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ふぁるでぃあにっき。  作者: コミヤマミサキ
8月 ~なつやすみ~
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2-74 旅の準備 2

 不覚にもしんみりしてしまったので頭を切り替え、後は食事の時間は明るい会話をし、時間もあまりないので急いでティラ君と別れて街に戻る。


 そして、走りながら街で何を買おうかなと考える。


 自分的には火打ち石かな・・・?うーん分からない。火を起こす道具が必要だ。初心者は何がいいか、プロに聞こう。あと、お湯を沸かす様なものと、コップ一つ。後はお茶っぱくらいかな?PNTにさえ気を付けていれば、長期野宿は多分大丈夫だろう。あとはポーションだが、ティラ君が作ってくれそうなので、残るはティラ君の買い物か。ティラ君には既にお爺さんから購入した砥石を渡したので、残りは投げナイフとやらですね。自分もあまり街に入りたくないので食べ物も多めに買ってあげましょう。こういうのって小麦粉があれば暫く行けるんですかね?肉がドロップしたらその場で焼けばいいですし。あ、後は塩とか?どうなんですかねぇ?そのへん。


 うーん森に籠るのも飽きてきそうなので、そろそろアルシオン戻れるのが最善なんだけど、1か月って言われるとやっぱり躊躇するよね。シュンさんやオースィ師匠の事もあるし。地道に影移動と移動速度アップを図っていって考えるべきか。単純計算で今の所走って15日程かかりますしね?

 敵の強さとか月の運行とか全く考慮に入れてないけど。


 ログアウトすると宿屋などセーフティーゾーンに居ない場合は、多分体は消えているみたい。なので、ゲームを落ちる分には問題ないかなと思う。だけど、”体を消す”と、当然も回復しないので次にログインした時に結構キツイ。まぁそうですよね。ちゃんと休んでないですから。

 しかし、これって時間も止まってると解釈したらいいのかな?なにかこの仕様で悪い事をしそうな人もいそうだけど・・・。ちょっと自分にはパッと思いつかないですね?

 悪用したら悪用したで、うっかりバンされることもあるし、しない方が無難だけど。


 しかし、こうなってくると生活魔法が欲しくなる。

 いや、あるのかな?生活魔法。

 魔法に興味がないのであまり聞いたことがない。だけど、フィールドで火が起こせたり、飲み水が出せるって思えば凄いアドバンテージだし、荷物の圧縮だよね。

 まずはその辺りの知識を仕入れる為に古本屋のお兄さんの所に行くべきなのか?

 ・・・・・・・・それよりも、そもそも影族って魔法使えましたっけ?シュンさんも魔法が使える影族は聞いたことがないって言ってたけれど、”繋がっていない自分”はどうなのか―――――。


 ノリで始めてしまった繋がらない影族の自分だけれども、キャラロストのリスクを引き換えになんかヤバいキャラなんじゃないかって気がしてきたような・・・。

 もし、魔法使えちゃったらどうしましょうかね?


 ・・・・うーん、しかしよく考えたら、使えても大して何も変わらないか。

 INTが少ない影族の攻撃魔法としての威力は微妙も微妙だろうし、生活魔法についても影族は飲食を基本必要としていないみたい。回復魔法系はMIDだけど、自分は現在INTより低い。回復魔法はあれば勿論便利だけれど、アドバンテージを取るって程じゃないよねぇ。回復量も少ないし、何よりMPが少ない。凄く頼りになるというほどじゃないのだ。キャラロストのリスクに合っているかって言われると、結局釣り合ってるかは分からないな。


 なんだ、大したことないな。うん。

 深く考えないでおこう。


 ひとしきり考えて結論が出て満足したところで、再びアポリアに戻ってきた。さっきは一番近い東小門から入ったが、何度も出入りして門番さんに変な顔をされるのが嫌なので、今度は南門から入る。市場も近いしね。

 だが出入りの記録が残ってるのだろう、「何か忘れものですか?」と門番さんに聞かれた。凄い。ギルドカード高性能!まぁそんな可能性もある気がしたので、予め何を言うかは考えてありました。「友達が粗忽もので忘れ物をしたので届けてきた戻りです。」と答える。嘘は言ってない。


「ああ、あのよく叫ぶ人ですね。」と笑顔で門番さんが答えてくれる。


 ・・・ええ、その”よく叫ぶ人”は、確かに自分の知り合いな気がヒジョーーにしますが。・・・アイツ、NPCにもそんな認識なのか・・・。


「・・・・・・・・・・ええと、その”よく叫ぶの”は多分自分の知り合いだとは思うのですが、今回は珍しい事にそのよく叫ぶのではなく別の知り合いデス・・・。」


 ていうか、ごめんなさい。

 アクティスが何をしたのか知らないですが、多分ご迷惑をおかけしてますね、ごめんなさい。

 若干目線が右斜め下に行ってしまうが、影族は目があるかどうかすらわからないから門番さんには分からないだろう・・・。


「ああ~今回()違う方なんですね~。」

 門番さんは何の悪気もなく、明るくそうおっしゃる。

 今回はって・・・いうことは何回もあるんですね~・・・学校でのアクティスの様子を見ていると非常にありそう。


 ハハハと乾いた笑いを浮かべながら、門番さんにおすすめ初心者野宿グッズの販売店を聞いてみると、一番のオススメは冒険者ギルドだった。

冒険者ギルドは、初心者向けの野宿の仕方から必要な装備まで幅広く講習などもやっているから、おすすめとのこと。しかし、残念ながら今回は時間がないので手早く安く済ませたいと言うと、2,3軒中古雑貨販売店を教えてくれた。ありがたい事です。


「どこかに遠征予定ですか~?」と聞かれたので、「ちょっと、最近自分を嗅ぎまわってる変な人がいるらしくて、関わり合いになりたくないのでどこかに籠ろうかと。」と言うと、「ああ・・・。」と言われる。


 門番さんまで知ってるのか・・・。


「冒険者ギルドでよく迷惑行為をしている若手冒険者の”霧向こうの民”の方たちですよね。・・・あの方々、結構色んな所から苦情が出ているんですよね。同じ霧向こうの民の方々からも評判悪いですし、霧向こうの民の方々から謝ってもらったりする感じですね。確かに下手に絡まれても状況によっては時間が拘束されたりする可能性もありうるので、暫く別の町に居るのも一つの手かもしれないですね。」と、言いながら門番さんがギルドカードを返してくれる。


「やっぱりそうですか。ご迷惑おかけして、申し訳ありません。」

 と、謝っておくと、あなたが悪いわけではないので、と慌てて大丈夫ですよ!とフォローしてくださる。次の方も待ってるのであまり長話もできなかったけど、優しい門番さんだった。



 再び気を取り直してお買い物へ。

 いくつかの食糧や小麦粉、お茶なども購入。

 それにしてもティラ君って、薬士もしてるのに砥ぎも自分でできるのか。凄いな。自分も剣の簡易メンテナンスくらいできる様になった方がいいよなぁ。


 と思いながらも今すぐ覚える気はないので、今度は投げナイフを市場の露店で購入。これは自分には求めるランクがわからないので、ティラ君とメールをしながら3万F、10本セットを購入。丁度、包丁くらいの金額だな。


 次に中古雑貨販売店へ向かう。

 門番さんに聞いていた所で、近い店から行ってみる。

 中をのぞくと、リアルで言う骨董品屋の雰囲気に似ている。

 中は暗く、外から見える範囲ではガラクタと呼ばれそうなものが乱雑に積まれている。

 何に使うか分からないツボだとか、妙ちきりんな箱とか、普通の椅子とか色々置いてある。

 うーーーん、自分こういうの好きなんですよね。

 1時間ばかり発掘したくなるんですよね・・・。

 買いはしないのだけれども、見るのが楽しい。

 何に使う道具なのかを考えるのが楽しいというか・・・。

 しかし、商売の邪魔になっても怒られてしまうので、ここはサクッと店員さんに聞いてしまいましょう。

 奥のカウンターにいるのは、骨董品屋の様子とは裏腹に洒落な感じの男性である。


「すみませーん、初心者の冒険者なんですが、お勧めの最低限野宿装備って何になりますか?」


「へーい!まず魔法は使えるメンバーおりますかね?」

「基本一人ですので、使えませんねー。」

「じゃあ、まず火打石と携帯燃料ですね。あとは魔物避けの香と・・・大分痛んでて良ければ聖別した毛布もありますよ。これで寝ると魔物がぐんと近寄りづらくなりますね。」


 だからティラ君、毛布持っていたのか。


「あとは食事用の飯盒・・・・お客さん影族ですしね?いります?影族の人はあんまり食べないって聞いたことあるけど。」

「食べないけど、お茶はたまに飲みたくなりますね。」

「ああ、温ったまると気分が違いますよね。人間だと血の巡りが良くなりますし。じゃあ万が一を考えてスープも作れる飯盒一つ持っておいた方がいいでしょうね。あとは、細かい事を言い出したらキリがないですが、大体の人は装備を良くして快適さを上げたりしてますね。」

「マントとかで雨を防いだりとか、そういう感じですか?」

「そうそう。そういう感じですね。」

 なるほど。


「テントとかは皆さん買わないんです?」

「大所帯は買いますけどね、5,6人のところだと余程遠征でもしない限りは買わないね。たまーに鉱脈師など野外で長居する変わった人が買っていくくらいだけど。」


 すみません、すでにその変わった人になりつつあります・・・。

 が、お金も少し心もとないしなぁ・・・。今回はいいかなぁ?

 でも、テントで寝たら少しPNTが回復しそうな気はするんだよな。

 逆に危ないかなぁ?うーん?


「丁度、3万Fの古ぼけているけれど質のいいお買い得のはありますけど。」

「いただきましょう。」

 悩んでいるのが面倒くさくなったので買ってしまう。

 あとで、やっぱり買えばよかったかなぁと考えたりするのが面倒くさい。


「じゃあ全部で4万6千(フラウ)ね。沢山買ってくれたから、おまけ付けときますね。これ、鉄串。肉とか魚とか刺して焼くといいよ。あと、薪を混ぜたりするのにも使える。テントを買うって事は、長期見込んでるのか。じゃあ携帯燃料もおまけに追加しちゃう。お客さんが買ってくれたのよりは質が悪いんだけど、燃え草がない時とかに点火にちょっとだけ使いたい時にこういうのがあっても便利。あと、錆びづらいフォークと小さいけど飯盒に入るコップかな?」


 勝手に増えていく、おまけ。

 門番さんがお勧めしてくれただけのことはありますね?

 こういうのって、普通値切るものなのですかね?自分が面倒くさくて値切ってない分だけ、勝手におまけで増やしてくれているのかな?

 なんにしても、善良なお店です。


「ありがとうございます。」

 荷物を受け取って素材を売って空いたインベントリに詰める。


「また御贔屓に~。」


 雑貨屋を出る。時間を見ると、あと20分くらいは時間が空いている。



 楽しく買い物をしてたが、ふと自分のユニークスキルが気になりだす。

 トラブルの可能性、増大してますよね・・・?

 っていう事は、長くいればいるほど、”奴ら”に絡まれる可能性も増えますよね?


 ・・・・・・・・。


 やだなぁ。


 早く買い物済ませよう。

 といっても、オースィ師匠の砥ぎが終わらないと勿論出かけられないので、時間的には大して変わらないのだが。


 それならば、と、以前行った中古本屋さんが近いので、そちらに行ってみる。

 市場でフラフラしているより、店の中に入ってた方が遭遇率が減るだろう。

 気配察知は入れてあるが、あたりを窺って見覚えのある顔が居ないかチェックして足早に移動した。多分、迷惑な人たちは、いなかったと思う。


「こんにちは~・・・。」

 暗い店内をうかがうと、以前いた同じお兄さんが何やら本に没頭している。

 自分にもそういった事は身に覚えにありすぎるので、そっとしておき、本の背表紙を流しながら読む。

 と、言っても自分の大陸公用語はまだレベル16。絵本程度の字は読めるのだが、知らないジャンルや難しそうな字は全く読めない。読みたい本と言えば、生活魔法とか、野宿の仕方とか、月光属性とかですかね・・・?魔力感知でもいい。綿毛兎の本も読んでみたいし、トンガルーなんかも気になる。・・・結局全部面白く読める様な気がしてきた。うーんここも危険な場所だ。この際、大陸公用語がこの前買った本でレベル20になったら、30くらいまで次の本で上げてみたい気がする。本がもっとよく読めるようになると思うんですよね。こう、難しい話とか面白そうな本とか、そこまで上げないと読めなそうな気がするんですよね。20レベルだと一般の会話で出てくる単語程度しか分からない気がします。今のレベルの状況を考えると。

 とりあえず、そんな事をツラツラ考えながら本を15分ばかり見ていたが、お兄さんは一向に読書が終わらない。

 あと、5分位でオースィ師匠の方が終わるなぁと思ったので、そろそろ店を出ようかと思い、お兄さんの前をそぅっと横切ろうとしたら、ふと顔を上げたお兄さんと目が合う。


「・・・うわぁあ!?!????」

「・・・こんにちは。」

「・・・この前の影の人か!一体いつから!?」

「かれこれ15分ほどでしょうか?一応声はかけたのですが・・・。」

 驚かせてしまいました。

 何かごめんなさい。


「あーー・・・いや、自分本を読むと集中してしまう癖があって。申し訳ない。」

 と、照れたようにポリポリと頬をかくお兄さん。

「で、今日は何かお探しです?」

「ちょっと、暫くアポリアを離れようと思いまして、野宿の仕方とか、生活魔法とか面白い本が何かあるかな~って軽く時間あわせに立ち寄りました。そろそろ店を出ようかと思ったら、驚かせてしまって。」


「あーそうなんですか、寂しくなりますねぇ・・・。冒険者ギルドが発行してる簡易本でしたら在庫ありますよ。こちらが野宿のテキストで、こちらが生活魔法についてですね。ただ、野宿の方は冒険者ギルドで講習を受けたらついてきますし、生活魔法については冒険者ギルドか神殿の方で講習を受けるとやはりついてきますが・・・。」

 どうします~?とお兄さん。


「おいくらです?」

「1冊3000Fでいいですが、2冊買ってくれたら5000にしておきますよ。」

 とても薄い本ですし、とお兄さん。


「じゃあ2冊くださいー。」

「はい、まいどありー。」


 ・・・また散財してしまった。


 ていうか、読めるのかなぁこれ。自分の語彙力がまず怪しいのだけれども。


「この前の本を読み切れば、多分読めますよー」


 心配していることがバレてしまった。

 この前買った本もちゃんと覚えてくれているのか。プロは凄いなぁ。

 自分だったらお客さんのすべてを覚えているとかとてもできない。


「ありがとうございます、頑張って読んでみますね。」


 包んでくれようとしたが、急いでるので包装は断り、そのまま鞄の中に突っ込む。


「またのお越しをおまちしております。」

「またアポリアに戻ったら、よらしていただきますね~。」


 お兄さんに挨拶をし、店を出る。

 慎重に辺りをうかがうが、やはり彼らの気配はないようなので、そのままオースィ師匠の元に。


「こんにちはー。」

 時間は夕方より前。おやつ時と言った感じ?

 今日はお弟子さんのような方が2人ともそろってらっしゃる。


「はい、こんにちは。師匠は残念ながら会合で留守にしておりますが、手入れは終わってますよ。」

 前回PNT切れの時に応対してくださった眼鏡をかけた男性の方が声をかけてくださる。


「お忙しい時に申し訳ありませんでした。有難うございます。」

 お金は先払いしてあるから、後は受け取るだけです。

 受け取ったシュライブングの剣は何処がどうとは言えないが、手に持ってみると、しっくりくる感じがする。やはりちょっとバランスが崩れかけていたのかもしれない。


「それと師匠からの伝言です。『シュライブングの剣は刺突剣じゃないので、くれぐれも次はやるな、ドァホゥが!』だ、そうですよ。」

 ニコニコと、声音をとても上手に真似て仰るので、うっかり笑いそうになってしまう。


「・・・・そっくりですね。」

「よく言われます。」

 ニコニコと動じることなく仰る眼鏡のお弟子さん。

 よく言われる程やってるのですか・・・意外にこの方も面白い方なのだろう。


「気を付けます、とお伝えください。」

「ハイ、そのまま伝えますよ。」


 そのままって自分の真似もされるのだろうか?流石に恥ずかしいのだが・・・深く追求すると怖いので、聞かなかったことにしておこう。


 剣を受け取り、お礼を言ってインベントリの中にしまって工房を出る。


 時間的に夕方に近くなってきており、まだ日は陰っていないが、気持ち的に物寂しい気がする。そして、夕方になると冒険者の方々が戻ってくる時間帯なので、”彼ら”にうっかり鉢合わせする可能性が増えてしまう。今のうちに街から出てしまおう。


 東小門と南門。どちらがいいかと一瞬悩んだが、距離的に東小門が近いし、どちらでも確率は同じだろう。近い方から出ることにする。

 門番の人にまた声をかけられるが、南門と同じように「変な人が嗅ぎまわっている様なので暫く街を離れますねー」って言うと、やはり納得してくださった。

 結構こういった事はあるのかもしれない。

 治安を維持する兵士さんも大変だなぁ。



 月も日もまだ残っているが、今日はどちらも沈むのが早い。

 どうせもう少ししたらログアウトするから丁度良いのだけれども、気分的に急いでティラ君が居る湖の方に向かってしまう。相変わらずリキャストごとに影移動と走り込みだ。

 ・・・あ、シュンさんに何かお土産とか買いたかったけれど、今回は我慢してもらおう。次に来るときは花の種とか持ってこようかなと思ったりしている。切り花だとすぐ枯れてしまうからね。ただ、自分は何を買ったらいいのかが分からないんですがね。


 避けるのが面倒なので、エンカウントしたリスは先手必勝で斬ってしまっている。

 こちら側のリスは、もうレベルが低いのであまり経験値にはならないが、能力値のボーナスとか鍛錬枠に入っているのかな?そう思った方が気分がいいので、その気持ちでやってる。今回は結構全力で走っていたのに2匹にしかエンカウントしなかったけれども。

 少しは気配を消す腕が上がりましたかね?


 そう思った方が気分がいいので、そう思っておくことにする。


 そろそろシュンさんのお墓が近くなってきたかな、っていう辺りになって





「ギャー―――――――――――――――――――!」


 という悲鳴が。





 うーん、どっからどう聞いてもティラ君の声。

 そして、何となく予想ができてしまう。


 魔物が居ないのに、悲鳴を上げる事なんて・・・


「何―この子?かわいー。始めまして?あれ?大小人族じゃない?久しぶりに見たわ~ウフフ。ねぇねぇ、どんな可愛い子。あなたどんな獲物もってるのー?」

 と、明るい幽霊の平常運転の声も聞こえてくる。


 ウーン昼間。うーん。

 幽霊は自重するべきでは?などと思ったり。

 まだ日が傾いてもいないですね。


 流石にちょっとティラ君が幽霊は苦手とかだったら可哀想なので、急ぎ足で現場へと向かう。

 と、そこには腰を抜かして後ずさるティラ君と、そのティラ君に嬉々として迫る悪気のない幽霊の姿が。


「さすがにちょっと、卑猥だから止めた方が良いんじゃないですか?」

 と、思わず声をかけてしまう。

 なんか、性的に襲ってるようにも見えますね・・・?


「あらーサク君おひさー。」

「全然久しぶりじゃないですよ。3日ぶりくらい?」

「あなたが近くにいないと殆ど眠っている様なものだものー。時間感覚まるでないわー。」

 カラカラと笑っている。本当に明るい幽霊である。


 そんなシュンさんを無視して、まずはティラ君の救出へ。

 そう言えばシュンさんの事、言い忘れてましたね?


「大丈夫ですか、ティラ君?シュンさんは多分幽霊ですが、明るい方なので気にしないでくださいね。」

 幽霊枠に入れていいかも判然としませんがね・・・。


「知り合い?幽霊?」

 完全に腰が抜けたのか、虚ろな瞳のティラ君。

 そっとこちらから手を差し出すと、ティラ君も手を乗せてきた。だが、まだ立とうとしない。立てないのかも。


「こちら、シュンさん。言い忘れましたが、何故か魔物が出ないこの辺りに住んでる幽霊っぽい方ですね。月光属性があると活性化するみたい?ですのでティラ君だけだと多分出てこないかもしれません。」


「大事な事!大事な事!!」

 ボスボス腹を殴られる。

 だが、腰が抜けてる為、腹をかするくらいしか拳が届かない。再び半泣きになってるティラ君。

 不覚にもちょっとかわいい。

 幽霊苦手なのか・・・。


「シュンさん、こちらティラ君です。自分の友達ですね。ちょっと変わった人ですけど根は多分悪くない?・・・かもしれない?ですので、ここらへんで野宿してても気にしないであげてください。」

「どういう紹介!?」

 不平の声を上げるティラ君。

 だってねぇ・・・元暗殺者を良い人ですとは断言し辛いしねぇ。


 そんなティラ君を気にした様子もなく、興味深げにくるくるとティラ君の周りをまわるシュンさん。

 目がキラッキラしてますね。・・・これはあれですね・・・?


「ティラ君、さらに言い忘れましたが・・・」

「何!?」

 多分怖い想像をして半泣きになりかかって叫ぶティラ君。お化け苦手なのですか?

 無駄に可愛い属性を網羅してますね。


「ねぇ、あなた。さっき砥いでたナイフ見せて?それ、どこで買ったの?アポリア?今投げナイフの主流ってどんな形?そのナイフの相場はいくらくらいだった?冒険者の間でそのナイフ流行ってるの?自分で砥いでたけど結構上手ね?その砥石どこ産?砥ぎ味はどう?いつもその砥石使ってるの?」


 相変わらず平常運転で捲し立てる剣オタ。

 突然のことに目が点になる黒小人。



「シュンさんは、重度の剣オタなので、気にしないでくださいね。」


「ぇえ・・・・・・ぇえーー・・・・。」


 恐ろしく不満そうな黒小人の声が漏れた。

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