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ふぁるでぃあにっき。  作者: コミヤマミサキ
7月 ~ファルディアと日常~
24/444

2-23 エルフの森3

 ザッッとエルフの森に風が流れる。

 日が傾いできたので、少し空気が冷たくなってきたのだろうか。

 ほんの少しの肌寒さを感じる。いや、彼女の言葉のせいだろうか。


 彼女の・・・レティナさんの言葉を反芻してみる。

『私なんかと、友達になりたいなんて人いるはずがないんです。それに人間なんて本性は真っ黒なんですよ。私も自分と友達になりたいか?って聞かれたら絶対嫌です。だから友達なんかなったら申し訳ないです。』


 極めて重い言葉だ。


「あの・・・?どうしました?」

 当の本人は自覚がないのか、急に黙りこくった自分に戸惑ってる。


 レティナさんにとって、人間は悪なのだろう。

 そして、悪を自覚しつつも、彼女はなるべく善く生きたいと思っている。

 だから、最低限の関係しか持たない。

 そういう事なのかな。


「あ、やっぱり引いちゃいました?ごめんなさい。こんな重い話する気はなかったんですけど」

 といって、ごまかすようにレティナさんはヘラヘラ笑う。

 その、笑っている様を見て。


 何でだろう?

 自分の中に激しい何かが吹き出してくる。


「あっ・・・」

「あ?」

 首をかしげるレティナさん。

 彼女には悪いが、全身に血が巡り(影族には血が無いから何が回ってるかよくわからないけれど)、言葉がうまくつむげない。


「あったまキタ。」

「は?」


 自分の中に渦巻く激しい感情。

 近年お目にかかった事のないものだ。


 怒り。


 そう、これは怒りだ。

 レティナさん自身にも感じるし、それよりも彼女にこう言わした背景にも感じる。

 何がどうしてこうなったかは分からないけど、会ったばかりという彼女の先ほどの言葉に怒りを感じる。


「何で決めつけるの?」

「え?」

 今度はレティナさんが良くわからない様だ。


「人間は悪って言うのはまぁいいとしても、なんで友達になりたくないとか全ての人の感情を君が決めつけるの?君ってそんな偉いの?それとも全世界の人と知り合ってその結論になったわけ?『全ての人が君と友達になりたくない』って何で君が決めつけるの?傲慢もいい所だね。」


 思わず失笑が漏れる。

 レティナさんの顔がザっと青ざめ怯えの色が走る。

 が、悪いけど、やめてあげられない。


「僕の感情は僕だけのものだ。君に勝手に決めつけられたくない。」


「ご、ごめんなさ・・・」


 レティナさんもなんで謝ってるだろうか分からないだろうに、おろおろと取り乱しながら謝ってくる。

 でも、謝っても取り返しがつかない事ってあるんだよ。


「本当に意味わかってる?嫌われたくないからってとりあえず謝ってない?それとも、ほとんど見ず知らずの僕にまでただ嫌われたくないの?君は欲張りなのかな。」


「・・・!?」

 涙目で動揺して言葉がつむげない美幼女。

 謝っても苦情が来るから、言葉がつむげなくなったのだろう。

 自分がド変態になった様な錯覚を覚えるが、多分リアルの年齢はそう大して変わらないだろう。15歳以上の高校生。どんなに大きく見積もっても大学生。OLでこんなこと言ってたらちょっと引いてしまうが。15歳の僕が言うんだからきっと問題ないだろうと勝手に割り切る事にする。

 良くも悪くも、自分は男女平等主義なのだ。


「僕の感情は僕が決める。レティナさん。君にフレンドを申し込む。」


「・・・・・・・は?」


 言葉の意味が分からなかったのか、間抜けな顔をしている。


「大体なんで、僕が君とフレンドになりたくないとかまで勝手に決めるのさ。君のクラスの人がどう思ってるかなんて僕は知らない。けれど、自分の感情は自分が一番わかる。勝手に君に僕の意見をねつ造してほしくない。その証拠としてここにフレンドを申し込む。」


 流れる沈黙。

 事態と言葉が飲み込めない様子のレティナさん。


「・・・それってなんだかおかしくないです?」


「何がです?」


 間髪を入れず問い返す。


「え?だって友達ですよ?一緒にご飯食べたり遊んだりするあれですよ?場合によっては交換日記つけたり、お泊り会だってしちゃうんですよ?正気???」


 正気ときたもんだ。


「まず」


 ここが正念場なのだろう。一呼吸置く。


「一緒にご飯食べたり遊んだりすることはあってもいいと思います。交換日記は死んでもつけません。お泊り会は僕はいいけど、レティナさん女性でしょ?困らないですか?あ、でも一緒に冒険に行くならそうなるのか・・・???」


 雑魚寝っていうか自然寝?

 これってハラスメント的にどうなのかなぁ?運営さん。


「え?でも???あれ???」


 今度はレティナさんがなにがしかの崩壊を起こしている模様。

 しめしめ。


「だって友達ですよ???重たいですよね??そんな大事なもの今あったばかりなのに?あれ?」

 混乱している模様。

「別にどうだって良くないですか?そもそも友達って何です?」


「え?だから、一緒にご飯食べたり・・・」

「そうですね、食べなくても遊ばなくても友達って人はいますよ?」

「・・・あれ????」

「別に毎日遊ぼうって言ってるわけじゃないですよ。リアルが優先で当たり前です。友達は沢山いたっていいし、都合がつくときに遊んでもいいかな、また話してもいいかなって人とゲームでは大体フレンドになってますね。フレンドになったからと言ってそれ以降永遠に会わなかった人も存在します。」

「・・・友達とフレンドは違うんですか?」

「リアルとゲームの中という条件は違うと思いますよ。ゲームの中の方が少し意味合いが軽いかもしれないですね。」


 少し、彼女の気が軽くなるような言葉を紡ぐ。

 別に自分だってどうしても今ここで彼女とフレンドになりたいわけじゃないのだ。


 ただ、気に食わなかっただけ。


 一生彼女と友達になりたくなかった一人に数えられたくないだけなのだが。



「・・・結構可愛くこのキャラ作りこんだから、変態とか?」

「今すぐキャラデリしてマッチョに作り直してこい。」

「ごめんなさい」

 即座に謝るレティナさん。

 うん、このノリ感も割と嫌いじゃない。

 つい頭にきてフレンドになろうなんて言ってしまったけど、案外うまくいけるのかなぁ。



「それで・・・君はどうしたいのさ?」


 ここまで、レティナさんの認識は聞けていても「意思」は全く確認取れていない。

 フレンドになりたくないなら、全然ならなくたっていいと思うのだ。

 まぁ、フレンドになってくださいって言われて「嫌だ」というのは余程のことがない限り断らないが。


「わ、私となんか誰も遊びたくないから。申し訳ないもの。」

 まだこんな事言ってるよこの子は。

 相も変わらず頑固で、逆に少し可愛く思えてしまい笑いが漏れる。


「『君は』どうしたいの?って聞いたでしょ。人の気持ちを勝手に決めないで。」


 黙りこくってしまうレティナさん。

 なんかグルグル悩んでる模様。

 もう一押しかな・・・?


「だいたいさ、中身がどうとか、どうでもよくない?完全に心が綺麗な人間なんていないと思うし、ゲームなんだから面白いか面白くないか。気が合うか合わないかじゃないの?君が神様とかになりたいっていうなら話は別だけど。」


 割と本気で言ったのに、ぶすむくれ始める彼女。


 ―——ああそうか、そんな完璧な友達観があったらそれは疲れるよね。

 そして彼女はなるべく完璧に生きようとするから疲れるのだろう。

 自分にはないもので偉いなとは思うけれど。



「『たかがゲーム』だよ。気楽に行けばいいんじゃない?失敗なら失敗で別にいいし。」


 どんなに友達になれそうな奴でも、なれない奴もいるし、

 気が合いそうに見えても、実際付き合ってみたら気が合わない奴もいるし

 かといって気が合わなそうに思えたのに、一番の親友になったやつもいる。

 ———―――誰かとは恥ずかしくて言えないが。


 大体、親でさえ子供を裏切ることだってあるのだ。

 友達くらい時間と共に合わなくて友達を辞める事だって不思議じゃないし。


「レティナさん、僕とフレンドになって、とりあえず後ゲーム時間2時間くらいPT組んで狩りしてみません?」


 大きな段差に躓いたときは、とりあえず小さな段差を提供。

 小さな段差も少しずつ超えてゆけば大きな段差分になるという寸法だ。

 まずは、今日だけのフレンドとPTのお試し感を出してみる。


 それに少し安心したのだろう。

 視線をさ迷わせて、少しはにかんで赤い顔をして手を差し出してくる。


「・・・・ヨロシクオネガイシマス」


 何これ恥ずかしい!

 そんなに恥ずかしがられると、こちらまで照れてしまう。

 ゆっくり握るのもアレなので、勢いをつけて握手をし、ぶんぶん振り回してすぐ離す。

 その様子に自分が恥ずかしがってるのが伝わったのだろう、レティナさんがクスクスと笑っている。


 その気恥しさをごまかす様に、とりあえずボケる事にしてみる。


「ところで、フレンド登録のやり方ってわかる?」


「・・・・え~~~~~」


 レティナさんには大変不評だった。



 ――――――――――――――――――――――――――――


「敬語」


 途中、何度か文字さんに泣きつきながらも何とかフレンド登録とPT登録を終え、いざ狩りに行こうとした段階でレティナさんが突然そう言った。

「サクさんは私と友達に対する価値観が違う様なので何とも言えないですが、ここは譲れません。友達なら敬語はやめて。」

「そういうレティナさんも敬語じゃないですか・・・。」

「だって、マジで無理・・・。」

「どんな不思議ちゃんだよ。」


 人にだけ敬語抜きを要求するとか。一方通行なのか。そういうプレイなのか。


「まぁそういう要望があったという事で、少しずつ慣れて・・・いこうかー。」

「そうで・・・そうだね。」


 全くたどたどしい事この上ない。


 とりあえず、時間がないので狩りをしてみることにする。

「自分は前衛だから、まず釣って維持するので魔法で倒してみてください。あと、僕には当てないでください。」


「敬語・・・・。分かりました、なるべく敵の動きを止めてください。できれば一ミリも動かすことなく。」

「どんな接待プレイだよ。」


 お互い無意味に敬語を中途半端に入れ、毒づきながらもとりあえずその辺に居た狼狸を釣ってくる。


「狼狸1~」

「えっそれ狸なんです!?」

 そんなことを言い合いながら釣った狼狸?をなるべくレティナさんの方に背を向けさせるようにして維持をする。

 避けてばっかりだと地味にしんどいな・・・。

「え~っと・・・・えーいあたれぇ~火玉!!!」

 さっき風魔法使うって言ってましたよね!?

 火魔法使えるって聞いてないですよね!?

 突然の火球に慌てながらも、火球は見事狼狸にヒット。突然の攻撃に怒り狂ってレティナさんを襲おうと方向を変えて油断した狼狸の首をすかさず落とす。

 ふぅ・・・危ない・・・。


「楽勝ですね!!!」

「ちょっと待てこら。」

 とりあえず正座させてコンコンと説教をすることにする。


「僕はレティナさんが風魔法を使えるという事しか聞いていません。」

「あ、私火魔法も使えるんですよ~あと、土も使えますよ。余裕が出来たら水魔法もとって・・・」

「僕は聞いていません。」

「あっハイ。」

「各々の力が弱いときは連携でカバーするものですし、なんでいきなり全然違う殺傷能力高い魔法を投げてくるんですか?殺す気ですか?」

「ごめんなさい、言い忘れていました。」

「僕も聞かなかったのは悪かったですが、せめて失敗したことくらい気づいてください。」

「え?倒せたから成功じゃ・・・」

「連携としては失敗です。」

「ハイ。」

 説教して気づいたけど、レティナさんはあれだ。頭のいい内田・・・アクティス属性だ。

 変に小賢しい分、何をやらかすかは分からないのが心臓に悪い。


「次からは火魔法でも風魔法でも土魔法でもいいです。とりあえずお互い上手に連携を取る事と、次にレベルを上げることを目標にしましょう。」

「サクさん・・・やっぱり敬語やめません?なんかすごく怖いんですが。」

「怒ってるからダメです。」


 なんか敬語やめたら気が緩みそうなのでこのままいきますよ。

 まぁ敬語の方が使い慣れてるのもあるしね。

 ドロップの事は考えるのはやめてとりあえず連携に専念する。


 結局1時間半狩って、大分お互いの連携がうまくなったとは思う。

 維持している分には冷静に動きを読んでくれて、レティナさんは殆ど外さずに的確な所に魔法を放ってくれた。

 ドロップとしては火だと悪くなるので何とも言い難いけど、そこはそれ。そのうち火魔法しか通じなくなる敵が出るかもしれないし、彼女が思う様に風魔法と火魔法と土魔法のレベルを今のうちにあげてくれたらと思って特にその辺は何も言わなかった。



「自分が落ちなきゃいけない時間が近いからそろそろ切り上げましょうか?良ければ一番近い町まで送りますよ?それともここで一人で魔法の練習をしてます?」


 って一応彼女に聞いたらば、とんでもないとばかりにブンブンと首を横に振られた。

「町!近くにあるんですね!まずは町に行きたいです!冒険の基本ですよ!フィールドスタートとかどんなクソゲーですか!」


 とレティナさん。

 いや、その条件選んだのあんたですしー、おすしー。

 などとツッコミを入れつつ、今日の成果や連携の問題点、などを話しながらエルフの街に向かう。


 帰りの道中は時間にして15分くらいだけど意外に楽しかった。

 レティナさんは女の人だから話が合わないかなと思ったけど、そんなことはない。

 気さくでノリツッコミもできる良い人だった。

 加えて魔法の腕もそんなに悪くない。

 むしろ反射神経がいい部類だ。

 鍛えればきっと良いプレイヤーになるだろう。

 ただ、圧倒的に人間不信なだけである。

 そんなことをツラツラ考えながら歩いているとエルフの街の柵が見えてくる。

 あっという間だったから、きっと楽しい時間だったのだと思う。


「アレが、アルシオンの上部エルフの街ですよ。影族が支配してる地下の街もあるんですよ。」

「へぇ~、初期エリアにしては豪勢ですね~。」

「僕ら、希少種族みたいだから、途中スタートみたいなものかもね。」

「確かに。」

「地下の街は、昼夜逆転してますから、夜に店が開いていますよ。僕もまだ見てないので何があるか知らないですけどね。」


 楽しかった時間の終わりが近づいている。

 自分はもうそろそろ落ちなければならない。

 彼女と別れたらすぐに長老の家に行って、納品してログアウトする。


 女の子だからとか何とかいう奴もいるけど、そういう事じゃなくてさ。

 やっぱりこういう事はちゃんと言っといた方がいいかな?

 真面目な雰囲気を出して、彼女の方を向く。


「レティナさん。」

「はい?」

 楽しそうだった彼女が振り向く。自分の顔をみて、少しまじめな顔をしてくれる。

「自分は今日はまぁ、割といろいろあったけど、楽しかったかなって思います。」

「・・・・はい。」


 人間不信、自己不信を拗らせた彼女に届くだろうか?

 また逃げられるかもしれない。

 それでも、出来ることはやっておくべきだと自分は思う。


「自分は、レティナさんと今日狩りをして、割と楽しかったかなと思います。」

「・・・はい。」

 少し顔が赤い気がするレティナさん。

 確かにこういうことははっきり言うと恥ずかしいけどさ。


 ・・・。

 いつものように来ると思っていた明日が永遠に来ない事だってあるって自分は知っているから————。

 だからあえて言葉に紡いでいく。


「こんな事ハッキリ普段は言いませんけど、レティナさんは頭がちょっとおかしいのでこの際ハッキリ言っておきます。」

「喧嘩売ってるんですか?」

 流石ツッコミ属性の女、切り返しが早い。ちょっと笑いが漏れる。

「また、気が向いたらTELしますので、またよかったらPT行きましょう?」


 ちょっと、息をのんだ後に彼女は言葉を紡いでくれる。

「・・・私も楽しかったです。フレンドになったからには、重い女でいきますよ。覚悟してください。」

「何それ怖い。」

 軽く笑いが漏れる。


 世界が夕焼けで赤く染まっている。

 少し冷えてきた風にそよいで、木の葉の音が気持ちいい。


「じゃあ僕は、納品して夕食で落ちます!またです!」

「・・・お疲れさまでした!また。」


 どこかで会いましょう。


 ステータスウィンドウを開いて、PTを解散するボタンを押す。


【PTを解散しました。】


 言葉はもう交わしたので、手を振って走り出す。

 いや、走る必要はないけれど、ちょっと気恥ずかしかったんだ。


 彼女が後ろから見てるかもしれないと思うと、後ろを振り返れず、一目散に村長の家を目指す。


 明日以降も楽しい日々であります様に――――――――。



 ――――――――――――――――――――――――――


「・・・変な人。」


 物凄い勢いで走って行って見えなくなってしまったサクを見送りつつ、レティナは独り言ちる。

 人間としてオワッテル自分に構い倒して、あまつさえ友達になりたいと言ってくれた奇特な人物だ。

 どうやら下心もあまり感じられない。

 どうして、他人の自分に対して、そこまでしてくれたのかって思う。

 あったばかりの人物だし、(アバター)のかわいさとかも関係ないという。

 中の人は女の人なのかもしれない。


「変な人。」


 レティナには理解できない。

 でも、サクの事は嫌じゃないと思う。

 ときどき厳しいけれど、無暗にこちらばかり責めてくることもない。

 優しいかと思えば、辛辣なことも言う。

 でも、大体が必要な事だ。

 無暗に魔法のダメージだけが高くてもモンスターの気を引いて襲われてしまう。

 魔法使いが襲われたら紙装甲何だから一発で沈んでしまう。

 だからPTの時は維持できている間は魔法の威力を加減してダメージを積み上げるか、逆に一撃で仕留めきる高火力を出すことがPTでは必要なのだと教わった。

 特にサクは盾ではなく回避特化のアタッカーだから維持することが難しいことも言ってくれた。

 そういう歯に衣を着せぬハッキリとした言動はレティナも嫌いじゃなかった。

 逆に裏表が少ない分、はっきり言ってくれて安心するくらいだ。


 ふと、学校での事を思い出す。

 一昨日、忘れ物を取りに戻った時の事。

 自分のうわさ話をしていた、『友達だと思っていた』同級生たち。

 完全な悪口ではないけれど、悪口に近い嘲笑を浮かべていたのだと思う・・・。

 自分の噂話を、自分がいないところで盛り上がっていた。

 最後は「可哀想な子」とまで言われた。

 友達面で裏で悪口を言われるくらいなら、不満があればはっきりと言ってほしい。


「そういうのが、普通友達でしょ?」


 思わず声に出てしまう。

 サクには言わなかったが、本当は仲の良かった女子が何人かこのゲームをやっている。ただ、美しさとかかわいさ重視なのでエルフスタートであったが。レティナもこのゲームをやるかなぁと”友達”には言ってたのだが、土壇場になって「親が許してくれなかった」と言って、”友人”達には黙って秘密でログインしているのだ。正直裏でこそこそ噂話をしていた彼女たちとゲームの中で迄顔を合わせたくはなかった。

 彼女たちと最も顔を合わせそうになく、魔法を使いたかったレティナが一番都合が良かったのがこの半妖精という種族だ。


 サクという人物の事はまだよくわからない。

 でも、今のところは悪くはない。

 また、狩りに誘われて、都合が良かったら一緒に行きたいと思う程度には好感を持った。


 相手もまたそう思ってくれただろうか――――――そのことを思うと不安に胸が掻きむしられそうになる。


 けれど・・・。


 そういう不安に飲まれるのは何か違うと思う。

 サクと自分はあくまで『対等』だ。

 否、そう在りたい。

 自分もサクからPTを望まれるような、そんな関係で在りたい。


「私からもPT誘えるかなぁ。」


 今はまだそんな気がしないけれど、いつか誘えるようになるだろうか。

 サクの事をきちんと友達と思える日が来るのだろうか。

 そんなことを考えながら、サクに教えてもらったアルシオンの街の中心部にゆっくりと向かう。サクが言うにはここから地下に降りれるそうなのだが、自分はまだ冒険者登録もしていない。まずはそこからかな?と考える。右も左もまだ何もわからない。前途多難だ。でも、独りで森をさまよっていた頃に比べたら大きな収穫だ。有難い。LVも5まで上がった。もしかしたら狼狸も一人で仕留められるかもしれない。計画性がなくゲームを始めて、森に放りだされて絶望に打ちひしがれて、もうこのゲームをやめようかと思ってるときにサクに出会った。


「ありがたいなぁ。」


 空を見上げていると日がどんどん傾ぎ、空が青灰色に染まってゆく。高い雲だけが名残惜し気に縁取りだけを茜色に残している。

 白い雲が内側に僅かに光を湛ええてまるで銀色の様に感じる。

 こんなところだけ、地球によく似ていて、おかしくなるけれど。

 こんなに空を見上げた事なんて、多分今までなかった。


 この世界は、このゲームは本当に美しい。


 ゲームの中で開始2日が経ったけれど、同じようにこの空を見上げて感動している人がきっといるだろう。

 生きているには余裕がなくて、リアルでもこんな風に空を見上げるなんてあんまりなかった。

 リアルの空もこんなに奇麗なのかな?


「綺麗だなぁ。」


 アーティストのSilverがどんな人物か調べたが、未成年の男性という事しかわからなかった。

 この空も設計したのだろうか。

 彼はどんな気持ちでこの空を作ったのだろう。


 —————明日も良い日でありますように。


 祈りにも似た気持ちを残して、レティナはエルフの街の中心部に向かい歩みだした。



('Д')ウワァアア・・・

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