夜、雨の大阪城公園にて
夜、雨が降る大阪城公園。
駅へと続く道は水はけが悪く、いたるところに薄く水が張っている。
明るい街頭が水面を照らし、暗い夜を際立たせつつも目映く光る。
ふと道脇の、閉店した売店に目をやると一人のオッサンがパイプいすに座っている。
わずかにせり出した軒下で、ポケットに手を入れて、じっと座っている。
春から夏へ繋がる梅雨へと移り行く5月。
降る雨を押しのけて通る風は冷たく、オッサンに吹き付けている。
蔑む気持ちにはなれないが、哀れむのも失礼か。
そもそも哀れんだとしても、僕には何もできやしない。
いいや、何もできないなんてことはない。
金をかけ、時間を費やせば、あのオッサン一人くらいなら救い出せる。
僕は、金を時間を失うのを惜しんで通り過ぎる。
あのオッサン一人のために、今自分が持っているものを捧げられない。
だから、結局見ても見なくても、同じことだった。
オッサンの椅子のそばで、猫が一匹寄り添うように丸くなっている。
それを見て、思い直す。
僕はオッサンを救うことはできない。
助けることはできても、救うことなど。
わずかながらもオッサンに救いを与えられるとすれば、与えているとすれば
それは、そこに丸くなっている猫、なのだろう。