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ふぁるでぃあにっき。  作者: コミヤマミサキ
7月 ~ファルディアと日常~
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2-16 ひと狩り逝こうぜ(強制 2

 自分がゴブリンの村にたどり着いた頃にはあちこちで喧騒が始まっていた。


 とはいっても、さすが戦闘民族影族(ほぼ前衛のみ)のみなさん。

 ほぼ、一撃必殺で次々とゴブリンを屠っていっている様子が遠目からでもよくわかる。ある者は大きな斧で首を跳ねあげ、ある者は大剣で問答無用に真っ二つ。ある者は脚の健を切った後に背後から一発で仕留めている。なかなか凄惨な現場である。

 中には強く大きなゴブリンがいる。あれがさっき言っていたハイゴブリンだろう。PTのメンバーである人たちが3,4人で安全マージンを取りながら少しずつ削ってるのがわかる。そんな組が4個くらいある。時々、弓で牽制されてたりするので、後衛っていたんだねって気持ちになる。

 アインさんはほぼ中央近くにいることが多いが、方々に指示を出しているのが村の外からでもわかった。

 これは、ほぼ自分にできることはないかな、と思いつつも方々を見ながら観察を続ける。


 見ていて分かった影族の戦い方の傾向は①タイマンだと、牽制しつつ強打で瞬殺、②一撃で死なない相手はヒーラーがいないので被ダメージを極力抑えて消耗戦 ③意外とコンビプレイが上手い というくらいだろうか。思ったよりよりもダメージを食らわない戦い方が上手いのだ。

 例えば、あそこでハイゴブリンと戦ってる人達は戦士さんが横から切りつけ、ハイゴブリンの注意が戦士さんに行って攻撃を加えようところで弓矢で攻撃を阻害、すかさずその後ろの盾士さんが盾でぶん殴って体勢を崩すという連携プレイが美しい。

 誰かが抜け駆けしようとかはしないので、各人がやるべきことを分かっていて、それを粛々とこなしている。そして自分の程度をよくわかっている。狩りのプロ集団といった感じだ。これが本当によく当てはまると思う。即席のメンツでこれなのだから、組織だってだともっと強くなるだろう。

 影族は個々にとんがった種族だと思っていたけど、多分、集団戦はもっと強い。ゾクリとするような確信を得る。


 開始10分ほど経過したが、雑魚ゴブリンの7割は壊滅。2割が応戦中で1割が敗走をはじめ、これの対処にPT外の人たちが半分向かいだしたところである。ハイゴブリンはすでに2体沈められ、戦ってないPTメンバーの人たちが小屋を慎重に1つずつ捜索しだしたところである。

 圧倒的影族側の勝利に見えるが、・・・何か見落としている気がしてしょうがない。


 でも考えても分からない。


 でもモヤモヤする・・・。これも第六感なのだろうか?


 村は村と呼べないような掘立小屋ばかりの作りで、乱雑に板がさしてあったり、丸太が地面に突き刺さってたりでいろんなものでバリケード代わりに囲われている。


 その中にとりわけ相対的に立派な小屋が3つ。1つは捜索中であり、2個はまだ見ていない。他に目立つものとしては、門扉の前に小さな物見やぐらが・・・


 ・・・?


 あれはなんだ?

 物見やぐらの上はまず初めに陥落させられたのだろう。ゴブリンの死体の横に火の手が上がっているが、その炎が変だ。・・・いや、炎がゆがんでいて・・・強いて言うなら映画で透明人間などを表現した時みたいに空気が歪んで見える・・・


 そう思った時にはもう影移動で駆け出していた。

 地下の時よりも、洞窟の中よりも、圧倒的な解放感。

 でも、急速に何かを消費しているのが分かる。

 さっきの月光のせいかな?と思う。月光からもらった力をここで大きく使っているのだ。

 天に月が出てなかったらきっと、あの櫓まで全然もたない思う。


 ただの気のせいだったらよかったけど、やはり気のせいじゃなかった。

 魔法か何かだったのだろうか?それがとけ、黒いローブの人影が現れる。決してゴブリンではない。それが、何やら詠唱の様なものを始める。テルメさんが見せてくれた癒しの力とは別の、正反対の人を傷つけるような気配がするやつ。多分攻撃魔法が、攻撃じゃなくても嫌な感じがするやつ。黒いローブの男は多分40歳くらいの人族だろう。忌々しそうに詠唱を続けている。

 影移動は重力の影響が薄くなるが、決して無重力になるわけではない。力の限りジャンプしたとたん、エネルギー切れを起こしたような感じにガクンと鈍くなる。先ほどの地下と同じような・・・物凄く粘度が高い水の中にいる様に。

 そして魔力には鈍感のか、影族たちはこちらに気づいた様子がない。


 このままでは、間に合わない・・・!?



 ―――だめなんだ。


 ―――あの人たちを傷つけられたくないんだ。


『願った事は全ては叶うわけじゃないけど、まず心から何かを願わないと、何も叶いはしないんだよ。』

 過去の声が聞こえる。


 ―――まず、願う事。


 ―――今日は楽しかったんだ。


『カヅキの願いは何だい?』



 ―――あの人たちと、まだバカ騒ぎがしたいんだ・・・!



 どうか、あの人たちに気づいてもらえるように、どうかどうか早く。


【ステータスONTを使用し、影移動をチャージしますか?】


 その時文字さんが提案してくれる。

 答えは勿論YES!後の事など知った事か。


 ぐんっと速度が戻る。

 最高地点まで到達して櫓よりも数メートル高い地点まで何とか到達し、そこで丁度影移動が切れる。あとは放物線を描いて落ちるだけだ。

 しかし、まだ足りないかもしれない!

 相手の集中を欠くために大声を上げる。


「どっ・・・・・せええええええええええぃいいいいいいいいいいいい!!!!!!」


 突然闇夜に現れた俺に黒ローブの男が驚愕に目を見開く。


 あ、驚きすぎて魔法キャンセルされました?口をぽかんと開けている。

 目的は果たしたようだ。だが、しかし。

 勢いはもう止められない。しょうがないので、悪いことをしてそうなこの人を、このまま蹴り飛ばすことにする。


 自分の大声には多分影族の皆さんも気づいただろう。

 この後何かあっても、世話焼きたい人たちだからきっと何とかしてくれる。

 きっとそう。


 相手は慌てて回避行動を杖でとろうとするが、こちらの方が全然早い。


 ドゴッ!!


 相手の構えた杖よりも15cm程上、丁度頬っぺたの所に自分の足がダイレクトヒットをかます。頬っぺたにめり込む足。見事に決まったと思う。衝撃の伝わり方の感触で、よくわかる。こういう時はボールって綺麗に飛ぶんだよな。


 ほぼ壊れかけた物見櫓から飛び出る黒ローブと自分。


 あとは~・・・


 推定高さ10メートルほどしかないけれど、かといって落下するには決して低くはない高さから落ちるだけですね。影移動のリキャストもあと25秒くらい必要です。まず無理。

 あ、ごめん。自分も死ぬかもしれないけど、推定悪い人も推定なのにきっと死ぬわ。どうしよう。


 黒ローブは先ほどの衝撃で白目を剝いてる。

 ちょっとうらやましい。

 事故を起こしたりすると脳の回転が速くなってスローモーションみたいに見えることがあるって聞いたことがあるけど本当ですね?

 ゆっくりゆっくり地面に落ちていく自分と黒ローブ。

 そろそろぶつかるかな?と思った瞬間。


 地面が一瞬で真っ黒に変わる。


 !!??


 何が起こったか分からない。

 分からないまま黒い地面に着地するとズボッっとなんか胸のあたりまで黒いのに埋まった。

 た、助かった?

 黒ローブは上半身がめり込んでいる。

 黒い地面から斜めに黒ローブの足が出ている。シュールな光景である。


「こんの・・・!!!馬鹿野郎が!!!!」


 アインさんが激怒しながら、こちらに走ってくる。


 戦闘をしていない影族の人たちもわらわらこちらにやってきて、自分と黒ローブを引き上げてくれる。

 引き上げられると、地面は普通の地面に戻った。


 アインさんか誰かの影の技なんだろう。おかげで命拾いをした。


「助かりました~。ありがとうございますー。」


 誰に助けてもらったか分からないので人が多いほうに向かって言う。多分アインさんかなって気がするけど。


『お前よく気付いたなぁ』『やるなぁ』『レベル1で影移動できるだけはあるわ』『よくやった!』『しっかし、こいつ誰だぁ?いかにも悪人ですっていう見本みたいな奴がいるけど』『どう見てもゴブリンじゃねぇなぁ』『あー俺こういう頭使うの苦手ー』『俺も―』『俺も―』『どうやら俺たち、助けられたのかも?』『ありがとうな!』『アインの影侵食なかったらSakuが死んでたかもだけどww』『人を助けて死ぬってウケる』『バカな奴だなぁ』


 ワシワシとなでてくれる人、貶してくる人、馬鹿にしてくる人、様々だけど総じてみんな温かかった。酒臭かったけど、なんかもみくちゃにされも悪い気がしなかった。

 自分が守るなんておこがましいけど、少しでもこの温かな場所が守れたことが誇らしい。しかし・・・


『バカ野郎が!レベル2の癖に敵に突っ込むやつが居るか!しかも相手はかなり高レベルの魔法使いだぞ!?』


 アインさんには滅茶苦茶怒られた。

 うわぁ・・・そんなレベルが高い魔法使いだったのかあ。中級ジョブじゃないにしろ、かなり強かったんだな・・・。


『しかも、お前は『繋がって』ないんだろう?俺たちより死にやすいんだ!もっと気を付けなくてどうする!!!』


 はい、申し訳ございません。大変仰る通りです。ぐうの音も出ません・・・・あれ・・・?なんか謝ろうとして頭を下げようとおもったけど、どっちが地面でした?


『ああ!おいSaku聞いているか・・・っておまえ!具合悪いのか!?』

『わーSakuが倒れたぁ!』『どーしよ!?』『俺シスターに知らせてくる!』『ポーション飲ませるか?!』


 慌てだす影族のみなさん・・・。

 何だか申し訳ないけれど、なんか目の前が暗く・・・遠く・・・。


【プレイヤーSakuのレベルが3レベルになりました。】

【プレイやーSakuのレベルが4レベルになりました。】

【プレイヤーSakuの回避スキルが2に上が・・・・


 文字さんが燦然と羅列を始める。


 こんな時まで・・・・・マイペース・・・・・。




安全マージン・・・車の運転などで安全を確保する際の余裕・あそびのこと 。ゲームでも同じく、相対する敵に対するレベルや物資、技などの余裕を示す。


ゴブリン1匹一番弱い奴でレベル30以上推奨。フルPT1匹受けならば20でも可。ただし、ゴブリンは群れるので、だいたい20台で無理して死ぬというファルディアでの初級冒険者殺し。急に6匹とかに囲まれることもザラなので、安全マージン込みだとソロで初級職100レベル辺りじゃないと死ぬかもしれない。PTでも70くらいないと影族さんたちは3,4匹いたらすぐには手を出さない。

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