2-50 猫と共に去りぬ
大地に寝っ転がり、日光浴をしていたところ、視界に眩しいパステルパープルのツインテール。
我らが魔法少女くるるんさんがランニング?をしているところで、声をかけてきてくれたのだった。
「んん~?もしかして、サクちゃん動けないの?」
そうですねぇ。と思いながらも、返事もできずに・・・というか返事が億劫ではありますが。
伝わるかな?
首を傾げたくるるんさんが、顔をぺちぺちたたき出す。
いた!いたくないけど!ちょっと痛!
なに?何のプレイ?
「わーほんとだ!動けないみたい~。」
動けない事を試したのか・・・。
なんだか、どっと疲れる。
「となると、あれからずっと日干ししてるの?え?マジで?」
「ソウデス・・・。」
再び顔をぺちぺちされたらたまったものではないので、何とか答える。
「うわーマジで?ふり幅でかすぎるよぉ影族ぅ~」
くるるん絶対やりたくないー元々やる気もないけどー。
と、いらない情報も追加して感想を述べてくれる。
「もーしょーがないなー」
と言いながら、何故か誰かとメールだかチャットで話し出すくるるんさん。
声はこちらに聞こえない。メールとか送るのは、こういう風に外から見えるのか。
そして、
「じゃあ、くるるんもう一周がノルマだから、また戻ってくるね~」
バイバーイと自分に挨拶をして突然走り去っていく。
???
戻ってくるの?何で?
・・・まぁいっか。よく分からないけれど、くるるんさんがいてくれても、今の自分はお話がほとんどできない。あまり迷惑はかけたくないしね。
でも、また来るって言ってたけど、自分がログアウトした後に来ないかなぁ?そこは不安であるが。
・・・そういえば、メール。
メール。
大分忘れてましたね?
レティナさんにアポリア王国についたって報告もしてないし、ラフィーさんもそのまんまなので、官憲さんに捕まっていたとはいえ、リアル数日とはいえ忘れ過ぎたかも?
メールならこのままチェックも出来そうな気がする、という事で文字さんにお願いしてメールを出してもらう。
メールが来てたのは意外とラフィーさんだけだった。
レティナさんは妙な引きこもりみたいな事を言い出すこともあるし、変に遠慮するところがあるからそんな感じなのかもしれない。
まず、来ているやつから見よう。
ラフィーさんのメールは自分の無事を喜ぶ内容と、前回のSSを見てそんな場所は知らないけど湖といったら北側?って感じのメールだった。
残念。南側です。
ラフィーさんも知らないって事は、アポリアとアルシオンは結構遠いんだろうなぁという所感。
一応ラフィーさんには「どうやらアルシオンから大分南側の湖らしくアポリア王国にたどり着いてしまいました。せっかく来たので、探検してから戻ります。」と返信しておく。あ、送ってしまってから思い出したけれど冒険者ギルドのお姉さんがクソ鳥の事を心配していたけど、自分は特に何か聞かなくていいよね・・・?
レティナさんには「こんにちは。自分は今衰弱を食らって日向ぼっこしているところですが、レティナさんは元気ですか?どうやら自分がいるところはアポリア王国という所で、アルシオンから大分南側みたいです。戻るのに相当時間がかかりそうですが、アルシオンに戻ったらまた遊んでください。」とメール。特にすぐ返信もこなかったので、今日はレティナさんはログインしていないのかもしれない。
そういえば、前回SSを見せてと言われたので、また言われるかもしれない。
折角だし思い出にもなるので、アポリアのSSも何枚か後でとっておこうと心に決める。
・・・。
―――パチリ。
一枚寝っ転がったまま、SSを1枚撮る。
殆ど雲もない青空だけど、遠くにぽつんと白い鳥が一羽飛んでて。
何となく、学校でやった短歌を思い出す。
別に寂しいというわけでもないのだけれども・・・。
風がそよそよと流れるのを感じる。
気温はファルディアも夏に近いはずなんだけれども、特に凄く暑い!といった感じはしない。ファルディアが暑くないのか、それとも影族に暑さのメーターがないのか。だけど、他の種族の人たちも汗だくだく・・・といった感じではないから、ファルディアの緯度が高いのかもしれない。ベリー類がよく採れるのって高緯度の所だった気がするしね。
よく耳をすますと、遠くで冒険者の人たちだろう、戦ったり走り回ったりする声も聞こえる。平原でレベル上げをしている人たちだろうか。
何もできないで寝ているだけだったこの場所だけど、色々な事があるのに、全然気づいてなかった。
しんどいのが、回復してきてメンタルに余裕が出てきたのだろう。
こうしてもう少し寝っ転がってるのも面白いかもしれないし、何ならここで昼寝しても楽しいかもしれない。
そういえば、影族以外の種族の人たちは夜寝る事が多いらしい。寝てる間はログアウトしたほうが効率がいいらしいのでログアウトしているらしいが、寝ながらログアウトだと体が残るらしくて宿屋に泊まる事が推奨なのだそうだ。睡眠を取らないとデバブを食らうらしい。他種族は大変だなぁって思うけれど、影族も結局の所現在日向ぼっこを強制されているわけで、影族は大変だなってくるるんさんに思われてそうである。
さて、
大分気持ち的にやる気だけはできてきたので、先ほどのステータスの方をまじめにもう一度見てみようかな。
【ステータス】
キャラクターネーム:Saku
種族:影族
性別:不明
身長170cm
職業:戦士 Lv22
(能力値)
HP 76/MP 36
STR 61(-52)
VIT 19(-13)
DEX 19(-12)
AGI 51(-47)
INT 12(-2)
MID 13(-7)
ONT 32
LUK 10
(スキル)
《種族スキル》 闇視
《ノーマルスキル》未使用SP 19
[武術系スキル]
剣術 Lv.7/体術 Lv.5/回避 Lv.8/剣術受け Lv.5/気配察知 Lv.6/スキル手加減 Lv.2
[技系スキル]
影纏 Lv.2
[回復系スキル]
HP自然回復 Lv.3/PNT自然回復 Lv.1
[種族系スキル]
影移動 Lv.4/影変化 Lv.4/影硬質化 Lv.3/影踏 Lv.1/影質量増加 lv.1
[精神耐性系スキル]
精神苦痛耐性 Lv.3/精神汚染耐性 Lv.4
[一般系スキル]
大陸公用語 Lv.10/方向感覚 Lv.2/模写 Lv.1
《ユニークスキル》
主人公体質 第六感 時折目が疼く
(称号)
苦痛に耐えるもの/ユイベルトのお気に入り/ロードランナー/世界の果てにたどり着いたもの/世界の裏を見たもの/観測者/ユトゥスシーレイの守護/スキルを作りしもの
(加護)
月神セレネーツァの加護
(だいじなもの)
神器 ユイベルトの指輪
(借金)
金貨11枚 銀貨6枚 テルメ
・・・・PNT自然回復!?
PNT????
はぁ?また新しい単語出てきた!なんだろPNT!?って思って詳細説明が出ないか文字さんにお願いすると、チョロッとだけ出る。
PNT自然回復・・・魂の存在力の自然回復が早くなる
あっ、はい。
ということは、多分自分が揮発性ONTと呼んでたものの事ですかね・・・?
あれ?ていう事は影族は魂も光で出来てるのかな?そりゃすげーやハハ。
何だかもう分からなくて、ハイみたいな感じになって、変な笑いが出てくる。
多分魂を表す何かを表す単語P+ONTなんだろう。PONT?PNT。たぬきみたいになってきたな・・・。
なんにしても、予想が合ってたらば、このしんどい地獄が少し早く終了します?
・・・いや、まてよ?
このスキルが大分前に取ってたとしたら、レベルが上がらない限り、このペースのままの可能性もあるよね・・・?
マジか。
・・・だがしかし、ここで倒れてるのが無駄な時間にはならないと思うのだけが心の救いだ。
この機会にPNT自然回復のレベル上げと思って思う存分ぐうたらしたい。
だって、このスキルすっごく嬉しい!
影族には必須だよね!
モフッ
・・・ん?
なんか頭部が温かいんですが・・・。
「にゃー」
何だー猫か。兎君だったらいいなと・・・猫!?
日干しして温まっているせいなのか、いつの間にやらネコっぽい生き物が何匹か寄ってきていて自分で暖を取っている。特に足の間に挟まっている子が止めて頂きたいんだが・・・。でもあれ・・・?なんかすごく大きい生き物も交じっている気がするのですが・・・。
あまり動かない視線で確認すると、ネコっぽいのが3,4匹みえ、猫の3倍ほどありそうな生き物が1匹見える。どちら様・・・?
よく考えたらここ外だし、アクティブな敵がいたら死にます・・・?
でもなぁ、日干ししなくても死ぬしなぁ?だが今の所攻撃される気配はないから、まぁいいか。
よく分からないでかい生き物は、丸まって謎の動きをし、バババババっと音がする。多分穴も掘っている?謎の生き物が穴掘りをやめて顔を上げると、なんだか見覚えのある鼻。これは・・・あれじゃないですか?コアラの親戚?コアラ程可愛くはないが、なんだか寂し気というか愛嬌のある顔立ちだ。・・・・なぜ自分の周りで穴を掘っているのか全然意味が不明だが。
そして、頭の上にもいる生き物がネコなのかコアラモドキなのか若干気になるが、頭を動かせるほどまだ回復していないので、確かめるすべがない。
まぁいっか、と強制的に納得をし、猫の寝ている所とかコアラモドキが穴を掘っているところなどを見ていたら眠くなってきた。
ネコだかコアラモドキだか頭のモフモフがいい感じに眠気を誘ってくる。
多分、寝てたんだと思う。
「ぶはぁああああははははwwwww!!!なにこれーーーwwwwww」
不快な笑い声で目が覚めた。
「うるさい。」
声は割と普通に出たが、つい反射的に使おうとした影変化のスキルは使えなかった。
というか、指先くらいはピクリと動いたが、まだ手があげられるほど回復していない。
声の主と言えばやはりアクティスで、アクティスだけじゃなくてベルデさんもいた。
「くるるんに聞いてきてみたんだが、本当にこんなところで寝てるんだな。」
とこちらをのぞき込んでくるベルデさん。
「もうしわけ・・・ないです。」
アクティスはどうでもいいんだけど、ベルデさんにまでこんなところに来させちゃったのはなんか悪いなあ。でも何しに来たんだろうね?
一方アクティスはゲラゲラと笑いながら地面でバタバタしている。
若干猫たちが迷惑そうだ。近いネコがシャー!って威嚇している。
・・・ていうか、寝てる間に猫増えてない?
見える範囲に10匹くらい取り合えずいるんだけど・・・。あと、あのコアラモドキが3匹くらいは視界にいるんだけど。
「日干しが必要だとアクティスから聞いたのだが、街中ではさすがに日光浴がしにくいだろうし、やはりここの方がいいのか?」
「はい・・・。」
厳密には体を動かせなくて帰れないですし、あんまり人に構われても疲れるのでこのくらいのどかな方が楽ですね?
死なないかだけが心配ですが。
「ふむ。まぁなら、仕方ない。我々も付き合える範囲では付き合おう。」
「えっ!?」
「無理に合わせないけどねー!ここでやれることだけ!でも見てて面白いしね!(プッ!」
と言いながら、ベルデさんはいつも使ってる大剣の素振りを少し離れたところで始め、アクティスは次何をのばそっかなーと言いながら腹筋背筋を始めている。それはVITを伸ばしているのではないでしょうか・・・?
「えっと・・・?無理して自分に合わせなくてもいいと思いますが、ありがとうございます?」
「にゃー!」
いつの間にか自分の上で寝ていたピンクのハチワレ柄の猫・・・猫だよね?みたいなのが返事をする。ゲーム上のネコは色もファンタジーだなぁ。
そして、君に言ったわけじゃないんだよ?
君は自分で暖を取ってるだけだよね?
「サクはさ~?あとどれくらい日干しが必要なの?」
「分からないが今14時か・・・だから概算で最低あと11時間?」
「げーw!それ自分なら速攻で死んでデスペナ食らうわ。」
「問題は、死んでも多分治らなそうなところ・・・。」
唯一の解決策はステータスのONT消費だろうけれど、体がリアルで萎みますしな?
「影族は強いが、縛りがきついな。」
と剣を振り回しながら言うベルデさん。やはりVITは簡単に上がってしまうからSTRを上げていきたいのだろう。バランスを求めるとなると鍛錬がきっとかかせないのだろう。自分は極振り気味だけれども、最終的なバランスの着地点も模索していかなきゃなぁ。
「自分だけかもしれません。影族なのに繋がってないので。」
「『繋がる』とは影族の証だったか?」
「確かそんな事~公式のHPにも書いてあったよねぇ~。繋がらない影族なんているの?」
「いや、自分だけ。」
あとは犯罪者だけですね。
「影族じゃなくて、サク君が変わってるな。」
とうとうベルデさんにまでそう言われた。
アクティスがゲラゲラ笑いながら背筋をしているのでむかつく。
そこのコアラモドキ!アクティスの背中に乗っちゃいなさい!と思うのだが、コアラモドキは「クァア!」と欠伸を一つして穴を掘りはじめる。使えない!
ていうか、何で自分は動物に集られてるの・・・?人懐っこい動物とかじゃなくて自分だけなの?
「それ、ベルデさんの盾をアクティスに持たせてベルデさんが打ち込めばいいんじゃないですか?」
むかついたので、アクティスが酷い目にあいそうな効率案を出してみる。
ゲッ!と言うアクティス。
「確かに。効率は良さそうだ。だが、武器の手入れ代の事を考えると残念ながらこちらの方が若干効率が良いかなという気はするな。」
と、自分の考えなど分かっているのだろう、ベルデさんが笑いながら却下してくれる。
「だが、急いでる時とアクティスにストレスが溜まっている時はその案を採用させてもらおう。」重々しくそう付け足してくれた。
「ちょっとぉおおおおおおおおおお!!!」
ベルデさんも、分かってる人みたいで安心したですよ。
「そういえば、りょっぴさんはどうしたんですか?」
「りょっぴは新しいメンバーの募集の張り紙を出しがてら、新しい魔法の勉強!って言ってたな。」
「勉強するとINT伸びるんだって~。絶対やりたくないよな~。」
と言いながら剣の素振りを始めるアクティス。お前VITはもういいの?
そう横目で見ながら、自分のステータスを確認してみる。
(能力値)
HP 76/MP 36
STR 61(-49)
VIT 19(-10)
DEX 19(-10)
AGI 51(-45)
INT 12
MID 13(-5)
ONT 32
LUK 10
お。INTのデバブが解除されてる。そして、回復スピードが少し上がっている気がする。1時間経ってないのにさっき見た時よりも15くらい回復しているよね?これ。やることが無くて考えてばかりだったからか、INTが最も早く回復している。確かに体のだるさはまだまだ残ってはいるけれども、考えたり文字さんに頼んだりすることについてはもうあまり苦じゃない。喋る事は少し億劫だけれども、VITとかその辺がかかわってきてるのかなぁ?
「固定は完全に解散したんですね。」
新しいメンバー。
それは楽しみだろう。いや、面倒くさいのかな?
変な人が来ても大変だし、中にはPTクラッシャーっていう人もいないわけじゃないので細心の注意が必要になるよね。
「したした~!・・・したというか、されてるのに気づかなかった?」
「ああ・・・あれは酷かったな。」
疲れた顔の二人。何か解散で苦労があったのだろう。語感からだと既に相手はさっさと新しいPTを組んでたという感じか。こわ。
「まぁ、これで心おきなく新メンバーが見つけられるというわけー。あ、サク君どう?」
「遠慮しておきます」
自分は廃人プレイとか興味ないので・・・偶になら前線やエンドコンテンツも行ってみたいけど、年がら年中ずっと攻略の事を考えていたくないタイプだ。
まぁアクティスもその辺は知ってるから冗談だと思うんだけど。
「サク君は攻略をメインでするタイプではないとアクティスから聞いてはいたが、おそらくゲーム歴が長いせいかな?動きは悪くないと思う。君が嫌じゃなかったら、ぜひ偶には一緒にプレイしてくれると嬉しい。」
と、真面目に言ってくれるベルデさん。大人だし、優しい人だなぁ。
「こちらこそありがとうございます。何か機会がありましたら、また遊んでください。よろしくお願いします。」
「とはいえ、まずはフレンド登録からかな?送っても構わないか?」
「ああ、アクティスがいるので忘れていました。」
そう言ってる側から送られてくるフレンド承認。
もちろんYESを選択する。
ただでさえ少ないフレンドが増えた。
「こちらこそよろしくお願いします。」
と、頭は下げられないので、声だけで伝える。そんな自分に合わせて、
「「「にゃー。」」」
猫たちが一斉に脈絡なく鳴く。
君たち一体何なの・・・?参加型なの?
凄く困ってたら、ベルデさんが吹き出した。
「アクティス、お前の友達やっぱりちょっと変だぞ。」
「ベルデ、それは俺が一番知っている(キリッ。」
そんなこんなで退屈だけれどもカオスな昼は、猫と共に過ぎていった。
白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
若山 牧水




