここはどれくらいの広さなのだろう?

 気配察知、魔力感知でもいまだに端が見えない。

 最も気配察知は生き物を察知する事がメインだから、無機物がどうかとかは分かりにくいんだけれども。


 相変わらず何も変化がない。気配もない。

 あれだけ殺し合った(一方的にですが)同じ場所とは思えないほどの静寂。


 そして、前回感じなかったトロッとした雰囲気。

 ウーンなんだろう?

 気配察知のレベルが上がってるんか、それとも魔力感知の影響なのか。

 夜の、少し濃厚な空気を感じ取った様な?

 などと考えてたらピローンと慎ましやかに文字さんからのお知らせ。


【気配察知が10レベルに上がりました。】

【魔力感知が6レベルに上がりました。】

【精神苦痛耐性が4レベルに上がりました。】


 えっ!?何?何で突然ここで?

 しかも精神苦痛耐性は何で上がりました???

 訳が分からない。特に侵されてる感じもしないけれど、トラウマとか起こしかけましたか?

 考えてもさっぱり分からないし、身に覚えもないし、”汚染”の方じゃないし、危機感も感じないから、まぁいいか、っていう事にしておく。

 上がるなら上がってくれたらありがたいし。

 もしかしたら生誕の間は上がりやすい環境なのかもしれない。


 しかし、上がって少しだけ分かったことがある。

 この闇、ただの闇じゃなくて魔力・・・だと思う。

 いや、闇に魔力が流し込まれている?通常の地上とかみたいに流動して流れている魔力じゃない。影に固定化され濃厚な影の魔力だと思う。

 自分には非常に居心地がいい。


 意外と闇の中でリラックスしながら、気配は探りながらも余計な事は考える。


 リアル世界での”闇”の扱いを思い起こす。

 光の天界、人が住む人界、闇の冥界に分ける事はよく聞く。日本で言うと高天原、中つ国、黄泉の国と言ったところか。

 闇はやはり悪い側面や違法みたいに使われたりするんだよね。神話ならやはり生と死、善と悪の対比として闇は使われるのだろう。そりゃあ悪人がいないと物語は成り立たないしね。

 でもファルディアでは、闇は闇なんだよねぇ・・・。闇って言うか影っていうか。影族は悪い奴だと思われてる節もあるけれど、偏見っぽいしね。それに、魔術的にはそんな事がなくて、シュンさんに教えてもらった属性表だと陰に分類されているのか、陽に分類されているのか判然としないポジションだったけど。

 そういった意味では自分のジョブを魔術師に選んでいたら、ファルディアの宗教観に触れて楽しかったんじゃないかなとは思ったりもするのだけれども。


 でも、詳しく調べていなくても、分かる事もある。


 人も動物も寝ないと死ぬ。家畜がいい例で、電気をつけっぱなしにして寝かせない家畜は、寿命が短い。植物はライトを当てて夜を感じさせないと、開花が狂うという。生きていくために、闇は休むという意味合いがある。生誕の間の闇は、そういう不安や恐れなどの象徴ではなく”安らぎ”を与える闇なのだ。影族が安らぎから生まれるなんて、おかしいもいい所だけれども。



 ―――『()()()は何を考えてファルディアを作ったんだろうか』


 今の所、ファルディアにはラスボスの様な明確な共通討伐目標などない。強いて言うなら”ファルディア()()”という位だから、そのうち国の間で争うゲームなのではないかと思っていた。かといって今は大きな争いはないわけで。

 今はサービス開始直後で、みんな自分を強くする事に夢中だからいいけれども。こんな、善と悪が分かりづらいものでは、大衆受けしないのではないか。それはゲームとしては致命傷なのでは?

 それとも、善と悪との葛藤を描きたかったんだろうか?どんな国でも見方が違えば善悪が変わる。例えばアポリア王国が善くあろうとしていても、影族の自分を問答無用で捕まえた様に。



 ―――ガサッ


 不意の物音とと、同時に気配察知にも魔力感知にも反応がある。

 ほんの数メートル先。

 黒いモヤの様なものが何やら収束していくのがわかる。

 おお・・・これはまさか同族爆誕の瞬間に立ち会いました?


「う・・・うわぁあああ・・・・!!!!」


 そして、なぜか爆誕後ノータイムで同族がこちらに殴りかかってくる。


 解せぬ。


 本気というより、破れかぶれで隙だらけで窮鼠猫を噛みたいけど噛めないかも!

 みたいな混乱ぶり。


「えーと?こんにちは?」

 とりあえず避けながら挨拶をする。

 うーんこの速さ。AGI 20といったところか。

 懐かしい。

 悪いけれど余裕をもって避けると、生まれたて影族さんは何故か地面にはいつくばってそのまま泣き出す。


「こ・・・殺したければころせ!運営に通報してやるからなぁ・・・」


「はぁ。」


 はて。何で自分は初対面の人間を殺さなければならないんだろう?


「影族の間で同族殺しは禁忌ですので、死にたいなら勝手に死んでください?」

 まさか影族に「くっ殺」的な事を言われるとは思いませんでした。

 せめてこう、様式美として金髪の凛々しい女騎士様とかにしてほしい所。


「そ、そんなこと言って、俺を騙すんでしょう?安心したところを後ろからバッサリ?」

「それやって、なんかいい事あります?」

「えっ!?」

「えっ!?」


 どうも噛み合わない。

 こういう場合は、さっさと誤解を解くに限るかな?


「どうも、自分はギルドから派遣されましたプレイヤーのサクです。今回、生誕の間で生まれた方を保護して無事に安全地帯迄送り届けるバイトをしてます。短い時間ですがあなたは保護対象なのでよろしくお願いします?」


 ぽかーんと口を開けているおそらくプレイヤーの新人影族さん?

 3秒ほどたって「よかったぁあ・・・」と泣き出す。

 よく泣く人だなぁ。





「いやぁ。ご迷惑おかけしてすみません。ゲーム慣れしていない上に、第1陣が受かっていたのに仕事で出遅れまして。影族の情報を調べたら掲示板で「影族POP地点は同族PKがうろついているから、出会い頭に殺さないと生き残れない」って聞きまして・・・。」


 板。どうなってるんだよ板。


「それは・・・あれですね。携帯電話を電子レンジでチンすると充電できるとか、そういった類の話ですね。」

 誰が嘘を書いたんだ。罪深い。が、本人ももう少し冷静に情報を集めてほしい所。


「自分もまさかとは思ったんですが、誰にも会わなかったーって方が殆どだったので。まさか誰かと会うとは思わず・・・申し訳ないです。」


 なるほど。ほとんどが自力であそこにたどり着くのか。まぁ死んでもプレイヤーなら何回か生き返るしな。

「いえ、ここで・・・いや、ここじゃなくても影族同士で殺傷沙汰起こすと大変なので辞めたほうがいいと思います。自分の知っている人も大変な事になりましたし。」


 そういえば、どうなったんだろMJKBY氏。アカウントBANされたって聞いたし、戻ってくる気配はないので平和でいいなぁといったところ。もしかしたら獣族とかになってるかもしれないけれど。


「はぁ。という事はやはり同族PKはいるんですね。」と怯えたオーラをだす影族さん。そういうや、名前聞いてないや。まぁいっか。

 というか、長くここにいるとこの人はすぐ死んじゃうかもなと、思い当たる。


「とりあえず歩きながら話しますか。このままここにいると、あなた死ぬんで。」

「はい。・・・うえぇええ!????」


 と器用に叫ぶ新人さん。

 ちょっと面白い。話した感じだと社会人の方みたいなんだけど、何となくおっちょこちょいなオーラが漂う。大丈夫かなぁ?


「PKじゃなく、光に当たらないと影族は死ぬ仕様です。PNTが切れる前に安全地帯にたどり着かないと物理的に死にます。急ぎましょう。」

「ええぇええ・・・き、厳しいんですね。」


 よく分からないだろうに、とりあえず新人さんはついてくる。自分は速度を上げ過ぎない様に気を付けながらも、気配察知と魔力感知はオンのまま、他に誰か生まれないか、気を配る。

 そういえば、自分にも光が当たらないと死ぬはずなんだけど、そういった気配は今の所まるでない。多分レベルが上がってストックできるPNTが増えたんだと思う。

 これもレベル上げの賜物かと、嬉しくて少しニヤついてしまう。


「・・・なるほど。闇の中で突然死ぬのはPKじゃなく、光に当たらなかったからなんですね。」

 そう先ほどの新人さんが納得して、ひとりで頷かれている。

 ああ、そういう事ですか。体が動かなくなって死ぬ原因が思い当たらず、PKにやられたと思った人もいたって事ですか。

 前情報でそれが流れると、それを信じてしまうと。


「・・・オープニングで『影は光無くしては生きられない』と言ってますが・・・あんな事件があった後ですし、勘違いするかもしれませんね。」

 恐らく影族プレイヤーがPKに対し疑心暗鬼に陥ってるのだろう。いや、影族以外の種族も影族をみたらPKと思うのかもしれない。

 世知辛い。


 でも実際PKをやりたくて影族をしてる人もいるんだろうしな。

 勘違いを助長させている人もいそうだし、プレイヤー数も少なくてここまで情報が正されず来てしまったのかもしれない。


「ところで、さっき仰っていたPNTって何ですか?」

 と、新人さんがワクワクして聞いてくる。

「PNTっていうのは、自分の個人的な理解ですが、影族の隠しパラメーターの一つですね。ONTと紐づいていて、空腹値の様な挙動をします。光が無くて死ぬのはこのPNTが減るからですね。」

「なるほど・・・つまり影族にとっての見えない空腹値が存在するという事ですね?」

「そうなります。魂の存在力らしいですよ。」

「へぇ~。流石難しいと言われる影族をこなしてきた先輩の話は勉強になります。」

 そう、邪気がなく笑顔で新人さんが言ってくれる。人懐っこい方である。

 見知らぬ方にそこまで純粋に言っていただけるのもくすぐったい。

 多分年上の方なんだろうけど、素直に物事を判断できるなんて偉いなぁ。


 そんな、雑談をしながら歩く事15分ほど。

 見慣れた扉が見えてくる。


 ・・・これどうやって開けたらいいんだろ?

 まぁ向こうも気配察知とかで分かるかな?

 一応ゴンゴンと扉を叩きながら声をかける。確か中からも開けられたはずだけど、自分はその仕組みを教わってないしね。


「すみませ~~~ん」


 10秒ほどゴンゴン叩くと、扉が内側に少し開いた。

『おまえwwww』『自分であけろよなー』

 と、文句を言われる。しかしだ。


「開け方を教える前に、この中に送り出したじゃないですか。無理ですよ。」

『あれ?』『そうだったっけ?メンゴメンゴ(テヘペロ』

 相変わらず軽い人たちである。


「というか新しい方です。早く保護してあげてください。」

 と言って、体をずらし、新人さんが見える様にする。

 新人さんは新たな影族にびっくりした様子だが、光にホッとした様子も見える。

 自分も初めての時はそうだったなぁ、と懐かしくなったり。


「えっと・・・あの・・・。」

 と、新人さんは戸惑っている様子。兵隊さんは相変わらずマイペースだ。


『最近喋る影族多いなー。』『喋るのは”霧向こう”から来た奴だよな。お前もそうだろ?』

「ふぁ?あれ?えっと、はい?」

 多分、新人さんは目で思考が見えるのに慣れていない御様子?なんだと思う。

 戸惑っている様が初々しい。


「それも、影族の仕様です。影族は目で意思伝達する種族ですので。」

 一応そう教えて差し上げる。板を詳しく見たのなら多分知っていると思うけれど、実際そうだと実感がないと戸惑うだろうしね。


「な、なるほど。コレがそうなんですね・・・。初めてだと驚きますね。」

 と、新人さん。


『まー。ありがとなー』『お前もまだレベル低いんだし疲れたろ?少し休んでけや。』

『じゃあ俺、こいつ送り届けてくるわー』『おれ、こいつにお茶飲ましてるわー』『はいよー』

 という目の前の駄々洩れの情報。


 新人さんは「えっえっ!?」と戸惑っている。

 影族の人はフランクすぎて、慣れてないと情報がダイレクトすぎて戸惑うよね。


「こちらの方がチュートリアルを受ける所に連れてってくれるそうですよ。影族は『繋がり』がないと死にやすい特殊種族ですし、繋がりを貰うためにも少しチュートリアルが長いと思って気楽に行かれるといいと思います。この先はPKなんか出たら、影族の皆様総出でお出迎えするので、ほぼ安全です。安心して行ってきてください。自分は他の方を回収にいくので、ここでお別れです。」

 そう丁寧に通訳しておく。


 ホッとしたような気配がして、あ、そうなんですね、と新人さんが安堵してくださる。

 そうこう言ってる間に『ほら若いのーイクゾー』とせっかちな影族さんと『お前この椅子座ってろよ~』といってお茶を取りに行く門番さん・・・門の前に誰もいなくなるけどいいの?それとも自分も見張り枠なの!?と思ったり。まぁ仕方ない。見張っててあげるか。


 門番さんに急かされながらも、頭を下げながら慌てて付いていく新人さんが初々しい。



 一仕事したな~と思いながら、結局あの新人さんの名前を聞かなかったなーって思った。


突然殴りかかるのはPKに当たりますし、本来はアウトになります。そもそも生誕の間はユイベルト様のせいでPKできない空間になってるので殺せない(全て手加減状態になる)状態ですが。


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