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エピローグ


「あれからもう100年くらい経ったよね…」

すっかり寝たきりになったシンが、私の頬を撫でる。魔法で容姿だけはとどめておくこともできないことはなかったが、私はそのままのシンがよかった。というより、魔法をかけることで体に負担をかけて寿命を縮める方が嫌だった。すっかり白くなった髪を撫でつつ、私はその頬にキスをする。

「人間の寿命にしては、とても長生きだそうだぞ。」

「すっかりおじいちゃんだけどね。」

「それでもシンは最高に可愛いよ。」

「若くて綺麗なままな魔王様がよくいう」

シンは微笑んで、私の頬を撫で続けている。

「私はもう魔王じゃない。」

「ああ、そうだね。トーイが新しい魔王を連れてきてたんだった…。」

そう、あのあと、会いにいったトーイが、小さな魔族を連れていた。その魔族は、サイズはまだ小さかったし、その時点での魔力も多くなかったが、とんでもない器の持ち主だった。

「シンはあの時点で持ちうる限りの魔力を全部あの子にあげちゃったんだったね…。」

「そうだ。だからあいつが新しい王になり、私は自由になった。そして、あいつと遠隔操作でつないでいることで使える最低限の魔力だけで生きている。…シンが死ぬ時に一緒に死ねるように。」

「僕なんかのために…。」

「なんかなどというな。シンは私の全てだ。シンのいない世界を生きたくなどない。」

シンは重そうに自分の腕を持ち上げ、私の首に腕を回した。私はそれに答えてぎゅっと抱きしめる。

「ごめんね。少しでも長く生きようと頑張ったけど、もうそろそろだめみたい…。」

「頑張ってくれてありがとう。大丈夫。すぐ私もいくよ。」

「ありがとう、リュー…。」

最後の言葉が、魔王をやめた私に、シンがつけてくれた名前だった。そのことが幸せで胸がいっぱいになった。暇で暇で仕方がなかった。でもシンと出会ってからは、暇を感じる暇もなかった。とてもいい生を過ごせたことを喜びつつ、私はあいつとつないでいた魔力を切り、シンの隣に横たわったときにふと、ああ、あのアホ鳥の言ってた、魔王を滅ぼす人間は、シンだったのだな、と思った。




>> 後日談


「前の魔王が死んだよ。」

魔力が切れたことで、そのことがすぐわかったボクは、隣にいたトーイにいう。トーイは、じゃあ兄さんがなくなったんだね、と涙した。そしてふと顔を上げて、思い切ったようにボクに問うてきた。

「なんで俺は歳をとらないの?もしかして死なないの?」

「毎日ボクの血を飲ませているからかなあ?」

「かなあって…。実験かよ。しかもいつのまに…」

「タイミングはいろいろあるよ」

にっこり微笑んでトーイを見ると、トーイはムッとしたように目をそらした。


前の魔王は長く生きた後で、色々急いていたみたいだけど、ボクはまだ魔族としては子供みたいなものだ。そして、側にはトーイという可愛くて面白い人間がいて、試してみたいことが山のようにあって、退屈する心配もない。本で見かけた方法で、相性が良ければ、互いの血を交わすことが不老不死の薬として使えるというのがも幸い効いた。これは効果がなかったら逆に働き、トーイは死にかけただろうからほんとうによかった。ボクたちの人生はこれからだよ。じっくりと、楽しんでいこうね、トーイ。

思わせぶりに登場した割に超脇役だったトーイだけど、もしかしたら行く末を気にしてくださる方がいるかもと思って、蛇足と思いながらも後日談つけました。よりヤンデレな新魔王に捕まって、気の毒極まりない人間にしてしまいました。

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