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ふぁるでぃあにっき。  作者: コミヤマミサキ
7月 ~ファルディアと日常~
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2-10 神殿1

初めて黒くない人の登場デス・・・。

 どうも、プレイヤーネームSakuです。

 影人やってます。

 レベル1の、さっきキャラクターメイクしたばかりのピチピチの新人ですが、既に両腕欠損をおこし、5回もプレイヤーキルされて、一番初めにした事がスキルの確認とかじゃなくブラックリストの登録です!よろしくお願いします!!!



 さて、腕をどうにかできないか王様に相談したところ、気さくな爆笑王はひとしきり笑った後、突然自分の襟首をおつかまえあそばせになり、自分は猫の子ごとく引きずられ、一瞬で影移動か何かで転移し、病院と教会が合体したようなところに連れてこられ、ごろんごろ~んと女性の方々の悲鳴をバックに放りこまれ、床とお友達になっていたところです。

 以上現実逃避終わり。



「ユイベルト様!お久しぶりだと思ったら、何方(どなた)ですかこの方は!?っていうか突然休憩室に転移してこないでって毎回言ってるじゃないですか!?」


 影族じゃない、背が低くがっちりとした体格のシスターの様な服を着た女性が、影の王に恐れることもなく意見をする。というか説教を始める。だが王様は構うことなく、その女性に僕の腕・・・あいつの腹に残ってない先の部分も持って帰ってきてくれたんですね———をポイポイ渡してる。

 王様のこのノリは、いつもなんですね。そうですよね、ご苦労様です・・・。


「ちょっと聞いてるんですか!?」


 仮にも王様で神様なのに凄いなぁ女性は・・・。


「きいとるきーとる。聞いてはいるが、やる気がないだけだ。気にするな。それに、それの残りが使い物にならなくなるぞ。先にできる限り手当してやってくれ。」


 じゃあな、と来た時と同じように傍若無人に掻き消える王様。


 残される地面に不格好に転がっている自分。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・。


 この場にはシスターが言う様に休憩室なんだろう。5人ほどのシスターっぽい方々がお茶をしていたようだ。

 お菓子を食べかけて固まってる人もいる。


 あまりの気まずさに自分はそっと起き上がって正座をする。

 腕が無いと意外と難しいなこれ。


 フルフルと震えるドワーフシスター。


 あ、あの腕の切れ端、意識を集中すると残り時間5分くらいの表記が出ているんだけど、5分以内だったらくっつくって事なのかなぁ・・・?でも、ただ押さえつけてたらつくわけじゃないか。影人の生態すらまだよく分かってないんだよね。何たって生まれたてなのに(以下略)。


「ユイベルト様のバカ――――――――!!!!」


 苦労人は大変だなぁ・・・・。

 耳がキーーンとしながら、正座したままドワーフシスターの叫びを聞いていた。



 ―――――――――――――――――――――――――


「ゴホン、大変失礼しました。」


 正座したまま、ドワーフシスターに向かい合う。

 立ち直った4人の別のシスター達が急いでおやつを食べきって片付けたり、どっかに走って行ったりしている。


「こんにちは、初めまして。私の名はテルメと申します。この影の都アルシオンで唯一の神殿を任されてます。よろしくお願いします。」


「あ、ご丁寧にありがとうございます。私はぷ・・・Sakuと申します。よろしくお願いします。」

 うっかりプレイヤーネームとか言いそうになる。


「Saku様ですね。ユイベルト様がお連れになったにしては大分マトモな方で安心しました。」

 と言いニッコリと微笑む。

 王様普段何やってるの?ねぇ。


「ユイベルト様がおっしゃるように時間が無いようですね。まず、出来る限りその腕を取り込んでしまいましょう。」


 取り込む・・・。くっつけるとかではなく。

 影族の生態が謎過ぎる。


「随分短いですが残りはどうされたんですか?」


「腕を斬った張本人の腹の中に納まってます。」


「あなたも大分、変な人なんですね。納得しました。」


 動じた風でもなく坦々と笑顔で言い募るシスター。

 漂う歴戦の猛者の如き貫禄におののく自分。

 本当に王様は普段何をしているのだろうか・・・・・・・・。


「影変化はできますか?残りの腕を触りながら一緒に変化するように強く念じるんですよ。」


「すみません、自分先ほど生まれたばかりでして、影変化はできません。」


 絶句するドワーフシスター。


「あらまぁ。どうしましょう。残り時間すくないですし。強制的にくっつけちゃいます?」


 ちょっと慌てるシスター。


「影移動ならできますけど。」


「何で難しい方だけ出来るんですか?やっぱりユイベルト様が連れてくる事だけはありますね。」


 じと目で言われる。


「この際、影移動でも構いません。原理は一緒です。この影の腕の所に移動して、体の中に入れた後、元に戻る時に一緒に戻るように強く意識するのです。」


「わかりました。」

 とにかく言われた様にやってみる。体がとける感覚を思い出し、移動する。あれ?似非魚の腹に手を突っ込んだ時よりも全然快適に影移動ができる。普通に歩くくらいのスピードでいける。何だろうな・・・?って思いながらも今は腕を体の中に入れる事に集中する。上手くいかないので腕の上で正座するイメージになる。なんとか入ってると思うけど自分の中に自分がある感じがとっても変な感じがする。

 次に一緒に戻る事を強く意識するだったか。えーー・・・???・・・腕よ、君は我なんだよ?一緒に戻ろう?さぁさぁ・・・ナンパか!?・・・えー…もどれーもどれー・・・


 途中変な雑念が入ったが、戻る最中になんかジワっととけた感触がする。しいて言えば、足元にあったチョコレートが急に溶けたみたいな。ううう・・・なんか気持ち悪い。

 影族の主成分はチョコレートだとでもいうのか。


「成功できましたね。何よりです。」


 いつの間にか人型に戻っており、いや、腕の部分が足りなくはあるが、腕のほぼ付け根からなかったものが肘手前くらいまで両腕とも生えている。


「ありがとうございます。」


 ご指導ご鞭撻のおかげです。だが、まだ足りないパーツはどうしたらいいのでしょう。


「残りの部分はないということなので、その辺の存在力をちょろまかしてかさ増しするしかないですね。影族は他の民族と違って、存在力頼りなところがあるので流血や臓器の欠損などがないこういうところは便利ですね。ユイベルト様が連れてきたんだから、ユイベルト様の存在力を少しパクっちゃいましょう。」


 この人、シスターなのにちょろまかすとかパクるとか言ってるけど大丈夫なのかなぁ。それとも全面的に苦労させてる王様が悪くてやさぐれてるのかなぁ。きっと後者だろうけど。


「それって『繋がり』を通してもらうってことです?」


「そうですよ。他に何があるんですか?せっかくの『繋がり』なんだから、こういう時にこそ大手をふるって有効活用して嫌がらせをしてやるのがいいんじゃないですか。」


 嫌がらせなのか。ホント苦労させられてるんですね・・・。

 だがしかし・・・


「大変申し訳ないですが・・・自分は『繋がって』ないデス。ごめんなさい。」

王様は、繋がってるかどうか『影族は分かる』。って言ってたけど、他の種族は分からないよねぇ。


「・・・あなた方は!」


 またプルプルしているドワーフシスターさん。

 あれ?意外と王様属性でした?


「何をやってるんですか―――――――――――――――――!!!!!!!」


 逆だった。

 怒られた。


 ・・・やっぱりあの爆笑王、ただの笑い上戸だったのでは。

 怒られる案件じゃないですか。




 ――――――――――――――――――――――


「つまり、ご自分で『繋がり』を弾き、あまつさえご自身の意思で『繋がる』事を拒絶。それをユイベルト様が認めてここに連れてきたと。それで相違ないですか?」


「はい、間違いございません。」

 さっきよりもずっと姿勢よく正座をしている。

 まぁずっと正座だけれども気持ちの問題だ。


 はぁ・・・・とドワーフシスターさんがため息をつく。


「生まれたばっかりと仰ってましたね?生まれてからすぐに『繋がり』を弾くなんて考えられません。その腕の傷といい相当ひどい目にあって変質してしまったのでしょう。だけれども、影族の方々にとって『繋がり』は何よりも大事な最後の安全装置。『繋がり』があるからこそ紙一重で生き延びた方も多くいらっしゃるのです。それを蹴る意味を本当にお分かりですか?死ぬかもしれないのですよ?」


「まぁそうですよね」


 公式的にも繋がらないなんて想定は犯罪者以外にあまりしていない気もするし、自分も特に無難に保護されてたりしたら『繋がる』事に多少の抵抗感は覚えるが、安全装置ならばって受け入れていた気もする。王様が命令したら逆らえなくなるとかだったら嫌だけど、あの王様ならまず自分で殴りに行くか、自分でつかんで言う事をきかせそうだしなぁ・・・・。命令するよりも。

 すでに王様御自ら襟首掴まれてここに投げ込まれたし。

 だから、おそらく利益だけあるものなのだ。普通の『繋がる』事は。


 ただの、神の無償の慈悲で愛。


 それを蹴る。


 神に仕えているであろうシスターっぽい彼女には理解できるとも思えないけれど、最初から理解されないだろうと諦めるのもなんだし、自分の感情を言葉にしてみることにする。


「なんて言ったらいいか分からないですけど、テルメさんがおっしゃる「変質した現在の自分」もそのまま大事にしたいかな、って?」


 自分でもハッキリよくわからないので小首を傾げてしまう。

 今考えると大胆な事をしたんだなって思うけれど、あの王様となら『繋がって』も嫌じゃないかなって思うけれど、繋がらなかったのだから、繋がらないまま頑張ってみたいのだ。


「あなたは・・・」

 すこし驚いて目を見張ったシスターテルメドワーフ娘は、次に目を伏せる。

 いまの言葉に何の要素があったというのだろうか?その目には後悔?悲しみ?そういった何かが浮かんでいるが。


「あい、わかりました。貴方は自分の足のみで立つことを選択した。前向きな気持ちであるなら、私は神官として、その意思を尊重いたしましょう。」


 なんかそう納得してくれた。

 よくわからないけど、まぁいっか。


「それで、治療代はどうするのです?『繋がり』が使えないとなると治療費が莫大になりますよ?」


 ニヤリ、と王様ににた笑いを浮かべる彼女。

 まぁよくなかった。

 大変だった。


「え~・・・・ちなみに、おいくらになりますか?」


「金貨15枚程度が相場ですかねぇ。」


 金貨15枚・・・・。なるほど分からん。


 だがしかし、リアルの相場だと18金が1g今4000円はしただろうか?18金よりも成分は低いかもしれないが、低く見積もっても金貨一枚で5gはあるよね?1円玉が1gだし。10円(4.5g)くらいの金貨でも多分2万円程度の価値はあると思うんだよねぇ・・・。それが15枚。どんなに低くみても30万から。凄い。昨日生まれたばかりの赤ちゃんにそんなお金ない。

 これは困った。


「すみません、生まれたてで価値が分からないのですが、薬草何個分に相当しますか?」


 この世界に薬草があるかも分からないのに、アホな質問をしてしまう。まぁゲームだし薬草に相当する物はあるだろうけど。


「薬草ですか?ギルドの公式の買取価格は10束納入で銅貨5枚程度ですので、状態が良い物で3000枚程度でしょうか?」


 ・・・よかった、五万枚とか言われたらどうしようかと思った。

 頑張れば何とか手がとどくかな?

 ごめんなさい、イメージがばーちゃんの畑の大葉ですが。本当にごめんなさい。


「できれば割賦(かっぷ)でお願いします。そして申し訳ないのですが、初回のお支払いも少し待ってほしいです。何たって生まれたてですので。」


 稼ぐ手段が無いと返せませんからね。

 ローンと言っても通じなかったら困るので、割賦と言ってみた。

 ていうか、この世界に割賦っていう概念あるかな。踏み倒しそうな人も多そうだし。

 それとも自動翻訳されるのかな?


 テルメさんは驚いて目を見張った後、微笑を浮かべて頷いてくれた。

「ええ、大丈夫ですよ。踏み倒した場合はユイベルト様に請求しますからね。」


 ドワーフ娘シスターテルメはある意味最強かもしれない・・・。

 利子は何パーセントなんだろうか・・・。



【ドワーフ貨幣の価値】

影の国ではドワーフ族との取引が多いので、貨幣は全てドワーフ族の物で通用する。

影族は不器用なので、貨幣など作れない。というか作るという発想がまずない。

国の中では物々交換も多いが、職業が傭兵みたいなところがあるので、何も言わなければ基本ドワーフ貨幣でやり取りされる。


半銅貨(銅貨を二つに割ったもの)

銅貨10枚=1銀貨=2千円程度


銀貨10枚=1金貨

※金貨は、正確には「ドワーフ小金貨」という。通称、髭金。銀貨の主流は髭銀。主に流通しているものがこちらなのでファルディアで金貨と言えば髭金のこと。ファルディアで人気の安定通貨の一つ。銀貨も本当は色々あるようだが、割愛されている。同じ髭銀、髭金でも分量が違うとか色々。財政難の時に分量をごまかして貨幣をごまかすことも為政者には可能であるが、やりすぎると神様に罰せられる。国にもよるが、法治の神などは間違いなくブチ切れる。ユイベルトは貯めたところを何度か接収した事もあるが、影族はそういう事をしない(する本能もない)ので、大概影の国でイケナイ事をするのは、ドワーフかエルフか人族である。肉体的に暴れるのは影族。


なおゲームなので、ゲーム内通貨F(フラウ=ゲーム的には魔石や宝石の様な換金性の高い物という認識)に変換も可能。時価で自動的に変換される超便利機能付き。1F=1円くらいのノリ。



18金・・・18/24(75%) 金が含まれている金属。金以外の残りの金属は銀か銅が多い。決して18禁ではない

割賦・・・代金を何回かに分けて支払う事(デジタル大辞泉より抜粋)。ローン払いの事

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