2-67 七月最後の日
あれから、宿屋に戻ってのんびり過ごす。
でも、窓は少し開けておく。
自分がログアウトする前に、兎君が戻ってきてくれるといいのだけれども。
時間的にはログアウト2時間前と言ったところ。微妙な時間帯である。
少し堅くてゴワゴワするけれど、お日様の匂いがして気持ちいベッドにゴロンと横になる。
まずは、ステータスチェックといこう。
【ステータス】
キャラクターネーム:Saku
種族:影族
性別:不明
身長170cm
職業:戦士 Lv23
(能力値)
HP 80/MP 37
STR 62
VIT 19
DEX 19
AGI 54
INT 14
MID 13
ONT 34
LUK 10
(スキル)
《種族スキル》 闇視+
《ノーマルスキル》未使用SP 10
[武術系スキル]
剣術 Lv.8/体術 Lv.6/回避 Lv.9/剣術受け Lv.6/気配察知 Lv.6/気配希釈 Lv.2/スキル手加減 Lv.2/軽業 Lv.1
[技系スキル]
影纏 Lv.2/魔力感知 Lv.3
[回復系スキル]
HP自然回復 Lv.4/PNT自然回復 Lv.3
[種族系スキル]
影移動 Lv.4/影変化 Lv.4/影硬質化 Lv.3/影踏 Lv.2/影質量増加 Lv.1
[肉体耐性系スキル]
毒耐性 Lv.1
[精神耐性系スキル]
精神苦痛耐性 Lv.3/精神汚染耐性 Lv.7
[一般系スキル]
大陸公用語 Lv.14/方向感覚 Lv.3/模写 Lv.2
《ユニークスキル》
主人公体質 第六感 時折目が疼く
(称号)
苦痛に耐えるもの/ユイベルトのお気に入り/ロードランナー/世界の果てにたどり着いたもの/世界の裏を見たもの/観測者/ユトゥスシーレイの守護/スキルを作りしもの
(加護)
月神セレネーツァの加護
(だいじなもの)
神器 ユイベルトの指輪
なんか、色々微妙に上がってるよね?
そして、軽業が生えてる!
やったー!!!でもこれ伸ばしていきたいよね。Lv.1じゃ全然足りない。何すればスキル上がるかなぁ?山を走り回る感じ?
種族スキルはあんまりだけれども、精神汚染耐性が結構あがってないですかね・・・?やはり先ほどの出来事が影響しているのでしょうか?当事者としては微妙なところです。
あれ?でも当事者なのか?あれ?
ユニークスキル主人公属性さんが、トラブルをわんこそば張りに盛ってくるので、よくわからない状況なんだよね。混乱している間に、次のがくるというか。
もう自分お腹いっぱいですよ?ここらで地味にスキル上げ週間とかにしたいんですがどうですかね・・・?
あとは武術系がちょとずつ全体的にあがってるかな?多分ディラシスのせいだろう。あれは酷かった・・・ホント酷かった・・・。でもまぁ苦労した甲斐があるというものである。
もっと強くなりたいと思う。
現実でも、ファルディアでも。
何より強くなりたいのは心だけれども――――心を強くするために、自信を持つために体を鍛えるのも悪くないとも思う。
とりあえず、目の前の事を一歩一歩進みたいのに、トラブルが多すぎて訳の分からないうちに巻き込まれて、訳の分からないうちに酷い目にあってたり、突然助けられたり、自分があずかり知らぬところで完了してたり。
世の中儘ならないと思うけれども、なんかここにきてトラブルが酷いなぁと思ったりもするけれど。
でも。
それでも、憎めないこの世界。
不思議なものである。
見た事が無いものが沢山あって、ワクワクする。
脳の使っていないところが開かれていく感じがする。
体の使っていない部分も覚醒していくような。
そんな気もするのだけれども―――――――。
”アイツ”が作ったのでなければ、もっと純粋に楽しめるのにな。そう思ったりもする。
・・・。
いかん、考えると憂鬱になってくるので、頭から先ほどの考えを追い出す。
とりあえず、スキル上げメインでどっかに行きたいって感じだな。
特に回避、魔力感知、後命中の確保のためにもう少し剣術を上げたい。
ティラ君を見ていて気付いたんだけど、攻撃精度が全然違うんだよね。
まぁ、あっちはDEX重視で細かい仕事が基本だとは思うんだけれども、こちらとしてももう少し精度があった方がよりクリティカルが狙えそうな気がするというか、うん、人体の構造的に弱い部分を狙い撃ちできそうな・・・。
・・・あれ?そうすると図書館とかで生態学とか魔獣知識とか仕入れるべき?
無いよりはあった方がいいと思うけれど、煩雑になるというか横に広がりすぎるというか。
普通のゲームなら余計なものはなるべく減らした方が、とんがって強いキャラになりやすいんですがね。
ファルディアでソロで強くしようと考えた場合、余計なステータスというか知識とか器用度とか体力とかそういうのが気になってしまう。
実際そっちのステータスも上がっちゃっているしね。
最低限確保して後は全部STRに振ってしまう方が従来のゲームとしては強いのだと思うのだけれども、それだけで割り切れない何かがある。
それに・・・・・。
それに、自分としても、VRでただモンスターを狩りたいからとか、誰かプレイヤーと戦いたいからゲームをやっているわけじゃない。
どちらかと言えば、見た事もないものを見たり、思っても無い様な出来事に会うのは好きだし、限られたルールの中で自分で勝利方法を考えるのも好きだ。
幸い、今のところは何とかやっているわけだし、とりあえずこのままでいいか。どうしようもならないだろうし。
きっとこの先、効率を追い求めてる攻略組やアクティスとの差は大きく開いていくだろうけれども、自分のペースで遊んでいきたいなって思う。
でも、パッチ間際になったら縮まるかな?・・・そういえばファルディアは何処まで実装されてるんだろう?パッチっていつ来るのかな?まだ全然遊びつくしてないけれど、カンストは何処だろ?やっぱり初級ジョブなのかなー。
などと余計な事をツラツラと考えながらも。
とりあえず、今後の成長方針を改めて自分の中で決めたのでスッキリした。
実際にやる事と言えば、お爺さんとの約束以外は決まっていない。
が、明日は丸一日フリーなので、スキル上げをメインにやろうと思う。
あと少し懐に余裕が出来たとしてもお金が無いので、ついでに狩りもしながら。
そして今日の分の残り時間は、あの本を読んで大陸公用語の復習する。
本が面白くて暫く熱中していたが、ふと兎君の為にあけた窓から、少し冷えた風と、誰かの歌声が乗ってくる事に気づく。
ファルディア時間で0時近く。
こんな遅い時間に誰かが歌ってる?
本当に遠くて微かな歌声だけれども、何か胸をくすぐられるような、不思議な感じがする。
その後も、歌を気にしない様にして本を読んで勉強を続ける。
歌は暫くすると聞こえなくなった。
大陸言語のレベルが16になったところで時間が近かったのでログアウト。
兎君は、結局、その日帰ってこなかった。
――――――――――――――――――
翌朝、日曜日。
7月最後の日だ。
この日は内田は朝からちゃんと起きていた。
「カヅキ!おはよう!」
「・・・オハヨ。」
朝の五時半から内田が起きてるのも異様だし、不気味だ。
そしてニコニコと妙に爽やかである。
これは、何だろうね?やましい事でもあるのでしょうか?
どうやら内田は生活スタイルがずれにずれて、とうとう一周して正常に戻ったらしい。
そして、ちょっとログイン時間制限が危ないのと、固定が13時からという事で今日はうちの手伝いなどを午前中にしようという腹らしい。
うーん?まぁいっか。どうでも。
内田もきっと今日の固定をすれば家に帰るだろう。
多分。
そろそろ帰らないと里美おばさんに怒られるはずだ。
帰らなくても怒られるだろうけど、最終手段「おかんのゲーム没収」は避けたいはずである。
まぁ・・・。
内田がゲーム没収されても、自分は困らないし?
多少変な目を内田に投げかけながら、まぁ、したい様にさせることにする。
朝の日課の水やりなど面白そうに付け回され、朝のランニングも何かついてきた。
途中で近所のおばちゃんからお菓子を貰っていた。6時くらいなのに謎だ・・・。
相変わらずのマダムキラーぶりである。
その力を里美おばさんに発揮すればいいのに、何故かあそこはいつも喧嘩している。
そして自分は毎日ランニングをしているのに、内田は平然と自分のペースについてきた。
内田も運動なんか全然していない様に見えるのに。
ちょっと悔しい。くそうぅ・・・。
ランニングが終わって内田と交代で風呂に入ったりする。
「あんれ!ダイスケこんな朝から精がでるな!」
と朝から内田を見かけて、ばぁちゃんが爆笑している。
「俺はやればできる男なんだよ!ばぁちゃん!」
「そうだなぁ。でも、もう少し早く言ってくれたら、ダイスケの好きなご飯作ってやれたんだがなぁ。」
質素を好んでしまう二人です。思わず少し目を泳がせてしまう。
「大丈夫!いつもは朝飯食わないから!でも、あればなんか食いたい!」
「昨日の里美さんメニューがあるぞ。」
「わーーい!!!」
昨日の余ったスペインオムレツが出てくる。
あと、ゴーヤの漬物とヒジキの煮物は自分たちの所。最後のタラモサラダは内田に回された。
「やっほい!」
とご満悦で喜んでいる。
「ばぁちゃん~、俺最近、沢山ご飯食わせてもらったから、なんかお礼するー。午前中だけどなんか仕事ない?」
と、内田。
「ダイスケの仕事なぁ。・・・もうすぐ施餓鬼があるから、仏壇掃除せにゃならんから、その掃除をたのめるか?」
「おっけー!俺もじぃちゃんには気持ちよく過ごしてほしいし!」
「じいちゃんの3周忌法要は終わったけれど、命日が近いから誰かしらお盆にくるだろうしな。」
「責任重大だなぁ。」
去年も何人か来てくれた。去年よりは少ないだろうけれど、気が抜けない。
「ああ、ばぁちゃん。お盆にうちが行かなきゃいけない所、覚えてる?」
と、聞いてみる。うちに来てもらうからには、こちらも勿論行かなきゃいけない。
ただ、うちは車が無いのはみんな分かってるので、誰かに便乗させてもらったり、行ける所なら自分がいってしまおうといった感じだ。
なるべくスムーズにめぐる為に事前の調整が欠かせない。
夏休みだけれど8月はお盆があるからちょっと気が抜けないなぁ。
やはり先に宿題をやっておいて正解だな。
「うち、お盆ないわー。」
「内田のところはなぁ。」
まず、田舎がここじゃないみたいだしな。
「ダイスケの父ちゃんちには帰らないんか?」
と、ばぁちゃん。里美おばさん所は実家と疎遠らしいしね。
「しらないー。でも父ちゃんも母ちゃんも今年は仕事が忙しい!って言ってたー。」
「あんれまぁ。」
色々大変だなぁ。
そんなこんなで、ばぁちゃんと自分がお盆に回る家リストを作っている間、内田はどっすんばったんと掃除をしている。蝋を取るのが大変だったりするけど、もっと嫌なのが・・・。
「ギャッ!ゴ〇ブリ!」
食べ物置くし、アイツたまにそこに住み着くんだよねぇ・・・静かだし。
こまめに代えてはいるんだけど、裏の裏ってなるとたまに住んでたりするから掃除は大切だ。
何たって古い家だし、よその家にいたのが隙間から入ってきたり、虫が入ってきたり、凄いと野生動物が入ってきたり、なかなか外からの攻撃が多い。
あまり気にしていてても仕方ないのだけれども。
内田が掃除を終えるころには、大体こちらも終わっていた。
お坊さんに来てもらう日も確認しておいたし、卒塔婆貰う日も確認したし、盆に来てくれた人に配る返礼品も昨日手配済みだし、あとは盆前に仏花とお供えを買いに行ってお墓掃除して・・・?あとは大丈夫かな・・・?
盆に回らなきゃいけないリストは居間に張っておいて、ばぁちゃんがちょっとずつスケジュールを埋める予定。埋まらなかったところは、こちらから誰かに電話して確認!といった感じだな。まだ時間あるしこれでいいや。
「ダイスケ―昼も食ってくんじゃろー。何がいいねー?」
「カレー――――――!!!」
「まじか。」
こいつ、マジか。
「ばーちゃんはいらん。」
「自分も。」
そんなの食べたら、このクソ暑いのに確実に胸やけがする。
だが、ばーちゃんの冷凍庫ストックにはカレーがあったので、内田だけご飯はカレーになった。ついでに目玉焼きもつけてやるばーちゃんが優しい。
ばーちゃんと自分は蕎麦にした。
あと、少しほうれん草のお浸し。あー・・・。しみる。
少し早めのご飯だったけれど、蕎麦と同じくらいの速さで内田は大盛カレーを完食した。
もはや何の生き物か分からない。
もしかして内田は人間ではなくブラックホールか何かで出来ているのではないだろうか?
そんな疑惑を持ってしまう。
内田は「もう一度風呂入りたいー!」と叫びながら、クーラーの前においた扇風機の前にへばりついている。・・・アツアツのカレー食ったしな。
ちゃんと皿も洗って、12時45分くらいになったら上へ戻る。
ばぁちゃんは疲れたのでお昼寝するそう。
「カヅキはレベル上がった~!?」
と、内田が聞いてくる。
「まだ。全然上げてない。ずっと寝てたし。NMやったからそれで1上がっただけかな・・・?」
「ウッハwさらりと怖い事言った!え?カヅキ一人でやったの?」
「野良の人と二人かな?死ぬかと思ったけど、ギリギリで何とか。」
「ちなみに、獲物は?」
「ディラシス?」
「馬鹿じゃないのwww」
内田に笑われる。
あれは20レベルフルパーティーで、何組も壊滅してるところもあるそうだ。
最後の無敵がなぁ。
「道理でギルドで粘着されるわけですね・・・。」
「されたのか。」
「されたけど、相手が勝手に騒いで、勝手に捕まっていなくなった。」
「相変わらず、わけわからない事してるな。」
内田ほどじゃないと思うよね・・・?多分そう、多分。
効率を求めてないだけでね。
「まぁうちは5人で19の時に倒したけどね~♪」
だ、そうです。
流石ハイヒトPTは格が違いますね。
「そういえば、固定のメンバーそろったの?」
「あー・・・。」
何だその微妙な感じ。
「揃ったはそろった。ちょっと・・・だいぶ変わってる?人・・・だけど、うん。やってけるか不安だけれど。」
「内田が不安って相当気が合わないか、相当やな奴では?」
「嫌な奴ではないと思うけれど、相当気が合わないというか・・・変?」
「それは内田より変って事?」
「さりげなく失礼な。」
内田はこんなおバカキャラだけど、意外と人を見てるし、意外と気を使ったりして空気を読んだりする。内田が苦手っていうのは、完全に空気を読まないで暴走し続けるタイプとか、常にマウントを取りたがる人間とか。今回は暴走タイプなのかな。
まぁ『内田が苦手』っていう人も多いよな。嫌いっていう人はあまりいないけれども。
「それは見てみたい様な、見たくない様な。」
「二人いるけれど、ヒーラーがマッドサイエンティストで、シーフが無口かな。」
「マッドサイエンティストって、ファンタジーで出てくる言葉じゃないよね?」
自分が会ったら解剖される気配を感じる。
当分会わないでおこう、と心に決める。
「まぁ自分もまず相手の間合いになれる事かなー。腕はいいよ。今からでも尊敬できる。」
「内田の所はそれが基準だろうしね。」
腕第一、信用2番、最後に人間性といったとこか。
「ヒールかけるとウットリとした表情を浮かべてるけど、凄く上手・・・。シーフも喋らないけど上手。」
「とりあえず、近づかないでおきますね。」
ヒールかけてウットリって何なの・・・・。
どこに恍惚となる要素があるの?
自分にはまだ知らない世界がある様である。
「とりあえず、俺は6時間ログインさせてもらう!」
「うぃ。行ってらっしゃい。」
「またなー。」
そう言ってお互いログインして別れた。




