シュークリームと栄養ドリンク≪情話≫
「ふあぁ~~~っ。ん?何時?」
大あくびをしながら目覚まし時計を見る。
5:58
ちょっと起きるの早かった。
5:59
… … …
目覚まし時計を見つめたまま2分、
ジリリーン・ジリリーン・ジリリーン・・・ ・・・ ・・・
いつもならスヌーズを3回くらい止めるまで起きたことに納得できないが、今日は1回目で目を覚まさなきゃいけないことを理解でき、目覚まし時計のスイッチを丁寧に止めた。
昨日の晩は先生のことを考えながら寝落ちしちゃったみたい。
朝を迎えてもデイリーリーフの余韻の中というか、そのまま居る感覚と言うか。
出勤する準備をしなきゃいけないから、そんな場合じゃないのは分かってるけど、もう少しこの感じで居たい。
いつものスヌーズが終わる時間、6:30 まで、昨日の感覚に浸ることにしたカズ。
先生はなんで、こんなアラフィフおじさんに喋りかけてくれたんだろう?
栄養ドリンクじゃなくてシュークリームを選んだ理由は?
考えても、考えても、自分なりに納得できる答えは出てこない。
あの緊張した笑顔に意味はあるのかな?
オジサンが怖かったのかな?
怖かったら、喋ってくることはないか。
うーん、分からん。
電子タバコでも吸って・・・って、もう7時!
ヤバい。
慌てて準備して車を走らせる。
昼休み、昨日の出来事をもう一度考えていたカズ。
先生は何で・・・って考えているうち落ちていた。
携帯のアラームを掛けていたから良かったものの、切っていたら昼寝坊になるところだった。
そのころ、田中先生に話しかけられていた桃子。
「今日は大丈夫?眠くない?」と咲良。
「うん、今日は眠くない。咲良ってさぁ…、やっぱ何でもない。」
「何か言いかけたら止めないでよー。気になるじゃない。まぁとにかくいつでも聞いてあげるよ。」
咲良に聞きたかったことは、最近失いかけていた恋愛感情のこと。
ここ数年、仕事に夢中だった桃子は異性を好きになるという感情を心の奥底に仕舞っていた。
何をもって好きという感情なのか。
中学、高校、大学と好きな人、付き合った人は居たし、自然にその感情が解っていたはずなのに今は…
恋愛経験豊富で今も付き合っている人がいる咲良に話してみようと思ったが今日は勇気が出せなかった。
早くデイリーリーフに行きたい
授業をしている間は集中できたが合間の時間になるとそのことばかりを考えてしまう。
みんな同じ時間に夕方になってるはず…
なのに、私の周りだけがなかなか夕方にならない気がする。
翌日の授業の準備を終えた時、やっと時計が17時を指した。
「お疲れ様です。お先に失礼します。」と言い終えるか終えないか。
身体が自然とデイリーリーフに向かっていた。
ピロリローン・ピロリローン
シュークリームさんが居ないか店内を見渡す。
居ない…
栄養ドリンクを今日はゆっくり飲みながら外を見つめる。
(来た!!)
心の中では飛び上がっているくらいの感情がこみあがってきたけど冷静を装う。
ピロリローン・ピロリローン
「あ、先生。今日は早かったんだ。」
「今、来たところですよ。」
手には空の栄養ドリンクの瓶。
「ちょっと待ってられる?電車とか大丈夫?」
「全然大丈夫ですよ。」
いつもの電車には乗れそうもないけど、何本か遅い電車に乗れば帰れるし、大丈夫って言っちゃった。
「なら、ちょっと待ってて。」
そういってカズは桃子のもとを離れ売り場に向かった。
しばらくして、
「はい、シュークリーム。今日も会えて話せたからお礼に。」
今日も話せたからって言葉に顔が火照ってきた。
きっと、誰から見ても真っ赤っかになってる。
自分でも感じる。
「あ、あ、ありがとう、、、ございます。」
そう答えた時にはシュークリームさん、袋を開いていた。
「食べないの?あれ?おなか一杯だった?シュークリームって気分じゃなかった?」
(違うんです。胸がいっぱいなだけなんです。)
そうは言えず、
「いただきます。」
頬が熱くなったまま、いつもより小さく口を開きシュークリームを一口。
何か言わなきゃ、この時間が終わっちゃう。
「住まい、このお近くなんですか?」
あーーっ、めちゃ当たり障りないこと聞いてしまった。
「ここから?車で30分くらいのところに住んでる。電車だと北へ2駅。先生は?」
「私は南へ二駅離れた街に住んでます。」
「え、繁華街の近く?良いなぁ、いつでも飲みに行けそうだし。」
「そんな良くないですよ、騒がしいし。夜、静かそうな北の方の町の方が合ってる気がしてるんですよ。」
「田んぼも多いし、虫も多いよ。大丈夫?」
「虫!苦手です! ところでシューク・・・、なんてお呼びしたら良いですか?」
「俺?おれ小さい時からカズ君とか、カズとか呼ばれてる。カズでいいよ。先生は?」
「今の学校で同期の子には桃子って呼ばれてます。」
「じゃ、桃子ちゃんで良いかな?」
(高校の時はちょっと変わったあだ名で呼ばれてたけど、それは言えない気がする。)
「ハイ、大丈夫です。私からはカズさんで良いですか?」
「さん、は無くても良いけど付けて呼びやすかったら、それでいいよ。」
次の電車の時刻が近づいてくる。
これ以上の話はまた会えた時に。
桃子は
「カズさん、電車の時刻近いんで、また今度会えたらお願いしますね。」
思いきって名前を声にして言って帰ることを伝えた。
カズは
「桃子…ちゃん?いや、やっぱり桃子さんだな。いきなり、[ちゃん]とは言えないよ。またここで会えたら話そうね。」
カズは桃子を見送り、桃子は人混みの中を駅に向かってゆっくり歩いて行った




