2-12 幕間 そのころのあの人は
グロイ展開注意
出そうか悩んでいた話ではありますが、先日のVRギロチン騒動でVRと人の在り方を考えさせられ、掲載した方が今後の話の展開の理解が深まるだろうと思い掲載する事にしました。
なお、読まなくても差しさわりはありません。
ぴゅううう~・・・・途中から落下ではなく滑り台の様なものに載っている事に気づくMJKBY氏(命名Saku)。
ちなみに彼のプレイヤーネームはピース(平和)という。強烈な皮肉である。
ゴス!ガスッ!
滑っていく最中に滑り台の途中で止まってしまったであろうゴミの様な物にぶつかる。軽いからそこまでは痛くないのだが、地味に少し痛い。
長い長い滑落の後、急に何もない空間に出る。
「ぎゃぁあああああ~~~~~!!!」
3秒ほどの自由落下の後に、どこかに落ちた。と思ったのもつかの間、ガラガラと地面?が崩れてはじめ、再びゴロゴロと滑落していく。
そのまま転がり、部屋の壁のようなところにぶつかり漸く止まる。
「クッソ、馬鹿にしやがって!覚えてろよ!」
聞く者もいない悪態をつきながら、回る目でどうにか周囲をうかがってみると、少しだけ明るい円形の部屋の様である。天井は高く15メートル以上はありそうだ。そこにゴミの山がうず高く積まれている。天井には横穴が開いており、途中まで滑り台が設置されている。自分はあそこから滑り落ちてきたのだろう。
ごみ扱いをされて投棄されたことに気づき、強烈な怒りで目の前が真っ赤になったように感じる。
どいつも、こいつも、俺をバカにしやがって!
目に物を見せてやる。
絶対復讐してやる。
この屈辱、倍・・・いや3倍以上に返して相手に突き付けてやらないと気が済まない。
そもそも、弱い虫けらが自分に反抗したのがいけないのだ。
早急にここから脱出し、あのレベル1が絶望するくらい命を刈り取ってやらないと気が済まない。
何度も相手を串刺しにした感触を思い出し、笑みを浮かべる。
ああやって俺の中でただ壊れていればいいのだ。
このゲームはいい。
相手の肉を切り裂く感覚や、相手の臓器をわしづかみにするような感覚。
リアルで小動物を切り裂くには刃物を使ったのでいまいち物足りなかったのだ。
今はまだ影族しか斬ってないが、この手で人族を切り裂いたらどうなるのだろう。
想像しただけで震えてくる。
どうせ殺すなら、若く好みの女の方がいい。
勿論手を直接下すのだから、臓器まで綺麗なタイプ。
―――ああ、早く殺してみたい。
屈服させてみたい、恐怖を浮かべその瞳に自分を映してほしい。
その後内臓を掻きまわして苦痛と絶望のうちに死に沈めるのだ―――
ほの暗い、愉悦の感覚に酔っていると、周囲にガサガサと何かの気配がする。
何か生き物がいる。
敵性生物の可能性が高いから早急に戦闘準備をするべきだ。
だが、しかし。
「クソ!この!」
どんなに力を入れてもこの変なゴムの様な縄は一向に解けようとしない。
お金持ちの家に生まれ、大事に育てられ、しかし常に支配され続けてきた彼には「自分の命を脅かすものがいる」という想像ができない。頭では知っていても、本質的に分かっていないのだ。
だから命の危険があるにもかかわらず、声を出すことに躊躇いがない―――
「う、うわぁああああ!なんだお前はぁあ!!??」
彼の悪態を聞きつけて、無数の1メートル前後の小さな恐竜みたいなものが周りに集まってくる。どこにそんなに隠れていたのか、15匹は集まってくる。
彼らはこのゴミ捨て場の主の一人であり・・・
「ぎゃあああやめろぉおお噛み付くなぁ死ぬだろおぉおおお!!!」
なんでも食べる掃除屋でもある。
黒い簀巻きの物体はか弱く安全と分かり、次々と襲い掛かる小さな恐竜たち。
数秒で彼の声は聞こえなくなり、あとは彼らにいただかれるのであった。
だが、彼は15分後にこの場に再ポップすることになる。
――――――――
再リスポーンの度に喚いて食われ、
3回も死んだあたりで彼はすっかり疲弊をしていた。
4回目にPOPした時には声を出すこともなく、強烈にシステムに念じる。
『GMコールを!ハメられてるんだ!助けろ!!』
【了承しました。GMにコールをいたします。】
彼の意が伝わった事にほくそ笑む。
彼の味をすっかり覚えた小さな恐竜モドキたちは、彼を見つけた瞬間嬉々として群がってくる。また痛みはないが内臓を食い荒らされる様な気持ち悪い蹂躙の時間が来ることに彼はゾっとする。
自分がこんな目に合うなんてどう考えてもおかしい。
【ただいま混雑しております。GMコールは67件待ちです。少々お待ちください。】
「ふ、ふざけやがってぇえええええええ!!!!!!!」
結局4回目もおいしくいただかれた。
8回目に食われかかる途中で、急に視界が切り替わる。
どこかに召喚されたらしい。
そこは薄暗くジメジメしており、石牢の様なところだったが、さっきまでの場所ではない事、恐竜モドキが居ない事に彼はひどく安堵した。
そして正面に人影がある。
【大変お待たせしました。GMです。ご用件をどうぞ。】
影族の人型が簀巻きで転がってる彼に言う。
服は上等なものを着ており、おそらくGM装備と言われている物なのだろう。
何故だか希薄な印象を受ける。
「ハメられてゴミ捨て場みたいなところに捨てられた。それだけでも屈辱的なのに、敵がウヨウヨ居やがるせいですぐ死にやがる。しかも!この紐は死んでも切れなくて常に恐竜モドキに食われるだけだ。こんな糞ゲーあるか!どうにかしろ!」
安堵のあまり血が多く頭に巡り震えてしまう。その勢いのまま怒鳴り散らした。
本当は泣いてしまいたかった。
【ただいま確認しますので、少々お待ちください。】
そう言うとGMは黙りこくる。どこかと通信をしている様だ。
誰も話すものがおらず、静かになる部屋の中。
ただ彼の荒い息遣いだけが石牢にこだまする。
【大変お待たせしました。VR認識番号;07946352894 ファルディアPN:ピースさんでお間違いないですね?貴方には既に5件のハラスメント行為の申請が来ております。その件で現在運営は調査中でした。その他にも同人物に執拗なPKを繰り返しており、これは運営規約違反に相当します。まだ調査中の段階ですが、すでにこの時点で初回という事を差し引いても1か月間のアカウント停止に相当しております。せっかくこちらに御越しいただいたので、本時刻ををもってピースさんのアカウントを正式に凍結させていただきます。なお、始めてのファルディアでの規約違反処罰者となります。おめでとうございます。】
何がおめでたいというのか。
「ふ、ふざけるなぁああああああああ!!!!俺を誰だと思ってやがる!!!」
こんなことが許されるものか。
こんなバカな話今まで聞いたことがない。
なぜ、自分が蔑ろにされなければならないのか。
【なお、これは暫定的な処置であり、今後違反行為の確認が取れた場合、違反内容に応じて増える可能性が現状かなりございます。よって、処罰が増える場合はご登録いただいたメールアドレスに運営からメールが行きますのでご注意ください。】
「この糞運営!どうせスポンサーから不正に金を貰って贔屓をしたり、人体実験で脳内を弄ったりしてるんだろう!マスコミなんかに訴えてやるからな!おれがゲームでどんな酷い目にあったかある事ない事証言してやる!俺を誰だと思ってやがる!実家の力を使っても圧力もかけてやるからな!それが嫌ならとっとと縄をといてゲームに戻せ!このクズが!!!!」
【ちなみに、この会話はお伝え忘れましたが録音はしておりませんがログはとっており、公式の裁判で認められる証拠となりますので、ご自由にどうぞ。それ以前の貴方と被害者との会話のログなどもすでに保護済みです。先ほどの発言は恐喝罪に相当しますので、現実の法規に基づき会社として対応させていただきます。実家の力とやらで良い弁護士をお探しすることをお勧めします。】
淡々と告げるGMになにやら不気味さを感じる。
「お、おどしなど・・・。」
【おかしいですね。脅してきたのはそちらでしょう?更にアドバイスを加えておきますと、たとえ再ログインできたとしても上位AIに社会的に追放されたあなたは、余程奇特な友達でもいない限りあそこから脱出することはかなわないでしょう。ゲームの中にも社会が形成されていてそれを楽しむゲームと初めから規約に載ってますので、そこを訴えても違反にはなりません。PKは可能ですが社会的に許されているとは限りません。仮想現実で著しく社会不適応な行動を取った上での制裁処置となっておりますので、ゲームとしても当然の処置となっています。ほぼゲーム内での死刑宣告ですので、キャラクターは作り直した方が早いと思いますよ。】
まぁ戻れれば、ですけれど。
とGMが付け足す。
【それでは現実の法廷でお会いするそうなので、楽しみにしております。これより凍結を実行します。】
――――――
「クソガクソガクソガクソガふざけるなーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
現実世界に強制的に戻され、怒りが収まらずVR機器を破壊する。
それでも気が収まらず、カーテンを破壊し、途中バットなどを持ち様々なものを破壊していく。
あまりの剣幕に恐れを感じた家族が父親を呼び戻し、父親に殴られるまで彼は部屋の物を破壊し続けた。
その後彼は暫くVRとファルディアのネガティブキャンペーンを執拗に周りに行っていたが、そのうち警察に逮捕される。
小動物を殺し続けていたが、それに満足できなくなり、ついには幼児を誘拐しようとしたところで挙動不審なのを見とがめられ、ナイフも所持していた事から犯行が未遂で発覚した。
彼と彼の家族は「VRの暴力描写が彼の成長を狂わせた」と見解を述べ一時期世間的に大きく話題に取り上げられる。しかしファルディア運営会社側からは、彼はログインした当初1時間足らずで16人ものキャラクターを殺害。また彼の「殺したい」などの独り言や、すぐに殺害に走る彼の行動パターンを詳細に裁判資料として提出。他のプレイヤー1000人のデータと比較し、彼の殺しに対する異常な快楽値の検出を指摘し、ログインして1時間もせずに16人も殺す様な影響力があるとすれば、それはもはや軍事利用できる洗脳だという見解を示す。
彼は「殺した感触が良すぎたからもう一度殺したくなったのだ。だからVRが悪い」と主張したが、運営側からは「そもそもPK時に手で殺したとしても精神的保護を理由に接触感覚は伝えていない。」とのデータを提出。また、彼が殺したのは影族という”影だけのキャラクター”であることから内臓も設定しておらず、もし本当に感触がしたとしたら彼自身の過去の体験が脳内補正したのだろうと見解を示した。
結局裁判は未成年保護と彼の精神疾患を認定。
病院への入院と治療を義務付けた。
なお、彼はネット上で基地外番付Sクラスに認定されるのは完全に余談である。
異常なまでの自尊心と、臓器に性的興奮を覚えるタイプ。
後日挿入されたものになります。




