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ふぁるでぃあにっき。  作者: コミヤマミサキ
7月 ~ファルディアと日常~
32/444

2-31 コリエ平原 4

後半部分は、血などの表現が入っております。苦手な方は飛ばしてください。

 突然頭に飛びついてきた(懐かれている・・・?)兎君と一緒に、パトロールに戻る。


 パトロール。


 いい響きだ。


 そこはかとなく”子供のお使い”感が漂う。



 ・・・。



 『早く強くなってもっとカッコイイ事したい!』って思う程度にはまだ自分厨二病ですがね!



 今度は蟻討滅戦に参加できるぐらいにはレベルを上げたいところ・・・てゴブリンの時にも思ったなそれ。

 そもそも、展開が早すぎるんですよね。

 こんなまだ装備もないペーペーの段階で死に過ぎだし。強い敵出まくりだし。


 などと、いつものようにツラツラ余計なことを考えながら歩く。

 だが、兎君を欲望のままにモフってはいる。

 さっき、つい抱き上げちゃったけど、嫌がらなかったので抱っこしたまま移動している。お尻をしっかり持って(そもそも、どこがお尻か若干わかり辛いが)、安定感重視だ。


 嫌われない程度に様子を見ながらモフっているのだけど、嫌がってるそぶりが無い。


 耳をぺたーとしてリラックスしている雰囲気がするから多分大丈夫・・・なはずだ!

 兎は臆病な動物だし、草食動物だから長い耳が感知センサーなはず!

 つまり耳が緊張していなければ、安置だとおもってくれているはず!

 ・・・多分。そう。


 現に、触っても体を動かさないしね。

 たまに顔を動かして手をツン!ってしてきたりする。


 か、可愛い・・・。


 などと兎君と戯れていると、ふと見ると周囲を30頭程の牛っぽい生き物に囲われていた。

 白と黒じゃない、どちらかと言えばジャージー牛みたいな茶色い牛。


 その牛が、自分の匂いを嗅いできたり、鼻先で小突いてくる。


 何となく全身で「なんだこいつ」感が出ている。

 人間なのでそこまで警戒はしていないが、見慣れないので不信に思われてるのかな?

 牛に通じるとも思えないが「悪い人が出たから、大丈夫か見回りしてるんだよー」と一応伝える。全然伝わってないけど。


 牛は力も強いので、刺激しないようにそっとゆっくり歩く。

 確か、足を踏まれたら無理に抜こうとすると骨折するって聞いたことがある。

 こんなところで牛が動いてくれるのを待ってるのは非常に嫌だ。

 もちろん慎重に歩みを進める。

 そんな自分の動きに、ぞろぞろとついてくる牛。

 でも、歩く方向は避けて道を開けてくれる程度には、こちらの意をくんでくれる。


 今日は動物ついてるなぁ?と思いながらも目的の不審物がないか探しながら牧場内を移動する。


 牛もただ歩いていくだけ自分に飽きたのか、そのうちだんだんいなくなり、ご飯を食べるのに夢中になっている。



 ・・・この辺広いなぁ。


 街の中なんだけど、そんな気が全然しない。

 凧上げとかやったらはかどりそうな、ドローン上げ放題な感じ。

 うちの方も田舎だけど、それなりに集落だから人は集まっているしね。

 探せば空き地とかあるんろうけどさ。


 それにしても、”何も”見つからないなぁ。


 いや、ないほうが良いんだろうけどね?

 と思ったのがフラグになってしまったのか?良くなかったのか。


 何かうっすらと嫌な気配がする。

 それがだんだん近づいてくる・・・ような?


 でも、何が原因とかさっぱりわからない。

 もしかして、蟻というだけあって地下から穴掘ってきたとか?と思ったりもしたが、地面はよく考えたらアルシオンの地底部があるので、おそらく違うだろう。

 となると・・・?


 と、考えてて気づいた。

 空だ。

 空・・・・。何だあれ?

 米粒みたいなのが・・・こっちに沢山?


 何かわかった時は血の気が引いた。


 蟻が何故か空から沢山放物線を描きながら、こちらに降ってくるのだ。


「ぎゃーーーーーーーーーーー!!!???」


 思わず叫んだ。だが、遠巻きにいたヤギやら牛なんかも思わず逃げてったから、良かったかもしれない。


 アイヤー!?何で!?


 と思ってると蟻爆弾?は、ボトボトと落ちてくる。


 ドスン、ドスンドスン。


 そのうち氷漬けの蟻とか交じりはじめて、まじで、やばい。


 遠巻きにしてた動物たちも、それを見てダッシュで逃げていく。

 避けるのは比較的難しくないが、後から後から蟻のお代わりがくるので、数を読み間違えると大変だ。

 気配察知を意識しなおして気合を入れる。ヤバかったら影移動・・・!って思ったけど兎君がいるんだった!


 落ちてきた蟻は大概死んでいたが、たまに痙攣している蟻もいる。

 とどめを刺した方がいいよね?


 と、突然兎君が腕の中でバタバタと暴れ出す。

「い、今は危ないから暴れないで!」

 って言ったけど、突然のことでスルリと腕の中から逃げ出す。

 地面にスチャッッと降り立った兎君。耳をピーンと立てて蟻は軽々と避けていく。



 ・・・もしかして、兎君の方が安定していてレベルが高そうですね?



 顔がチベットスナギツネみたいな感じになる。

 う、兎より弱いプレイヤー(落涙。


 本当に、レベル、上げよう。と、心に誓う。



 とりあえず、経験値になる可能性もあるし、大丈夫そうな合間をみて生きてる蟻にとどめを刺す。

 け、決して経験値だけが目的ではないですからね!


 くそー。



 そういえば、これって、ラフィーさんが言ってた不審な事?

 ・・・じゃないよなぁ。やっぱり。


 どっちかって言うと、暴れている冒険者さんたちの前線でなんかあったって事だろうなぁ。


 しばらくたって、蟻爆弾も落ち着いた。

 空からは多分、5,60匹は降った。

 これ、家の中に生きてるのが落ちてきたら大惨事になりますよ?

 大丈夫なのかなぁ?




 とりあえず、蟻は生きているのがいないことを確認する。


 なお、蟻にとどめを刺してもレベルは上がりませんでした。


 くっそー。


 まぁ、ステータスが上がらなくなるからいいんだけどね!

 負け惜しみじゃないからいいんだけどね!



 そろそろ、次に移動しようかって思ってると、


「キュッキュ―――――――――!キュッキュッキュッキュ!!!」


 兎君が突然鳴きだし、すごい勢いで北門の方に走って行く。

 ちょっと待って?自分よりも相当早いんだけど!?


 兎君とのレベル差を改めて見せつけられて辛い。

 だが、それよりも毛玉が高速移動する様がシュールだ。


 兎君を追いかけて暫く走ったが、あっという間に兎君は見えなくなってしまった。

 兎君・・・ちょっと懐いてくれたと思ってたのに寂しい。


 お別れも言えなかったが、また会えるかな・・・・?




 気を取り直し、システムからメールを呼び出し、ファルディア初の自分からメールを送る。

 上司への報告・連絡・相談。これ大事。


「ラフィーさんもしもし~?聞こえますかー?」


 そうすると、しばらくすると返事がある。


「聞こえてるぞー!なんかあったか少年!?」


「いや、なんかあったと言えばありました。多分想定外の事ですが。」


 そう言って、牧場まで来たことと、空から沢山の蟻が降ってきたことを伝える。

 ラフィーさんからはため息交じりのメールが飛んできた。


「すまない・・・少年。いつもの事なんだが、いや言い訳にしかならないが、こちらも力不足で影族と髭族の暴走を止められなかった・・・。そいつらは異変とかじゃないから安心してくれ・・・。だが、牧場の方まで飛んだのか。下手をすると農作物や建物、人に被害がある可能性もあるな。ありがとう、その事実をネタに早速やつらをしばいてこよう♪良く知らせてくれた!」


 最後サムズアップしてそうなルンルンの声ですね・・・。


「あと・・・。」


「なんだ?」


 一応言っといた方がいいよね?


「なんか、牧場にでかくて丸い兎が1匹いました。」


「フラフか?珍しいな。北の森に生息する弱い魔獣だが、臆病だから街にも来ないし、人にも動物にも基本的には寄り付かないんだが。」


 兎君、アレで弱いのか・・・。

 そうすると、自分はさらにもっと弱いのか(落涙。


「よくわからないですが、急に頭にへばりつかれて、今さっき急に鳴きながら北門に走って行きましたよ。」


「フラフは隠蔽能力が優れてるからな、跳躍力もあるし、どっかの塀から逃亡していきそうだな。人懐っこくはあるが、まぁ本当にフラフならばそれは問題あるまい。基本的に人間の害になり辛い生き物だ。」


「分かりました。」


「今、別の分隊が東部半分を見回っているところだ。そちらももう終わりそうとの報告を受けたので、少年はもう見回りを牧場で切り上げてくれていいぞ。後はこちらで残りは見回っておく。本当に助かったありがと。。。。チョアァア!」


「分かりました。では失礼します。」


 蟻を突き刺したんですね。

 わかります。


 ラフィーさんとのメールが終わり、戻っていいとのことなので、ぶらぶら散策を終えて戻ろうか。


 あ、蟻どうするか聞くのを忘れた。

 ・・・一応、持ってった方がいいよね?

 万が一、牧場の動物たちが食べてお腹壊したらまずいし。

 仕方ない、回収しに戻るか。


 と、いうわけで新しいリュックに初めて詰めたものは大量の蟻の死骸になりました・・・・。


 微妙。




 ―――――――――――――――――――――




 ――――――――――アルシオン地下、影の城。




 その城のさらに地下数階。

 そこは生誕の間とは別に、監獄の間というものが存在している。

 影族の囚人をつなぐ、強固な死なない程度の明るさの独房とは別に、他種族用の独房も存在している。基本的に城で繋がれるのは重罪人が多い。その分、檻は強固で、堅牢。そして意外にも、陰湿でありながら監獄にありがちな汚物や害獣などの生物の営みがあまり感じられない。


「テルメ師、お待ちしておりました。」


 その容易に入り込めない監獄にアルシオン唯一の高位司祭テルメは呼ばれてきていた。


「お勤めご苦労様です。」


 迎えに来てくれた顔なじみの連隊長デフィオに(影族だから雰囲気馴染みと言うべきだろうか?)微笑を浮かべて答えるテルメ。


「どうぞ、ご案内します。こちらです。」


 と、デフィオはせんだって歩きはじめる。

 歩幅は背の低いテルメに合わせて、影族にしてはゆっくり歩く気遣いを見せる。

 地下の監獄の間は自然の洞窟に石畳を敷き詰めたような、そんな風合いをしている。衛士えじが巡回するには楽だが、独房の中は石畳はないので居心地は悪い。

 衛士よりもか弱いテルメにでも歩きやすい通路でありがたい。


「使者の方によると、例の襲撃をかけてきた高位魔術師が『溶けた』とか。」


「そうですね。いかにも。」


「ユイベルト様には?」


「今だ王はお戻りになりませぬ故。」


「なるほど、だから私が呼ばれたわけですね。」


 影の国で、最も法術に優れているのはテルメだと自認している。

 魔術師はそれなりにいるが、この国の高位魔術師はどちらかといえば土魔法などに特化している者が多い。ほとんどがエルフなので、畑関連や動物には鼻が利くが、対人だと苦手な者も多い。


「新たな卵が産まれました故、王は近日中には一度お戻りになるでしょうが、だからこそ些末なことはできるだけ我々で片付けたいところでして。」


「高位魔術師の襲撃を些末な事と仰るのですね。」


 物理特化の影族の最も弱いのが魔法攻撃である。

 何の対策もせず、不意打ちで高位魔術師による魔法攻撃を受けた場合、いったい何人の影族が無事でいられたか怪しい所である。

 最も、魔法特化の高位魔術師だったからこそ、物理特化の影族にも弱く今回は何とかなったのであるが。


「我が王を煩わせるには些末な事でしょう。」

 この連隊長は誰よりも影の王を敬愛している。

 例え法治の神が戦を仕掛けてきたところで、些末な事だと切り捨てるだろう。

 神官としては人命の危機が些末とは言い難いものの、その辺りは分かり合えないと理解しているので、あえてデフィオを問いただしたりなどはしない。

 そして、デフィオはある檻の前でピタリ、と足を止める。


「こちらです。」


 まず、テルメの鼻に鉄臭い嗅ぎなれた臭いが届く。

 そこには凄惨な現場が広がっている。

 牢屋の中心に倒れてる黒のローブの人型から、牢の中いっぱいに広がる血のり。

 男は目を見開き、だがしかし少し裏側は減ってそうではあるが人型の原型を保っている。

 『溶けた』と聞いていたので、もうどうしようもなくグチョグチョの最悪の所までテルメは想像したので多少拍子抜けした。

 だが、この死に様はどうだろう。見ただけでは『溶けた』と言うには少し異なる気がする。

 どちらかといえば、高い所から突き落とされた様な感じだ。

 もっともそれにしても、牢屋でどうしたら転落死のようになるのかという話になるのだが。


 こういった現場にはある程度慣れてはいるものの、凄惨な様に眉をひそめたテルメなどお構いなしに、連隊長は檻を開ける。


 キィ。


 牢が内側に開かれた扉の音が、いつ聞いても不気味だ。

 部屋に入ると、より現場の不気味さが際だつ。


「それでは、魔法の行使をお願いします。」


「賜りました。」


 そう言って、テルメは精神集中(コンセントレーションを始める。

 厳密には今回の行使は魔法ではない。

 ただ、自らの魔力を活性化させ、魔法的知覚機能を上昇させ、徹底的な感知を行う法式。

 探し人や、失せもの探しや探知魔法の下位の物である。

 魔法の位階の基本にして、基礎。

 だがしかし、全ての魔法に通ずるものであると言ってもいい。

 そして、


『なるほど・・・ですね。』


 理解をする。

 魔法には鈍感な影族が、被疑者が獄中で『溶けた』と形容した理由。

 一見したら溶けたとは見えないソレ。

 魔法には鈍感だが影族は『存在力』一点においては誰よりもセンシティブだ。


 そして、あまり知られてはいないが、どの生き物にも存在力はあるのである。

 ただ、肉の器が安定していて、他種族には全く意識されないだけなのだ。


 部屋の隅々まで『知覚』をし、漏らしはないと何度もテルメはチェックをする。

 万が一でも間違いがあったら国全体の不利益に繋がりかねないからだ。

 そして、納得いくまでチェックをする。


「終わりました。」

 魔力を鎮めデフィオに告げる。


「あなた方が『溶けた』と表現した理由が理解できました。確かに肉の存在力が”解かれ”『溶けた』という表現は妥当かもしれません。この方が体の内に持っていた魔力か何かが影響を及ぼしたのでしょう。おそらくは自爆装置の一種。」


「・・・ついぞ、そう言った事象など聞いたことがありませんな。」


 思案顔の雰囲気でデフィオが言う。

 それはそうだ。人間一人を魔術で溶かすより、毒を飲ましたり、その魔力で心臓に穴を開けたりした方がよほど早い。


「そして、・・・」


 やはり言っておくべきだろう。

 いや、言わないわけにはいかない。

 だが、神に仕える身としては躊躇わせるソレ。

 何度も感知しなおしたが、答えは何度も感じるその気配。


「溶かした魔力は人間の物ではありません。神の気配、そしてただの神ではなく裏返ったものでしょう。ただ殺すだけなら、もっと簡単な手法がいくらでもあったでしょう。神の気配を残し、影族が感知できうる異常な方法で殺す。すなわち、これは邪神、もしくは邪神に連なる強い個体からの宣戦布告ではないかと。」


そうテルメが言うと、デフィオは動きを止め、数秒後、普段仏頂面のデフィオからはあり得ない喜色を感じる。

そしてデフィオがつぶやく。



「それは、それは・・・・。大変面白くなってまいりましたね。」



その雰囲気はあまりにもユイベルトに似ていて。



テルメは思う。


―――――そうだ、こいつら全員影族(ノーキン)だった、と。

安地(安置)・・・安全地帯の略。ゲームなどで、敵の攻撃を受けない場所、安全な場所の事指す。



先のお話はいくつか書き終わってるのですが、途中が無いので完全に”ストック的にはない状態”になりました。また、校正や、設定を増やしていくと思いますので次回からは不定期更新になります。


また、ブックマークや評価を下さった方々有難うございます。

拙作ですが、このお話の結末が書きたくて頑張っております。これからも、よろしくお願いいたします。

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