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ふたりの異世界往訪譚   作者: 和太鼓
2/3

一段 はじまり

午後のうららかな春の日差しが湖面に映える。

湖畔には釣りを楽しむ多くの人々。

落ち着いた雰囲気。静かに流れる時間。最高に気持ちのいい天気。

暖かな陽気に包まれて、釣竿を握る俺の瞼が少しずつ落ちていく……。





「うおおおおりゃぁぁあああいい!!!」


突然、静寂を破る大声と共にけたたましい水音があたりに響いた。


「とっったどぉおおお!!!」


まどろみから覚め、声のする方を見れば、一人のびしょ濡れの少女がなんと湖の中で大きな魚を胸に抱えていた。

えぇ………………。

驚きのまま周りを見れば近くにいた釣り人たちも困惑の表情を浮かべている。

当然の反応だ。いや、ほんと何してんのこいつ……。

こういう変人には関わらないのが吉。というか関わりたくない。

俺には関係ない、と彼女から目を背け背を向ける。


「……い……ズ……」


関わりたくない。さっさと帰ろう。

しゃがみこんで釣竿を片付け荷物をまとめながらさっき見た光景を思い出す。

……服が濡れて下のものがうっすら見えていたような…………。


「おいこら聞いてんのか!返事しろ!カズ!」


突然頭に衝撃が走った。振り返れば先ほどの少女が握り拳を作ったままこちらを見下ろしている。


「いってーなー!なにすんだよタマ!」


「無視するのが悪いんだよー。愛しのタマ様がせっかく魚を捕ったっていうのに無視するなんてサイテーね。」


「春からいきなり湖に飛び込んで魚とるようなやつと知り合いだとか思われたくねーよ!周りにめっちゃ変な目で見られてたんだぞ!俺までおんなじ変人だと思われたらどうすんだよ!」


「ここらの人はみんなあんたと私が付き合い長いってよく知ってるわよ。それより変人ってなによ!ほら!湖を見なさい!子供達もみんな元気に飛び込み始めたわよ!みんな私の真似がしたくなったのね……。」


「子供に悪影響あたえてんじゃねーよ!親御さんたちも困ってるじゃねーか!だいたいな、こんなとこでいきなり飛び込むなよ……。そーゆーところが変人だっていうんだよ……。」


「ほーーう?半日釣りをしてるくせにでっかい魚一匹たりとも捕まえれなかった奴が私になんだって??」


「小魚は結構取れ……」


「だまらっしゃい!大物を一匹も釣る事ができないあんたのためにせっかく飛び込んだっていうのに……。恩人に『変人』だなんて……ひどい事を言う人ね……。」


「何が俺のためだよ!飛び込みたかっただけだろ!」


「うるさい!生意気言ってると水に落とすわよ?」


「図星じゃねーか!落とせるもんならやってみ…………ちょ、ま、悪かった!俺が悪かったからグーで殴るのはやめて!!」


理不尽な暴力をひとまず受け流し、どうどうとタマをなだめる。確かに湖の岸辺でこんな大物を取れるというのはすごい。すごいけど取り方がアレすぎるんだよなぁ……。


「つーかお前着替え持ってきてないだろ!帰りどうするつもりだったんだよ!」


「あー忘れてた……。でっかい魚が見えたからつい飛び込んじゃった。てへぺろ。」


「てへぺろじゃねーよ……」


ふと見れば服がびしょ濡れで下着がうっすら……。


「……///!!」


「ちょっ!なんでいきなり赤くなって顔逸らしてんの?…………あっ!へっ……へんたい!えっち!ばか!」


「しょっ……しょうがねーだろ!いつまでずぶ濡れのままでいるんだよ!早く服着替えろ!」



冷えてきたら着ようと思って持ってきていた長袖をタオルと一緒に渡す。ばか!ありがと!と言いつつ受け取ると、彼女は走って近くの木陰に隠れた

まったく、もう十六なんだからそろそろ落ち着いてほしい。



近所に住む幼馴染のタマは昔からこうだった。俺と同い年の彼女は一緒にいると高確率でなにかしら騒ぎを起こす。こちらの予想をはるかに超えたことを後先考えずにいきなりするのだ。もちろんその後始末をするのはいつも俺である。


よく言えば型破りで自由人。悪く言えばおてんば娘。


正直かなり面倒で、今日みたいに知らないふりをして逃げたくなる時もかなりある。それでも彼女といつも一緒にいるのは彼女のおこす騒ぎがなぜかいつもワクワクするから。

彼女といると何かが起きる。それが何よりも刺激的で楽しい。



タマが捕まえた魚と俺の釣った小魚をカゴに入れ、二人の荷物をまとめ終えるとちょうど彼女が着替えを終えて帰ってきた。


「……ちょっとでかい。」


「文句言うならびしょ濡れのシャツで帰ってもいいんだぞ?」


「ごめんなさい」


ふとびしょ濡れの彼女の姿を思い出す。そして目の前の彼女をまじまじと見つめる……。


「……なによ?」


行動はあれだけど、こいつ結構美少女なんだよなぁ。大きくなるにつれてどんどんそのかわいさに磨きがかかっている。

そしてそんな美少女の濡れた姿はめちゃエロかった。

エロかったんだけど…………


「……お前、やっぱり胸はあんまりそだ…………」


「へんたい!えっち!ばか!しね!」



グーパンチが俺の記憶を吹き飛ばした。

本編スタートです

よろしくお願いします

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