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ふぁるでぃあにっき。  作者: コミヤマミサキ
7月 ~ファルディアと日常~
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2-57 宵藍の散歩 4

「そういえば、まだ兎君にお礼を言っていませんでした。」


 ひとしきり謎の遊びをティラ君として満足したのだろうか?

 兎君は、はみはみとその辺の草を食べ始めていた。

 エサ代がかからずコスパまでよろしいスーパー兎である。

 ちなみに、ティラ君も多分採集だろう。その辺の草を集めている。大変自由である。


「きゅ?」


 草を食みながら首をかしげる兎君。

 正直兎君が何で助けてくれたのかとか、何を考えてるのかとか全く分からないけれど。

 でも、助けてくれた結果は間違いない。

 そして、多分見えてないところでも助けてもらってる。あのクソ鳥の時とか。


「いつも、助けてくれてありがとうございます。」


 しゃがんでそっと兎君の頭のあたりをなでる。


「きゅっ!」

 と、返事をしてくれる兎君。

 じっとしてて、目を細めてるので、多分嫌がってない・・・はず?


 ひとしきり兎君を撫でさせてもらい、一息つく。

 あんなに山あり谷あり兎あり暗殺者ありだったのに、まだログインしてから3時間くらいしか経っていない。スキル主人公属性の、トラブルに対する執念を感じる。


 まぁ、お助けキャラというか兎が来てくれてはいますが。


「サク、まだいる?」


 その辺の採集が終わったのだろか。いつの間にか戻ってきたティラ君に、そう聞かれる。

 何かまだやりたい事とかあるのかな?

 兎君は何かに満足したのか大人しくなり、地面で丸まってウトウトしてる。いつもより、より丸くてかわいい。


「まだファルディアに3時間くらいはいますかねぇ。アポリアには朝の6時位には戻ってきたいですが。」


 6時じゃなくてもいいんだけど、PNTが心もとないからベッドの上でログアウトしたい。


「舎弟に、こっそり教えちゃう。」

「誰が舎弟だ。」

 しかし自分のツッコミを無視して、ティラ君は話を続ける。

「西いく。何があるか、知ってる?」


「アポリアは来たばかりだから知らないですね。」

 今ちょうど探検してたところですしね。


「西は、砂漠がある。」

 そんな近くに砂漠があるんですか。

 ほうほうと頷いてると、ティラ君は続けて言う。


「別名、死の砂漠。」

「こわ。」

「そこへ、行こう。」

「オイコラ。」


 PKじゃなくてMPKの香り?!

 いきなり殺しにかかるの!?


「夜、サソリとか、サソリとか、サソリとか危ない。あと蟻。」

 蟻には嫌な思い出ばかりだなぁ。

「その毒消しで、サソリ毒受けると、毒耐性が生える。」

「おお・・・。」

 これはいい情報過ぎた。

「かも?」

「感動を返して。」

「分からない。種族差、ある。」

 まぁそうですね。そう言うからにはティラ君はやったんでしょうね。小人は何気に頑丈そうに見えますしね。そして影族でひょいひょいとこの辺を歩き回ってるのが、今の所自分だけでしょうしね?

 これは試してみる価値はあるかなぁ?


「そんなこと、教えてくれていいんですか?」

 未発見情報なら利用しようとしたり、勝手に掲示板に書いたりするかもしれませんよ?


「ん?矢のお礼?」

「お礼にしてはオーバーな気もしますが。」

 まぁどれくらい知られてるかにもよって変わりますが。


「あと、毒で苦しむ舎弟、見たい。」

「感動を返して?」


 こわっ。黒小人こわっ。


「半分冗談。その毒消し、私、作った。影族にどう作用するか、みたい。」

「なるほど薬士ですか。」

「ありあまるDEXで、今始まる世界征服・・・。」

「どうやって?」

 何となくティラ君の言動が分かってきましたが、真顔で大体ジョークを言うんだよね。

 ジョークじゃないこともあるけれども。


「あとは、毒で苦しんでる間、暇だから、蟻をあてる。」

「・・・はぁ?!?」

「あり、小さい。でもいっぱいいる。微妙にレベル、高い。」

「死ぬパターンじゃなく?」

「死ぬことは少ない。でも痛い。」

「ドS過ぎでしょ・・・。」


 これは、あれか。アクティスがやりそうなパターンだ。

 効率のためなら、手段が厭わな過ぎってやつ。


「効率も重視した、暗殺者の遊び・・・。」

「あんた、廃業したじゃないですか。」


 まぁ、特にやる事もないし探検の意味合いも強いので、物見遊山で行ってみることにする。


 兎君は眠そうなので、そっと抱っこ。

 すぴすぴ言って腕の中で寝ている。かわいい。そして、かわいいオブ可愛い。


 空はまだ暗いがあと1時間もすれば段々明るくなってきそうな気もする。でも日本より緯度が高いならもっと早いのか?


 てくてくとティラ君と二人でアポリアの南側から西側の方に歩いていく。

 道中ティラ君が何か拾ったり拾ったり拾ったりちょこまかと忙しい。効率厨なのか。そして歩いていると小20分くらいですぐに砂漠が見えてくる。意外と近いな。といっても、遠くの方に海も見えるので、元々小さな砂漠みたいだけれども、西の方にはまだずっと続いている。

 砂漠と言うよりはデカい砂浜みたいな印象を受ける。

 もしくは巨大砂丘?


「ついた。」

 と、ティラ君がいう。

「サソリは見えませんねー。」

 そうすると、ティラ君が砂漠の一点を指さす。

 なんか、真ん中に線とボツボツと跡がついてる。

 下手糞な海ぶどうの絵みたいな感じだけど・・・。もしかして。

「これ、サソリの足跡。」


 結構色んな所にこの模様がある。

 それだけいるのか・・・。


「あと、月が出てる。」

「月?」

 まぁ三日月くらいのは出ているけれども、明るいから見つけやすいとかかな。


「何か知らないけど、サソリ、月光で光る。」

「ふえぇっ!?」

 そうなの!?本当に?と思って砂漠を目を凝らして見る。

 すると、凄くピカ―と光ってるわけではないけれど、白い目立つ石か何かかと思ってたアレ、よく見たらサソリか!・・・こうなんだろう?暗い部屋とかで紫外線ライトを当てて光ってるような感じだから・・・蛍光してるのかな、アレ。


 そして、サソリは魔物にしては物凄く小さかった。つい見落としてしまったけれども。普通のサソリサイズ?いや、そんなサソリのサイズ感にも詳しくないけれど、ファンタジーのサソリっていうと、こう・・・大型犬くらいのイメージでしたが、実際のサソリは15cm程でした。


「じゃあ刺されてみようか。」

「お前は鬼か。」


 ちょっと嫌だなぁ・・・でもせっかく来たので、そっとサソリに近づき、ツンツンとつついてみる。するとサソリは怒ってこちらをブスッと刺してきた。


 普通に痛い。


 そして現実にはないんだろうけど、すぐに毒状態になって気持ち悪くなる。

 世界が回る。

 吐き気がする。

 立っていられない。

 砂浜に倒れる。

 サソリはひとしきり自分を刺した後、砂漠に逃げていった。

 なに、この毒・・・?



「知っているか?」

 唐突にティラ君が自分を見下ろして喋り出す。

「なに・・を?」


 大変億劫で、上手くしゃべれません。

 ていうか、気持ち悪いです。


「サソリは1700種類以上、地球にいる。だが、致命的な毒をもつのは、たった25種類。」

 ・・・そう。それで?

「でも、弱い毒でも、2回刺すとアナフィラキシー起こす、もいる。」

 こわっ。

「影族、血がない。何で毒効く?」

 うーんと不可解そうな顔をしてこちらを観察してるティラ君。

 影族は確かに血とか内臓がないよねぇ。そう考えると、麻痺毒とか神経毒とか溶血毒とか効かない気がするんだけど、今の所サソリ毒は効いている。

 そもそもこれ何毒か知らないけど。


「ファルディアのサソリ、魔力とかにも作用してる?」

 今度は反対側に首をかしげてうーんとしている。

 何気にサソリ毒はHPがスリップして既にHP3分の1くらい減っているんですが、これどれくらい続くの?このままだと死なない?

 ていうか、毒消し薬出せる気がしない・・・。


「とりあえず、HPが50%きる手前で、毒消し薬つかう。」

 自分では使えない気もするのですが・・・

 返事をしなかったら目の前で手を振られた。


「・・・?私の時より効いてる?変。」

 変なのはこんなドSな手段を平気で取るあんたですよ、と思いながらも上手くしゃべれない。


 そういえば、兎君はどうしたんだろうと思って、ふと目線だけ動かしてみると、砂漠でじっとしてる。


 じっ。


 じっ・・・。



 ・・・な、なにしてるんだろう。


 暫く見てると、ババババババっと砂を凄い勢いで掘り出す。

 後ろにいたティラ君に、もろに砂がかかっているが。


「ギャッ!」


 ティラ君ざまぁ。

 と、ちょっと本音が出てしまう。

 もっとも自分にも少し砂はかかっているのだが。


 兎は砂浴びをするのかなぁ?学校で狩っていた兎は砂浴びをするところを見た事はないけれども、穴の中に住んでる生き物だったよね?穴を掘るのは大変好きそうである。

 きっと、砂も好きな事だろう。


 などと兎観察をしていたら、ティラ君が砂をぺっぺと吐きながら毒消し薬をジャボジャボと自分に振りかけてくれる。


 これで治るのも大概ファンタジーだな・・・と思いながらも体がスッと軽くなる。


 HPのスリップも止まり、ギリギリ50%ちょい上を保っている。


「これが1セット。」

「死ぬかと思った・・・。・・・スキルが生えるまでは?」

「ティラの場合は7セットくらい?その間蟻に体を這わして回避とか上げてた。」

「怖い。」


 ホント効率厨怖い。

 自分耐久ないのにそこまでしたいとは思わないんですが・・・。


 ・・・だが、何の得も(観察以外は)なさそうなのに、情報を開示し、自分に付き合ってくれるティラ君は頭おかしいけどいい奴・・・なのか?単純にいい奴と認めることに非常な抵抗を感じるが。


 それくらいならスキルリストには出てきているもので取ればいいのにって思ったけど、見たら取得ポイントが4SPだった。他に欲しいスキルはいっぱいあるし、自然に生えるなら自然にスキル生えたほうが断然得だ・・・!クッ。

 ・・・よく考えたら、この生活続けてたら軽業も生えるんじゃないかなぁ?

 攻撃と回避と素早さ重視アタッカー生活。

 ・・・でもそもそもその生活を充実させるためのスキルだった。卵とニワトリどちらが先かみたいになってしまっている。

 アルシオン帰ったらジャンプ祭りとか反復横跳び祭りとか、・・・むしろパルクールみたいな方がいい?DEXが足りなくて怪我をしないかが心配だけど。何かひとしきり自分もスキル上げの努力をしてみようかとは思う。


「とりあえず、毒消し薬使わせてしまった分、1瓶返します・・・。と言うか足りなくなりそうなんですが、どこで売ってます?」

 はぁ、とため息をついてティラ君に言う。


「今の、おまけでいい。これティラの手作り。売ってない。」

「うわぁ。おいくらです?」

「ん・・・?末端価格1000Fくらい?でもあまり売れない。解毒薬の方が人気。」

 ん?そういえば自分がアクティスに買わされたのも解毒薬だったような。

「何が違うんです?」

「何が違うんだろ?」


 おい。


「【毒消し薬(死の砂漠のサソリ)】って鑑定出てる。多分、サソリ毒だけに効きがいい?」

 ていうか、鑑定持ってるのか。いいなぁ。

「ああ、なるほど。特効薬的な。」

「正直、解毒薬、気持ち悪い。」

 ん?どういうことだろ。

「風邪でも、毒でも、種類ある。何でも効く、おかしい。」

 まぁ確かにねぇ・・・。


「薬の師匠に聞いた。解毒薬は魔力で強制的に体を活性化させて排毒してる。しかも、弱い毒しか効かない。今後、見もの。」


「それを誰かに言ったりは・・・。」

「した。だけど、『嘘乙』とか、『薬士の陰謀』とか言われた。あと、『嘘つき野郎』とか。」


 うーん。喋るまで一呼吸かかりそうなティラ君が言ったならちゃんと聴かないで、早合点する人もいそうだ。ましてやティラ君は元暗殺者。誰も話を聞かないのかもしれない。


「信じない、自由。そうなったとき、毒消し儲かる。」

 あと、毒によってレシピ違うから大変、とケッケッケと無表情なのに気味悪く笑うティラ君。あ、暗黒面だ・・・。


「舎弟は舎弟だし、今日はタダでいい。代わりにサソリ捕まえる、手伝って。」

 ああ、原材料がサソリなんですね・・・。生々しい。


「たまわりました。しかし、そんな事を言いだすと、ポーションもヒールも気持ち悪くならないですか?」

 傷口が急に治るとか変じゃないですか~?SFで後で細胞分裂の限界を超えて死ぬクローンとかで見た気がしますよ、そういうの。


「そんな事言うと、魔法、気持ち悪い。この世界、気持ち悪い。」


 え?そんな壮大な話?ていうか、そうなってくるとファルディアとかRPG向いてないんじゃ。


「気づかない?」


 え?何が。


「気づいてない、ならいい。」


 訳が分からないけれど、ティラ君はそれ以上言う気はないようなので、今の話題は頭から一回追い出すことにした。分からない事は憶測を呼ぶので、そのまま保留するに限る。


 HP自然回復と休んでいた事によりHPは8割くらいまで回復したが、時間がもったいないので、10割にもどるまでサソリ捕獲を手伝う。といっても、ナイフで刺し、ドロップのサソリとかサソリの尾っぽとかをティラ君に渡す。終わり。みたいな単純な作業だが、サソリは結構素早い。DEXが高いティラ君は余裕で捕まえるが、不器用な影族には向いてない作業かも。

 だが、AGIに物を言わせて巻き込み攻撃で屠っていく。

 30匹ほど捕まえる・・・?倒していると言った方が正解だ。

 HPが10割になったらサソリ毒を受けて転がる。

 その間ティラ君はサソリを捕獲する。たまに兎君も手伝うみたいな流れ。


 これを3セットくらい繰り返したら、スキル毒耐性を獲得した。やったね!意外と小人より早かった!しかし、これ、サソリ毒だけなのかなぁ?それともレベルが上がると毒の種類も増えるという概念でよろしいのかなぁ?


「ずるい・・・。」

 と小人が涙目になってる。

 いや、たまたまかもしれないじゃないですか?


「でも、毒の効きがティラよりよかった。そのせいかも。」と本人が分析をしていた。


「蟻どうする?」

 と、ティラ君が小首をかしげて聞いてくる。

 ティラ君の時は毒に慣れてきて少し動く余裕が出来たころに、蟻塚を壊して噛み付かれる仕事をしていたそうだ。

 だからぁ・・・・。


「い、一応見てみますか・・・。」


 大変に気は進まないのだが、蟻塚もこの近くだというので見に行く。

 しばらく歩くと、みたこともない不自然な砂山が幾つも見える。


「あれ、蟻塚。」


 なんかもわ~っと気体が出てる気がしますが。

 どうも、ソルジャーアントの一件から蟻は苦手だ。

 いや、ただまだ勝てないからなのかもしれないけれども。


「じゃあ、蟻塚の近くによる。」

 と、半ば無理やり蟻塚の側に立たされる。

 ううう怖いなぁ。


「で、蟻塚を壊す。」

 手持ちの石を思いっきり投げ、ドゴォと蟻塚を破壊するティラ君。

 蟻塚の壊し方が手馴れすぎてる。

 蟻に集られるのを覚悟したが、蟻は思ったよりも速いスピードでティラ君の方に走っていく。

 大きさは普通の蟻に近い。リアルのその辺りで見る蟻よりも少し大きいくらいだ。



「なんで!?」



 蟻とティラ君との追いかけっこが始まる。

 あー・・・。

 蟻は臭覚に敏感だし、石投げたのティラ君だし、もしかしたら頻繁に巣を壊していたなら覚えてしまったのかもしれないですね・・・?


「きゅ?」

 砂浴び?穴掘り?に飽きたのか、兎君がいつの間にか自分の頭に納まっていた。

 自分にも蟻が数匹来ているが、じっとしていたら特に面白げもないのか去っていった。3,4回噛まれたけれども。


 やっぱりこれはMPKだなって思ってたらアポリア王国の方角の空が白んできた。

 時計を見ると5時半くらい。


 そろそろログアウトの時間だなぁ。



 ・・・追いかけっこ、いつ終わるかなぁ?

編集中に間違って一回投稿してしまいました。申し訳ありません。


MPK・・・モンスタープレイヤーキラー。モンスターモブを使ってうまい事プレイヤーを仕留める事。事故でもありうる状況であり、故意かどうかが肝になる。まぁ故意でも事故でもマナー違反ではあるが。


パルクール・・・危険なエクストリームスポーツ。もしくは動作鍛錬。走る・跳ぶ・登るといった移動所作で街中などを飛んだり跳ねたり飛び降りたりして、一人障害物競争みたいな感じになって動画を上げるあれである。

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