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ふぁるでぃあにっき。  作者: コミヤマミサキ
7月 ~ファルディアと日常~
1/444

2‐0 オープニング

 かつて神は天に座していたという。


 何柱もの神が天に御座し、各々の覇権をめぐって争っていたと伝わっている。


 ある時、世界の果てと言われる地に、神々の争いに敗れた一柱が天より墜ちてきた。


 その神の血が。


 肉が。


 ――――――そして力が。




 荒涼とした死の大地に広がり、受け止められ、恵みとして広がった。


 大地には植物が目覚め

 虫たちが生命の誕生の息吹を聴き

 動物達が新しい目覚めの大地を巡り

 そして、人類が知恵を授かった。



 ―――――神が墜ちた地。


 その地の名を ファルディア という。



 ファルディア創世記(op.037ビイマ記『原初の祈り』より抜粋 ムカレスフ訳)



 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ふと気づくと、暗い所に浮かんでいた。


 ”()()()()()()


 この発想にまず自分自身で戸惑う。

 布団などの感触は何も感じられない。

 横になっているにしては床が感じられず、立っているにしては地面がない。

 自分が何処にいてどういう状況かまるで分からない。

 自分の境すら感じられず、果たして起きているのか。

 それとも”これ”は夢なのか———?


『・・・ここは?』


 どこなのだろうと意識をすると、不意に自分の頭上が明るくなる。


 見上げると遠方から物凄い勢いで何か大きな土?鉄?の様な塊が大小合わせて3個降ってくるのがわかる。自壊しているので細かな破片の数を上げたらきりがないが。


 あまりの事に唖然としていると、自分の位置が曖昧なので定かではないのだが、おそらく斜めに落ちていったのであろう巨石は巨大な隕石だろうか?、石自体が徐々に空気との摩擦で燃えながら周囲を照らし落ちていく。

 不思議な事に、自分のかなり近くを隕石が通過したにも関わらず何の衝撃も感じない。

 空気の動きも、隕石を燃やす熱でさえも。


 どんどんと自分から見て足元の方に落ちていく隕石が、不意に円状に雲を割った事で自分の位置関係に気づく。

 どうやら自分がいるのは空のかなり上空で、何故か浮かんでるらしい?



 そこまで理解して、思い出す。


 自分は潜入(ダイブ)したのだと。



 隕石がどうやら地面に落ち、地上に隕石がまとっていた炎が広まる。

 ・・・いや、炎だと思ってたものは炎だけではなかったらしい?

 そのまま凄い光が地上に伝わり、色を変え、溢れかえり、波紋の様に広がってゆく。



 ”これ”は何だろうか?



 隕石と地上の衝突なんてかつての恐竜絶滅の様な大惨事を想定したが、根本的に違っている。()()は隕石ではなかったのだろうか?

 隕石が接地する直前に照らした大地は茶色一色で荒涼としており、火星の画像を思い起こした。だが、隕石が落ちた途端に様々な色で溢れかえってそれが広く大きく、まるでドミノ倒しのように連鎖し色を変えながら広がっていく最中なのだ。そしていくら距離があるからと言っても想定していた衝撃波が自分だけではなく大地や空にすら伝わっていない。


 まるで巨大な隕石など幻だったかの様に。

 ただ、”それ”は大地の大半を様々な緑色・・・植物だろうか?―――などに変えながら、所々水色・・・湖や川だろう―――などに代わり、岩しか見えなかった大地が様々なものに代わりながら波紋の様に広がっていくのが分かった。



『きれい。』



 空がいつの間にか明るく、青くなっていたのに気付く。

 先ほど隕石があけた雲の大穴から日の光が大地に差し入り、地上に光の階段をつなぎ様々な色が煌めいて見える。

 まるで世界を祝福しているかのように、自然の恵が行き渡り、様々な彩になった大地を照らす。

 その瑞々しさが、胸をついた。


 遠くで鳥たちの群れが森を飛び立ち、おそらく葉が風で揺れているのだろう微かな動きが世界の呼吸の様に感じさせる。



『———先ほどまで、つい先ほどまでは隕石がぶつかるまで、あんな荒涼とした大地だったのに・・・。』


 思わず胸が締め付けられ、涙が出そうになるのを必死にこらえる。



 OPでまさか泣かしてくるとは思わなかった。

 自分でも何で泣きたくなるのかが分からない。

 本能に訴えかけられている事を感じる。


 目に力を入れて、地上をじっと見る。


 これが、このゲーム(ファルディア)の大地創世なのだ。

 たかが架空の話なのに荘厳な気持ちになるから、自分も案外単純だなと可笑しくなったら涙が引っ込んだ。


 突如、ザッと自分が浮かんでいるところが肌寒い空気と真っ白い視界に塗りつぶされる。

 遅れて雲が自分の後ろから流れてきて飲みこまれたのだろうと察する。

 後ろから吹く風、雲の流れが先ほどまでの空気とは違い、重たく水分を感じさせる。

 霧に入ったことがないが、こんな感じなのだろうかと考えていたら



 BHOOOoooo―――――――――――――――――――――――――――




 ひどく遠く高い場所から、だがしかし、とても重い何かの生物の鳴き声が降ってきた。


 まるで雷雲を生き物にしたかの様に。


 音の大きさや低さ、規模から考えると本当にバカげた大きさだろう。

 遠い場所に存在するだろうから生命の危機は感じないが、




 ――――おかしくて仕方ない。


 いや、愉快という感情なのだろうか?





 今まで生きてきて、宙に浮かんだこともなければ、こんなバカげた生物に捕食される心配だってしたことがない!

 これは間違いなくゲームだ。

 とんでもなく、愉快でバカげたゲーム!



『人生は、浪漫なんだよ。』



 ふと懐かしい声を思い出し、意識的にその声を頭の中から追い出した。




 BHOOOo――――――――――――………




 角笛にもにた先ほどの謎の生き物の声が、遠く遠くなっていく。

 世界は、白いままで、だがしかし、何故かすべてが遠ざかっているように感じる。


 その予感は当たっていた。



【ようこそ、ファルディア戦記へ。世界はあなたを歓迎します。】



 白い世界の何もない中空、距離感がつかみ辛いが3メートル程先の、目線よりも少し上の高さに手紙に書いたような文字が浮かぶ。

 見たこともない文字だが、よく見ると何故か知らない文字なのに意味がわかった。

 これが、ゲームの仕様なのだろう。


 ストッと地面に足がついたと思った瞬間地面に降り立ったのが分かった。

 確かな重力に安心する。

 心に余裕が生まれたのだろうか。視界は真っ白のままだが、空気が先ほどより軽い事にも気づく。



 ――――今見た大地創世は夢だったんだろうか?



 そんな気にさせる無機質で何もない真っ白な空間に自分と文字が居た。


『異世界転生して連れてこられる例の白い部屋ってこんなんかな?』

 と、ちらりと余計な事が脳内にかすめる。

 すると文字が、じわり・・・と滲み、変化する。



【新しくゲームを開始しますか?】



 自らの口の端が、意識せず上がるのが分かった。

 見えない運営に乗せられている様で(しゃく)障る(さわる)が、————―ここは自分の負けでいい。

 久しぶりに胸がワクワクするのが分かる。



「―――はい。」



 声など出なくても不思議ではないと思っていたが、あっさりと、あまりにも普通に現実と同じような自分の声が出る。

 ここはゲームの中のはずなのに。

 文字が再び、じわり・・・と世界に滲み、その姿を変える。



【新しいデーターでゲームを開始します。】



 これが、このゲームを始めた最初の記憶である。

古代ウパニシャッドに書かれていると思うのですが、「神は鉱物の中で眠り、植物の中で目覚め、動物の中を歩き、人間の中で思惟する。」という言葉が大きく自分の中に残ってるので、多分にこの話はその影響を受けています。もっとも、私がその神髄を分かる事は一生ないのでしょうが。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 石自体が徐々に空気との摩擦で燃えながら周囲を照らし落ちていく。 上の文はコピーした内容ですが摩擦で燃えるのでは無く圧縮熱が原因であるので書き直した方が良いと思いますよ。 [一言] 良く…
[一言] そこまで理解して、思い出す。  自分は潜入ダイブしたのだと。 思い出すのが遅いなぁと感じちゃいました
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