2-42 明けの明星 宵の明星
おかしい。
つい昨日までは「兎君探しに行こう!見つけられたらいいな~ルンルン♪」くらいの緩いノリだったはずだ。
それが、ふたを開けてみれば大量虐殺現場を見てしまったがために、頭のおかしいクソ鳥に追い掛け回され、訳が分からないうちに僅か2日で4人の神様に会い・・・4柱って言ったほうが良いかな?そして、ただの雑魚キャラなのに『世界の命運を握っています』って感じで、何故今凄まれているのか。
しかも、なんか預言そっちのけで神様たちが喧嘩しそうなオーラがバンバン・・・。
ううう、巻き込まれて死にそう。
「これこれ、”法治の”。今は預言の方が大事じゃろ。個人的な感傷は置いておけ。これは全神の問題に繋がる。ユイベルトが居ても何の不思議も不都合もない。遅いか早いかだけの違いだ。殺り合うなら問題が解決してからにいたせ。」
と、なだめている様な、煽っている様なロロ―ジア様
だが、その言葉にピカ神が殺気を緩めるのが分かった。
思わずホッと一息をつく。
そんなピカ神なんかまるで相手にもしていない様で、王様の興味はもっぱら自分に向いている。
「お前、また突然いなくなったかと思ったらこんなところにいたのか。相変わらず訳のわからない事をしてんな。」
グリグリグリと頭を後ろから手粗めに撫でられる。
ちょ、ちょっと痛いですね?
・・・でも、なんだか温かくて、月神様を思い出す。
全然違う感じなのにな。
「お、お久しぶりですユイベルトさ・・・!?」
振り返ってみたユイベルト様は、なんか、人族ですね?!?!?
以前見たでかい影じゃなくて、黒髪黒目の人族の様な格好をしておられる。
体格もがっしりとした、でもマッチョって程ではない感じのイケメンだ。
身長も影の時よりも大分低い。それでも2メートル近くあるけれども。
肌の色も少し黒めだ。
「ん?ああ。影族は成長すると人族にも擬態できるな。本質は何も変わらないが、外に出る分にはこっちの方が目立たないからこの格好が多いな。」
と、あっけらかんと笑っている。
そういえば、影族のポップアップにその様なことが書いてあったけど、影の姿のインパクトがでかすぎて、人の姿というのは少々衝撃的だった。
「ふえぇ・・・?」
緊張の連続だったので思わずアホみたいな声が漏れてしまって慌てる。
そんな自分を軽く笑い飛ばし、何もない空間なのに自分の左横にさっさと腰を掛ける。
・・・神様だから何か力で座ってるんですね。
座るかどうかなんて神様の前では些末な問題なのかもしれない。
「それでなんだって?コイツが月神に会った?件じゃなく、件を呼んだか。」
と笑ってる。
ユイベルト様は世界の終わりでも楽しんでそうで、逆に気が楽になる。
件ってあれから調べてみたけど、多分件の牛の話が一番近いんじゃないかなって思う。妖怪で、牛の体と人の顔をしていて生まれてきて重大な予言をする。そして、3日で死ぬ。というアレ。本物の件の牛って事はどうみてもないだろうから、そういう予言をするイレギュラーな存在っていう解釈でいいんだろうか。
「件ならばある意味我の範疇であるが、どう見てもその子は件には見えぬよのぅ。」
と、ロロ―ジア様。自分の前に、やはり何もない空間に腰を掛ける。
有難うございます!
いくら妖怪的なものとはいえ牛と似ていると言われても大変困ります。
一方、面白くもなさそうに、「ふんっ」と言いながらピカ神もロロージア様から見て左手に座る。おさまりが悪い、ユイベルト様から最も遠い位置関係だ。目をつむり、腕を組んでおられる。全力で話さない、ユイベルト様を嫌でも視界に納めない姿勢だ。
本当に王様が嫌いなんですね・・・。
「俺様が分からんから、お前が始まりだと思うところから掻い摘んで適当に話せ。」
我が王様は、尊大にこう言い放たれた。
ううう。
そう言われても、はじめと言うのは何処からなのか?
穴に落ちたところ?
蟻が攻めてきたところ?
月神に会ったところ?
神様が3柱もいるのに、余計な話をしたら気まずいと思うんだけど、もう何が大事だか分からないから適当でいいか。
自分に話せって言ったユイベルト様が悪いって事で割り切ることにする。
「えっとですね、どこから話したらいいものか。まず、アルシオンが蟻に・・・ジャイアントソルジャーアントの攻撃を受けまして。」
そこらへんが物語としては妥当かと思い話し始める。
季節外れの蟻を見つけた事、蟻騒動が収まり友達を探しに行ったら予期せず変な魔法陣を見つけた事。そこから蟻が湧いていて火を噴く巨大な鳥に襲われたこと。
その辺りでピカ神の何かに触れたのか、ピクピクされていたが何も言われなかったので話を続ける。
なんとか振り切って火炎放射を避けた時点で地面がなく落ちた事。
落ちたら社が見えたので行ってみた事。
「豪気な事よの。」
と、ロロージア様は扇で口元を押さえていたが、なんでだろうか。
ユイベルト様は相変わらず笑ってる。
そこが月神様の領域でなんか暗かったこと。
そして、7歳くらいの幼女に会った事。
「7歳とな。」
「月神セレネーツァはどう見ても、出るとこ出たボインだぞ。」
凄く下世話な言い方ですね、ユイベルト様・・・。
「自分にそう言われても困りますが、月神様って名乗るんじゃなくて月神さまの残滓って名乗ってましたね、そういえば。」
「・・・残滓ねぇ。そんなものが外でホイホイ歩いていられても俺たちが困るんだが、な。」
「ええと、それから自分は消えるか、贄となって裏返るのみ。って言ってました。これって預言と矛盾しますね?」
それとも裏返った人と会うって事だろうか?正直会いたくないが。
「”消える”も不穏だな。何でその二択なんだ。」
とユイベルト様。
「それは預言ではないのだろう?だったら、ただの予測になるのぅ。だが、我々は力を大きく削いだ月神を生かすために今の状況にある。それが無駄になる可能性が高いと分かってるという事かのう。」
「俺たちが知らねぇ穴があるって事か。」
「おぬしは殆ど月神に関しては何もしておらぬではないか。」
と、半眼のロロージア様。
「あとは使っている剣が月神様と縁があると言われて・・・。」
創造神の縁は言わなくていいよね・・・。多分関係ないし。
「剣の縁で”居ないはずの存在”が”在るはずのない空間”だから呼び出されたって・・・。」
後は何を言ってたかな。
――――『我は元々この世界に真には存在しておらんかった。いかに褒めたたえられ、世界で最も美しい花と言われようと、我に真の自我は存在しない。主神が我に魂をいれなかったのでな、この体は代替品。きたるべき時のための生贄にすぎぬ。 』
そうだ、確か、魂がないって言ってた。
あんな優しくて温かく存在感があるのに、意味が分からなかったあの言葉が一番引っかかる。
「あとは、主神が魂を入れなかったので自分には真の自我は存在しないって言ってました。あと、自分の体は代替品で、きたるべき時のための生贄だって。」
ザワり、と神様たちの空気が変わる。
あれ・・・?
「それが一番大事じゃねぇか、バーカ。」
と、呆れた様なユイベルト様。
ええぇ・・・そんなの自分には分からないですよね?
「ほんに、豪気な子よのぉ・・・」
と、ため息をつくロロージア様。
喋りはしないが、ピカ神様も驚いた顔をした後に、何かを深く考えておられる。
「つまりだ、月神には元々、魂がない。俺たちには何も言ってなかったが、あんな最強クラスの力を持って、惜し気もなく世界の犠牲になれる。つまりは”そういうこと”だったんだろう?」
「魂がなくば、封じていたところで元の形に戻る事は難しい・・・か。戻る形がないからな。」
ピカ神までもが呟く。反抗期を凌駕するほどの言葉だったのか。
「だが未だ体がある以上、裏返る最悪だけは避けねばならんのぅ。いっそ完全に壊れてくれた方があと腐れなく良かったか。」
と、怖い事をいうロロージア様。
「でも、そうすると”預言”はどうなるんです?」
と、つい口をはさんでしまう。
三柱がこちらを見る。
「自分は、セレネーツァ様に新しい我に出会うと預言を受けました?ただの不思議な慰めだったのかと思いましたが、もし預言が大事なもので、真実になるのならば、自分は一体これから誰に会うんです?」
裏返ったセレネーツァ様にだけは会いたくないからね?本当にね?
来たるべき時の生贄っていうのが、裏返って悪い人たちに利用されるためだったとしたら本当に嫌だ。あれ?そうすると一番悪い人は主神様になる?あれ?
「そもそも主神様って誰なんです?」
その人が魂をちゃんと入れて居れば話がもっと早かったのではないですかー?ね?
微妙な雰囲気の神様たち。
おや?
「・・・そもそも、主神なぞおらんのだ。」
と、ロロージア様。
居ないものをいるって言うのも変だね?
「つまりだ、俺たちは世界と同義になる。」
すごいね、神様たち。スケールが違うね。
「今居ないとなれば、昔居たとしても認識できない。神に時軸はあまり関係ないからな。」
と一番親切に説明してくれるピカ神様。意外と面倒見がいいんですね?
でも・・・何か凄い事を聞いた気がする。
要はあれか。昔主神様がいた、主神が魂を月神様にいれなかった。そして主神様は消滅した。そして誰にも観測できなくなったって事か。
「月神があえて”主神”というならば、今の言葉に置き換えれば天神。我らの始祖、空から堕ちた神であろう。なぜ敢えてセレネーツァにだけに魂を入れなかったなど天神の事情は知らんが。」
「月神は最古の一柱の一人。天神の記憶なども多少受け継いでいても何の不思議もないからのぅ。」
「あの女の考えていることなど、分からん。」
バッサリと切るピカ神様。
・・・・ていうか、あれか!
ファルディアのオープニング!
「堕ちた隕石・・・。三つの欠片。」
世界の創世記。
天神って隕石だったの?となると、三つの破片も意味があったりしそうだなぁ。
考えてると、ユイベルト様がこちらを見てるのに気づく。
「・・・霧向こうの民たちは、こちらに初めて来る際、揃って幻覚?を見せられるんです。それが隕石が荒れ地に衝突し、世界が創世するところでした。」
と、無難に答えておく。
まぁ間違いではない。
「月神の記憶にリンクしたのかのぅ。」
とロロージア様。
オープニングって説明できないしね!。
「ユイベルトも最古の一人ではないかのぅ?」
「俺様が余計な事を覚えてると思うか?」
「覚えていても忘れてそうじゃのぅ。」
と、軽口をたたき合っている。
結局神様たちが考えても分からなかったので、これからどうするか会議をするしかないという事になった。
神様も大変だなって思う。
何処で会議をするかなど盛り上がってるところ、じっ…とピカ神がこちらを見てる事に気づく。
幸い、『お前を殺す』という威圧感はなくなっていたが、一体何なんだろう?
「…お前は…いったい何なんだ?」
それ、同じことを、今あなたに思いましたよねー!
言えないですけど!
神様だから気づいてるかもしれないですけど~!
だがしかし、何なんだと言われても該当する言葉がさほどありはしないわけで。
「う~ん・・・?ただの雑魚キャラ?」
ですかね?
ブハッ!っと吹き出すユイベルト様。
「繋がりません(キリッ。とか言い出す影族がただの雑魚キャラ!!!」
と、めっちゃ笑ってる。
相変わらず笑いの沸点が低いなぁ・・・。
「どうみても特殊個体じゃの。」
とニヤニヤしてるロロージア様。
ロロージア様の方がキャラが濃いと思うのですが・・・。
「と、言われても、したい様にしかしてないので?自分は自分ですかね?」
と、首を傾げざるを得ない。
無理してキャラを作っているわけでもないですし、本当に嫌な事は全力でやらない主義だしなぁ。
キャラデリになってもやらないっていうのは、ある意味頑固者かもしれないけど。
「強いて言うなら頑固者・・・?」
ますます首をかしげていると、ユイベルト様が咽ていた。
そんなに面白いですか?
目の前のキラキラピカ神様はますます困惑している様に見える。
ピカ神様が結局、首を捻って出した結論が、
「お前は・・・変だ。」
でした。神様に、堂々と変と言われました。
本当にありがとうございます・・・・・。
「ハイ・・・。」
そんな真面目に変と言われても落ち込むなぁ。
変っていうのは、いかに全裸に見えるかっていう装備を熱心に開発する様なプレイヤーにこそ送ってほしい。自分は割と普通の分類だと思うのだけれど。
「だが、どちらかと言えば好ましい分類に入る。アポリアに影族のお前が入るのは大変だろう。」
そう言うと、手を上げられる。ポウゥっとピカ神様の指先が光り、3秒ほどですぐに消える。
「我が守護をくれてやる。それでアポリア王国にはある程度入れるだろう。また何か情報が入ったら伝えに来い。」
と言ってくださった。
これは、有難い。
もう捕まらなくていいって事ですよね!
「有難うございます!」
って言うと、無表情にうんうんと頷いていた。
「”法治の”がデレるとは珍しいのぅ~。」
ロロージア様、俗な言葉をご存知ですね。
「俺様の民なのに~!」
と、なんだか嬉しそうなユイベルト様。
この人の判断基準は本当に謎だ。
流石俺のおもちゃ!とか思ってないですよね?
「会議はカタベントで行う。繋ぎはとった。行くぞ。」
と消えるピカ神様。
相変わらず唐突にいなくなる。
「あらぁ。もう少し遊びたかったのに、残念じゃのぅ。」
とロロージア様。
「ではな、かわいい子。今度はゆっくり我と遊ぼうぞ。」と、自分の顎につつっと指を這わせて、やはり唐突に消える。
ぞわってしました!ぞわっって!
やめてください!!
そんな自分をみてフッっと笑っているユイベルト様。
正直、影じゃない姿は違和感マッハだけど、この神様がいるとやっぱりどこか安心するんだよね。
繋がってないけど、不思議。
「お前は繋がってないんだから、適当にやれよ。」
ワシワシとちょっと痛めに撫でてくれながら、掻き消えた。
・・・やっぱりクソ鳥の件とかで心配してくれたのかな?ちょっと、嬉しい。
・・・あれだけキャラが濃い人たちが唐突に全部いなくなるとやはり寂しい感じがするはずなのに、世界は居ないことが当たり前、といった雰囲気になっているから不思議だ。
「神様は世界と同義。」
これは本当のことかもしれない。
世界のどこにでも神様達はきっと存在しているのだろう。
ところで、全力で見ない様にしていたんですが。
・・・・。
五体投地した文官さんは、いまだにその場で気絶をしている。
多分ピカ神様の「ユイベルト殺す」オーラで気絶したと思う。
ピカ神様は、自分所の信者だと思うんだけど、もう少し優しくしてあげたほうがいいのでは・・・?
はぁ・・・これ、どうしよ?
誰か呼ぶ?ねぇ・・・。




