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ガーディアンナイト  作者: シラス
本編二章 それぞれの理由
9/24

8話「それが私の戦う理由」

どうも!また夢中になれた日々を送っています、シラスです。


さて、それぞれの戦う理由、美咲編です!


美咲が戦う理由。改めてそれは何なのか。


 今日は私の提案で朝陽達と出掛けることになり、待ち合わせをしていたのだが。


「来ないなぁ」

「来ないねぇ」

「来られませんな」


 愛佳と篠宮さんは時間通りに来たのだが、朝陽の姿が未だに見えない。さらに連絡を取ろうと電話をするも繋がらない。とは言っても理由は察することができるので何ら慌てる必要が無い。まぁ、慌てる必要が無いと言うのも中々な物だが。


「いつもの?」

「多分ね」


 すでに愛佳からもいつものという認識になってしまっているほどの物なので気長に待とう。


 ベンチに座りながら愛佳と話していると、携帯が鳴る。取り出し画面を見ると朝陽と表示されていた。


「はいはい」

『ごめんねっ、もうすぐ着くから!』


 電話越しでも走っているのが分かるほど息を切らしながら話す朝陽に取り敢えず慌てずにゆっくりでいいからと伝え電話を切った。


 そして数分後、ジャージ姿で走って来た朝陽が到着する。


「ごっ、ごめ、ん。おまた…せ…」


 急いで来たため、膝に手を置き肩で息をする朝陽を落ち着かせるため深呼吸をさせる。


「ん、取り敢えず深呼吸しようか。吸ってー」

「すーーー」

「はい、吐いてー」

「はぁーーーーーーーーーーーーーーーーー」

「吐きが長くない?」

「はぁ…はぁ…」

「深呼吸で息切らしてどうするのよ」

「はぁ」


 最後に溜息を吐いて呼吸は落ち着いたようだが、かなり急いで走って来たようだから少し休んでから行くことになった。


「それで、今日は誰に自分を差し出したの」

「何でそんな変な言い回しなの?」

「朝陽さんが……自分の体を差し出すっ!?」

「待って愛佳さん。なんか増えてるから。その言い方も色々とまずいから」

「でも間違ってはないじゃない」

「誰を手伝って来たのにして?」

「困っている人を放って置けない、相手からは都合のいい朝陽さん」

「流石に怒っていいかな」


 休むはずが、さらに息を切らしている朝陽。


「これじゃあ休む意味がない」

「最初に変な言い回しをした美咲が悪い」


 ごもっともです。すみません。


「はぁ、もう休憩は大丈夫だから行こ」


 朝陽がベンチから立ち上がり、体を伸ばす。それに連なり私たちも立ち上がり、今日行く予定のショッピングモールへと向かう。


◇◆◇◆◇


「今日は何しに行くの?」

「ん〜?そうだね〜」


 私は朝陽を、正確には朝陽の服装を見る。見られている本人は首を傾げていた。


「そのお洒落のおの字も無い朝陽のコーディネートでもしようかな」


 最初こそ、他の事しようかと思ったのだが朝陽の格好を見て、朝陽をコーディネートする事が先決だと判断した。


「それ、賛成」

「ええ、私もそれをお勧め致します」

「それがいいベル」

「メルも。流石にその服装はどうかと思うメル」

「いけませんわ。朝陽さんお年頃の女の子なのですから、その格好ではいけなさすぎます」

「いや〜だってもう小学生の頃のはきついし、そもそも沙月希にあげたし」

「だからって学校のジャージはないでしょうよ」


 制服ならまだ…まだギリギリ良しとしよう。だが外で、大型のショッピングモールで、女子中学生が学校のジャージというのはダメだ。


 だが、朝陽にお洒落する余裕がないのはわかっている。だったら私達で朝陽をコーディネートすればいい。その意思をアイコンタクトでその場に居るみんなに伝える。


 そして、その意思は見事に伝わった。


 篠宮さんの運転でショッピングモールに到着してすぐに服屋へと向かう。


「さて、戦場よ」

「朝陽さんは白がいいと思う。アメジストの時みたいに」

「そうね。白を主体にしましょう。というわけでメルたちは朝陽と待機。それから服の審査ね。私達で服を持ってくるから」

「わかったメル」

「審査はお任せください!」


 指示を飛ばした後、私達は朝陽の服を選びに散らばった。


◇◆◇◆◇


 みんなが散らばったのを目が点になった状態で見送った朝陽は取り敢えず、妖精と共に自分でも服を見ていた。


「朝陽はどうして制服とジャージだけしか持ってなかったベル?」

「「えっ」」


 そんな時、突然ベルシアが朝陽の持っていた服の話を振った。そしてその事実に他の妖精は声を上げて驚いていた。


「さっき理由は言ったよ?」

「それは知ってるベル。そうじゃなくて、自分の服は買わないベル?」

「ああ、そういうこと」

「それだけじゃないベル。色々と不思議な事が多いベル」

「「確かに」」


 朝陽はう〜んと何か戸惑った様子を浮かべながら目を伏せる。


「ちょっと長くなるけどいい?」


 その問いに妖精達は頷く。


「じゃあまず、私と沙月希が暮らしてる家についてね。まだ働けない私達がどうしてあの一軒家に住んでられると思う?」

「それは、隣の人が朝陽達の代わりに払ってるベル?」

「確かに、晶子さん達は私達の保護者代理人だけどね。違うの。家賃とかその他諸々、管理は加賀美家の人がしてるんだけど。お金は払ってない見たい」

「ではどうしてお2人は今で通り一軒家に?」

「それはね、今も光熱費とかその他諸々支払われてるんだって」

「それは…つまり」

「うん。多分お父さん」


 朝陽の事情を知っている妖精達は驚愕のあまり空いた口が塞がらなかった。


「生活費も実は送られてきてて、それで今でもあの一軒家で暮らせてるの。これが、私がお父さん達を一年経っても探し続けてる理由」

「そうだったんですね」

「知らなかったベル」

「誰にも話してないからね」

「じゃあこのことは美咲達も知らないメル?」

「うん」

「「「はぁ」」」


 呆れたように溜息を吐く妖精達に朝陽は疑問の表情を向ける。


「朝陽は一回美咲にこってりと絞られてくるといいメル」

「えっ」

「でも、どうして朝陽のお父さんはそんなことをするベル?」

「それは…わからない」


 朝陽は表情を隠す様に顔を俯かせ、何かを堪えるように手に力を入れている。


「どうして服は買わないベル?」


 そんな朝陽の様子を見たベルは話題を服へと変える。


「贅沢はできないよ」

「服は贅沢ではないと思うメル」

「それに生活費から沙月希の分は買えるからいいかなって」

「だったら貴女の分も買えるのでは?」

「私の分はいいかなぁと先送りに…そ、それに服を買うお金で一食分以上のお金が消えるんだよ!?だったら、食費に当てるよ…」

「まぁ朝陽ならそういうと思ったベル」

「というか、それが本音メル」

「それでしたらいい機会に今日はいっぱい着せ替え…コーディネートされてみては?」

「今なんて言おうとしたの?」

「お気になさらず」

「まったく」


 妖精達と話している所へ、呆れた声色で美咲の声が聞こえた。


「本当、あんたは…」

「み、美咲…どこから、聞いてたの?」

「ちょっと長くなるけどの所」

「初めからっ!?」

「話は後でたっぷりと聞くから、取り敢えず今は私達の着せ替え人形になってね?」


 もはや断るという選択肢など存在しない。そんな雰囲気を美咲から感じ取った朝陽は何度も首を縦に振った。


 その様子を食い入る様に見つめていた人物がいたのだが、それはまた別の話。


◇◆◇◆◇


「似合ってるじゃない」

「うん、似合ってる」


 今、朝陽は朝陽の事情を知った愛佳が、私たちが選んだ服を何着か買い占めてプレゼントしたうちの1着に身を包んでいた。


 プレゼントされた時、朝陽は全力で受け取るのを拒んでいたが、最終的に朝陽が折れて、プレゼントを受け取った。その中には沙月希の服も含まれている事は朝陽は知らない。


「こんなに…いいのかなぁ」

「気にしないで」

「そうですよ、朝陽さん。貴女も年頃の女性なのですから気にならないという訳ではないのでは?」

「そうなんですけど」

「何か不満なの?」

「不満なんかないけど、この服代で一体何食分の取れるのかと…」

「なんとも朝陽さんらしいといいますか」

「本当はもっと買ってあげたいけど、美咲さんに止められたの」


 流石に私も買った以上は朝陽が変に気を遣ってしまうだろうと思い、さらに買い占めようとした愛佳を止めた。それを聞いた朝陽は苦笑いを浮かべながら私にお礼を言った。


「うん、まぁ気にしないで。それで朝陽も着替えたことだしこれからどうする?」

「もうお昼だけど」

「あ、本当だ。じゃあご飯食べる?」


 どうやら皆賛成の様だ。私達は昼食をとるべくフードコートへと移動する。


◇◆◇◆◇


「さて何食べよう」

「その事なのですが」


 フードコートに着いた私達が昼食を決める為にお店を見ていると、篠宮さんが私達を引き止めた。


「どうかしましたか?」

「実は皆様用にお食事を思い、こちらで作った物があるのですが」


 そういって、お弁当箱を3つ取り出した篠宮さんは私、朝陽、愛佳へと渡していく。


 それを受け取った私達はありがたく貰い席を取りに移動しようとした所でまたも篠宮さんに引き止められた。


「お食事の席は既にご用意出来ておりますのでご案内致します」

「いつの間に…」

「つい先程」


 まさか特注の席にでも案内されるのかと緊張しながらついて行った所、他と特になんの変わりもない一般席へと案内された。


 少し期待していたところもあったので少し残念だなと思う反面、安心もした。


 案内された席に着いた私達は渡されたお弁当を開け、食べ始める。


「ふふっ」


 突然、愛佳が食べている最中に笑みをこぼす。その様子に私達は首を傾げ、朝陽が尋ねる。


「どうしたの?」

「いえ、こうして誰かと学校以外で食事なんて、考えても見なかったから。今日は誘ってくれてありがとう」


 再び笑みを浮かべる愛佳。楽しそうで何よりだ。


 最初に会った時のたどたどしさも今では見る影もない。それほど私達の仲が深まったという事だろう。


「私も今日皆一緒に入れて嬉しいよ」


 朝陽も笑みを浮かべながら私達を見回す。


「まぁ、そうね」


 最近になって朝陽も今までにないくらいの笑顔が増えて来ている。それはとてもいい事だ。これからもこうしてみんなと過ごしていれば、朝陽の笑顔はもっと増えるだろう。


 だが、気になる事もある。変身した愛佳のことだ。何故なら、変身した彼女は朝陽を時々…その、気持ちわっ…よろしくない笑みを浮かべながら見つめている。まるで狙っているかの様な。そんなだから私は変身した愛佳を見張りながら戦う事もある。


 だが、見ているだけで今のところ何かをする様子はない。取り敢えず見張るだけして放置している。


 食べ終わり、空になった箱を片付けると、いつかの屋上の様に3つのお弁当箱をしまう。相変わらずの不思議現象である。


「さて、午後はどうする?」

「そういえば朝陽さんの妹さんはお昼は大丈夫なの?」

「うん、友達と遊びに行ってるからお昼はいいって」

「じゃあ午後もそれなりに時間があるのね」


 となると結構遊べる様だ。なので、ゲームセンターに寄り、ゲームをしたり、ウィンドウショッピングをしたりしながら過ごしていれば、気付けば夕方になっていた。


「愛佳様、そろそろ」

「もうそんな時間?」

「もう夕方なのね。時間が経つのは早いわね」

「では、私達はこれで」

「2人ともまたね」


 愛佳と篠宮さんの2人と別れる。


「あ、材料買わないと。じゃあ今日はこれで。私は夕飯の材料買って帰るね」

「手伝おうか?」

「大丈夫だよ、簡単なのにするからそんなに買わないし、ここからは家も近いからね」

「そう?」

「うん。じゃあまた学校でね!」


 そういって、食品売り場の方へと向かった朝陽を見送ってから私はショッピングモールを出て帰路に着く。


◇◆◇◆◇


 歩いている途中、今日の事を思い出しながら呟く。


「愛佳が笑った時、篠宮さんも微笑んでたし、今日は2人とも楽しめたみたいでよかった」

「美咲は嬉しそうメル」


 メルの言う通り、2人の笑顔を思い出していると自然と私も嬉しくなり笑みをこぼす。


「ずいぶんと、楽しそうですねぇ」


 そんな時、聞き覚えのある声が響く。


「あんたはあの時の」

「お久しぶりですねぇ。オニキスさん?」


 そこには私がメルを助けた時にいた人型の羊が佇んでいた。私はメルに茂みに隠れるよう指示をする。


「この前のライオンといい、あんたがここに現れた事といい、私達を個人で狙っているみたいね?」

「ご明察です。貴女の相手は、この私が引き受けたのですよ。今、他の方々が貴女の仲間の元にいます。おそらくはもう、戦闘になっている頃でしょう。貴女は、どうされますか?」

「どうするも何もないわよ、みんな戦ってるなら私は2人を助けに行くわよ」


 とは言ったものの、そう簡単には行かせてくれないだろう。個人で狙っているのなら私もここで戦う事になるはずだ。


「行けるといいですねぇ?」


 その言葉の後私は変身すると同時に現れたのは、前回現れた時と同じ羊のカルーワだった。


「また…貴方、同族に恨みでもあるの?」

「そうですねぇ、ただ飼われるだけの同族とは違うという事。私はそんな飼われるだけの哀れな彼らを、解放しているのですよ。それに飼われるならまだ同族の方がマシというものでしょう?」

「なにそれ?自分勝手にも程があるわ」

「それを、貴女が言える事ですかねぇ?」

「は?」


 こちらに近づきながら、ねっとりとした口調で言った言葉。その意味が私にはわからず、聞き返す。


「どういう意味?」

「貴女は、同族であるアメジストの不幸に同情し、本人から頼まれてもいないお節介を自分勝手にしていますでしょう。自分が親友の助けになっているという独りよがりの過ぎた妄想をしている貴女と、同族を解放したいと思い戦う私。果たしてなにが違うのでしょう」

「一緒にするなっ!」


 私のすぐ隣にまで来ていた羊に左手を薙ぎ払うように振るうが、羊は空中へと退避して躱す。


 その後を追おうとしたが、カルーワに捕まってしまい身動きが取れなくなる。そこへ羊が語り掛ける。


「同じですよ。私も、貴女も」

「違うメル!」

「おや」

「…メル?」


 突然、隠れていたはずのメルが飛び出し更に大声を出して訴えるように叫ぶ。


「オニキスをお前なんかと一緒にするなメルッ!オニキスは、アメジスト達が笑顔でいられるようにってずっと願っていて、そういられるようにずっと頑張ってるメル。そんなオニキスがお前なんかと一緒なわけないメルッ!」

「メル……」


 メルがそこまで言ってくれるとは思いもしなかった。見るとメルの体は少しだが震えていた。それもそうだ。一度カルーワにされたメルがその元凶の前に立つということはとても勇気がいると思う。しかしそれでも、メルは違うと言ってくれた。


 ……私は、確かに自分勝手なのかもしれない。だけど。


「私は、朝陽を支えるって決めた。例えそれが、貴方の言う私の独りよがりの過ぎた妄想なのだとしても、私は朝陽のためにその過ぎた妄想をやり続けるわ。朝陽が、笑顔でいられるように」

「認めるのですね」

「そうね、自分勝手な独りよがりなのは認めるわ」


 確かに、朝陽を支えるというのは私が勝手に決めた事。でもそれが私の戦う理由。笑顔でいるために。


 だが、そんな私でもこれだけは言える。


「でも、それでも貴方とは違う」

「違いませんよ。貴女のその行為が相手の迷惑になる事も考えずに行動する。相手の方はさぞ迷惑でしょうなぁ」


 その言葉は、とても重く私にのしかかる。私が朝陽のためにと考えて来たこと、して来た事は朝陽からしたら迷惑だったとしたら。


 さっきあの羊も言っていた。本人に頼まれてもいない。それなのに、私は朝陽のためにと…ずっと…。


「なのになぜ、その方が笑顔でいられるようにと言うのでしょう?」

「それは…」

「答えられませんか?では私が答えましょう。貴女は、その方のためにと言っておきながら結局は、貴女は自分のためにしか行動していない」

「っ…」

「オニキス、聞いちゃダメメル!」

「そのような行為は、相手にとってはありがた迷惑でしかないのですよ」


 朝陽にとっては迷惑だったのだろうか。もしそうだったのだとしたら私は……もう朝陽の側にはいられない。


 胸が張り裂けそうなほどの辛い気持ちが押し寄せ、霞む瞳から流れ落ちる涙が頬を伝う。


「オニキス、アメジストはそんなこと絶対に思ってないメル!」

「貴女は先程からうるさいですね」

「好き勝手な事言うからメル!」

「貴女もですよ。取り敢えずそのうるさい口を開けないようにしてあげましょう」

「ッ!?」


 そう言って、掌をメルに向けると今まで感じた事のない邪悪な力が収束していき、黒い光を放つものが出来上がりそれをメル目掛けて放つ。


「メルッ、ダメ逃げて!!」


 そんな私の声は、今まさに迫り来る恐怖で動けずにいるメルに届くことはなく、その黒い光にメルが飲み込まれていく光景を私はただ見ている事しか出来なかった。







◇◆◇◆◇







 メルを飲み込んだ黒い光が収まると、そこには抉られた地面だけが残った。


 私はカルーワに押さえ付けられながらも、必死で辺りを見渡しメルを探す。しかしやはりどこにもメルらしきものはない。


「ぁ…そ…んな…」

「これで、邪魔者はいなくなりましたね」


 静まった辺りに人型の羊の声が響く。


 それと同時に別の声が聞こえて来た。


「それはどうでしょう」


 どこからともなく現れたアメジストに助け出された。私は体に力が入らずその場に座り込みながらアメジストの袖を引っ張りながらにメルのことを言う。


「メっメル…が、メルがっ!」

「大丈夫ですよ」

「ぇ?」


 訳がわからずアメジストを凝視すると、その腕には抱えられたメルの姿があった。そしてアメジストはメルを私へ、そっと手渡す。


「気を失っていますが、問題はありません」

「ッ…よかっ…」


 込み上げて来た涙を抑えることが出来ずメルを抱きしめる。そんな私を庇う様にアメジストは羊と対峙する。


「先程の貴方の話ですが、貴方の価値観で私の気持ちを決め付けないでいただけますか。私は迷惑などと思った事は一度もありません。というかむしろ、私の方がオニキスには沢山迷惑をかけてしまっていますから」

「迷惑?」

「それは自慢気に話すものではありませんよねぇ」


 敵からツッコミを入れられるという状況の中、アメジストは気にした様子を見せずさらに話を続けた。


「私は、オニキスが私の側にいてくれるからどんなに辛い状況でも折れずに来れました。そんなオニキスに感謝こそすれ、迷惑などと思うはずがありません」

「アメジスト……」

「ですからオニキス。これからも私の側にいてください」


 私の気持ちを知って言ったのかどうか、それはわからない。座り込む私に差し出された手を握るとアメジストの…朝陽の手の感触が、体温が伝わってくるその感覚は不思議と先程までの辛かった気持ちが嘘のように無くなっていき、暖かいものに包まれる。そんな感覚を覚える。


 アメジストは私の手を掴むと手を引いて私を立たせ、勢いでバランスを崩さないように反対の手で私の体を支える。


「いけますか?」

「ええ、その…ありがとう」

「…こちらこそ」


 微笑を浮かべながら答えるアメジスト。そのやりとりに気恥ずかしさを覚える。


「メルレットはベルに任せるベル!」


 その言葉に甘え、メルをベルに託し気を取り直して私達は羊とカルーワへと向き直す。


「クックク…もう、終わりですか?ああ、あの様な茶番劇。見ているだけでも反吐が出る」

「それなのに、割って入らずに待ってたのですか?」

「えぇ、まぁ。ですがそれもここまで。カルーワ」


 カルーワへ指示を出すと、カルーワが私達目掛けて突進を繰り出す。それを回避した後、アメジストはいつになく鋭いその瞳を羊に向け言い放つ。


「覚悟してください。メルを危険な目に合わせたこと、そして、私の親友を泣かせた事。私は絶対に許しません」


 滅多に見ることの無い、アメジストの怒り。その怒気を纏った瞳に捕らわれた羊が一瞬体を強張らせる。その隙を見逃さなかったアメジストは一気に羊の元まで近づいていく。


 その様子を見ていた私の元にはカルーワが再び突進をしてきている事に気付き、なんとかギリギリで回避することができた。


 羊の相手はアメジストに任せ、私はカルーワと対峙する。


「情けない。世迷言に耳を傾けた挙句、メルにまた怖い思いをさせて、しかも支えようって決めた人に支えられるなんて…。でも、私はもう迷わない。私は今まで通り、アメジスト達のために頑張る。そしてもうメルに怖い思いもさせない」


 これが、私の戦う理由。


「あなたを、元の姿に戻してあげるわ」


 そう言って私が構えるとそれに合わせてカルーワがの鳴き声が辺りに響き渡る。すると先程までの動きが一変し、大きく体を揺さぶる。


 そんな隙だらけのカルーワに向けて私は走りながら龍の顔形の様な籠手に力を込めると籠手から炎が立ち上がる。しかし不思議と熱くない。


 カルーワの手前まで走ってきた所で軽く飛び上がり、炎を宿した籠手でカルーワ目掛けて拳を振り抜く。


「これは…」


 だが手応えが全く無かった。


 その後も何度も攻撃を試みるも、まるで手応えがなく。それどころかカルーワの数が私が攻撃するごとに増えていった


「なにか…」


 増えたカルーワの突進を避けつつ、カルーワへ攻撃を繰り返しているうちにあることに気付く。


 よく見ると私が攻撃したカルーワの体が透けている。


「…なるほど」


 それに気づいた時には両手の指でも足りないほどの数のカルーワに囲まれていた。


 しかし、この状態を打開しカルーワを元に戻す方法を思い付く。


「こういうのはどうかしらっ!」


 私は拳を思いっきり地面に叩きつけると、私を中心に地面が波打つ様に砕けていき、その波がカルーワ達の周りまで到達した辺りで地面が突き出る。突き出た地面はすべてのカルーワの身動きを止め、さらに実体ではないカルーワは透けていた。


 一体一体攻撃していたのでは埒が明かない。なのでこの方法を思いついた。


 突起した地面が全てのカルーワの動きを封じているその中で、透けていないカルーワを見つけ出し私はゆっくり近づいていく。そして鼻先まで来た所で止まりカルーワの目の前にしゃがみこむ。


「手荒な真似してごめんなさい。すぐ元の姿に戻すからもう少し我慢して」


 私はカルーワの鼻先に手をかざして、自然と頭に浮かんできた言葉を口にする。


「あなたの、素直な気持ちを教えて頂戴」


 するとそれまで理性を完全に無くしていたような赤い目がだんだんと茶色の瞳へと変わっていき、荒々しかった鼻息が、落ち着きを取り戻す。


 変化は更に起き、三階建てのマンション程の大きさだった体がメル達程の大きさへと変わっていった。


 そして元の姿へと戻った妖精は辺りを見渡して、最後に私を見ると小さな頭を申し訳なさそうに深々と下げた。


「あなたは悪くないわ。だから、謝るのはなしよ」


 気にする必要はないと伝えるとまたも頭を深々と下げる。今度はありがとうということだろうか。


「オニキス」


 そこへちょうどアメジストがこっちへ向かって走って来ていた。見た所、所々白いドレスが汚れてしまっているが目立った外傷はない。


「すみません、逃げられてしまいました」


 その言葉通り、周りにあの人型の羊の姿がどこにもおらず、アメジストは申し訳なさそうな様子で謝ったので気にする必要はないと慰める。


「オニキス、メルが目を覚ましたベル」

「本当!?」


 私は急いでメルの元へ駆け寄るとまだぐったりとしているが目を開けてこちらを見るメル。


「メル…よかった」


 たまらず抱きしめると、再び涙が込み上げる。


「く、苦しいメル」

「オニキス、気持ちは分かりますが今は、ティアナの方に行きましょう」


 あの羊は個人を狙っていると言っていた。この場にアメジストがいてティアナがいないということはティアナの方はまだ戦っているという事だろう。


「そうだね、行こう。あなたはどうする?」


 先程助けた羊の妖精に尋ねたが、妖精はいまいち状況がわかっていないようで困惑していた。あまり時間はないが、この子を放って行くわけにもいかない。


「一緒に来る?」


 そう聞くと妖精は小さくではあったが頷いて返事をした。


「ベル、ティアナの力は感じますか?」

「ティアナの家の方にあるベル」


 その指示を頼りに、私達はティアナの元へと向かった。



◇◆◇◆◇


 変身したまま、私達は愛佳さんの家に着くと愛佳さんと篠宮さん。そしてもう1人、愛佳さんとよく似た女性が険しい表情で門の前に佇んでいた。


「あの人は…?」

「おそらくですが、愛佳さんの母親かと」

「じゃあこの格好はまずいね」

「そうですね…あそこで変身を解きましょう」


 私と美咲は家と家の間にある人が通れるほどの隙間で変身を解いて、愛佳さん達のいる所まで急いで向かう。


「愛佳さん!」

「朝陽さん、美咲さん…」


 私達の名前を呼んだ愛佳さんの表情は今まで見た事のない表情をしていた。それは全てを諦めている様なそんな表情だった。


 そんな只ならぬ様子の愛佳さんを心配そうに見ている篠宮さん。


 そして未だ険しい表情を崩さず、私達を見ていた女性が口を開く。


「貴女達が、朝陽さんと美咲さんというのね?」

「は、はい」

「そう」


 そして、次に女性が口にした言葉は衝撃的なものだった。


「ではお二人共。金輪際、愛佳と会うことはやめていただきます」







読んでいただきありがとうございます。この章の最後にガーディアンナイトが現在使える技のまとめたものを上げる予定です。


今月中にそこまで行きたい。

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