表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふぁるでぃあにっき。  作者: コミヤマミサキ
7月 ~ファルディアと日常~
7/444

2-6 反逆

無駄に『コ〇ス』というイケナイ言葉の使用回数がダントツ回となってます。

良い子はマネしないでください。

(2回目)


 15分間は何してようか悶々とするかと思ったが、うたた寝の様な微睡みの中にいた。


 15分経ったのだろう、急速に意識が回復すると暗闇を落ちていくような感覚が暫くし、気付くと先ほどの洞窟に立っていた。

 立ってる事を自覚した瞬間、悪寒がしたので後先考えず全力で前に体をダイブさせる。

 立っていた辺りがガリガリ!っとものすごい勢いで何かで削れたのが分かる。


 あいつ!リスポーン狙いかよ!


「あ~初めて避けられた?君すごぉいねぇ~パチパチパチパチ!」


 手を叩くのではなく口でパチパチ言ってても嫌味にしか聞こえない。

 ホントふざけた野郎だ!


「でももう死んだけどね~。」


 姿勢を起こす前に腹を下から突かれた!衝撃とただただ冷たい感触。腹が凍ってしまいそうだ。



「レベル1にしては23の僕の攻撃をよくかわしたね~。褒めてあげるよ~wwwもうお別れだけどね~wお前はもう!死んでいる!ってか~wwwwうはっw」



 自分を踏みつけてピョンピョンとその場で軽快にジャンプしている、真っ黒な奴がいる。


【あなたは特殊エリアにおいて、プレイヤーキルを受けました。ゲーム時間15分後にリスポーンします。】


「さ~て次の子は何処にPOPするかなーレベル上がらなくなるまで殺さなきゃ~」


 沈んでいく意識のなかで、あいつの狂った軽快な声がする。

 このまま全員を殺していくのか?

 影族の死亡原因ってこれなのか?

 激しい違和感を覚えながら、しかし、鈍った意識ではよくわからくなり――――――



 ――――――――――――――――――――――――――――

(3回目)


 今度こそあいつぶん殴る!って思って意識が収束した。


 が、

「いっちばあああああああああん!!!」


 瞬間もう死んでた。

 多分上から半分に斬られた。


【あなたは特殊エリアにおいて、プレイヤーキルを受けました。ゲーム時間15分後にリスポーンします。】


 く、クソゲ・・・・――――――

 意識が闇に沈む。



 ――――――――――――――――――――――――――

(4回目)


 突然の足元の感覚と意識の覚醒。

 悪寒はしない。どうやら別の犠牲者を探しにいって、あいつはまだ近くにいない様だ。

 急いで岩肌の壁際に移動・・・いや、全力で出口を探した方がいいのか?

 ざっと見る限り先ほどと全く同じ場所の様に思う。

 ならばすぐにあいつは戻ってくるだろう。洞窟は奥まで続いているが、どちらが入口かもわからない。

 前に行くか、後ろに行くか。


 ゾクッ!・・・その瞬間感じる悪寒。

 体を左方向に投げ出す。考える間もなくそこから移動しようとしたが相手の方が早く、地面ごと斬られるのが分かった。

 衝撃で飛ばされながらも体の向きを変えたので、暗闇の中で相手が分かる。

 といっても、洞窟の闇よりも濃い黒い人型の影。

 そいつが影を伸ばして攻撃してきたのが分かった。

 やはり影人か!!!



「いないと思った?ざぁあんねんでしたぁ~?ねえ悔しい?ねぇ悔しい?wwww」


【あなたは特殊エリアにおいて、プレイヤーキルを受けました。ゲーム時間15分後にリスポーンします。】


 影変化と影硬質化だろうか。武器でも拾ったのかと思ったら、スキルか。


「ああ踏む前にきえちゃぅ~~」


 消えちゃうじゃねぇよ姫ちゃんプレイかよ。

 そこで意識が暗転する―――


 ――――――――――――――――――――――――

(5回目)


 ・・・とにかく、あいつをどうにかしないといけないのに、考える時間すらない。

 このクソゲーが!とログアウトする暇もない。

 意識を自覚した途端、とにかく、正面に向かって走り出した。


 大きな岩を右手に回り込もうとしたところで、ふと視界がぶれる。


【あなたは特殊エリアにおいて、プレイヤーキルを受けました。ゲーム時間15分後にリスポーンします。】


 今度は悪寒も何もなかった。

 よくわからないけど、遠くから狙撃?の様なものをされたようだ。


「あああああ~~~レベルが上がらないぃ~~~そろそろレベル1の雑魚じゃ厳しいかなぁ~」


 声だけは遠くから聞こえた。


 次生まれた瞬間に影移動で潜ってみてそれから・・・

 ああ、もう!せめて死んでる間も意識だけでもあればいいのに!!!!

 根性で意識レベルを維持してやる!!!・・・と半ばやけっぱちで心の中で叫んでいると、視界の端の文字さんがいつもとは違う表記を写す。


【精神苦痛耐性1レベルを獲得しました。】

【初期・特殊エリアでチュートリアル前に1時間以内に連続5回殺された事により、称号「苦痛に耐えるもの」を獲得しました。】


 ・・・・・おや?


 自分の体がほろほろと崩れ、先ほど生まれたであろう場所にゆっくり収束していくのが分かる。自分の形が曖昧な変な感覚であるが、『意識ははっきりしている』。


「でも出口わからねーんだよなー。こんな楽な狩場ないし、もっと殺した方がPKとしての格が上がるかな~?他の人達はログアウトして逃げたみたいだしな~。」


 あのクソ野郎の声もそのまま聞こえてくる。

 どうやら殺されたのは無駄にならなかったらしい。

 むしろラッキーでした?

 死んでいる最中に意識があるとか、割と初期にしては強力な称号なのかもしれない。

 少なくても、今の状況では喉から手が出るほど欲しかったし、死んだことが無駄になってなくて純粋にうれしい。


「丁度15分後にタイマーセットしてるし、どこにPOPするか分かってる敵をただ倒すだけなんて簡単すぎて飽きてくるよなー。」


 ホント〇そ野郎だった!

 しかも粘着されてた!


 この状態で通報できるのかな・・・?っと脳内スクリーンの文字さんに意識を向けると【可能です。GMコールしますか?】とのこと。GMコールすることもできるだろうけど、なんとか自分の手でも一泡吹かせてやりたいし、死んでる最中にもコールできることが分かったので文字さんには『あとにします』と意識しておいた。文字さんにはこれで通じるようで、【了解しました。】と表記される。文字さん凄いな、文字さん。最終手段が確立されたことで、少し心に余裕ができた気がする。


 さて、残り時間はたったの15分。いや、14分1秒。脳内スクリーンの文字さんの下に黄色のカウントが小さく表示されている。クソ野郎に一泡吹かせると一念発起したものの、現実問題相当難しい。


 まず、あいつの口ぶりだとレベル23から3回殺されて、今の分だけでレベルが上がってないらしいから、アイツの現在は25レベル以上と予想できる。レベル1VSレベル25。装備補正もなし。正気の沙汰じゃないのだけは分かる。殺したりしなくていいから、あいつに一泡吹かせてやりたい。

 まず、あいつのステータスを鑑みるに、あの速さと地面を抉る力の強さ。おそらく自分と同じくSTRとAGIにほとんど2極振りと考えられる。それに武器はなく影変化と影硬質化でおそらく影を武器にしている。影硬質化だけかもしれないけど。つまり、クソ野郎は、「すげー早くて攻撃力が高い割に耐久度が少なく、こちらが先に一撃を与えたら相手が死ぬ可能性もある」ということだ。問題は、『相手よりも速く』というところ。レベル差でただでさえAGIに差が開いているだろうし、スキルも足りていない、熟練度も足りないところに相手より速く攻撃するなら不意打ちしかない。が、現状「不意を打たれてる」状態で、こちらが後攻攻撃。つんでいる・・・。

 寒気がした後殺されてたのは、ユニークスキル『第六感』のせいだろうか?そう考えるとレベル差が25を超えると、さっきみたいに察知できないのかもしれないな・・・。もしくは遠距離だと補正が付くとか?思わぬところでユニークスキルの検証ができてしまった。大変不本意ではあるが・・・。つまり、もう寒気は今回はアテにできないということだ。


 あとは、先ほど考えた『生まれた瞬間影移動で潜る』しかないんだけど、自分まだ生まれたばかりで、このスキルどころか一切のスキルを一回も使ったことがない状態。しかも、このスキル、たとえ相手のバックを取れたとしても肝心の装備がないので攻撃ができない。拳で殴りつけるか、攻撃をかわして落石で潰すか?自分なら多分避けるけど。・・・あー・・・。あと一つ手段を思いついたけど、失敗する可能性が高い割に、相手が生きていて自分の方が死ぬ可能性が高いっていうこの・・・。

 他に何かまともな策はない物か・・・


 ・・・そういえば、あの意味深なイントロから考えるに、影族は闇の中じゃ生きていけないんじゃないのか?あいつ、いつからここにいて、いつ死ぬんだろう?


 あともう一つ気になる事がある。

 キャラメイク時のポップアップを見る限り、影族って「同族殺しが最大の禁忌」じゃなかったっけ?こういう場合どうなるんだろうなぁ・・・。




 ―――――――――――――――――

(6回目)

 収束が高まってきた時点でいつでも影移動を行えるように身構える。とはいえ、体は拡散しているし自由は効かないからほぼ心構えだけだが。影移動のやり方が分からないけれど、影と同化したいと強く願い、先ほどの拡散していた意識と体を参考にする。

 成功します様に、と願いそうになるのを押し殺しながら、ただ願う。


『影と同化するように。体が拡散するように。』


 体が収束しきったと思った瞬間、ふわっと浮き上がる様な感覚がする。いや、浮き上がるというか重力がなくなった?

 何かが切り替わった様な感覚がして、地上に生まれた時とはまた別の感覚が宿る。

 上手くは言えないが、狭い所に入り込んだ感じ。そして視界の端に映る【0:0:30】の赤いカウントダウン。1秒ごとに減っていくから影移動の限界時間なんだろう。

 そして体が鉛の様に重い事に気づく。影移動なのに、これは移動に向かないやんけ・・!それともレベル1だからか?!


 ズッン

 先ほどまで自分がいたところに、あのクソ野郎が突っ込んでくるのがわかる。

 自分の体の内側にあいつがいる。変な感覚。


「あれ!?今ここにいた気がしたんだけど・・・?15分経ったしどうなってるんだ?ログアウト連打でもされたかなぁ。」


 と言いながらきょろきょろする影。

 そう言えば、はじめて間近で見たな、こいつ。俺もこう見えるのか・・・どっからどう見ても棒人間ですね。横から見ても棒人間。


「な~んてね?ひゃはあぁああああwwwww残念でした~俺も影移動とってるもんねーwwww30秒しかできないでしょ?そんなに遠くに移動できないし現れた瞬間死ぬよねwwwwごちそうさまで~すwwwwww」


 HMJKY(ほんと ま★じで く〇やろう)だった。


 奴の腕がひゅんひゅんと鞭の様にしなりながら、広い洞窟の、約半径20メートル前後をカバーして切り裂いていく。時折、当たった岩や床なども切り裂いていく。今から影移動で逃げても、この範囲を抜け出すことはかなわないだろう。そして、影移動の効果時間が切れた途端切り裂かれるという寸法だ。まだ20秒もあるのに精神的苦痛を絶対与えたいというデモンストレーションだろうか。

 とことん相いれない変態である。


 これはもう、一矢報いるには、一番最低な戦法をとるしかないのだが、嫌だなぁ。ここまで来たら死ぬのはいいんだけど、完全に自爆技だから上手くいっても「同族殺しが最大の禁忌」に引っかからないかだけが心配だ。


 だけど―――――


「ほ~らほら、レベル1の初心者くぅうん~wwww早く殺させてよwwwww次の子探しに行かなきゃいけないんだからwwwwさっきからレーダーに反応があってさwww殺したくてしょうがないんだよ?君みたいな雑魚に構ってる暇はないんだからあと15秒もないかな?時間惜しいんだよ?は~~~wwや~~wwwくぅ~www」


 きめた。


 自爆する。


 どっかの誰かが可哀想とかじゃないけど、こいつの思い通りに進むのだけは気に食わない。


 残り 0:0:5秒


「あと5秒きってるんじゃない?まだかな~www」

 ヒュンヒュンと広い空間を奴の腕が切り裂き続けている。

 こいつよく20秒以上も動き続けられるなぁ。VIT(耐久)にも多少は振ったのかなぁと思いながら、準備の為にそっと奴の正面に立つ。

 時間管理能力も凄い。

 ただ、やってる事はど変態だが。

 タイミングは影移動が切れると同時がいいだろう。影移動なのだから影しか通用しない技だと思うけど。


 残り 0:0:1


「ここまで頑張るってことは、不意打ち狙ってるのかなぁ?効かないよぉおおおwwww」


 奴が勢いよく振り返る。丁度俺の正面にくる奴の背中。

 躊躇わずに相手に向けて影移動をしたまま両手を突き出した。


 0:0:0


「ざーんねんでしたー?って・・・あれ・・・・?いない?もしかして気づかぬ間に殺っちゃった?」


 やってません。


 俺の両腕は相手の背後から腹に思惑通りめり込んでいた?上腕辺りがゾクゾクする。寒さが半端ない。

 痛覚はないが、何かに侵食されているような強烈な不快感はあるんだが、〇ソ野郎は死に慣れてないのだろう、痛みを感じない違和感に気づいてないのだろうか。


 ―――ひゃっはぁあwwwwざまぁみろwwwww・・・・・コロスコロスコロ――――


 ・・・あれ?これは何だか精神的に危ない様な・・・



「でも反応はちゃんとここにあるんだよね?」



 MJKYが今までで一番まともな喋り方をしている。もしかして相手にも自分が混ざってる?

 あーこれはなんかバグっているような、システム的にも大変いけない感じが・・・


 ―――ウッヒャオオオオオwwwwwざまぁないで…―――


 ・・・あいつと精神が混ざるなんて仕様だったとしても大変不本意だ。共倒れするのはともかく混ざるのは断固阻止したい。


 腕の寒さを強烈に意識しながら、必死で相手を拒絶するイメージをとる。

 視界の端のウィンドウを意識し、HPを見る。ただでさえ多くないHPが半分近く減っている。が、MPが何故かスリップ(継続ダメージ)している。


「うわぁああwwwwwwwHPがほとんど残ってないwwwwwクッソあいつめどこだ!コロスコロスマジデぶっ―――殺しましょう?」


 結局殺すしか言えないのかこいつ・・・。

 ていうか自分が混ざると「殺しましょう」になるのか。何で疑問形なのか?ちょっと笑えるけど、マジで生理的に気持ち悪い。

 あーでも触覚があるはずなのに、何でこいつ気づかないんだろう?興奮してるから?痛覚がないために死亡に近いダメージは痛覚と共に触覚も無効化されてるのかなぁ?


【精神汚染耐性1レベルを獲得しました】


 空気を読まない文字さんが燦然とスキルの獲得を告げてくれる。

 ていうか、精神汚染ってあるの・・・そうなの・・・。怖いゲームだな。


 ―――コロ――――


 まだ精神汚染耐性足りないです!!!まだ!!!どんどんレベル上げたいです。

 断固阻止!自分は自分!

 もう、この修羅場くぐったら、すっごくレベルとスキル上げて、PKなんかボコボコにしてやるんだと心に深く誓う。

 こんな気持ち悪い


 ―――ロス―――――


 思いはもう沢山~~~~!!!

 断固拒否ぃ~~~~精神汚染耐性さん、はやくぅううう!!


「ぎゃぁあああ俺の腹に【精神汚染耐性2レベルを獲得しました】なんか刺さってるぅう!!!」


 文字さん・・・・。アナウンス被せてきたよ。さすが空気を読まない文字さん・・・。


 ―――……―――

 表層に上がらないが、混ざろうと何かが自分の中で頑張ってるのは分かる。もうちょっとレベルが上がると安心だなとちょっと現実逃避をしていたら、腹から出た自分の腕の先が消失するのが分かる。



「後ろか!クッソ!俺の裏をどうやってかきやがった!」


 裏をかいたっていうか、あんたが勝手に後ろ向いてくれたんだろう。

 まぁきっと後ろ向くかなぁとは思ったが。レベル1だと不意打ちするしかないので。


 今度は腕の付け根の側、MJKY氏と自分の間に衝撃と悪寒が走る。

 本体をあえてはずしたんだろう。悔しいがク〇野郎は腕だけはいい。

 自分と〇ソ野郎が切り離され、バランスを崩して自分は後ろ側に転倒した。

 というか、自分は満身創痍で立ってるのもやっとだ。HPは残り5くらいだが、MPのスリップは減った模様。やっぱりあれは精神汚染によるものだったのか。

 クソ野郎も精神汚染が気持ち悪かったのだろうか。

 自分と大げさなくらい距離を取っている。


「殺す殺す殺す殺す殺す」


「もう何回も殺してるでしょ?」

 つい、ツッコんでしまう。



「俺にやり返すとはとんでもなく不遜な野郎だ。・・・決めた。おまえがキャラデリするまでここで殺し続けてやるよwwwwwひゃはぁああwwwwwwwwwお前みたいな雑魚野郎に俺がここまで構ってやるんだ。光栄に思えよ!!!!」



 その粘着、すでに通報案件で一発退場できる気がするんですが。

【可能です。】と、視界の端の文字さん。


「それでは、その経験値いっただっきま~すwwwwww」


 とりあえず、死んでる間に通報しましょうかね?お金課金してこのゲームしているわけだし、そこまでMJKYに付き合う義理もないし。とボンヤリ思って死をまっていたが・・・いつまでたってもあの寒気を伴う喪失感や体の拡散感?は来なかった。


 ドサッ


 MJKYがおもむろにうつ伏せに倒れる。


 ・・・おや?なんだこれ。

 自分も尻もちついてるけど、あんな顔面から倒れてはいない。まぁ影だから顔といっていいのかは悩ましいが。


「クソ・・・何をしやがった・・・卑怯な・・・」


「いや、あんただけに言われたくないよね?別に何もしてないと思うけど。」


『新たな力に目覚めてしまったようだな!ククク!』


 とかやってみたい気持ちが一瞬したが、恥ずかしいから勿論しなかった。そんなことを真剣にやってしまった日には、ゲームで殺される前に自分の精神が死んでしまう!

 ユニークスキルさんがこちらを見てアップしているような気がする!マジで無理!


 ・・・しかし、どうしたのかなぁこいつ。


 考えられる原因としては①MPが尽きた? ②そろそろ闇の中に居すぎて死ぬ時間 ③実は既に先ほど仕留めていた ④その他の原因 かな・・・?何も解決に放ってないけど、③はないだろうな。①か、②かな・・・?大穴で④も?


「クッこれで勝ったと思うなよ・・・15分後には必ずどこに逃げたって仕留めにもどってやるからな・・・!」


「いや、だから何もしてないし。」


 まぁこの人の腹に穴をあけたのは自分だけど、腕斬られてるから瀕死な所は一緒だけど。しかし、セリフが完全に雑魚のそれなんですが、そこん所はこのMJKYさんはいいんですかねぇ。

 どうやら回復しないで死にそうなセリフを吐いてるから死ぬのかな?


「・・・何でとどめ刺さないんだ?」


「えっ!?とどめ刺してほしいの?」


「・・・ハッ!、お前もゲームでは仲良しこよし気どりか!そんなんだから俺に殺されるんだよ!今ここでとどめを刺さなかったら後悔させてやるんだからなwwwほら!いい人ぶってないで早く殺せよwwww」


 なんだかよく分からない奴だけど・・・メンタルが変な奴だなぁ。あんまり関わらないでおこう。


「いや、別にどうでもいいんだけど、影族って『仲間を殺すのが最大の禁忌』って書かれたけど殺しちゃって大丈夫?」


「えっ!?」


「えっ!?」


 黙りこくるMJKY氏。もしかしてちゃんと影族のポップアップ読んでなかったのか・・・?自分だってキャラメイク早くはなかったけれど、すごく遅いというほどでもなかったはずだ。ここまでレベルを上げているんだから、情報を見落とした可能性はあるだろう。MJKY氏はMJKBYまじでくそばかやろうだったという事か。


「まー殺しちゃったものはしょうがないと思いますけど、自分はそのリスクは犯したくないんで。じゃ。」


 放置していく方向にした。


「ちょっちょっちょっと待って!ちょっと待ってったら!」


 腕を回収できないかなぁ?でも両腕だから諦めるしかないのかなぁ?


「おい!、待てって言ってるだろ?!」


 半分近くがMJKBY氏の腹の中にあるみたいでだいぶ短くなったけど、持つ努力くらいしてみるかな?影移動したらくっつかないかなぁ?あ、まだリキャスト中だ。5分に1回かぁ。長いなぁ。


「待ってください!お願いしますから~!動けないの!」


 短くなった腕を付けててもパンダみたいになるしなぁ。しょうがない。存在力っていうものもあるし、影の厚みが増したら影変化で多分何とかなるだろう・・・?なるはず?そこに期待しますか。それまでどうやって狩りをするのかなぁ?口で?マジか・・・ちょっとカッコいいかな・・・?いや、人に見せられないからアウト?


「・・・俺を見捨ててったら『仲間を殺すのが最大の禁忌』になるだろ?」


「・・・えーーー?」


「やっぱ聞こえてるんじゃねぇかこの野郎!!???俺を見捨ててみろ!運営に通報してやるからな!!!」


 何言ってるんですかねぇこの人は。さっきまで殺せって騒いでたのに。


「だって、あなたを助けたらまた自分殺されるんでしょ?助けなくても再ポップしてまた殺しに来るんでしょ?何もメリットないなら遠く離れるしかないじゃない。」


「いやいや、そこは良い人ぶってるなら助けろよ。そして殺されろ。それが人情ってもんだろう。」


 どんな人情だろ。基地外怖いなぁ。

 ああ、変な人にかかわってしまった。いや、勝手にかかわってきた。外見で区別がつかないし、フレンド登録してないからネームも分からないしホント影族で良かった。いや、影族じゃなければかかわらなかったのか?悩ましい。


「まずさ、どうやって助けるの?君に両腕切り取られたんだけど。回復手段もないよ?生まれてすぐに殺されたからね?出口まで蹴ってく?今の君のHPじゃ一発でしなない?」


「・・・・・・・・・・お前が俺に攻撃するのがわるいんだろ!?」


 そうきましたか。

 世界は俺の思うとおりにならないと許せないパターンか。これはもうどうしたって相いれない人種だ。あまりの超理論に絶句してたら、こちらが痛いところを突かれたとでも思ったのだろうか?影なのにニヤリと笑った気配がした。


「ふん、分かったならすぐに助ければいいんだ!」


 よくここまでお目出たい思考をしているなぁと感心する。やる事が決まった。①無視 ②腕はもうあきらめよう。こいつの側にいると頭が痛くなる ③立ち去ってレベル上げ だな。そうだ、④ブラックリストにもコイツ入れなきゃ。フレンド登録してなくても可能なのかなぁ?そこんところどうですか文字さん?


【可能です。】


 とのこと。文字さんは相変わらず優秀である。空気は読まないが。

 自己完結したことでスッキリしたので、早々に立ち去る事にする。


「お・・・おい、聞いてるのか?何無視してくれてるんだよ?助けられてやるって言ってるんだから早く助けろ!!!」


 うるさいので文字さんBLに入れたいんですがどうしたらいいですか?


【プレイヤーSakuの希望により、任意のプレイヤーをBLに登録いたしました。】

【なお、この情報は任意のプレイヤー側には秘匿されます。】

【今後、任意のプレイヤーからのPKは可能ですが、会話などの情報の交換などは一切遮断されます。】


 とのこと。


「・・・・!・・・・・・・・・・!!!・・・?・・・・!!!」

 何かを叫んでるのは分かるんだが、音は出てるのも分かるのだが日本語というより言葉として完結していない何かにきこえる。逆再生の音声をそのまま不定期にランダムに消失したような・・・?不思議な技術だなぁBL。


「・・・・・・、・・・・!・・・・!!!!・・・・・!」


 なぜか影なのに涙目っぽい雰囲気がわかってしまうMJKBY氏。

 自分は関わらないことにしたので、今後強く生きてほしい。

 両腕があったら合掌しておくところだが、腕は現在ないので心の中で合掌するにとめておく。


 立ち去ろうと思い、後ろを振り返ると強大な何かがあった。


 どうして今まで居ることに気づけなかったのか。



 圧倒的存在感の影―――影族がいる。



 大きいというわけではない。いや、自分たち生まれたての影よりは圧倒的に1.5倍くらいは大きいのだが、そんなことが霞むような圧倒的存在感――――



「そうだぞ。まぁ、俺様も出張ってきたことだし、まぁ待てや。」



 ・・・またなんか変なの現れた~~~!!!!!


【MMO用語?】念のため


  w  =1笑い、wが沢山あるほど笑いが沢山ある。転じて外見から草。外国人的にはlol

リキャスト=次のスキルを発動するまでの補充時間。クールタイム

リスポーン=”PO”。BOではない。ゲームでの死亡からの再復帰のこと

  BL  =ブラックリスト。これに入れられると相手からの接触をシャットダウンする

再ポップ =もしくはリポップ。リスポーンに近いが、モンスター相手に使われることが多い?

 中の人 =中の人などいない!時々運営の人が入ってるとかいないとか

キャラデリ=キャラクターデリート。引退とリセマラのお供

 DPS  =Damage Per Secondの略。一秒あたり、もしくは決められた単位当たりの瞬間火力の数値

 粘着  =荒らしやストーカーと似たもの。ゲームでは利用規約違反に触れる場合が多い。

      度を超えると犯罪としてカウントされる。


10/7 ルビの乱れ修正

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 精神苦痛耐性を得るまでリス待ち15分も意識が無く、ログアウトすらできないのは販売禁止になりそうな仕様…せめてリス中はキャラ操作不能、視界暗転くらいで、精神苦痛耐性があればリス中も周囲の…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ