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ふぁるでぃあにっき。  作者: コミヤマミサキ
7月 ~ファルディアと日常~
55/444

2-54 宵藍の散歩 1

 今日も5時半の目覚ましで起床。


 そして、今日もアホみたいな暑さになりそうな予感。

 とりあえず、朝から布団やらを干し、日課のランニング。軽めの朝食。


 内田がうちに逃げてくるかもしれないので、今日は朝に勉強しようと決めてある。

 ばーちゃんも笑いながら、いつもより多めにオカズを色々作っている。



 今日も、ひたすらカリカリと勉強。


 ・・・。

 もうすぐ夏休みの宿題、ワーク系終わりそうなんだけど内田に言ったらまた叫びそうだな。


 実に楽しみである。


 でもどうせなら大ダメージを与えるために、全て終わってから言おう。


 後、読書系とか論文系とか。時間がかかるのが多いけれどもね。




 そんな感じで午前が過ぎ、12時過ぎ。

 ばーちゃんと昼食にソーメンを食べていると、


 ガラガラバーン!

「たのもー!!!」


 と玄関を勢いよく開けて内田の声が聞こえる。

 たのもーってなんだ。道場破りか。


「あんれ、ダイスケー!昼食ソーメンだけど食うかー!?」

 と全く動じないばーちゃん。

 ちなみにそのソーメン、この前特売で買った一束298円のいい奴です。


「食う~~~~!!!!」

 靴を脱ぎながら大声で玄関から答える内田。


 嬉しそうに居間に入ってきた内田を見て

「ばーちゃんの予想通りか。」

 って言ったら


「えっ!?マジで!?」

 と内田が言う。


「朝から内田が来るだろうと、やたら料理してたからなぁ。」

「まぁ、カヅキんちで飯食う事多いし?」

 って言われた。そう言われればそうですね?まぁそうか。いつもの事だった。


 内田にはソーメンの他に大葉のみそ包み揚げやら、だし巻き卵やら、貝と青菜の酢味噌和えなど、やたらオカズが追加されているのが笑える。一番笑ったのがハンバーグだ。脈絡もなくハンバーグ。小さい奴だけど、ソーメンとハンバーグって変じゃない?本人は喜んでいるけれども。


「生きててよかったー!」


 そんなにか。

 ばーちゃんは内田の相変わらずの様子をみて笑ってる。


「ダイスケは今日もファルディアをやるけ?」

「やるやる~。やっちゃう~。でも今からは寝る。」

 寝るのか。

「だってあっちは夜だもん。寝ないとデバブついちゃうし。」

 そう、本人も体調が悪いと強制ログアウトされちゃうしね。


「内田はゲームをやりすぎて、昨日寝てないんだってさ。」

 と、ばーちゃんに通訳をしてあげる。


「バカだなぁダイスケは。」

 ばーちゃんも呆れてるが、やっぱり笑っている。

「だってー、あっちと時間がずれるから明るいうちに色々しておきたいじゃん?」

 そういえば、今からはあっちは夜か。まぁ影族だからあまり関係ないかもしれないけれども。


「ゲームも色々大変なんだなぁ。」

 ゲームの事はよく分からないばーちゃんは、そう適当に結論付けた。



 ―――――――――



 ファルディアにログインする。

 内田は飯を食うだけ食って、さっさと寝た。

 夕方から固定なので、夕飯は食べられるか分からないとの事。

 ばーちゃんには新しい友達が来るので、夕飯は食べられないと伝えていた。

 人の家なのに自由人である。

 ただ、なるべく里美おばさんに出くわさないようにしてる気が、若干しなくはない。



 ファルディアでは、もうすぐ日付が変わる時間帯だ。

 新月に近くまだ月は出ていないけれど、宿屋でずっとログアウトしていたからだろう。体調はほとんど万全の様に思える。実際は隠しメーターだから分からないのだけれどもね。

 多分、多少スキルを使っても大丈夫だと思う。日が出るまでは使いすぎない様にする点だけ心に留めておく。


 今日は何をするかまだ決めていないけれど、先に一つだけやりたいことがあった。


 せっかくシュライブングの剣に縁がある「湖のそばのお墓」。こちら側に引き戻してくれたんだし、これから剣の所有者の縁者の人か月光属性が分かる人を探すという壮大な目的?が待っている。よって、ばーちゃんに育てられてる者としては、・・・こうキチンとしておかないとムズムズするっていうか。

 ファルディアとリアルは違うだろうし、作法も宗教も違うんだろうけど、こういうのって気持ちじゃないかな?と思うので、お花くらいはお墓にちゃんと供えておきたいわけですね。あと剣を大事にさせていただきますっていう報告?誰が聞いているわけでもないけれど、一応しておきたい。自分なりのけじめとして。

 アルシオンと違って、アポリアは夜間に店はやってないだろうから、店が開くまで・・・あとどれくらいだろう?朝は市がたつといってたけど、朝にまで花は売ってるのだろうか?とりあえず7時位に見にいけばいいのかなぁ?でもそうすると、ログアウトの時間になってしまうから無理か。夜にログインした時に行こうと思う。となると、お墓参り的な事はリアル夜のログインでして、今は何をするかなー。せっかくの夜なのでギルドで地図を複写とかする?


 ・・・んんん。



 でもなぁ?


 ずっと寝てたから動きたいんですよ。



 なら簡単でしょ。


 ―――アポリア深夜の部、探検いたしましょう。



 寝てる人も多いだろうから、そっと宿を出る。

 冒険者稼業の人ばかりなので、深夜の出入りもあるらしいが推奨はされていない。


 一応宿屋の受付に中年の男性がいたので、外出する旨を告げ、宿をそっと出る。



 田舎と違って、こんな時間なのに遠くに人のざわめきを感じる。

 12時近いけれど、バーとか飲み屋とかで飲んでいる人が居たりするのだろうか?

 頭上を見てもやはり月は出ていない。だけど星が煌めいている。

 殆ど黒に近い濃紺の空にキラキラと星が光る空は、リアルでも見慣れているはずなのに、何かドキドキさせられる様な。

 そういえば、リアルで夜中に出かけた事など、今まであまりなかった。



 そうか、ゲームだとこんなところでも自由なのか。

 そんな事に急に気づいたりする。


 学生だからって補導されたりしないし、不審者だからって捕まったりしない。

 ・・・いや、アポリア王国は治安がしっかりしてそうだから、捕まったりはするのかな?

 その辺ちゃんと聞いておけばよかったと思うけれど、まぁ官憲さんに咎められたら素直に謝ろう。

 ゲームだし他に”霧向こうの民”も多くいるから多分大丈夫だと思うけれども。



 何となく、ファルディアがR15指定の理由が分かった。

 残酷な描写がありますって事でR15なのかなって思っていたのだけど、多分それだけじゃない。

 この世界では現実とは違って一人の大人として扱われる。

 MJKBY氏みたいに社会からはみ出したことをやれば、ファルディアの世界でも罰せられる。だからなんじゃないのかなって個人的に思う。

 そんな事を、思いながら夜のしん・・・としたアポリアの街を歩きだす。



 とりあえず、人がいる気配がする大通りの方に向かって歩く。気配察知を無意識に使ってしまったけれど、問題なく作動。今の所大きくPNTを消費している気配もないしこのまま続行させる。

 大通りの方は飲み屋などはないが、飲み屋から帰る人とか、戻ってきた冒険者さんとか、地元の飲んでた人とかいるけれど、基本男性ばかりだ。そして飲んだくればかり。まぁ当たり前か。仕事をしてる人たちの朝は早いものね。


 時々見回りしている官憲さんを見かける。あと酔っ払いの世話をしている人とか。大変だなぁと思ってみていて、目が合ったりすると軽く挨拶をしたりする。


 特に咎められないのが嬉しい。


 街はオレンジ色の光が多い。

 松明の光も多いんだけれど、魔法の明かりだと思う。図書館にあったあの丸い玉の様な街灯もいくつかある。

 あれいいなぁ。

 冒険のお供に買えないだろうか?って思う。実際持ってる冒険者の人たちもたまーにいる。持っている人たちは装備も良さそうだし上級冒険者さんたちなのだろうか?脳内欲しいものリストにメモをしておく。忘れるまではきっと覚えている。



 昼と夜では見るものがやはり違うので楽しいが、あまりフラフラして官憲さんや変な人に捕まるのも嫌なので、人の流れがわずかにある東小門の方に向かう。

 大きい門は開いてないが、門の横の通用口みたいなのは開いている模様。

 実際、5人PTの人たちが丁度門をくぐって戻ってくるところだった。


「門は夜間でも通れるんですか?」

 と門番さんに聞いてみると、声をかけた事に驚かれたみたいだった。だが、すぐに気を取り直して答えてくれる。


「通れますよ?ですが危ないですよ?こんな時間に。」

 と心配までしてくださる。


「有難うございます。影族は多分夜行性?なので夜目がきくし夜の方が多分調子いいんです。」

 と、適当な事を言っておく。まぁあながち自分以外の影族はそんな感じだと思うから嘘じゃない。


「そうなんですか?存じ上げませんでした。では、狩りに?」

 と聞かれたので

「いいえ。最近寝込んでいたので、軽い慣らしに近所を散策しようかと思いまして。狩れたら適当に狩ってきますが、あまり無理はしない予定です。」

 と答えておく。本当の事だしね。


「そうですか、では念のためにギルドカードを拝見させていただきます。」

 と言われたので、カードを見せて問題なく外に出してもらう。


 外に出て驚いたのが、何組かの冒険者PT達がテントを張ったりカマドを作ってビバークしている人たちがいる事である。あ、あと幌馬車の様なものを持った商人の人たちもいる。


 暇そうにしていたので門番さんにあれは何か聞いてみたところ、怪我をしている人など特別な事情がある人以外は、街に夜間入るのは税金が高くなるんだって!だから特に何もなければ門の外で夜を明かす人が多いし、その明かりや気配で街に近づく魔物が減って一石二鳥なのだとか。なるほどねー。よくできてる。

 何組かは緊張感なく宴会状態なので、門番さんたちも近くに居るしそこまで危険がないのだろう。


 面白いものを見たなと思いながら、さてどこに行こうかと考える。

 さっと、あたりを見渡すと何か遠くに赤いものが光ってるのが見える。

 火が燃えてるとかではなく、人工的に赤く照らしている様な。



 ・・・またなんか変なものかな?



 あまり見た事がないものがあったので、好奇心を刺激される。


 とりあず、赤い光の方に近づいてみると・・・。


 何とも異様な組み合わせの人たちが、たくさんいる。


 一組は衛兵さんたちの様な30名ほどのグループ。もう一組は学者さんたちの様な14,5人のグループだ。

 衛兵さんたちは灯から少し離れて街の外側の方向をずっと見てる人が多い。学者さんたちは大地に寝そべってたり、何か口論をしてたり、何か熱心に見ていたり。

 真ん中には大きな赤い明かりが3つ。街中にあった魔法明かりに似ているが、赤いガラスか何かを使ってるんだろう。とにかく真っ赤にこの辺りを照らしている。異様な光景だ。


 ゆっくり近づいていく自分に衛兵さんたちのグループの強そうな人は気づいてちらりと見られた。が、特に何も言われなかった。


 近づいても大丈夫なのかな?しかし何をしてるんだろう?と思い、好奇心が先に立ってしまった。一番近場にいた若い研究者っぽいローブのお兄さんに声をかけてみる。


「あのぅ・・・」

「うゎああああああいい!???」

「なんだぁああ!??」

「うぉお!?」


 驚かせてしまった。結構近くにいたのに気づかなかったんだろうか?しかも驚いた若い学者さんの声でみんなが驚いた感じだ。

 意外と、みんな気づいてなかったのか・・・。


「ああああ何か驚かせてすみません。大丈夫ですか?」

「な、なんだー黒い人かぁ・・・いや?あれ?噂の影族のひとかぁ。」

「そりゃー黒いわ、あはははは。」


 学者さんたちも、衛兵さんたちも笑っている。

 噂の影族ってところが引っかかるけど、聞かなかったことにして流す。


「その影族の人は、ゆっくりこちらに見える様に近づいてきてたぞー。見落としたお前らの意識が散漫なんだ!隠れようと思ってきたら魔物でも影族でも遅れを取るぞ!終わったらあとで3周追加だからな。」

 と多分偉い衛兵の教官と思しき人が、衛兵さんたちに言い渡す。


 そんなーーー!!!と衛兵さん達が声を上げている。

 学者さんたちは衛兵さんたちを軽く笑っているだけで、また元の様子に戻る。口々に何かを口論してたりとか紙と空を見比べて何かを言い合ってたりとかしている。


 先ほどの声をかけた若い学者風の人にもう一度声をかけてみる。


「あのぅ・・・もしよかったら教えていただきたいんですが。結局ここで何をされてるんです?しかも見慣れない真っ赤な明かりで。」


 ああ、と学者の人が頷く。

「僕らは神殿付の国の研究ですね。みんなそれぞれ研究課題は違いますが、星々と魔力との関連性や天の運航の観測、神力と魔力との関連性を調べていたりしますね。月があると月光の魔力に左右されてしまうので月が出てない時に行います。対してあちらの衛兵の方々は夜間訓練ですね。僕らも彼らも闇夜で物を見るには赤い光が都合がいいので、合同訓練にして、僕らは魔物から安全に守ってもらい、彼らには魔力灯の赤い光を提供してギブアンドテイクの関係です。」


 とのこと。

 確か、天体観測は赤い光の方がいいとは聞いたことがある。

 懐中電灯の光だと明るすぎるのだとか。

 夜間訓練とやらも、やはり赤い光の方がいいって事なんだろうな?


 おや?となると、赤い光で訓練したら暗視とか取りやすくなるのだろうか・・・?


「暗視の訓練・・・?」

「僕らも知らないですが、暗視スキルが取りやすくなると聞いたことがありますねー。」

 本当かどうかは知らないですけど~、と若い学者のお兄さんは明るく笑っている。


 若い衛兵さんを指導してるのだろう、教官の人がもう一度こちらをチラリと見たけれども知らないふりをした。特にこれに関して敵対したりする気もないしね。一応影族は仮想敵国扱いで微妙な関係だ。なるべくその辺は刺激しないようにしたい。


 そして、闇視がある自分には暗視云々よりも気になる事がある。


「月光って魔力があるんですか・・・?」

 そして星にも魔力がある・・・のかな?聞いた感じだと月光より弱いみたいだけど。

 未だよく分からない月光属性とか月光操作とか、月光をそのまま操るんだろうか?うーん謎だ。


「ありますよ。今は無くなった月都クレンセーテで研究が盛んにおこなわれていたそうですが、自分もちょっと文献で読んで知っている程度ですね。月光は扱いが難しくて使える人が少ないそうですが、主に保管に使われてましたね。」


「保管・・・?」


 また変な話になってきたな?月光が保管?


「陽光と対になる月光は静を司るらしいですよ。すなわち物の動きを止めるのが得意だとか。」


 ああ、そういう事か。


「食料の保管が捗りそうですね。」


 月光魔法が使えると、ご飯がアツアツで食べられたり、時間停止のアイテム袋とか作れちゃうんじゃないかな?あと、お漬物とか?生ものとか足が早いものにはいいのじゃないだろうか?山間部で魚介類が食べやすくなるよね。逆に山の珍味とか沿岸部で食べやすくなるし。


 ブハッ!と学者さんが吹く。


「月光属性の話で、そんな感想を聞いたのは初めてですよ!」

 とのこと。あれ?おかしいなぁ・・・?


 親切なお兄さんがいうには、月光属性は貴重な資料とか国宝とか不壊属性をつけるイメージで全てクレンセーテに発注してたんですよーとのこと。確かに、大事なものはとっておきたいものねぇ。どうやら保険代わりに使われていた模様。

「でも確かに、月光属性があれば保存食にいいのか?でも希少な属性魔法を保存食に使うなんて勿体ないかなぁ?あれ?でも魔物討伐とか軍部的にはいいのか?」


 うーんうーんと悩みだしてしまった。この悩みは自分に聞かれてもさっぱり分からないしなぁ。


「なんかお邪魔してしまって申し訳ありません。貴重なお話をありがとうございました。」

 と、お兄さんが思考の中に埋没してしまう前に、お礼を言っておく。


「いいんですよ~。どうせ、あと1時間もしないで月が上がってきます。撤収の準備をするところでした。」

 と、明るく笑いながら返事をしてくれる。アポリアの人たちはミーハーだけどいい人が多いなぁ。



 そうか・・・、でも、これから月が上がるのか。

 スキル上げもできそうだね。



赤い光はリアルで言うところの暗順応の為。白い光などだと闇に眼が慣れるまでに時間がかかりますが、赤い光だとすぐ闇に眼が慣れるまでの時間が短くなるということです。


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