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ケビン

作者: ともさんず

ある時ふと気づいた


どうやら俺、鼻毛が出てる


一本長いのがちょろっと



鼻毛というものは、出てても中々気付かない

人に指摘されて初めて気づく


それが自分で気づくということは、かなり出てる



どうすべきか、しばし考え行動に移す



・・・ケビン



とりあえず命名してみた


事態は、なにも好転しなかった

ので、抜くことにした



君らはよくやってくれている


外気のゴミから俺の鼻を守ってくれている

感謝してるよ


ただケビン、お前は少しやり過ぎた


こんな形でお別れになるのは残念だよ

じゃあな


鼻に手をかけ、てぃっと抜く



ケビンの遺骸を掴んでるはずの指を見て、ショックで膝が落ちる



・・・ピエール



まさかの誤爆


抜けたのはケビンではなく隣のピエール


鼻の穴からはみ出すこともなく、毎日真面目に外気のゴミから鼻を守ってくれている

善良な一般市民の尊い命が犠牲になった



Oh my God


思わずつぶやく、平静を装うが手の震えは止まらない



ケビン


ケビンはどこだ!?


いた、肝心のケビンはこの誤爆を嘲笑うかのように依然鼻から顔を出している



イラ


っとした


ヘィ、ケビン!!お前の悪事はここまでだ!!あの世でピエールに詫びな!!

渾身の力を込め、ケビンのいるあたりを掴み、一気に引き抜く!!


ケビンの遺骸を掴んでるはずの指を見て、ショックで膝が落ちる


ジョージ!


フランシス!


マイケル!


トレイシー!


ケンタロウ!


罪のない善良な市民たちが!!



Noooooooooooo!!!



俺は部屋を飛び出し、冷たい雨の中を走る


自分がどこに向かっているのかすら分からない


頭の中の負の感情を振り払うだけのために走り続ける


頬を伝うのが雨なのか涙なのかも分からない



何かにつまづき、水たまりに転倒する


もうたくさんだ、これ以上の戦いに何の意味があるというのか・・・





あれから十年の時が経つ


依然鼻から顔を出すケビンを見て、人は時に笑い、時に顔をしかめる

だが、悩み抜いた末に「不戦」の道を歩こうと決意した俺に迷いはない


今日も、きっと明日も、ケビンはちょろっと出ている

気がつかずに出ているのではない、全てを知った上で敢えて出しているのだ

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― 新着の感想 ―
[一言] シュール過ぎるwww でもこういう小説……というよりは小噺、結構好きな人って多いと思います。 この独特な雰囲気をなくさないようにしてほしいです。
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