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ふぁるでぃあにっき。  作者: コミヤマミサキ
7月 ~ファルディアと日常~
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2-37 鎮守

 声を大にして言いたい。


 この状況が、ユニークスキル『主人公補正』とやらの影響ならば、『お助けキャラはどこですか?』と―――――。



 何とか森に逃げ込む。

 逃げ込んだ後も必死に走る。

 視界が悪い森であるが、なるべく木々が切れていないところを走る。

 後ろの巨大鳥の火炎放射は終わったようで、既に音は聞こえない。だが、あの鳥はこちらを『絶対殺すマン』みたいなオーラ満々である。

 いくらなんでも執着心が強すぎやしまいか?

 自分よりも食いでのある生き物はもっとたくさんいるでしょう。



 ――――いや。


 どう見ても鳥が自然にとる行動じゃないだろう。

 アレを更に使役している存在がいるのだ。


 脳裏に浮かぶ、アルシオンで蟻に火を放ったおかっぱ男。



 蟻繋がりという事はそういう事だろう。

 誰かが人為的に蟻を増やし、攻撃をしている。

 あのクソみたいな鳥を使役できる存在にアルシオンは攻撃をされているのだ。


 そりゃぁ悪意も感じるよね。

 殺す気満々だもん。


 となれば、目撃者は消すという事であの鳥の執着心も分かる。

 もはやラフィーさんにメールを送ってあるのが幸いだ。後は自分の手には余るので上の人が考えればいい。自分は、あの鳥から逃げ切ればいいだけなんだけど・・・・


 手に余るよなぁあああああ、ほんと・・・。


 兎君がいなかったら絶対死んで――――


 まさか・・・。


 兎君がお助けキャラ?


 じゃあアレは独りで逃げ切るしかない?詰んでないか?

 兎君を見る。


「キュッ?」


 視線に気づいたのか左前方を自分のペースに合わせて走っていた兎君が振り向く。


 かわいい。

 癒された。

 頑張ろう・・・。


 最悪の場合ログアウトしたらどうだろうか?とも思う。

 だがしかし、ログアウトしきるまで無事でいる保証がない。

 かつ、敵意を受けてる段階でログアウトできるなんて聞いたことが無いから、たぶん無理!一瞬でも切れればできそうな気もするけど、そっちの方向で頑張るしかないのかなぁ。


 などと案を考えながら森を東側に進む。南に進むとすぐ森を抜けてしまうし、レティナさんがいる。多分すぐ死ぬだろう。他にも色々と調査している人がいて、薬士ギルドの人とかだったらやはり簡単に死ぬだろう。アルシオンからこの森は見えると思うので、鳥が暴れてたら誰か呼んでくれる可能性が高いのでこの辺りで粘るのが一番ダメージが低い。

 そう、自分以外には・・・。


 バキバキドガバキ!!!


 突然、近くで木々を折る物凄い音がする。


 これは、クソ鳥の攻撃・・・?風か!!

 レベル1桁のレティナさんでさえ2属性扱うのだ。あの強そうな鳥が2属性扱えたところで何の不思議もない。風を上手く捕まえなければあんな巨体で空を飛び回るのだって、狩りをして空に戻るのだって難しいだろう。


 木々は四方八方無秩序になぎ倒される。これは、竜巻とか風弾みたいなものか?


 バサァ!バサァ!


 強く聞こえる鳥の羽ばたきの音。


「キュッ!!」

 ひときわ強く鳴く兎君。


 ――――そうかこれは!


 前に大きく飛んで回避行動をとるが、きっと距離的に足りない。


 ぶぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!


 クソ鳥が力技で視界を作り、間髪を入れず火炎放射を放ってくる。

 影変化で右手の木にアンカーの様に影を打ち込み、すぐに縮小をかけさらに飛んだ方向を大きく変える。

 前回色々影変化の実験した成果が出てる!

 回転しながら飛んだけど、少し炎が掠ってダメージが入るが、何とか避ける事に成功する。



 が



 着地した筈の場所の地面の感覚がない。特に穴とかは見えなかったんだけど、地面の感触が無かった。


「キュッ!?」


 体は地面を掴まないまま、そのまま深い穴に落ちたかのようにぴゅうううう~と落ちていく。


「キュ~~~~~~~~~!!!??」


 あれ、兎君も一緒に落ちちゃったのかな?

 うさぎ・・・落ちる・・・某不思議の国の幻想小説みたいだな。








 と、余計なことを思ってると特にダメージもなく、ストッと底につく。

 今までの落下がまるで嘘のように。

 不思議な感覚である。





 一息ついて、落ち着いて見渡すとそこは、不可思議な世界だった。



 まず、上空。


 木々が脈絡もなく何本も生えている。

 そう、空中に生えているのだ。

 それも、1キロくらい高い所になる。


 そして空が普通に見える。だが、地面は見えない。

 落ちてきたはずの地面がまるで見当たらないのだ。


 上空の空中にオブジェの様なもの?が色々と浮かんでるのがみえる。

 家とか何かかな、あれ。

 やはりすべて大体1キロくらい上にある。


 そして、降り立ったこの地面。

 グリッド線の様な地面だ。黒い方眼用紙の様な。黒地に蛍光グリーンでミシン目が入っている様な感じに見える。

 何の起伏もなくフラットだ。


 上空をじっと見ていたが、特にあのクソ鳥はこちらに来る気配はない。

 肉眼でもここからじゃ確認が取れないけど、落下で距離を稼いだから感知範囲から出たのか、そもそも落ちるようなところでもないから落ちられなかったのか、鳥だけに落ちるという発想がないのか、巨体過ぎて通り抜けられなかったのか。

 なんにせよ、命だけは一回助かったみたいかな・・・?


「キュッキュッ??」


 不思議そうな声の兎君。



 何となく分かるこの場所。

 そっと、兎君を抱き上げる。



 多分、ゲームの世界の底に落ちたよね・・・。

 別のゲームでも時々あったけど、開発の予期せぬ穴とかが僅かに開いてて、そこに偶々落ちるってやつ。


 今回ばかりはナイスタイミングで助かったかもしれないけれど、帰還アイテムがまだないから、どうやって帰ったらいいか全くわからないよね。

 あとはGMにつないで助けてもらうしかないかな。

 と思い、ステータス画面を出す。


 ザザッ!ジジジジッ――――――


 システム画面にノイズが入り、画面が安定しない。時々歪んだりする。

 ありえない場所にいるからだろうか?


 文字さんを呼んでもあまり反応が見られないので、とりあえず一旦諦める。



 それに気になっていることがもう一つある。



 ちょっと遠い所なんだけど、フラットな地面のかなり先に、社みたいなのがみえるんだよね。

 普通に地面に生えてる森と、社。


 世界の底であろう、こんな場所にそんなものがあるっておかしいよねぇ?


 もしかしたら、隠された裏のステージか何かか?


 普通にプレイをしてたら一生見れないだろうソコに、ワクワクとしてしまう。


 うん、自分は何も悪い事はしていないし、GMにもつながらない。

 起死回生の為に見に行きましょうね~♪



「兎君!暇だから探検しに行きましょう!」

「キュッ!」

 兎君は多分快く同意をしてくれた。




 ―――――――――


 20分くらい歩いてやっと社に到着する。遠すぎるでしょここ。



 とりあえず、神社の様な鳥居がある。色は朱色なんだけど、くすんでいるのか何やら黒ずんだ印象を受ける。森自体も何やら黒っぽい。

 そして奥には小さいながらに立派な平屋の本殿がある。



「変な所だなぁ。」

「キュッ」

 多分同意のキュ!だと思う。


 その社や森は不吉まではいかないんだけど、陰鬱というかなんというか。

 好んでずっと居たい場所ではないなという印象。

 綺麗で雅なのに落ち着かない雰囲気。なんでだろう?


 でも、あの鳥居の上についている家紋の様なマーク、どこかで見た気が・・・。



「人の領域に突然来て、変な所とは随分とご挨拶だな。」



 唐突に”ソレ”は居た。

 見かけは7歳くらいの幼女であり、黒髪の美しい存在。

 空中に浮いており、十二単を加工して動きやすくしたような雅な服を着ている。

 ふわふわと、だがしかし圧倒的存在感で浮いている。

 なんでそんな存在感があるものが現れたのを見落としたのか、意味が分からない。


 だが、その出現の唐突さに既視感を覚える。


「影の王様・・・。」


 そう、あの地下で殺しあいのとき、唐突に目の前に居たあの神さま。

 あの唐突さを彷彿とする。


 それだけで決めつけるわけではないけれど、彼女の圧倒的畏怖を覚える存在感がよりそれを肯定しているように見える。



「ほぅ、”影の”の縁者か。・・・いや、我の縁者か。このような所迄来るとは余程数奇な運命と見える。」


 と、面白そうに笑っている。

 いや、ねぇ?来たくて来たわけじゃなくて事故っていうかねぇ?


「えっと、こんにちは。サクと申します。突然世界から落ちてこの様な所に来てしまいましたが、どうやって戻ればいいですか?」

 一応ダメもとで聞いてみるよ。


「本来の我なら戻してやる事は不可能ではない。が、今の我は唯の世界のゴミと同じ。ただ消えゆくのみでほとんど何の力もない。」


 なんか明るく怖い事言い出したなこの人。


「ええっと・・・。」

 何て言っていいか分からないよね。初めてあった人に「私今から死にます」って言われるようなもんでしょ。いくら神様でも困るよねぇ。どう言おうか困惑していると、


「なに、気にする必要はない。世界の定めなればこそ。我は元々この世界に真には存在しておらんかった。いかに褒めたたえられ、世界で最も美しい花と言われようと、我に真の自我は存在しない。主神が我に魂をいれなかったのでな、この体は代替品。きたるべき時のための生贄にすぎぬ。」


 もっと困るよねぇ~~~!!???

 魂が無いとか意味わからないし。じゃあ今話しているこの人は神様なのに体だけで魂が無いって事?

 楽しそうなのに全部偽物ってこと?


「すまぬな。久方ぶりの客人ゆえ、つい余計な口が滑った。許せよ。」と面白そうに笑う。こんなに楽しそうなのに、魂が無いってどういうことだろう・・・。多分神様の考える事は全く分からないよね。


「そもそも、神様でいいんですか?」

 つい、ご本人に聞いて確認してしまう。


「いかにも。」

 と神様が頷く。

「我は、以前の名は月神セレネーツァ、と呼ばれしもの。今はその残滓にすぎぬ。本体は遠く離れた地に封じられており、後は消えるか、贄となり裏返るのみ。」


「贄。」

 神様が生贄になるっていうこと?どいういう事なんだろう。後、裏返る・・・?ってなんだ?


「世界を壊したいものどもにとっては格好の獲物じゃからの。」

 ククッっとセレネーツァ様?が笑う。

「よくわからないけど、消えるか悪い人の生贄になるかって事ですね。」

 そこまでわかってて、こんな楽しそうなのもよくわからない。


「然り。そして、我は”居ないはず”の存在。”在るはずのない”この空間だからこそ存在し、観測者である汝が居たから呼び出されたのじゃろう。」

 えっと・・・自分が落ちたせいでバグったってことかな・・・。


「まぁもともと、奴らのせいで世界に歪が出来ておった。そこに運悪く汝が落ちてきて、縁がある我が定着したと思えばよかろう。」

 それでも、よくわからないよね!ただ、奴らっていうのは・・・あの黒い魔法陣を作った人たちなんじゃないかなって。


「世界を壊そうとしている人たちがいて・・・そのせいで世界に歪みができて、たまたま自分がそこに落ちたという事ですかね。」

「うむ。」

「でも・・・。」

 一番わからないのは”縁”かな?

「縁って何です?自分はこの世界に来たばかりです。セレネーツァ様にお会いしたことも初めてなのに、縁?」


「一番確かな”縁”はその一振り。」

 そう言って、自分を指さす。

 一振りって・・・剣?

 慌ててインベントリから剣を出すと、薄く淡く銀色に光っているが、すぐに収まる。


 ・・・あっ?!このシュライブングの剣 が月神様の縁?

 確かに、見慣れない月と扉みたいな紋章がついていて・・・そう!ここの鳥居の紋章ととても似ている!

「その剣はかつて我に仕えし者に下賜したもの。巡り巡って、そなたにたどり着いたのも確かな縁。」

 そう言って懐かしそうに笑う月神様。

 その目はかつての過去を思い出しているのだろうか。

「その剣がここまでの道を開いたのだろう。」

 うーん、たまたま落ちたと思ったのだけれども、剣があったからより落ちたのか?それとも剣のせいだったのか?まさか”落ちる”こともイベントに含まれてるのか?


「もう一つは汝の生まれ。汝は創造神の類縁ぞ?我とは系譜が異なるが、元をたどれば恐らく同じ。人間の様に言えば親戚になるだろう。で、あるなら多少の縁もあるというもの。」


 なんてことはない様に、月神様はとんでもない事をいう。


「えっ・・・。」

 指先が冷えていくのがわかる。

 人間じゃないのに、影族は血なんかないのに、目の前がちかちかする。

 貧血の様な兆候。


「これこれ。」

 フワッっと温かい感触。微かに鼻孔をくすぐるヒノキの香り。

 気付いたら月神様が浮いたまま、自分の頭をそっと抱きしめてくれていた。その感触に意識が現実に引き戻される。

 もしかして、倒れかけた・・・かな?


「そんなに怯えなくてもよい。汝は唯の人間で、この世界を形作っている光が、汝には良く降り積もっている。ただそれだけの事だ。」


 よくわからないけど、なんか安心する。

 この領域は不吉なのに、月神様だけが、ぽかぽかと温かい。

 幼女なのに、ばーちゃんに抱きしめられている様な感覚を受ける。

 まぁ神様だし、同じようなものかな・・・。


 自分が落ち着いたのを見計らった様に、月神様がそっと離れる。



「一つ、予言を授けよう。」



 そして突然、不思議な事を言い出す。

「我は死ぬ。否、生きてないので既に死んでると言っても間違いではない。だが、新しく生まれ変わった我が汝と邂逅するだろう。」

 自らの死の予言なのに、当たり前の様に笑っている月神様。

 その予言が何の意味を持つかもわからぬまま、ただ忘れない様にしなければと思う。


「我に何の力もありはせぬが、道標くらいにはなるだろう。汝に月神の加護を授けよう。」

 そう言って、そっと空中から額にキスをしてくれる。

 魂が無いと言っていたのに、死んでいると言っているのに、この神様のやさしさは何だろうか。


 ぱあぁあああっと世界が銀色に光り出す。

 それはまるで、月光を集めたアルシオンのあのモニュメントの様で。


「剣の(えにし)がある場所にしか繋げられんが、許せよ。」

 そう言って笑うセレネーツァ様。

「まって・・・」

 よく分からない事ばかりだけど、もしかしてもう二度と会えないって事じゃ・・・

 世界の白さが止まらなくて。



()らば。」


 最後に、ぽつりとそう聞こえた。

絶対殺すマン・・・元々はジョ〇ョの奇妙な冒険の某スタンドの通称。転じてゲームやアニメで絶対殺す!と来るキャラを絶対殺すマンと言ったりする

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