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ふぁるでぃあにっき。  作者: コミヤマミサキ
7月 ~ファルディアと日常~
28/444

2-27 水餃子

 昨夜はログインすると言ったな。


 あれは嘘だ。




 おはようございます。


 昨晩はひとしきり内田にスリーパーホールドをかましたりなどしていたら、30分くらい経ってしまったので、結局いつものように朝早く起きることにした。

 内田は案の定、まだギアを被っている。

 完徹したな。


 夜食もきっかり食べた跡がある。どうなってるんだろ、こいつの胃袋。



「ば~~~ちゃんおはよ~~~~!」


 1階に降りるとバーちゃんが朝ごはんを作ってくれていた。

 今日はちょっといつもと匂いが違う・・・。

 内田がいるから、少しだけ凝ったものを作ってるのだろう。

 何となく餃子っぽい匂いだ。


「あい、おはよーさん!今日は雨だから水やりはええでー。」


「ほんと~!?」

 ラッキーと言えばラッキーかな。


「ばあちゃん他になんか手伝ってほしい事ある!?」

「ばあちゃん、今日お隣の星野さんとデートすっから、行く前に掃除機かけっから、居間以外はたきかけられたらかけといてー。」

「わかったー!」


 高い所は自分のお仕事です。

 ふんふん~♪

 はたきがけは割と嫌いじゃない。

 窓という窓を開けると、ばーちゃんの言う通り、シトシトと雨が降っている。昨晩は月が見えたのにな。


 はたきを高い所から順番にかけ、あらかた部屋を回り終えたらまだ朝食はできていなかったので、出来るところまで掃除機もかける。


「おお、掃除機もありがとうさん。」

 仏間の仏様のお茶と水をばあちゃんが変えに来た。

 朝の爺ちゃんの線香を立ててたので、一緒にたまには立てておく。

 お供えはこの時期虫が付きやすいので缶に入ってる水ようかんだ。



「そろそろ朝ごはんにするけ。」


「はーい。内田呼んでくる。」



 2階の自分の部屋に行き、内田のヘッドギアの赤いボタンを押す。


「今すぐ起きたまえ。さもなくば、貴様のベッドの下に隠されているロザリーちゃんをお前のカーちゃんに引き渡すぞ。」


 前に内田の家に行ったときに見つけてしまった疑似彼女(その晩、寝言でロザリーちゃんマジ天使って言っていたから、多分名前がロザリーだろう。)で、さくっと問題解決をはかる。早くログインしたいのだ。

 だらだらと内田に付き合っていたくない。


「・・・・!?・・・くぁwせdrftgyふじこlp !!???」


 今時、くぁせふじこっていう奴本当にいるんだなーって思いながら、内田を置いて階下に戻る。ドッスンバッタンしてたから多分すぐ来るだろう。ちなみにロザリーちゃんは英語じゃない外国の雑誌の白ギャルだった事をここに記しておく。誰かのお土産かいな。



 ―――――――――



「ダイスケー。今日は早いなぁ。」


 ばーちゃんが笑いながら内田におはようの挨拶をする。

「ばぁちゃんのはよぉおおおお!聞いてよコイツひどいんだよぉおおおお!!」


「ロザリーちゃんバラすって言っただけじゃん。」


「うわぁあああやめろぉおおおお!」


 泣きながら耳をふさぐ内田。自分でふってきたのに。


「ロザリーってなんね?」

「内田の疑似彼女。」

「ああ、もうそんな歳かぁ。早いもんだなぁ。」

 カカカカカっと明るく笑うばーちゃん。

 内田とは小学生の時からの付き合いだから、ばーちゃんも子どもの頃をよく知っている。


「どんれ、ばぁちゃんもいい子いたら買ってきてやんべよー?ダイスケはどんな子がいいね?」

「洋物の白ギャル。」

「把握されてるぅうううううううううう。」

 ばぁちゃんもやめてぇええっと内田が叫んでる。完徹なのに元気だな。


「洋物はばぁちゃんには敷居が高いわー!どれ、こんどダイスケに釣書持ってきてやんよ。」

 ばーちゃんもノリノリだ。

「ばーちゃん、さすがに早すぎる。せめて就職したらじゃないと駄目だよ。」

「え!?釣書ってなに?」

 意味が分かっていない内田。

「お見合いの時に渡すプロフィール書面。写真付き。」

「マジものじゃないですかーーー!やーーだーーーーー!」


 女にまだ幻想を抱きたいという内田の必死の説得により、お見合いはナシになった。ばーちゃんも多分本気じゃないと思うんだが、僅かな可能性を否定できないところが恐ろしい。


「そういえば、内田はいつ帰るんだ?」

 今日の朝食の水餃子のスープとごはんと漬物を食べながら内田に聞く。

 朝から水餃子とか贅沢!ショウガがたっぷり入っているところを見ると、ショウガを使い切りたかった模様。


「やだ、私がいない時に浮気をしようとしてるわね!」

 内田も箸が止まらないくせに、変な演出を入れてくる。


「気持ち悪いからヤメロ。」


 くねくねと動く内田。徹夜のハイテンションだろう。日頃テンションが高いのに輪をかけて上がっている。


「今日も夕飯食ってくか~?」

 と、ばぁちゃん。ばぁちゃんはスープは少しで米を既にスープの中に入れている。その上にお漬物トッピングだ。


「いや、さすがに今日は帰らないと怒られるので限界までファルディアにログインして、落とされたらそのまま寝ます。そして帰ります。夕飯迄には・・・?多分?」


 何だ多分って。


「ばぁちゃん、VRは健康のためにログインできる時間が決まってるんだよ。内田みたいなアホがいるから。その限界までやって寝たいだけ寝て食わずに帰るってさ。」


「なんだ、じゃあきっと夕飯はうちで食ってくな。」

「いつものパターンだね。」

「うぐぅ;;;だけど、明日は終業式だからさすがに帰りたいところ;;;」

 毎回帰る帰ると言って、夕飯の匂いに負けてうちで食べてしまう内田には説得力がない。というか食欲で多分目が覚めている。


「ばーちゃん、自分はちゃんと寝たから、朝ログインして昼から内田は静かになると思うから勉強するけど、何か手伝ったほうが良いことある?」

 買い物とか買い物とか重い荷物は持ちますよ?

「あー!ばーちゃん!おれもおれもいく~!」

 一度も行ったことがない内田が挙手をする。内田の場合行く気はあるのだが起きられないだけであるが。

「隣の山田さんが買い物一緒に連れてってくれるっていうから無理してこんでもええが、たまには一緒にいくか?」

「そうだね。」

 内田の分もきっと買っちゃうだろうから重くなるだろうしね。山田さんにうちの荷物持たせても悪いし。

「15時位に準備すればいい?」

「山田さんが迎えに来てくれるのが15時だわ。」

「りょ~うかい~。」

 それまでに準備をしておきましょうね。

「俺、15時に起きる自信ない;;;;」

 内田が慄いている。


「大丈夫だ、初めから知ってた。」

 内田などはじめから勘定に入れていないのだ。ばーちゃんでさえも。



 ―――――――――――――――――


「そういや、内田は今何やってるんだ?レベル上げ?」


 一応参考までに最前線の情報を聞いてみる。実際プレイを始めてしまうと情報収集をしないで現場に飛び込んでしまう方が楽しくて全然掲示板とか見ていない。

「レベル上げだけど~ただのレベル上げじゃなくて負荷をかけてレベル上げ?」

「なんだそれ。」

 聞くところによると、負荷をかけたステータスが伸びやすくなるとのこと。伸ばしたいステータスを重点的に伸ばすための労働もしているのだという。

「あー確かに階段を上り下りした次のレベルはVITが良く伸びたわ・・・。」

「階段の昇降かぁその手もあるかぁ。・・・でもアポリオンには階段がそもそもあんまないわw開拓地だしw」

 と、内田。

 じゃあどうしてるのか聞いたところ、VITならば長時間の走り込み、AGIなら全力ダッシュや砂ネズミを捕獲するらしい。STRなら重いものを動かすとか。

 何それゲームなのにどんな苦行・・・?廃人ってホント怖い。

「内田も重いもの動かしてるのか・・・。」

 こいつもどちらかと言うとノーキンスタイルの高火力を好む質である。よく使うのが騎士然とした格好だ。VITやSTRを伸ばしそうだ。

「昨日はあの後、憲兵さんにとっつかまって説教されてVITが良く伸びました」

 お前のプレイスタイルどうなっとるねん・・・。


 ―――――――――――――――


 ひとしきり情報収集?をした後、ログインをする。


 どこでログアウトしてたっけ?って思ったらエルフの村長さんちの前でした。はた迷惑もいいところだった。

 ・・・そういえばログアウトしてる間この体はどうなってるんだろうか?などと思いながら、どこへ行こうか考える。


 前回は確か・・・レティナさんとPTを組んで、馬鹿なことを言い出すから頭にきて、無理やりフレンド登録して、そのまま逃げたんだった。



 ・・・・・・・・・。



 うっわ、自分恥ずかしい!今思えばナンパみたいじゃん!?

 まぁ影族だから性別は分からないだろうけど、幼女趣味の奴と思われたらどうしよう!?などと今更ながら少し焦る。まぁ焦ったところでしょうがないだろうが。

 そっとフレンドリストを探すと、レティナさんの項目はログアウトになってて少しホッとする。ちなみにアクティス(内田)は絶賛ログイン中だ。あいつがログアウトしているところを見た気がしないな・・・。


 荷物をみると、狼狸の皮と思しきものでパンパンだった。あと肉。ついで兎の角と革、最後に狼狸の牙。


 まずはこれを売りに行きますか。


 ――――――――


 アルシオン上部、エルフの方の冒険者ギルドの支部があったので、そこで売り買いは果たしてできた。場所は地下へ行く扉の隣だった。冒険者ギルド売りが正解か分からないけれど、持てなくなって落っことすよりはいい。狼狸の皮が17枚くらいあり、それがいいお金になった。しめて57,254F(フラウになった。・・・。フラウって何だろう。ちょっと焦ったが、アイテムとしてスタックにたまらなかったのでこのまま収納しておくことにする。確かゲーム内貨幣だったと思うので、後で金貨との変換方法を調べなきゃと心の中にメモをする。

 これは狼狸狩りにシフトすべきか・・・?って一瞬思ったがあまり偏って狩ってもエルフの村長さんに怒られそうな気がするので辞める事にする。普通のゲームよりもNPCの人たちが中の人がいるんじゃないかってくらいに人間ぽいので、好感度を平気で下げるような行為が取りづらいのだ。


 このお金でどこまで借金が返せるか試したくはなったが、まずは最優先事項、リュックを買う事にする。インベントリが殆どない以上ドロップアイテムを取れないというのは死活問題である。・・・だがどこで買えばいいのだろうか?通常ならプレイヤーメイドか・・・もしくは安いものなら店売りだが・・・。

 こういう時は人に聞くに限る。

「あの、すみません・・・。」

 先ほどドロップアイテムを買い上げてくれた冒険者ギルド受付のお姉さんに声をかける。ちょっと美人で金髪がさらさらと落ちて美しいが、決してナンパ目的で声をかけたんじゃないので、平静さを装う。お姉さんは少し驚いて「なんですか?」とこちらを見てくる。「あの・・・冒険用のリュックとかカバンって・・・どこで売ってます?」

 一瞬間が開いて、かわいらしく吹き出されて、しかも下を向いて物凄く我慢しているのが分かった。「ご、ごめんなさい・・・!」と言って笑いをこらえてくれている。可愛いけど恥ずかしい!何のプレイだこれ!?


「なんか、ごめんなさい?」


 物凄く素人っぽい発言でした?確かに素人なんですが。。。

 恐縮した姿がさらにツボに入ったのか「やだぁ!」とまた笑われてしまった。

 昼間から飲んだくれ組などの視線が大変痛い・・・。



「あんなにアーブの皮を納められるような人が、まさか基本装備を持ってなかったとは思わなかったの。ごめんなさいね。」

 ひとしきり笑い終わると、大人の余裕なのか、おっとりと美しくエルフのお姉さんが謝ってくれる。

 しかも、こちらをわざわざ持ち上げてくれる。大人の余裕が辛い!

 ていうか、アーブって何?もしかして狼狸の名前?


「いえ、自分が歪なのは分かっていますので、お気になさらず・・・。」


 しょっぱなからPKスタートですし、王様から歪んだ認定もいただいてますしね。

 ハハッ。




アーブの皮・・・状態がいい皮は@2000F程で買い取り。アルシオンでポピュラーな装備用の皮なので、需要が高い。最も沢山納品すると、単価が下がる。兎の皮は@200くらい。小さいので。

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