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ふぁるでぃあにっき。  作者: コミヤマミサキ
7月 ~ファルディアと日常~
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2‐1 キャラメイク1

【キャラクターメイクを開始します。】


 文字がそう表示をすると、先ほどまでの無機質な、ただただ白いだけだった空間に変化が起こる。

 ただし変化が起こったことは分かるのに、何が起こってるか見ていてもよくわからない。

 何かが蠢いている・・・気がする?

 文字の近辺にだけ透明な何かとても小さいものがたくさん動いている様な・・・?

 よく分からない変化に悩んでいること5秒程、不意に何もなかった空間にざっと大小様々な数人の黒い人影が現れる。全部で・・・10体かな。



 じわり。文字が変化をする。


【まず、種族を選択してください。】

【選択できる種族は一人1体までです。サブキャラクターは現在実装されておりません。慎重に選択することをお勧めします。】



 ・・・文字に2行目が追加された。


 文字に2行目が出現できたことに変なショックを受けつつも、インターネットで仕入れたクローズベータ―情報や事前の開示情報を思い起こす。


 このゲーム(ファルディア)の種族はクローズ・ベータでは人族、古代族、髭族、獣族の4種類が選べたと載っていた。


 人族はいわゆる普通の見た感じ人間で、時々別種族の血が混じっていたりなどはあるが基本リアルの人類と変わらない見た目の種族。最も平均的な素質をもった種族である。ちなみに、よく物語で聞く獣人差別とか人族至上主義とかはあるにはあるが、大勢ではないらしい。なぜならこの世界の神様の中には人族以外が大勢いるからだそうだ。多神教なのか・・・。


 古代族はいわゆるファンタジーにおけるエルフだそうだ。だが、おそらく他のファンタジーのエルフよりも『血が薄い』。デフォルトでエルフの血の濃さが1~50%までしか設定できないのだという。つまり、この世界でエルフと言われる生き物は総じて混血である。エルフは純血を重んじると思っていたが、それとも純血を重んじる種族がどこかに完全体として隠れている設定なのだろうか。

 そして、お約束だがエルフの血が濃いほど魔法が得意になっていき、前衛向きの素質が下がるのだという。すなわち血のパーセンテージによって魔法属性よりか、肉体を強くするかカスタマイズすることが出来る。ただ先祖返りという設定もあるので、エルフの血を1%に設定し、見た目はとてもエルフなムキムキマッチョにすることも可能なのだという。

 ・・・ムキムキマッチョエルフ。一体誰得なのだろうか。少なくとも自分は見たくない。

 サブキャラクターが作れないこのゲームで、そこに走るのは暴挙か性癖に違いない。


 次に髭族であるが、これはファンタジーのド定番ドワーフ族であると思っていい。男性は常に髭を強いられるし、髭がないと捕まったりするらしい。ドワーフ族の女性については髭がある物語や、ない物語など様々あるが、このゲームでは特に女性に髭はない。少し安心する。

 男性の髭でモテ度と地位が変わるので、ドワーフ社会においてはヒゲファンタジーになるのだという。正しく髭族であるといえる。おなじみに鍛冶に適性があり、槌などが得意であるが、他の前衛武器も大体イケるのだという。器用値が高いので後衛武器も使えるが、ドワーフの社会ではあんまり後ろにいると『勇気がない』だの『まどろっこしい』だの『肝が小さい』などいろいろ言われるらしい。まだ見ぬドワーフ社会が謎である。ノーキンか?頭のいい脳筋の集団なのか?

 ヒゲファンタジーなので女性蔑視の風潮かと思いきや、髭よりも最強はカカァらしい。喧嘩するドワーフ男どもを最終的に奥さんがメイスで殴り倒して連れて帰るなど日常茶飯事だとか。ホントどうなってるんだ髭族。



 最後に獣族だが、これは他のファンタジーなどで出てくる獣人とほぼ同じだったという。デフォルトでは犬もしくは猫が選べ、進化の過程でほかの種族になる事も可能だという。結構種族ごとに肉体的特徴、戒律や文化が違うので、深めれば楽しそうであるがクローズベータでは進化までたどりつく人がいなかったのだという。多分、兎は耳がいいだろうし、チーターとかは脚が早いのだろう。肉食動物は前衛適正高そうだからちょっと心を惹かれた。

 ちなみに、事前情報で盛り上がってた獣族掲示板では、何故初期種族に犬猫しかいないのかと揉めていた。各々思い入れのあるハムスターや兎なども追加しろ派がおり、少数派で蜘蛛が登場し戦慄を巻き起こしていた。獣族は何処まで獣として適用されるのだろうか?やっぱり哺乳類?それじゃあイルカは?っといった流れだ。イルカの獣族・・・呼吸はできるだろうが、非常に戦闘に向いていなそうだ。




 さて、事前情報から種族はこの4種類だと思って人族か獣族にしようと思っていたけれども、(髭族は面倒くさいから選択肢から除外した)、目の前の影は10体。


 そう、”10体”。


 文字は影が出現する過程で少し高く浮かび上がってる。

 その文字を中心として半円状に自分の方を向いて10体。

 もしかしなくても、種族がベータに比べて6族も増えていませんかね!!!???

 大盤振る舞いすぎやしないか?運営?

 サービス開始日の今日今現在、多くのプレイヤーをこの時点で驚愕させている事だろう。

 まだ見ぬ同志たちに同情する。

 自分もガクブルしてるけど。


 このゲームではキャラクターメイクの段階でランダムで種族を選ぶ機能は無いそうなので・・・、いやクローズではなかったそうなので、レア種族をプレイヤーが獲得するということは、未だ発見されていないレア種族が仮にあったとしても進化以外にはありえないという。ちなみに公式からの発表はそれについてはない。

 これだけ種族が増えているとクローズの情報はアテにならないかもしれないが・・・、とりあえず1つずつ種族の情報を見ていくことにする。



 ・・・が、どうやって種族を確認したらいいんだコレ?確か、事前情報では意識を向けると見えるそうなんだけど・・・

 と、黒い影たちをみて困惑していると文字に再び変化が訪れる。

 自分の思考を読んでいるんだろうな。少し嫌な気持ちになる。


【見たい種族の前に行くと、自動的に情報が表示されます。】


 そうなのか。

 とりあえず、合っているかは分からないが、まず一番左の影の前まで歩いていく。

 ・・・そういえば、この世界にきて初めて体を動かしたはずだけれども、全く不自然な所を感じさせない。普通に歩いている様に感じる。VR技術のすごさに驚きつつも影の前に立つ。丁度自分と同じ背丈である。

 身長155センチ程の影。―――うるさい、これから伸びるんだ。チビじゃない。

 などと脳内ノリツッコミをしていると、影がジワリと変化をする。


 これは・・・・どっから見ても自分と全く同じです。本当にありがとうございました。


 やはり一番左は人族だったようである。自分ベースにこの後キャラクターメイクをしろということなのだろうが、第三者目線で自分を見るのは嫌なものがある。


 気を取り直して、次の影の前に立つ。

 人族よりも少し身長が高い古代族の様だ。金髪で耳が長くなる。金髪にしたことがないのでちょっと斬新である。

 ポップアップには魔法が得意であるという説明書きや、血の設定などが載っているがベータとその辺は変わっていないようだ。ただ、中にはハイエルフもいると書かれているが、進化するとハイエルフになれるのだろうか。前衛職を希望している自分としてはなる気はないのでサラッと流す。


 次の種族が見たことがないシルエットである。きっと新種族だろう、少し胸がドキドキする。身長は古代族より少し高く、人族にさらにパーツが付属してるように感じる。3体目の種族の正前に立つと、じわり、とその姿が明らかになる。

 全体的に魚っぽい。そしてガタイが良く筋肉質である。追加されたパーツはどうやらヒレの様であり、表示には《水棲族》と表示されている。詳細が知りたいと思っていたらボタンが点滅しているので触る。フォンっという軽い音と共にポップアップが表示される。どうやら詳細な説明が乗っているらしい。ポップアップを読んでいくと、《水棲族》は獣人と同じく様々な種がいる様だが、初期はただの魚か、もしくは両生類らしい。リザードマンタイプなんだろうか?基本両生類をお勧めされており、魚を選ぶと、まず進化するかスキルを取得しない限り地上に出ると死ぬらしい。


 ”地上に出ると死ぬ”。



 誰得なんだろうか・・・。いや、その間隙をぬって水中の覇権を手に入れる遊びをするプレイヤーもいるかもしれない。しかしながら、水中エリアまで実装されているとはこのゲームはいったいどれだけの広さを誇っているのだろうか。

 肌の鱗っぽさはともかくも筋肉質な点では惚れたが、痛覚が低く盾職向きとのことなのでDPSが出したい自分としてはパスする事にする。


 さて、次の種族も見たことがないシルエットである。何というか・・・カクカクしていて直線的というか何となく工場地帯を思わせる。鋭利なところが多く、人工的な印象を受ける。身長は水棲族よりかなり高い。・・・べ、別にそこだけに心惹かれてないし!

 おなじみの影の前に立つと、ジワリとその姿が浮かぶ。自分の姿をベースにしてあるが、機械的なパーツが様々ついている。《人工遺物族》そう表記されている。”物”は人ではないのではないか・・・と思いながらもポップアップを読むと、どうやら機械的なオートマタ―の様なものから魔法遺物まで様々な種類があり場合によってはプレイヤーは選択できないがツボやら椅子まであるらしい。簡単に説明すると「人類の手が入った、かつ知恵を持つ生き物」なのだそうだ。これは機械というよりも日本で言う付喪神を想像したほうが良いんじゃないかという気がする。戦闘よりにカスタマイズすれば、かなりの火力が期待できそうだし、自由度が高そうなので候補の中に入れておこうかと思う。


 やっと半分まで来たが、5番目の影の前に来た。・・・だいぶ影が小さい。身長80センチくらいだろうか?自分の半分以下の身長で頭部が大きく、幼児体形になっている気がする。そして、耳が少し長い。髭族かと思ったが、これは小人なんだろうか。ポップアップをみると案の定《小人族》と書かれている。これも新種族だ。基本的に大・小人族(胡乱な言葉だ)と小・小人族に別れているらしい。表示されているものが大・小人族で狩猟民族であり音楽が得意な享楽的な種族となっている。身長1メートル前後・・・っておい!喧嘩売ってるのか!?

 ・・・次に小・小人族は15cm~45cm程の種族で都市伝説などによく出てくる所謂小人である。他民族との交流が薄く、自然の中に暮らし臆病な気質で、気配を絶つことに優れている。3~5人の団体行動を好むのだという。天敵が鳥で、全ての生き物に対してプチッっとされない注意と工夫が必要であり上級者向けの種族と書かれている。

 DPSが出なそうだし、速攻除外する。

 決して身長が低いからではない。

 決して。



 ・・・これで半分は見たことになる。

 まだ半分しか見てないと言ってもいい。


 サービス提供初日ということもあって、ササっとキャラクターメイクをしてササっとレベル上げをしようかと思っていたんだが、とんだ運営の罠があったものである。いや、あえて事前に情報を出さずに初期エリアを混ませない配慮なのかもしれないが、これはメイクに時間がかかる者が続出するだろう。

 このゲームはキャラクターの情報の保持にリソースが大きく割かれるそうで、同じプレイヤーが別のキャラクターを持つことは今現在はできない。また、キャラクターを消去するとペナルティーとしてリアルで1週間は新規キャラクターを作れない罠が待ち構えている。安易にキャラクターを消すのを制限しているのだ。プレイヤーはさらにキャラクターメイクに慎重になるだろう。


 だがしかし、


「ちょっと疲れたな。」


 思わず口に出てしまったが、声もリアルと同じように聞こえるから不思議である。

 その途端、今度は先ほど自分がこの地に降り立った当たり、ちょうど影たちの円の中心辺りにジワッと何かが出現する。

 これは・・・・よく海の家などにある砂浜にも置いておけるプラスチック製の白い――やはり白い椅子と円状のテーブルである。ただ、パラソルはついていないタイプである。まぁここでパラソルが必要だとは思えないが。


【時間制限はありませんので、ごゆっくり選択してください。】


 これは・・・有難い・・・のだろうか?

 ここでゆっくりするとゲーム的には出遅れるんだが。

 だが、ちょっと温かいお茶でも飲んでリラックスをして、脳を動かしたいという気持ちもある。


 すると、思考を読んだのか、ジワリ・・・と今度は机の上に何か出現する。

 ティーカップとソーサー。そして、メモ帳とペン。


【この空間ではお茶に限り飲食物の提供が許可されています。ごゆっくりどうぞ。】



 と、文字。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




 ―――――至れり尽くせりか!?

獣族にも水棲族にも属せない蜘蛛ちゃん可哀想

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