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15話「迎えに来たよ」

月2の目標はどうにか達成できてよかったです。



 持てる力の全てを使い戦うアメジストとライオン。


 その戦いは相手の攻撃をいなしたり利用する事が得意なアメジストが、ライオンの全ての攻撃を利用してライオンの体力を減らした事で優勢となっていた。


 とはいえ、優勢といっても相手の攻撃をいなし続けるのは体力的にかなり酷で、アメジストの体力もそれなりに削れていた。


「はぁはぁ、ちっ一発もあたらねぇじゃねぇか!」

「それは…まぁ、当たらないようにしていますから」

「…ぜってぇ当ててやる」


 息を切らしながらも未だその闘志を燃やすライオン。それはただ、目の前の強敵を倒すという純粋な気持ちから来るものだった。


 その気持ちを感じ取ったアメジストは笑みを浮かべながら小さく呟く。


「浄化しきれたみたいですね」

「何を笑っていやがる」

「いえ。ただ今の貴方に負けるわけにはいかないなと」

「はっ、そうかよ。なら勝たせてもらうぜ」


 ライオンがそういった瞬間、ライオンの様子が変化する。


 毛は逆立たち、爪を鋭く尖らせ二足歩行だったのが手を地面につかせ、四足歩行になる。


 アメジストは警戒をしながら変化したライオンの動きを観察する。


「いくぜ?」


 そう言った瞬間、ライオンの姿がその場から一瞬にして消えた。


「なっ」


 アメジストは慌てて気配を探ると死角である背中から殺意にも似たその気配に気付き、咄嗟に左手に持つ盾でガードする。


「ぐっ!」


 しかし、その攻撃はとても重くガードした左手を右手で支えなくてはとても耐えられるものではなかった。


「このまま押し潰してやるっ!」


 両手で受け止める事で精一杯なアメジストを押し潰そうとさらに力を込める。それによりアメジストは片膝をついてしまう。


 このままでは本当に、押し潰される。


 そう考えたアメジストは受け止めている攻撃を盾の側面を生かして左側に逸らし、攻撃から逃れた直後に飛び退く。


 逸らしたライオンの手はその力を保ったまま地面に直撃し、地面を抉る。それだけでもそれだけでも相当な威力であったことが伺える。


「チィッ」


 攻撃を避けられたライオンは舌打ちをしながら、畳み掛けるように攻撃を繰り返す。しかし、それからは先程と同じでアメジストはその攻撃をいなしながら隙を見てライオンを投げ飛ばしたりと、少しずつライオンにダメージを与えていた。


「避けんじゃねぇ!」

「いいえ、避けさせていただきます!」


 何度も何度も攻撃を行うライオン。その攻撃を避け続けるアメジスト。先程と同じ状況だが、戦況は明らかに先程とは違っていた。


 多少の疲労はあるもののまだ余力を残すアメジストに対し、ライオンは息を切らして、明らかにアメジストよりも疲労が溜まっているのが目に伺える。


 そしてそれはお互いに気付いていた。


「次で終わらせてやる」

「ええ」


 最後の力を振り絞って、放たれる全身全霊のその拳。アメジストはライオンの全力のその拳を受け止めるために、盾を構えた。


 そして──。


◇◆◇◆◇


「貴女にそれほどの力があったとは…」

「まだまだ、これからよ」


 互角の勝負をしていたオニキスと羊の邪悪精。しかし現状でオニキスが優勢という状況になっていた。


「まさか戦いの最中に貴女が成長するとは思いませんでしたよ」


 そう、オニキスは戦いの最中にも成長を続け、その結果羊の邪悪精を上回る力を身に付けていた。


「成長…ね、正直何言ってるのかさっぱりね」


 その事をいまいち実感できていないオニキスだったが、それでも一つだけ、はっきりとわかっていることがあった。


「でも、今の私はあんたには負けない」


 はっきりとそう言い切ったオニキス。その言葉はハッタリでも何でもなく、実際に今のオニキスはオニキスは邪悪精を倒すことができるほどの力を持っていた。


 煽りにも等しいその言葉に、羊の邪悪精は、ふっと笑みを浮かべた。


「では、それを証明して見せてください」

「…わかったわ、見せてあげる!」


 オニキスが拳を天にかざすと、龍の形をした籠手が激しい炎をあげる。


 やがてその炎はやがてオニキスの籠手と同じような龍の頭部の形となって姿を現した。


「これは…」

「炎龍拳ってところかしら」


 龍の形となった炎を見ながらそう呟く。


「さて、覚悟は、いいかしら」


 オニキスが構えを取るとその様子を見ていた邪悪精は一度目を閉じた後、ゆっくりと閉じた目を開け、構える。


「くらいなさい、これが私の全力よ!」


 オニキスが邪悪精に拳圧を飛ばす要領でその拳を振るう。


 すると振るわれた拳から飛んだのは拳圧…ではなく龍のような炎が、まるで本当に生きているかのごとく、邪悪精の元へと向かっていった。


◇◆◇◆◇


「その鞭捌き、やはり貴女は素晴らしい鞭使いだ」

「何よ、急に気持ち悪いわよ」


 戦闘を始めてからの荒々しい雰囲気とは違う、落ち着いた物腰をみせたカメレオンにティアナは思わず呟く。


 しかし、そんな言われようにも気にした様子を見せなかったカメレオンにティアナは少し違和感を覚えた。


「洗練された技量に、それを振るう手腕。そんな貴女に私は感嘆としているのです」

「それはどうも」


 敵対していた相手に褒められるという状況で、返しが雑になるティアナ。そんなティアナに対しカメレオンが唐突に質問をする。


「所でその腕前は、あのお二人には振るわれないのですか?」

「……は?」

「貴女ほどの腕前ならば、あのお二人は貴女の虜になる事は間違いないのでは?」

「……」


 カメレオンが一体何を言っているのか、理解するのに数分を要したティアナは、呆れた様子を見せる。


「貴方、私達の事を覗き見てるって言ってたわよね?」

「覗いているのではない。敵である貴様達を知るためのものだ、決して覗き見ていたなどということはない!」

「どっちでもいいわ。貴方、一体私達の何を見ていたの?」


 ティアナがそう質問を投げかけると、カメレオンは淡々と語り出す。


「もちろん貴様達の全てだ。アメジストは面倒見がよく、よく妹のことを気に掛けている。さらにその性格故に困っている人を見ると放って置けない。校内で迷惑をかけていると判断した生徒には即座に注意しに行く。それ故に学校では姉やら母やらと言われているな」

「そうね、それはもうあの子の才能とも言える部分ね」

「オニキスは、常にアメジストの事を考えているな。主にどうすればアメジストの負担を減らせるかというものだ。それなりに長い付き合いなのだろう。本人は気付いていないがオニキスの行動は意図せぬ所でもアメジストの助けになっているようだ」

「そうね。あの子のあの一途な想いはとても素晴らしいと思うわ」

「そして、貴様か。今の貴様はいわゆる自身をさらけ出した状態なのだろう?変身前とは随分な変わりようだな」

「まぁ…そうね」


 日頃から観察しているだけあって、カメレオンは3人の行動などはある程度把握していた。そして行動を把握することによって3人がどんな人物であるかというのも理解していた。


「そこまで知っているなら私は別に本気で言ってるわけではないことくらいわかりそうだけど」

「それは貴様の普段の言動がそう判断させているんだろう」

「…それもそうね」


 カメレオンの指摘に心当たりしかなかったティアナは引きつった笑みを浮かべながら目をそらす。


「そんな事より俺は貴様が本気ではないと言ったことに疑問しかないのだが?」

「本気ではないわよ。2人の反応が可愛くて…ついね」

「ほう。貴様の言う冗談を聞いた2人の反応とは、主にアメジストが困惑し、オニキスが憤慨しているあれか」

「ええ、それよ」

「なるほど。貴様の言いたい事はわからんでもない」

「へぇ?」

「特にオニキスは弄りがいがありそうだ」

「あら、わかってるじゃない。でもそれは私だけの特権よ」

「ふん、案ずるな。別に貴様の楽しみを奪おうなどとは思っていない。俺は傍観に浸っている方が良いからな」


 2人は話をするのに夢中になり、いつの間にか戦闘は、お互いの趣味から見た2人を語る熱い話し合い(戦闘)へと発展していた。



 カメレオンにとって、これほどまでに話し合いをした相手はいた事がない。この瞬間、この話し合いを本人は気付かないがそれでも充実しているのは確かだった。



◇◆◇◆◇


「はぁ、はぁ…私の、勝ちよ」


 自身の力の全てを込めて放った炎龍拳は見事に羊の邪悪精を捉えた。その結果、羊の邪悪精は人の姿から、メルレットのような妖精の姿へとなり、地面に倒れ伏せた。


 オニキスは呼吸を落ち着かせた後、倒れた羊の元へ向かう。


 気を失っているが息はある。しかし先程まで感じていた邪悪な力は全く感じなくなっていた。


「成功、ね」


 炎龍拳に浄化の力も乗せての攻撃は邪悪精の力の源であった邪悪な力を完全に浄化しることができたようだ。


 しかし、その反動で全ての力を使ったオニキスは身体の力が抜けていき地面に座り込む。


「はぁ…疲れた」

「そっちは終わったようね」


 オニキスが小さく言葉を漏らした直後、後ろから声が聞こえ、その方向を向くとオニキスの元へ向かってくるティアナとカメレオンの姿があった。


 一瞬、カメレオンを新手かと思ったオニキスだったが、ティアナと並び歩いている姿に思わず呆然としてしまう。


「…?どうしたのかしら」

「俺がいるからだろう」

「ああ、なるほど」


 オニキスの理解が追いつかないなか、当の2人は納得した様子を見せる。そしてオニキスに事の経緯を説明する。その説明はオニキスはさらに頭を混乱に陥れるのだった。


「待って全くわからない」

「今説明したじゃない」

「話し合ってたらいつの間にか邪悪精としての力が無くなってたって?そんなの理解出るわけないでしょ!」

「なるほど、オニキスは理解力が乏しいと。新たな情報だ」

「なんですって?」

「おっとこれは失礼」


 使い切ったはずのオニキスの拳に、力が籠る。その様子にカメレオンがおどけた様子で謝罪をする。


「……はぁ、まぁいいわ。それよりさっさとアメジストのところに行きましょう」

「あら?もう動いてもいいの?」

「この時間で少しは体力も戻ったわ、疲れはましだけど」

「なら、私が運んであげましょうか?」


 悪戯な笑みを浮かべたティアナにオニキスは目を細めながら運ぶというその方法を聞く。


「…それはどうやって?」

「もちろん、この鎖でぐるぐる巻きにして手綱みたいに伸びた鎖を持ちながらズルズルと引きずって…」

「却下。そんなことされるくらいなら自分で動くわ」

「俺としては見てみたのだが。新たなな情報がてにはいるかもしれんからな」

「黙って」


 2人を相手にしていたららちがあかない。そう判断したオニキスは気を失っている羊の妖精を抱え、アメジストが戦っている場所へと向かおうとした時だった。


 オニキスは咄嗟にに後方へ飛び退いて、足元に飛来してきた何かを避ける。


 後方へ飛びのいたことでティアナ達と並んだオニキスは辺りを見渡すと目の前からフードを深くかぶった2人組みがオニキス達の元へ向けて歩いてくる姿が目に入った。


「新手…?」

「少なくとも見方ではなさそうよ」


 ティアナがフードの二人組を見ると、手元に細く黒いオーラを纏わせた剣のようなものを持った1人が目に入る。


「そうみたいね」

「これは貴方達の差し金?」


 ティアナが横にいたカメレオンに対して聞くと、カメレオンは首を横に振り知らないと言った。


 フードの二人組がお互いの間合いギリギリのところで静止したところで、オニキスが二人組に問いかける。


「あんた達、一体何者?」


 その問いに二人組微動だにせず、答えようとしたない。


「その剣を私達に向けて使ったんなら少なくとも、私達の味方ってわけではないわね」


 さらにオニキスが問いかけると、二人組が問いに答え始める。


「そうね、貴方達の味方…というわけではないわ」


 二人組のうちの1人が問いに答える。その声は女性の声だった。それも、オニキスには聞き覚えのある人物の声によく似ていた。


「そして君が問いかけた僕たちが何者かという問いだが」


 もう1人がおもむろに深くかぶっていたフードを脱ぐ。


「っ…うそ…」


 さらにもう1人もフードを脱ぐ。フードの奥に隠れていた素顔を見たオニキスは動揺を隠せずにいた。


「久しぶりね、美咲ちゃん。あ、今はブラックオニキスって言った方がいいかしら?」


 その人物はオニキスの事を知っていた。そしてまたオニキスも2人のことをよく知っている。なぜならそれは。


「なんで、貴方達が…朝陽のお父さんとお母さんがこんな所に…いるんですか」


 ほかでもない。朝陽がこの1年間半の間ずっと、ずっと探し続けていた。朝陽の両親が今、目の前に立ち塞がった。


「悪いがここから先へ君達を行かせる事は出来ない」


◇◆◇◆◇


「チッ結局全部防がれたか」

「貴方に負けるわけにはいきませんからね」


 最後のライオンの攻撃を受け切ったアメジストは力を使いきり倒れたライオンの元に駆け寄った。そして、駆け寄った時にはライオンは力を使い果たしたせいか妖精の姿に戻っていた。


「やはり貴方は強いです」

「…嫌味か」

「いいえ、率直な気持ちです。間違いなく貴方は強い」

「テメェに言われても嬉しかねぇよ。俺はテメェに負けたんだ」


 不貞腐れたライオンにアメジストは苦笑いを浮かべる。アメジストが言ったことは間違いなく本当の事だったから。


「貴方の純粋な強くありたいという気持ち。受け止めてしまいましたね」

「は?何言ってやがる」

「いいのですか?このままで」

「何が言いたい」

「いえ、戦いが終わった後、貴方はやりきった感を出していたので。このまま、負けたままでいいのかと」


 アメジストが、わざとらしくライオンを煽るとライオンは目を鋭くさせる。そして、ライオンの中で燃え尽き掛けていた炎が再び湧き上がる。


「いい訳がねぇだろ。はっ、いいぜテメェがそこまで言うなら次戦った時は覚悟しろよ。その時は俺が必ず勝ってやる」

「ふふ、楽しみにしています」


 アメジストが微笑むとばつが悪そうにライオンはそっぽ向いた。


「とりあえず、2人と合流しなくては」

「ふん……おい、物騒なもん抱えた奴がこっちに来てるぞ」

「ん?」


 突然のライオンの言葉にアメジストがライオンを見ると当のライオンはある方向を凝視していた。


 釣られてアメジストもその方向を向くと、大鎌を担ぎ、フードを被った小柄な人物がアメジスト達に向かって来ているのが目に入る。


「あなたは…何者ですか」


 盾を構え、警戒しながら、フードを被った人物に問いかける。そんなアメジストの問いにフードの人物はゆっくりと口を開いて答える。


「私だよ」

「えっ?」


 いや、そんなまさか。とアメジストは信じることができない。しかしその声は明らかにアメジストがよく知る声であった。


「迎えに来たよ、お姉ちゃん」


 その人物は混乱していたアメジストにさらに追い討ちをかけるようにフードを脱いだ。


「…沙月希」


 露わなった素顔はアメジスト…朝陽がよく知る人物、朝陽の妹の、沙月希だった。



おそらく次の更新でこの章は最後になります。


その後は「ガーディアンナイト」の編集を行おうと思います。

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