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ふぁるでぃあにっき。  作者: コミヤマミサキ
8月 ~なつやすみ~
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2-76 龍穴

 通常見える視覚では全く変化がないのに、体感では回転している感じがする。

 つまり、目に見えない力の流れだけ回転しているので、感覚と視覚の差異が酷い。



 結果、割と酔って気持ち悪くなる。



「うっ・・・。」

 思わず、目を押さえて視覚を閉じ、地面に膝をつく。

 視覚が遮断された分、回転だけが感じられ、あーなんか渦巻いてるなぁっていうのだけが分かる。感覚のみになってるので、結構渦の廻り方が物凄く大きかったんだな、という事もわかる。


 影族の種族スキル「闇視」の影響で、視覚の方が感知力が強いのだと思っていたのだが、今回は見えない魔力が回っているのか?一体何がどうなってるんですかね?それとも、もっとよく注視したらよく見えるのでしょうか?


 なんにしても酔って気持ち悪いので、今はやりたくない。

 ただ、視界を閉じていても気配は分かるので、渦がだんだん強くなっているのは分かる。


「どうした!?」


 突然膝をついて目のあたりを押さえた自分に驚いたティラ君が、慌てて声をかけてくる。多分遠隔物理職だから魔力感知なんてスキルを持っているわけがないだろうティラ君には、きっと何が起こっているのか分からないはずだ。


「グルグル回って気持ち悪い・・・。」


「グルグル・・・???」


 とりあえず、酔って気持ち悪いというのを伝えたかったんですが、余裕がなくて変な伝え方になってしまう。が、言い直す気力もあまり湧かない。第六感に異常を感じないし、多分大丈夫・・・な筈。ただ、ひたすら気持ちが悪いだけで。


 ふと、気配察知に猫たちが動く気配を感じる。


「ナー。」


 そして、一匹が一声鳴くと。



 ドボン ドボン ドボン ドボン。



 猫が水の中に次々と飛び込んでいく。


 !!!!????????????


 猫って水が嫌いじゃなかったです!?

 いや、そういう事じゃなくて!何で飛び込んでます?


 慌てて目を開けると、既にそこには猫の影も形もないが、水面だけが大きく波打っている。


 池の中を覗き込むと、闇視を持ってる自分にも真っ暗で何も見えず、猫の影も形も見えない。自分の所で寝ていた猫ですら7匹はいたから、10匹くらいは飛び込みました!??


 えっ!?


「この先だな。」

 頭が大変混乱しているところで、黒小人がそうつぶやく。


 ―――――ドン。


 酔って弱ってる所に、頭が混乱していて、すぐには意味が分からなかった。



 ボシャン



 ティラ君に池に突き落とされたと気づいたときには、すでに体が池の底に沈み始めていた。

 慌てて泳ごうとするが、魔力の渦に引っ張られている事に気づく。


 なるほど、渦はこういう風にまいていたのか。

 と気づく。


 第六感は相変わらず仕事をしないし、息さえもてば平気なのかも?

 などと場違いな事を考えている間に、なされるがまま、グルグルとした魔力の渦に捕らわれて。


 とても長い間だった気もするし、10秒程だったような気もする。


 息が苦しいと思う前に、突然水の上に放りだされる。


 ザバーン!


 そして、再びの着水。

 びっしょびしょである。だがしかし、池はとても浅い。

 腰くらいまでの水位である。


「ニーー!」

「ニャー!」


 猫たちの何匹かが抗議の声を上げる。自分が着水した水しぶきがかかったのだろう。

 初めての事なので、その辺ご容赦願いたいのだが・・・。


「よっ。」

「ぎゃっ!?」


 その着水した自分の頭を踏んずけ足場にし、見事濡れずに地面に降り立つティラ君。

 猫を見ても誰も濡れていないので、池ポチャしたのは自分だけと見える。


 この糞小人が!!!



 ・・・・・しかし、池の底に吸い込まれたと思ったら、また池があって地面がありましたね?????


 どいういことなの?地底世界でもあるというの?


 先ほどまでの激しかった魔力の渦も全く見えず、落ち着いて辺りを見ると相変わらず夜の森だが、先ほどまでいた場所と違う。


 あの無駄にでかい岩はなく、ただ、ぽつんとお地蔵様みたいな、道祖神のようなものと、浅い湧き水があるだけである。その湧き水の池も、四角くレンガで囲ってあり、その下に溢れた水が流れ込むように更に丸く水たまりの様にしてあるので、用途によって使い分けてるのかもしれないが生活感がある。


 空を見上げる。

 ・・・月はないけれど、星はありますね?

 頭上でキラキラ瞬いてるのは多分星だよね???

 リアルだと信じ切れるところですが、魔法なんて訳の分からないものがある世界では何が起こるか分かったものではないから若干不安である。



「・・・ここは?」

 と思わず自分の口に突いて出てしまった。

 ティラ君に分かるなんて思ってはいない。ただ、疑問がそのまま漏れただけである。


 目的の場所に出たのだろう、猫たちは思い思いに散り始めるところだった。

 自由である。


 ついでに、忘れないうちにティラ君の頭を掴み、こめかみを梅干しでぐりぐりと攻撃しておく。

 先ほど足蹴にしてくれた仕返しである。

「あああああああぁ」っと騒ぎながら抵抗する黒小人。

 残念。STRは自分の方が格段に上なので、捕まえてしまえば大概自分が勝ちます。





「印象だけだと、どこかにワープした?」


 ひとしきり、こめかみをいじり倒した後、首を傾げながら言うティラ君。若干涙目であるのは、きっと気のせいですね。


「うーん。そうかもしれませんが、何処にワープしたかが問題ですね。」


「そんな問題?」

「問題じゃないです?」

「どうせアポリア出ようと思ってたし?」

 確かにティラ君はアポリア王国に入れませんでしたね。

 他国なら入れるのでしょうか?腕利きの暗殺者となれば入れないかもしれませんが、どうなんですかね?ギルドカード的に。


 そして自分もそうですが、どうせアポリアを出てアルシオンに戻ろうかと考えていたタイミングですし、どこかに飛ばされるなら実は絶好の機会でしたか?


 そう言われれば、大して問題じゃない気もする。

「とりあえず、自分にとっては問題ですね。・・・。良い場所なら問題ないと思いますが。」


 絶海の孤島で居るのは猛獣ばかりって可能性もありますしね。


 ・・・まぁ、そんなバトルロワイヤルな所に猫が好んで来るとは思えないですが。


「大丈夫。悪い場所でもそれなりに楽しめる。」


 と、ティラ君の力強いお言葉。


「ゲーム、楽しんでますね。」

 と言うと、

「それなり?」

 とティラ君から返事が返ってくる。


 結局”()()()()”なのですか。便利な言葉ですね。

 そう言われれば、自分も()()()()にきっと楽しんじゃいそうではありますが・・・。


 うーんと考え込んでると、ティラ君が続けて言う。

「とはいえ、まずは現状の把握?街を探す?」

「まぁ、そうですよね・・・。」

「あとは、ここに戻ってこれるかが大事?」

「条件は分からないですが、猫は明らかに慣れていましたもんね。行き来してると考えた方がいいかもしれないですね。」


 あんな、思い切りのいい水大好きな入水猫が大量にいてたまるか。


 とはいえ、トルコ辺りの白猫は泳いで湖を渡るって聞いたこともあるけれども。

 何でしたっけ?ターキッシュバンっていう品種のネコ?

 確か湖で泳ぐオッドアイの白猫ってイメージでしたが。ピンクとかビビットカラーとか変な色のネコはたくさんいましたが、品種に統一感はなかった気がしますね。



「あと、世間的にまずい?」

「まずいとは。」

「これは、未発見なら、大きなアドバンテージ?」


 まだファルディア的にそんな情報は出回ってないいですものね。

 少なくとも自分が軽くインターネットでまとめや攻略情報を見た範囲では乗っていませんでした。


 ティラ君は自分よりもよく情報収集してるみたいなので、きっと世間でもまだ出回っていない情報でしょう。


「無理やり開示することもないと思いますよ。不確定情報ですし。」


「よかった。」

「なんです?」

「世間に言わないのは悪い事!っていう人もいる。」

 ああ、確かにいそうですね。

 皆で助け合う事もいい事だとは思いますが。


「自分、基本的に板をみない人間なので・・・。」

 自分で攻略したい派なんですよね。

 確定情報で、混まないのであれば板に流してもいいとは思うのですが、湖周辺にプレイヤーがわんさか押し寄せて、朝も夜も誰かに見張られてるんだと思うとたまったものではないので、他にもそういう別の事例が出てきてからの方がいいような気もしますね。


「だけど、舎弟はアルシオンにいたのにアポリアに来て注目を集めてる。出た場所によっては、さらに追い回されるかも?」

「めんどくさっ。」


 なんだそれ。しばらく街に行けないコースか?めんどくさっ。


 確かにアルシオンから謎のコースでアポリアに飛ばされましたが、任意でどうにかなるものじゃないんですよ。どうしろって言うんですか!


 ・・・ああ、でも他人からみたらその情報を独占してる悪い奴みたいに見えるんですかね。

 ただの、トラブル巻き込まれ奴なんですがね。



 ・・・ハハッ。



 はぁー・・・。



 まぁなんにしても、ここがどこだか分かってから考える話ですよね。


「そろそろ夜明けですかね。」

 まだ濃い藍色の空だが、少しずつ白み始めているのが森の中からでも分かる。


 方々に散っていった猫を追いかけるべきだったのか。

 でも、みんな自由気ままに散っていったしなぁ。規則性があれば追いかけたのだけれども。



「とりあえず、ここで再び落ち合う事にして、あたりを探索してみます?」


 そこまで言って気づく。

 どうしてここをホームベースにしようとしていたのか。それは、現象の起点でもあるが、ここはあの場所と同じで魔物の気配がとても薄い。


 安全地帯なのである。

 ここなら、街に戻らなくても暫く踏ん張れそうな気がする。

 幸いなことに水もありますし。


 ・・・この水飲んでも平気かなぁ?



「リュウケツみたい。」

 と、突然言うティラ君。


「流血?怪我でもしました?」


「違う、龍の穴って書いて龍穴。陰陽道とかに出てくる。龍脈の起点?終点?」

 龍脈は聞いたことありますが、龍穴っていうのもあるんですね。


「龍脈は何かパワースポットみたいな意味合いを感じますが。」

 よく漫画とかに出てきたりしますよね。栄えてる土地とか、忍者漫画とか。


「私も詳しくない。龍穴は聖なる土地?栄えるところ?だった気が。」

 結局龍穴もパワースポットっぽい感じがしますね。

 龍脈は地震とも縁が深そうですが。でも、ここでティラ君が言いたいのは龍穴の定義とかではなく、あくまでも先ほどの現象の方でしょう。


「龍穴から入り、龍脈を通り別の場所にたどり着く、・・・か。」


 確かに、そう言われればそんなイメージですよね。

 ただ、栄えてる場所じゃなくてどちらも寂れてる場所ですが、聖なる土地と言われるとしっくりはきますね。


「仮称:龍穴を使いこなせば、移動が楽になる。とりあえず、情報は黙秘。まず、ここがどこか探ろう。」

「全面的にその意見を支持しますね。」

「ん。サク、PT。」


 ティラ君からPT申請が飛んでくる。

「とりあえず、周辺探ろう。以下PTチャットで。」


 知らない土地だし誰か忍んでる可能性もあるってことですね。PKとかNPCとか。


「りょうかーい。」

 とPTチャットの方に切り替えて、そちらで答える。

 ダイヤルをぐりぐりと回して切り替える感じなんですよね、PTチャット。

 音が聞こえないさまも面白いけれど、切り替える様も面白いっていうか。

 これ、でも読唇術持ってる人には無効ですかね?


「とりあえず、私、東みる。」

「じゃあ反対側の西を見てきますか。」


「何かあったらお知らせ。」

「はいはい。」



 そんなこんなで、即席探索部隊は出来上がったのだった。

 見知らぬ土地か・・・。


 トンネルを抜けるとそこは、雪国でしたならぬ、別世界でした?


 うーんワクワクするっていうか、この・・・?


 うん、ごめん。


 ・・・やっぱり、ちょっとワクワクしますね。

 探索しましょうね。


 モンスターが強すぎないといいんですがね。それだけは心配です。


梅干し≒一部地域でしか使わない?子供の攻撃手法の一つ。

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