1/3
零段 見知らぬ世界
そびえ立つ摩天楼。
美しく整えられた黒い道。
そこを行き交う無数の魔法車。
そのはるか上空を爆音を立てながら翔ぶ巨大な鳥。
そして信じられないほど多くの人、人、人。
言葉を失った。
一体ここはなんなのか。こんな……こんな…………。
右手に何かが触れる。
はっと隣を見ると少女が震えていた。
いつも勝ち気な彼女がいまは俺の隣で怯えている。
覚悟はしていた。想像もしていた。
だけど現実は俺たちの貧弱な覚悟と矮小な想像力をはるかに超えていた。
目を閉じてここに来る前の事を思い出す。
期待と興奮、そして不安。それらが混ざり、高揚する気分を。
そして、また思い出す。
ついさっき見た風景を。恐怖すら覚える圧倒的な光景を。
それらを心の中で咀嚼するうちに心が落ち着きを取り戻す。
もう一度しっかり見て、そして全てを受け入れよう。
そのために俺たちはここにきたんだ。
…………目を開けるとそこは異世界だった。
短編に続き2作目の投稿です。
初の異世界物、初の長編で拙い文章ではありますが最後まで読んでいただけてとても嬉しいです。
これからよろしくお願いします。