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ふぁるでぃあにっき。  作者: コミヤマミサキ
7月 ~ファルディアと日常~
18/444

2-17 休息

 ・・・ふと、意識が戻る。


 自分は今まで眠っていたのだろうか?


 何だかフワフワした感触。


「気が付きましたか?」


 声の方を見ると、・・・ドワーフシスターテルメさんだった。

 というと、ここは神殿?自分はいつ寝たんだろう?

 ベッドが暖かい。眠い。ふわふわ気持ちいい。

 でも、大事な事を忘れている気がする。


「冒険者ギルドの方たちが神殿に押しかけてきたので、何かと思ったらまたあなたが運ばれてくるじゃないですか。びっくりしました。」


 フフッっとテルメさんが笑う。

 笑うと可愛いなぁ。もっと笑ってればいいのに。


「しかも、外傷も何もなく、どうやらONTが下がって一時的に体の魔力が乱れただけみたいですね。人間でいう貧血みたいなものなので大丈夫ですよ、と言っているのにギルドの人たちったら聞かないで大騒ぎして大変でした。」


 ありゃー、各方面で迷惑をかけてるなぁ。申し訳ない。


「聞けば無茶な影移動をしたそうじゃないですか。ONTが下がったのも影移動で変換したからでしょう?しかもかなり格上の魔法使いに喧嘩を売ったそうじゃないですか?何がどうなって、そうなるんです?サクさんが死んだらユイベルト様に借金取り立てに行かなければならないじゃないですか!そんな面倒な事、させないでください!!!」



 ・・・あー大事な事、思い出した。

 リアルログアウトの時間が迫ってるんだ。脳内スクリーン時計をちらっと見るとリアル時間で12時半と出ている。いささかオーバーしていた。


 これは、なんと間が悪い。

 怒られてる最中に大変間が悪いが・・・リアル優先と決めてるのだ。これは致し方ない。


「テルメさん・・・。」


「なんです?これからお説教ですよ?」


 やっぱりお説教だったのか・・・。


「ごめん。ねむい。寝る。あとで・・・。」


「えっ!?ちょっと!!???」


「おやすみ・・・なさい・・・。」


 ちょっとーーーー!!!サクさーーー‥‥

 テルメさんの叫びをBGMにログアウトする。


 おやすみなさい―――。



 ―――――――――――――――――――――――――――――


 起きて時計を見ると12時半くらい。

 5時間潜入していた事になる。ゲーム時間で10時間弱。


 そうすると多分、半分くらいはゲームの中で寝てたんだろう。

 ゲームでも寝るとか贅沢だなぁ。気絶扱いなんだろうけど。


 そう納得をし、軽くストレッチをした後、食事をとるために階下に向かう。

 ばーちゃんはやはり既に外出しており、誰もいないシンと静まった台所と居間がある。


 そこから、食べ物を取り出す・・・。

 今日は何にしよう?たらこスパゲッティ―の気分だからこれでいいや。

 レンチンをする。


 皿に移し替えて居間で水道水と一緒に美味しくいただく事にする。


 さっきまでゲーム内で非常に騒がしかったので、少し物寂しい。

 自分の食べている食器の音だけがする。


 耳を澄ますと、遠くにセミの鳴き声が聞こえる。

 風が強いのか、葉がこすれる音。

 あ、隣の家の犬が、誰かに吠え掛かっている。




 ―――――やっぱり生きているんだなぁ。



 ゴクゴク水を飲む。

 変な実感が、やはりある。


 縁側の方を見る。初夏の日差しは強く、居間は相対的に暗く感じる。

 若葉が目に染みるようだ。

 夏特有のコントラスト。


 たらこスパゲッティーはイカを入れた方がもっと美味しいと思った。

 ごちそうさまです。



 ―――――――


 大分暑くなってきたので、部屋のクーラーと扇風機をつける。

 扇風機は空気をかき回すのに役に立つので重宝している。

 当初の予定通り、宿題を先に済ますことにする。

 そんなにも残ってなかったので、予習復習の方がはかどった。

 14時半頃、スマフォが振動しているのに気づく。

 自分に電話をかけてくるなんて7割内田、3割ばーちゃんである。

 画面を見たらやはり内田だった。


「もしもーし?」


「カヅキか?おれだよおれー!」


「詐欺は間に合ってます。」


「この指定口座に100万振り込んで・・・って違うだろ!!!」


 ひとしきり挨拶代わりのじゃれ合い。

 内田はノリがいい。


「お前、ちゃんとファルディアやってるんだろ!?どこまで進んだんだ?どんな種族だ?俺、とうとうトイレ我慢しすぎてボス戦の最後の最後で落とされて30分ログインできないーーー!うがーーーーー!!!!」


 そして、典型的自重ができないタイプである。


「その間ご飯食べたら?まだ昼飯食ってないんでしょ?」


「食ってないけどさ~!飯がないんだよ~~~!!!」


「作るか買うしかないね。」


「コンビニが遠い田舎なのが憎らしい・・・。」


「コンビニよりうちの方が近いもんなー。」


「そうだ、お前んちにいこう。」


「え?別にいいけどさ・・・。」


 内田が来ても勝手を知りすぎて、大して構わないのだ。

 内田も内田で勝手に冷蔵庫を漁って、いろんなものをよく食っている。

 そして、それもばーちゃんは知っていて内田専用の冷凍物がある始末。

 じーちゃんが生きてた頃は多少遠慮があったが、最近は自重が全くない。

 内田の家は共働きで、ばーちゃんも可哀想だと思ってるのだろう。


「でもすぐログインするんでしょ?うちで食って戻るの大変そう。」

「そこはそれ、カヅキんちでログインする。」


 そうですか・・・ゲームすらウチでするようになりますか・・・。


「お前はうちの子か。」


「だって、居心地がいいもんよー。」


「ていうか、2台も繋げられるのか?」


「あー多分大丈夫。お前んちのネット回線つないだの俺だし。」


 ネットなどにあまり詳しくない自分と、全く分からないばーちゃんの為に何故か契約の段取りを組んだのは内田だったりする。


「その時アンペアが少し不安だったから、俺がお前んちでファルディアをやる事も考えてばーちゃん説得して契約アンペアも同時にあげてある。」


 ただの策士だった。

 すでに、うちでVR2台やる前提だった。


「必要なケーブルはうちから持ってくもんよ~。」


「さいでっか。」


 ツッコむだけ馬鹿らしくなった。


「おれ、ナポリタン食いたい。チンしておいて。」


「わかったわかった。」


 全く困った友達をもったものだ。

 電話を切った後、ちょうど内田が来そうなタイミングでナポリタンをレンチンしに向かう。


 ついでに、ばーちゃん宛てに居間に書置きをしておく。


『内田もうちで夕飯食べていく』



 夕食を食わないなら来ないだろうという前提だ。

 きっと両親が帰ってくるのも遅いのだろう。

 内田の行動パターンが身についてしまったのが少し悲しい。


「こんっちわーーー」


 電話を切ってから15分後、内田がやってくる。

 まずまずの時間だ。


「あれ!?開かない!!???何で!!???あけてよーーーカヅキくぅーーん!」


 気持ち悪い声を出している。

 ワザと締め出したんじゃなくて、ばーちゃんが出かける時に鍵を閉めてっただけなんだけど。

 一瞬出たくなくなるが、自宅の前で気持ち悪い生物を放置するのもご近所に申し訳がない。

 回収しておく。


「気持ち悪い声だすな!」


「おっじゃまっしまーす♪!」


 うっきうきで内田が入ってくる。

 ご機嫌だなぁ。


「俺残りの勉強やってるから、食器はせめて水につけとけよ?」


「えーーかまってよーーー!」


「やだ、お前絶対ずっと喋ってるもの。」


 今のうちに終わらさないと、今日一日残りの勉強が手につかなくなってしまう。

 やれることだけでも終わらせなければ。


「カヅキくんのいーけーずー」


 内田の前にドンと粉チーズと水道水を置いて、自室に向かう。



 …




 自室で勉強をはじめて7分ほどで内田が猛ダッシュで部屋に入ってきた。

 食うの早すぎるだろ!


「皿もちゃんと洗ってきた!」


 さいでっか。


「じゃないと、ばーちゃんに怒られて夕飯作ってくれない気がした!」


 それは可能性としてありそうだな。やっぱりうちで夕飯食う気だったか。

 内田がいると勉強にならないので、早々に参考書とノートをしまい片付けだす。

 よく考えたら、夕方の水やりの時に絶対こいつ起きないから、その時夕飯まで続きをやればいいや。

 ウキウキとVRギアを接続し、ついでに居心地よくするために布団を床に敷き始める内田。

「それで、お前種族なに選んだんだ?」

 器用に質問も浴びせてくる。


「ん~。影族。」


「はぁ?マジで!?影族ってとんでもないPKが出て一回新規キャラ作成中止になったんだろ?どうやって作ったんだよ。」


「今日の事なのに詳しいなぁ。生まれてすぐ5回殺された。」


「うわぁ・・・リアル被害者だった。」


「頭にきて、道連れに自爆してやった。」


「ダッは!マジかwwww運営からBANされる前かw」


「あーBANされたの?」


「されたみたいだよ。公式に載ってたから。おかげで板はお祭り騒ぎだったけど、影族の情報がおかげで出ない出ない。」


 そうだろうねぇ。初期作った人はキャラクター削除しちゃった人もいるだろうし、時間置いてインした人も今から城でチュートリアルだろうし、王様くるまで出れないだろうし。


「で、どうなんだ?影族?」


「どうだと言われてもな?」


 何を答えたらいいんだ?


「まず、影だな。」


「うん、それは知ってる。」


「あとは・・・王様が神様で。」


「意味わからねぇな。」


「つなげられて」


「は?」


「お祭り騒ぎだった。」


「カヅキ。説明端折りすぎ。」


 内田に怒られた。まぁワザとだけど。


「ん~。影族は文字通り影が本体の種族で特殊ステータスONTが結構重要っぽい?ONTが少なくなったら貧血起こして、ゲームで4時間くらいさっきまでぶっ倒れてたところ。スタートは多分影の国アルシオンで、影の王様がいるんだけど、その人は何だか本当に神様っぽい?神様じゃなくてもスゲー強い。影族は『繋がる』って事がすごく大事で、『繋がって』いないと犯罪者扱いされるらしいよ。あと、光がないとぶっ倒れて死ぬからキャラ作成したらとにかく誰か影族に保護されるか光があるところに出ないとそのまま死ぬ。下手したらアバターロストするかも。とりあえず大事なのはこれくらい?」


「お、おう・・・。」


 と内田。


「なんかスゲー大変な種族じゃねぇか。とりあえず、ソレ情報として掲示板に載せていいか?言わないで死ぬ奴が多発しても胸糞悪いし。」


 運営も開始に強調してるけどねぇ。これからやる人の心構えになるだろうし。

「多分、言ってる人が他にいると思うけど、やっちゃって。」


「うーす。」


 と、ヘッドギアを付ける内田。


「ギアつけるの?」

 と聞くと、文字でもいけるけど、ギアから直接書き込んだ方が交流掲示板は早いとのこと。半ログイン状態なのだという。

 世の中便利になったもんだな・・・。


「俺人族だから難しいことわからな~い♡(テヘペロ」


 そのまま声に漏れている。

 気持ち悪い書き込みするな。


「しかし、俺は人族にしたんだけど、アルシオンなんて街聞いたことないし、カヅキに会うのはまだ時間がかかりそうだな。」


 どうやら書き込みは終わったらしい。

 ギアを脱いで普通に話し始める。


「内田は攻略組だろ?自分はまったりのんびりやりたいから、そのうち会えればいいんじゃないか?」


「そうだなぁ、今はまだ余裕ないしなぁ。でもそのうち、絶対遊びたい!」


「ん、あんがと。コンテンツの数合わせだけはやめてほしいけど。」

 内田はいいが、気の合わない廃人思考の人とはお近づきになりたいとは思わないのだ。


「その可能性も否めない!」


「否め。」


「内田は何処スタートなんだ?」


 人族とかほかの種族は一緒なのかな。


「んーアポリア王国ってところの辺境の街?ここで街開拓しながら王都目指していくみたい。とりあえず首都に向かう道は全部閉鎖されてる。」


 もはや別ゲーだな。


「人族のほかに獣族とかドワーフ族とかエルフ族とか小人族はいるけど、ドワーフ族とエルフ族、小人族は違うところに出る人もいるみたい。人工遺物族と晶族、水棲族は完全に違う場所。」

 後なんか足りないような・・・?


「影族と同じで今のところ息をしていないのが妖精族だな。まともな報告を聞かない。大自然に放りだされて、自然の厳しさにやられたり、モンスターにやられるらしい。」


 思った以上に過酷だった。


「俺のベータ―の友達さぁ、とりあえず一回集合しようぜ!って言ってたんだけど集合できたのが6人中4人だけで、全部それがアポリアスタート組だけ。後の2人は会う目途すら立っていない感じw」


「大変だなぁ。」


 攻略組って攻略が遅れちゃうとアレだろうからな。

 まぁこのゲーム、こんなにスタート地点がが多いと何処が攻略か微妙な所ではあるような。


「このままだと、一回解散だな。」


「思い切りがいいんだな。」


「ある程度気は合うけど、あくまでプレイスタイルとかの辺りだし。雑談がすっごい盛り上がる人ばかりじゃないし、クランみたいなものができたら登録しよっか、って流れにはなってる。」


「なるほどね。」


 プレイスタイルと、気が合うとはまた別なのか。


「俺はカヅキとは気が合うと思ってるけど、かといって無理にゲームでやりたいことを合わせたいとも思わない。それが逆になった感じ?」


「なるほどね。」

 今度のなるほどねの方が実感がこもっていたと思う。

 自分も無理してまで内田の攻略スピードに合わせてゲームをしたいとは思わない。DPS(火力)を出すのは好きだけど、そこは突き詰めたいが、攻略速度を極めるとか、他の人よりいい装備を先に取ろうとかはあまり思わない。どちらかといえば、少し空いてからソロで行きたがるタイプ。というか、そもそも他の人が苦手なんだと思う。内田は人懐っこいから、多分自分にあわせてくれてるだけなのだ。それだけでもありがたい。

 対して内田は一番に目的地にたどり着く事に快感を覚えるタイプ。一番にたどり着くことがモチベーションになるのだ。強さでも同じことが言える。別ゲーでもランキング戦で頑張り1位になるまで通い詰めていた事もある。その後ニートに負けてしまったが、効率を構築することが快感なのかもしれない。

 自分と内田が似ているところは、「無理して相手に合わそうとしない」ところなのかもしれない。


「とりあえず、フレンド登録だけしようぜ。」


 と、内田が提案してくる。


「やり方がわからん・・・。」


「まじかwまず、ステータスを出してー」


「まず、ステータスを出したことがない・・・。」


「お前www何してたんだよ!」

「主に5回殺されて、保護されて、病院放りこまれて、説教されて、イベント巻き込まれて気絶してた?」


「わぉ、何その壮絶人生!お前は主人公か!しょうがないなーフレンド申請送るから、Sakuでいいんだろ?送ったら承認しろよ?」


 うぐっ、内田にはユニークスキルの事は言うまい!


「そういえば、お前ユニークスキル何が出た?」


「黙秘権を行使します・・・。」


「俺、桃尻と肉好きと幸運だった。」


「リアルそのまんまじゃん。桃尻は知らんけど。」


 今日はばーちゃんに肉をリクエストしておいて良かったと思う。

 全く運のいい奴め!


「桃尻って馬に乗るのがマイナスつくらしい?よくわからないけど。で、カヅキのユニークスキル・・・」


「黙秘権を行使します。」


「えーーーなんだよぉ・・・・」



 言えるわけないだろ!あんな厨二病属性!!!もう卒業したんだから!


内田大輔。漸く初登場。

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