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子供と大人と女


 少し寝不足で精神的に地味に落ち込んでいる時は仕事がある事が嬉しい。気分転換に適しまくっている。冷静になれて社会の目線で物事を考える時間が出来る。昨夜のことで感じた感情を他人事の様に改めて振り返る事ができる。


 「おい、イシーダ。お前に客が来るってなんだよ」


 折角の擬似賢者モードでの思考がブッ飛ぶ。酷い言いような言葉が客室清掃の為に開け放っているドア辺りからかけられる。言わずもがな宿屋跡取り息子のバイス坊ちゃんである。


 「なんだよって言われても私の方こそ、その物言いはなんだよって言いたいんですが?」

 「生意気なんだよ!」


 訴えも軽くスルーされ引き続き罵倒である。何についての生意気かさえ思い悩む気が失せる。どっかにいそうなアニメキャラの如く、失せろ。な~んて言いたくなったのは心に秘めておく。今の苛立ち全開のバイスに軽口は良いとはいえない判断だ。


 「バイス。何を私に言いたいのかよく分からないんだけど、来客についての事と私の態度に関係する事でいい?」


 落ち着いてゆっくりと言葉をかける。子供の言い分を聞く時によく使った物言い。実際バイスは体格はしっかりしているが(日本人に当てはめると高校生並だ)、年齢は14歳だ。今みたいに感情的になるとそれよりも幼く感じる。


 ベットのシーツ替えの手を休め、相手の眼を滅多に見ないで話す私がしっかりとバイスに目線を合わせたまま返答を待つ。


 「……っ……」


 息を詰めたと思ったら、バイスが逃走した。

 返答に窮したのか、我に返ったのか分からないが最悪の事態にはならなかった。興奮した相手に冷静な言動は、余計にあおる場合が多い。悲しいかな子供も大人も、だ。その中でバイスの行動は丸だ。落ち着きを取り戻す時間は出来るしね。そう思うと一番多感な時期でこの判断ができるバイスは確実に大人に近付いて来ているんだな~なんて擬似賢者モードを発動しながら私はベットメイキングを再開した。


 バイスを追うわきゃない。必死に自分で足掻いてるのを邪魔しちゃいけません。


 せっせとやっとお仕事を再開すれば、今度は開け放ったままのドアをノックする音が中断を知らせる。はい、の返事と共に振り返るとドア近くに奥さん。何か急な用事かと思って声をかける前に謝られた。


 「ごめんなさいね、イシーダ。いくら多感な年頃といっても貴女を傷つけていいものではないわ」

 「平気ですよ、気にしてませんから。誰にでもある通過儀礼みたいなもんですし、私の時はもっと酷かったですよ?」


 周りにいっぱい迷惑かけちゃいました、遠い記憶を懐かしむ様に思いだし、苦笑して言えば目を点にした奥さんが「19歳って嘘じゃなかったのね」と呟くのを聞いた。そしてまた謝られた。今度は私の年齢を信じなかった事に対してだ。やっと同じ大人に類する人が私を認めてくれて嬉しい反面、それが詐称年齢なのが引っ掛かり、少し心が重くなった。


 「いえ、気にしないで下さい。幼く見えてしまうのは自覚してます。ブランフォードの女将さん達は最後まで信じてくれませんでしたし、逆に開き直って子供っぽく振る舞ってましたもん」

 「それで納得出来たわ。女将さんからの紹介状に沢山、子供なのにとかまるで幼子を案じる文面で溢れていたわ」

  

 今度は奥さんと二人で苦笑した。思い描いた人物はきっと一緒。猪突猛進型心配性のブランフォードの女将さんだ。



 久々の女性同士の会話はとても穏やかで、心に溜まっていた何かが晴れていく様だった。



 女性のお喋りは最大のストレス発散だと言っていたTVの人に私は大いに頷いた。








 イシーダが大人な態度かと問われれば私は沈黙せざるおえない。


 お喋りって高等技術だ、と女性と話す機会があるといつも思う。

 頭が凄い勢いで起動するのがわかる。わさび柿の種食べた時みたいにな感じ。


なんとなく投稿時間変えてみました。べっべべべべつに0時投稿に憧れたとかって訳じゃないんだからねっ

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