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ふぁるでぃあにっき。  作者: コミヤマミサキ
8月 ~なつやすみ~
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2-78 むべなるかな


 とりあえず、予め進もうと思っていた方向・・・西の方角に進む。

 アレの言う事を聞いているというわけでもないし、元々自分が進もうと思っていた方向だ。


 それで、アレが言っていた『彼女』とやらに会えばそれなりに考えるし、会わなかったら会わなかったで何も問題ない。


 自分はいつもの通りにするだけである。



 ざくざくと進む。


 敵の気配が濃くなってきてはいるが、今のところは見当たらない。

 誰の気配もない。

 ・・・よく考えたら、自分はここがどこか調べに来たんだった。

 街とかあればいいのだけれども。


 暫くずっと同じ様子が続く。

 ・・・さっきの男に担がれたのかなぁ。

 そう思い始めた頃、すこし第六感にチリリとした引っかかりがある。


 多分、自分より強い敵だ―—。どこか遠い所に敵がいる。


 目視では何も確認できない。

 気配察知の範囲にもまだ入ってこない。


 ただ、音がする。

 ドゴン、とかジュッとか争う様な音だ。


 これは戦闘音?誰かが襲われている音?


 そう思った時には既に駆け出していた。



 そして暫く走ると、次に気配察知の範囲に入ってくる。

 この感覚だと15メートル程しか離れていない。


 今の自分のレベルが、26程。

 気配察知で感知できる敵の強さが30代前半といったところ。


 1匹でも差が開いているのに、それが集まってきていて6匹くらい?

 魔物は位置的に地面ではなく、空中に浮いているので、飛行できる何かの様だ。

 ブーーーーーーっという耳障りな振動音がするので、飛ぶ昆虫系かな?


 それが、誰かを襲っている。

 逃げているだろう人の気配もする。コレが件の『彼女』?


「・・・足止めできれば!こんな奴負けないのに!!」


 誰か女の人の悪態が聞こえる。逃げ回ってるのに強気な人である。だが、早急に助けたほうがいいだろう。返り討ちにあいそうな気もするが。


「どうもー、こんにちは。」

 ガサッと草をかき分けると、そこには今まさにでかいスズメバチに襲われる際の転んだ金髪の女性と、その襲おうとしたハチの丁度真横だった。



 女性からも、ハチからも「はぁ!?」という視線が若干痛い。



 残りの5匹のハチはまだ少し距離がありそうであるので、目の前のこれを先に斬っちゃいましょう。

 相手がゴーストじゃなくてよかったと思いながら、全力で蜂の羽を斬り飛ばしにかかる。


 だが、ハチは物凄く速い。リスよりも速い。

 初手を避けられたが、こちらも速いのでハチも完全には避けきれなかった。

 自分の切っ先がハチの羽をかすり、ハチの軌道がふらつく。

 これはチャンスとばかり、有難く反対の剣の追撃でハチの一番細い腹部を斬り飛ばす。

 ふらついて思う様に飛べない蜂はあっけなく上下2つに分かれた。


 ・・・蝶は背中に心臓があるんでしたっけ?

 蜂は何処にあるのかなぁ。でも、腹部を斬り飛ばしちゃえば多分死ぬからいいか、と結論付ける。

 あと、確かスズメバチは熱にも弱かった気がする。エンチャントないし、それは自分には関係ないな。


 蜂は元々速そうな生き物の上に、レベルも5は上の気がする。

 体感、ハチのレベルは32,3といったとこか。

 通常だったら、自分は相手にしない敵だが。


 ―――速度で負けなければ、何とか勝てるかもしれない。


 斬り飛ばして消えていく蜂を見ながら、俄然やる気になる。


「ちょっと、あなた!レベル20代でしょ!私に構わず、無理しないで逃げなさい!まだ沢山いるのよ!あまねく揺蕩う風の精霊たちよ、我らにその力を貸し給え。『加速(アエーマ)』」


 支援魔法バフをくれて、逃げろと促してくれる先ほどの女性。


 いや、でもこの魔法はありがたいですね。速度で負ければ、絶対勝てない相手だと思ったんですよ。

 紙装甲ですし、逆に言えば相手の攻撃が当たらなければ、勝つ可能性があるかなぁって。

 こういう弱点が大きい生き物って割と得意分野なんですよね。

 速い生き物は苦手ですけど。


「まぁ、やれるとこまでやってみますので、『加速』ずっとお願いします~。」

 と言って走り出す。


「ちょっと!?そのためのバフじゃないのに・・・もう!」


 怒りながらも次の魔法を唱え始める女性。

 戦い慣れてるなぁ、と気配だけで察知しながら走り続ける。

 ティラ君も居たらもっと楽だったけど、居ないものねだりだし、相手が混乱している間に各個撃破、かつ一撃必殺しか勝機がない。レベル差が大きいし、いつ支援魔法が切れるかも分からないしね。


 1匹の蜂を倒したので、残りの5匹の蜂たちは色めきだっている。

 この動揺から復帰仕切る前に何匹倒せるかが問題だが、5匹中、3匹はかなり高い位置にまだいる。


 手堅く2匹は落としたい所。

 その時、自分の魔力感知に大きく反応がある。

 これは、先ほどの女性の魔力だ。

 こんな時に迷わず先制の攻撃魔法を放ってきた?なかなかやりよる。

 でも敵視を取ったら危ない気もするけど・・・まあ自分が前衛じゃ結局危ないか。


風圧弾ラファーガ!』


 自分が一番近いハチにたどり着くよりも先に、高所の三匹に推定風魔法がさく裂する。

 自分とは3メートル以上距離があるので、少し進行速度を阻害される程度であるが、上空からの強烈な風で蜂が地面の方に煽られて高度を下げる。

 かつ、スリップダメージと、行動阻害のデバブを付けた模様。


 ほんとやりよる!

 今欲しい要素全て盛り込んでいる!

 高所の敵を追い落とす精霊魔法の類だろう。


 高度の概念があるファルディアでは、こういった魔法は必須魔法かもしれないなと思う。


 ダウンバーストの様な上空からの突風に驚いた蜂を、楽に2枚おろしにして2体仕留める。


 加速(アエーマ)がなければ、こんなに楽に仕留められなかっただろう。

 それにしても何でハチってこんな腰が細いんでしょうね?



 高所から落とされた蜂、残り三体は復帰しだしている。急いで、そのうちの1体に肉薄するが、こちらの2手を避けられる。さすが5レベル以上うえの生き物!格が違う。

 自分も相手の攻撃を何とか避け、3手目で漸く綺麗に胴を捕らえ、腹を真っ二つにする。綺麗に剣が入ると真っ二つになる様だ。


 先ほどの威力の高そうな魔法で女性の方に敵視が跳ねるかなと思ったけれど、ダメージ自体はさほど大きくなかった模様。派手だったが攻撃魔法というよりは弱体魔法の要素が強いのだろう。蜂はこちらの方が脅威とみなして、自分に襲い掛かってくる。襲い掛かるスピードも速い!それが2匹分ほぼ同時に飛んでくる。

 一匹でも避けるのが難しいのに、2匹目は自信がない。

 が、まぁ1匹目を避けて、2匹目を受けて、HPが残ってれば倒せるかもしれないと1発は食らう覚悟を決める。


 そこに、自分へと降り注ぐ水魔法。

 まだダメージを受ける前なのに、自分へとヒールが飛んでくる。

 ここで、ヒールをかけたら敵視が跳ねるのでは!?って思ったけれど、やはり跳ねた。


 そして、ハチが回復させた女性に気を取られ、自分への攻撃が一瞬おざなりになる。


 これだけ接敵していて、その気の散らし方は命に関わる。

 女性へと方向転換しかけた近いハチの胴体を間髪入れず真っ二つにする。


 これで、後一匹。


 そして、自分が一体の胴を跳ねている間に、女性は何をしたのか?再び最後の蜂がこちらへと敵視を向けるところだった。


 あの、人、やばい。


 先ほどのヒールもミスではなくワザとだろう。

 こちらの苦戦を想定して、一瞬の隙を作る為だけに、あえて自分にオーバーヒールをして敵意を一瞬だけ女性自身に向けさせたのだ。

 それも、予想してあらかじめ詠唱をしておいて、最善のタイミングで使わなければならない。

 しかも、その状況から女性自身で敵視を戻している。

 敵視を取りすぎていたら気配希釈などを使っても戻り切らない事はままある。

 実際ヒールしすぎて敵視を取りすぎ敵に殴られて死ぬ人も多い。

 つまり、彼女は回復量から計算して、敵視を戻せる量だけヒールをかけ、敵視を一時的に取ったのだ。


 相当腹が据わっていて、かつ高い技術と判断力が無いとできない芸当である。



 結局、最後の1体では支援魔法が利いた自分では、特に問題にならず無難に倒す。

 影纏ですら、出さずに終わってしまった。


 これがプロ支援魔法家バッファーの力なのか・・・!?


 今までソロプレイが多かったし支援魔法寄りの人はフレンドにあまりいなかったんだけど、戦慄する。

 これは、PTで重宝されるはずである。

 自分がレイドとか行くなら絶対欲しい人材!



 そんな事実におののいていると、女性の方が近づいてくる。


「すごいわね、お疲れ様。あと助けようとしてくれて、ありがとう。」


「いえ、こちらが結局助けられてしまって・・・。すみません。」


 この女性がいなかったら、多分自分は死んだか、またPNT切れでぶっ倒れていたはずである。


 落ち着いて、女性を見てみると、金髪の耳が尖った古代族の方だった。

 そして、長身で、・・・・



 ・・・


 ・・・



 ・・・・・古代族の特徴って、スレンダー、なんですよ。


 あの・・・。


 その、・・・あのですね?


 そう。


 こういうことを言うのは大変恐縮なのですが、普通の古代族の方は、こう、”薄い”方が多いのです。

 それも清楚でウケてる理由の一つなのですが。


 ですが、ですね。

 その彼女はですね。


 ―――たゆん。


 なるべく目立たない様にしているであろう、隠すデザインのケープのローブですが、それでもさらに有り余って目立つ双璧。


 ―――たゆん。



 大層立派な山脈をお持ちの方でした。



 思わず目を逸らす。


 ・・・・自分、母で美形には慣れているのですが、

 ばーちゃんもあまりなかったですし、周りにある方がほとんどいなかったので。


 アレには慣れていないんですよ。

 かといって、スマートに目線を固定できる気もしないし、全力で明後日の方を向くしかないですね。


 ええ、もう開き直ります。

 自分はアレが苦手です。

 まだセクハラで捕まりたくはありません。全力で無視するしかないのです。


「―――フフッ、そんな事はないわ。とても嬉しかった。ありがとう。私はプレイヤーのセイス。セイとでも呼んでちょうだい。あなたはどなた?どうしてこんな辺鄙な所にいるの?」


「こんにちは。プレイヤーのサクです。どうしてって言われると難しいのですが・・・。」


 彼女が、さっき会ったアレと一枚かんでいる可能性も考える。


 しかし、彼女は本気で自分を逃がそうとしてくれていたし、本気でピンチの様子だったので、何となく多分違うかなという印象を受ける。

 それでも確信はないのだけれども。


 ただ、利害で考えても、自分を騙しても得は何もないだろうしなぁ。でもリアルはどうだろうか?自分の事を調べて居たらアイツは家を出て行ったと知っているはずだし、情報を知りたいとか思われても何も出ないしね?それとも人質?でもそれならリアルで取るとおもうのだけれども。

 などとグルグル考えてしまい、結局気の利いたことは思い浮かばなかった。


「まず、ここは何処ですか?」


 ポカーンとした様子の彼女・・・セイさん。顔が見れないので気配察知で判別しているけど多分そう。

 そしてクスクスと笑いだす。


「やだ。ただの迷子じゃない。」

 何がツボだったのか分からないですが、笑いだす。

 なんか最近色々な人に笑われるなぁ。なんでだろ。


「それともあなた、アレを使ったの?」


「アレ・・・。」

 アレとはやはりあの渦の事でしょうかね?


「ああ、そろそろ時期かなって思ってたけどやっぱりね。」

 自分の様子だけで確信を持ったのか、ふふふーと楽し気に笑うセイさん。


「私の秘密だったのに、もうバレちゃった?つまらなーい。」

 つまらないという割にはとてもご機嫌で楽しそう。


「とりあえず、疲れちゃったし、安全地帯にもどろっか?あ、助けてくれたお礼にドロップ譲るね?」


「いえ、自分も助けられたので。」

 そこはそれ。特にいらないかなって思います。

 特にPT登録もしてなかったけれど、お互いに協力して倒したので、多分双方にドロップがいってるんだと思う。自分の所にもきている。


「そう?じゃあお互い様って事で。」

 と言って、特に彼女も強引に押し付けてきたりなどは無かった。


 ていうか、レベルがまだ2個上がってしまった。強すぎる敵を倒したからである。あああ・・・またスキル上げしなければ・・・。能力値大丈夫かなぁホント?



 しかし、何か引っかかってモヤモヤする。

 自分は何か忘れてないだろうか?


「あっ!」

「あ?」

 自分の声に反応するセイさん。


「友達いたのを忘れていました。」

 ティラ君とPTが勝手に切れちゃったままなんだよね。

 心配してるカモって、慌ててメールボックスを見ると、3件くらい入っていた。

 うーん悪い事をしてしまった。


 そして、セイさんは再びポカーンとして、今度は爆笑しだす。


 ・・・やはり解せぬ。



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