2-44 シュライブングの剣
階下のおばちゃんたちは、ノリノリで大量の唐揚げとか天ぷらを作っていた。
これ8家庭分?本当に?っていう物凄い量と種類。
あと、どう見ても揚げ物以外の物も大量にある。
食器を洗おうとしたら、別のものを洗っていたおばさんが一緒に洗ってくれるというのでありがたくお願いした。
「じゃあ、自分は庭に水まきに行ってきますので、よろしくお願いします。ありがとうございます。」
と言ったところ偉いわー!と言われる。
何でも褒めてくれるのが、おばさんたちのすごい所である。
ただの水まきなのにな・・・。
外は五時前なのでまだだいぶ明るい。
そして、今更気づく。
「眠い・・・・。」
3時間くらい寝たけれど、やはりちょっとまだ眠い。
ファルディアやっている最中は横になっていたので、体が怠いとかキツイとかはないけれども。
庭掃除をしながら考える。
学校がない間、家事→ファルディア→家事→勉強→寝る みたいな生活だと、体が鈍るんじゃないだろうか?
ここに、やはり運動のサイクルも取り入れるべきだろう。
だが、世界は今夏真っ盛り。
暑いのは苦手だ。
となると、朝か夜にやる運動?
ランニング?
正直夜ランニングっていうのは、ちょっと・・・。
ええ、昔何度か車で拉致られかけまして・・・。女の子と間違えられまして。禁止されております。
ええ・・・(憤怒。
となると、明け方もう少し早く起きてランニングかなぁ?
それと庭で素振りか基礎トレでもすればいいかな?
トータルで1時間くらい。朝ランニング30分、夕方素振りと基礎トレ30分でいいだろう。
まぁそれで取り合えずやってみよう。
今日は眠いからやらない。
明日から。
勉強も眠いからやらない。明け方までさんざんやったしね!
賑やかなおばさんたちを見送り、内田を起こして夕飯を食べる。
やはり途中で里美おばさんも来た。
今日は旦那さんが遅いとのことで、おばさんも夕食を食べていった。
ばーちゃんとオカズの事で盛り上がってた。
内田は反抗期なのか、おばさんがいるとブスーっとしている。
それがピカ神様みたいでちょっと面白い。
「明日多分レベラゲいける。」
って言うと、内田は驚いてた。まぁ自分でも驚いたから当然か。
内田たちを見送り、風呂に入り、ばーちゃんにお休みを言って今日は早く寝る。
明日が楽しみなんて子供みたいだな・・・と思ってる間もなくすぐ眠りに落ちた。
翌朝。
今日から5時半に起きることにしたので、起きてまずは30分ランニング。
「ばーちゃん、体鈍るからランニングしてくる。30分でもどります。」
起きたばかりのばーちゃんに言って家を出る。
比較的安全な民家が多い所をぐるっと一周。
なるべく国道に出ない。
何でかというと攫われる可能性があるからです。クッ・・・。
よって、近所のおばちゃんたちの目によくつく。
色んな人に挨拶をしながら、初日なのでゆっくり目に一周。
6時位に家に戻り、水まきに庭掃除。
洗濯もすでに終わってたので、ちゃっちゃと外に干しておく。
今日も憎いくらい晴れていて暑い。
軽くシャワーを浴び、朝食。
昨日の残り物が出てくるかと思ったんだけど、ばーちゃんも揚げ物で胃がもたれたのか、中華粥だった。
とてもホッとする。
ホタテの出汁で作った粥がとても美味しい。
でも、冷蔵庫にたくさん昨日のおかずが余ってるので夕飯はきっとそれだろう。
「カヅキは今日もファルディアけ?」
「うん、今日は内田と一緒に遊ぶ約束をしてるんだ。」
「同じゲームをしてるのに普段一緒に遊ばないとか変わってるな。」
「うん、まぁやりたいことがいつも一緒じゃないしね。」
こればっかりはログインしてみないと、ばーちゃんにもわからないだろうな。
ばあちゃんは疲れたので今日は家にいてちょっと寝るとのこと。
お昼は一緒に食べて、夕方は16時半くらいにはいつもと同じように戻りますと伝えておく。
朝昼とゲームをしちゃうから夜は勉強しよう。
明日は朝も勉強しようかなぁ。
暑くなければ図書館にも行きたいのだけれども、自転車で30分近くかかるからちょっと嫌なんだよね。
だが、読書感想文を終わらせたいので、どこかで行くしかないだろう。
もっとも、何冊かは買わされた本もあるのだけれど。
そんなわけで、9時位にログイン。
11時半におちて、12時半に再ログインする予定だ。
2時間半か。ゲーム時間で5時間弱。
まず、ステータスをチェック。
【ステータス】
キャラクターネーム:Saku
種族:影族
性別:不明
身長170cm
職業:戦士 Lv17
(能力値)
HP 68/MP 32
STR 57
VIT 16
DEX 13
AGI 36
INT 11
MID 12
ONT 28
LUK 10
(スキル)
《種族スキル》 闇視
《ノーマルスキル》未使用SP 25
[武術系スキル]
剣術 Lv.5/体術 Lv.4/回避 Lv.7/剣術受け Lv.4/気配察知 Lv.6/スキル手加減 Lv.2
[回復系スキル]
HP自然回復 Lv.2
[種族系スキル]
影移動 Lv.3/影変化 Lv.3/影硬質化 Lv.2
[精神耐性系スキル]
精神苦痛耐性 Lv.3/精神汚染耐性 Lv.4
[一般系スキル]
大陸公用語 Lv.10/方向感覚 Lv.2/模写 Lv.1
《ユニークスキル》
主人公体質 第六感 時折目が疼く
(称号)
苦痛に耐えるもの/ユイベルトのお気に入り/ロードランナー/世界の果てにたどり着いたもの/世界の裏を見たもの/観測者/ユトゥスシーレイの守護
(加護)
月神セレネーツァの加護
(だいじなもの)
神器 ユイベルトの指輪
(借金)
金貨11枚 銀貨6枚 テルメ
簡単にみているが案の定、STRばかり伸びてて笑う。
格上に握力勝負を挑み続けた結果だからなぁ。
意外と伸びてるのはONT。
だがこれ、比較材料が無いからどうなのかが全く分からない。
どうなんだろう?まぁ伸びてくれるとありがたい事です。
影系スキルにとっていいはずですしね。
リキャストとかキャストタイム伸びないかなぁ?
スキルも多少は伸びてるが、レベル11までの伸びと比べたら格段に悪い。
まぁ上がるほど伸びづらくはなるのだが、それにしたって悪いだろう。
そのうちどこかでスキル上げをして辻褄を合わせなければならない。
スキルを上げれば命中ももっと上がると思うんだよね。
あと借金が1行無くなったのが滅茶苦茶嬉しい。
この調子で頑張ります!!!
余裕があるので、そこまでは討伐の回転を上げないが、とりあえず3時間レベル上げをして、後は街に戻って準備でいいかな?
レベルのおかげでだいぶ楽になったので、主にスキルの発動を意識しながら丁寧にリスを狩る簡単なお仕事。
主にリスにまず襲ってもらい、受けて避けてクリティカルを狙う。先行を取ってないから当然格段にやりづらい。キャストがある時はなるべく影移動を使って避ける。たまに影変化と硬質化で、先に一撃入れてみたりする。
そんな作業を休憩をはさみつつ延々と続ける。
頭を使っているので、昨日みたいなトランス状態には全然ならない。
・・・昨日は半分眠かったし仕方なかったかも。
多少のダメージでもHP自然回復に任せて動くので、1レベル上がる。嬉しい。
結局3時間の狩りでレベルは2しか上がらなかったが、スキルの剣術、体術、回避、剣術受け、影移動がそれぞれ伸びた。
嬉しい。
そう言えば、影移動って本当は移動技なんだよね・・・?なんか便利な補助技として避けとか消音で使ってますが、本当は短距離移動技じゃないか?という事を思い出す。王様とかアインさんとか滅茶苦茶早く移動するしね?
と、いうわけで帰りは影移動全力で移動してみる。多少早くなるがやはり、猛者たちに比べたら遅い。圧倒的に遅い。悲しい。特に光切れという感じではなさそうだけれども、単純に技能レベルが低いのだろう。全速力で走った時よりもほんの少しだけ早い感じだ。ただ、そのほんの少しで差がつくときもあるので、これからもどんどん伸ばしていきたいスキルである。
リキャストごとにかけて、ショートカットを図る。
アポリア王国に戻り、混んでいる時間帯でもなかったのですんなりと街の中に入る。
門番の人にも特に何も言われなかったので、変な影族がアポリアに来ていると知れ渡ってるのかもしれない。ちょっと恥ずかしい。
街に入る際に、初級者の装備と鍛冶屋はどこら辺の店がおすすめですか?と門番さんに聞いてみたところ、話しかけた事にちょっと驚かれたが、快く数軒教えてもらう。もっとも、評判がよろしくない店の方がたくさん教えてもらえたが。
職業柄だろう。ちょっと面白い。
有難うございますと丁寧にお礼を言い、買取のためにまずはギルドへ。
大量のリスの毛皮もあったが、リス討伐報酬の方が大きかった。
しめて57匹倒していたらしい・・・。
倒しすぎですね?
リスの討伐報酬が5匹で10,000Fなので、110,000Fいただいた。PTだとそんな美味しくないんだけど、ソロだととても美味しいですね?
フルパーティーだったら一人2万行かないですしね。
リスの皮と齧歯の買取がしめて35000Fでした。
やはりリスの皮は小さいからお安めの模様。25枚くらいあったんですけどね。
トータル145000F程の収入になった。
人もあまりいなくて、盗み聞きしている人も居無そうなので、安心してお金をいただく。
ちなみに、今年のリス討伐目標に達したとのことで、リスの依頼は下げられました。
他の冒険者さん・・・ごめんなさい・・・。
やってしまった事は仕方ない。開き直って、次の鍛冶屋と防具のオススメの店に向かう。
ログアウト迄には後1時間ほど。そこまで時間がない。
まず鍛冶屋に行きたかったが、先に防具屋を見つけてしまったので、そこに入る。
「いらっしゃいませ~。」
と、若い15,6歳の娘の売り子さんの明るい声が聞こえる。影族だからか、こちらを見てビックリした様子だったが、気を取り直して普通に接しようとしてくれる。いい人だ。
店先に並んだ商品は色々とあるが、どれも手が届かない値段ではないので安心をする。
急いでる時は店員さんに聞いちゃった方が早いってばーちゃんが言ってました。
「すみません、当方初心者でして、レベル19相当の普通の服の防具を探しているんですが、オススメってありますか?」
「はい、ございますよ。ご予算によってだいぶ変わりますが・・・。」
それはそうですよね。
だがしかし、砥ぎの値段がまずわからないんだよなぁ。先にやはりそちらに行くべきだったか。
「えっと、この後武器を砥ぎに出したいんですが、そちらと合わせて100,000Fくらいに納まるといいなーっていった感じです。不勉強でごめんなさい。」
ちょっと考える売り子さん。
「ならば、うちで砥ぎもだしてくれるんでしたら、少し勉強させてもらいますよ?お爺ちゃんちが裏で鍛冶屋をやってるんです。いかがでしょう?」
なんというご都合主義。
「うわぁ、いいんですか?助かります!ありがとうございます。」
それで収まるならホント助かるなぁ。
「お爺ちゃん腕がいいんですよ!自慢です!ちょっと待ってくださいね、先に確認してまいりますから。おじーちゃん!おじーーーーちゃぁああん!!!」
大声で店の奥に叫ぶ売り子さん。
「なんでぇ!」
遠くで聞こえる、だみ声の返事。
いかにも職人!って感じの不機嫌さだ。
そういったぶっきら棒な感じは、亡くなった爺ちゃんを思い出すので、自分は割と嫌いじゃない。
「お客さんが、砥ぎに出したいって言ってるんだけど今平気!?いくらで受ければいい!?」
大声で叫んでる売り子さん。耳遠いのかなお爺ちゃん・・・。
「獲物はなんだ!?」
「あっ!聞いてなかった!」
「ばかか!おめぇは!」
「ちょっと待ってて~!」
気にした気配もなく、こちらに戻ってくる。
全部丸聞こえなので、思わず笑ってしまう。でも、これがNPCなんだよね。すごいなぁ・・・。どう見ても人間のやり取りに見えるんだけど。
シュライブングの剣をインベントリから出し、娘さんに渡す。
「あ!ありがとうございます!」と娘さん。
すぐに裏手に戻っていくと
「じーーーーーちゃん!これ!!!これだって!!!」
と大声で叫んでる。
仲のいい家族でうらやましいな、と思いながら店の商品を見て待ってると、ふと気配を感じる。
振り返ると厳ついマッチョな老人がシュライブングの剣 をもって立っている。
今にも人を切り殺しそうなオーラである。
・・・が、ユトゥスシーレイ様に比べればまだまだ・・・と殺気に慣れ気味な自分が若干怖い。
そして、こちらに剣を水平に向けて問うてくる。
「これを持ってきたのはお前か。」
地を這う様な声で尋ねてくる。
後ろから追いかけてきた娘さんが「お、お爺ちゃん!?」と慌てている。
件のお爺さんを見ると真剣な表情だ。
こちらも居住まいをただし、まじめに答えるべきだろう。
「いかにも、自分が砥ぎをお願いしました。」
「お前、これをどこで手に入れた。これが何か知っているのか?」
それは難しい質問だな。
「何処でと言われればアルシオン東にできたゴブリンの巣になります。ゴブリンがどこから持ってきたかは不明です。討伐の褒美に自分がもらい受けました。何か・・・と問われれば正式には存じ上げておりません。ただ、月神セレネーツァ様がかつて誰かに下賜した物で、かつその縁者の方が湖の近くで眠っている、という事しか知りません。」
お爺さんはギクリと動く。
「・・・誰か湖で眠っているだと・・・?」
「自分は”剣の縁がある”としかしか聞いてないので、誰がどういった経緯で湖の側で眠っているのは存じ上げませんが、確かにうち棄てられた墓がありました。一昨日掃除をしておきましたが・・・。」
「アレを掃除してくれたか・・・。」
お爺さんの覇気が急に収まる。
誰かお知り合いだったかな?
「知り合いの方でしたか?」
「・・・この剣の恐らく前の正当な持ち主の墓だ。俺が作った。湖の側で斬り殺されていて、愛用のこの剣が無かった。ずっと行方を追っていたが50年とんと出てこなかった。それが今日この日に突然目の前に現れるとはな・・・。」
気が抜けたのだろうか、一気に10歳近く老けたオーラを感じる。大丈夫かなぁ?
知り合いが殺されて証拠を追ってたって感じかな?でもゴブリンが持っていたなら分からないよねぇ。
「・・・何で剣の縁がある場所が分かった?」
「月神の導きで。」
「月神様は封じられたと聞くぞ。」
「詳しくは分からないですが、残滓だそうです?何でしたら月神様が加護をくださったんですが、確認をしますか?」
鑑定ができる誰かに聞けばより安心すると思うけど。
「いや・・・。」
疲れた様なお爺さんの声。
「お前からは、月神様の力を感じる・・・。この剣と同じだ・・・。」
そしてアイツと同じだ・・・とポツリと呟く。前の方だろう、な。
うーん。
この剣を譲ってくれと言われたらどうしよう。
自分にとっても影族さんたちとの約束の証!みたいですごく気に入ってるんだよね。
でもお爺さんの気持ちも分かるし、ちょっと困る。
「お前、名前は?」
「Sakuと申します。」
「冒険者か。」
「霧向こうの民なので、来たばかりの成り立てですね。装備を買いに来たら砥ぎもやってくださるとの事だったのでお願いした次第です。」
じっと自分を見ているお爺さん。
「承ろう。」
そう一言いう。
「おいくらです?」
「格安で引き受けてやる。・・・その代わり、時々でいいから俺にこの剣を砥がせて欲しい。」
そうおっしゃる。
これが、お爺さんなりの譲歩のラインなのだろう。
「移動しているので、絶対毎回お願いできるとはいえません。ですが、なるべくこちらにお預けしますね。」
それでいい、とお爺さんは言いそのまま奥に引っ込んだ。
剣を砥いでくれるって事なんだと思うけれど・・・。
「ああ、もうお爺ちゃんったら!お客様申し訳ないです!今値段聞いてきますから!多分1万くらいだと思いますけれど・・・。」
剣の質や素材にもよるだろうし、シュライブングの剣は悪い剣じゃないから高めになりそうではあるけれど。
奥で娘さんとお爺さんが言い合う様な声も聞こえたけれど、それを遮るようにカーンカーンと良く響くいい音が聞こえてくる。
多少治してくれてるのかな?ゆがみとかあるだろうし。
その澄んだ音が、何だか心地よかった。
変な話かもしれないけれど。
いつも助けてくれる剣に対して、はじめて恩返しが少しできた、そんな気がする。
検索から設定集を除外していたところ、どうやらシリーズからも除外されていた事に今更気づきました。もし、気になっている方がいたら申し訳ありません。現在はシリーズから飛べるようになっております。




