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シュークリームと栄養ドリンク≪感触≫

色づいた木々の葉もほとんどが落ち、イルミネーションの準備も進まないこの時期は仕事に対しての情熱を少しだけ緩めてしまう。


紅葉とイルミネーションの狭間の数日。

師走に向けての準備を行えば、やることもあるのだろけど、この後に控える忙しさを考えると何もしないでおこうとも思ってしまう。


カズはいつも通り定時に退勤。

桃子もこれからある期末試験の準備とかを考えると、この日はあってないような定時に職員室をあとにした。



ピロリローン・ピロリローン。

「いらっしゃいませ、こんにちは」


カズは迷わずデザート売り場へ。

シュークリームを手に取ろうとした時、


ピロリローン・ピロリローン


入り口を見てしまう。

あ!ドリンクさん!


自動ドアを通り抜け栄養ドリンクの売り場に向かおうとしていた桃子も彼が目に映った。

あ!シュークリームさん!


シュークリームさんの横を通ろうとした時、目が合ってしまった桃子。

恥ずかしさから咄嗟に

「こんにちは。」

って言葉が出ていた。


「あ、こんにちは。」

シュークリームさんは短い一言だけ答えてくれた。

挨拶だけ。

たったそれだけ。

でもちょっとだけ、二人のあいだにある空気感が変わった気がした。



カズはいつものシュークリームを手にレジの列に向かった。

今日も店の中央にレジ待ちの列ができている。

ドリンクさんと挨拶を交わしてしまったばっかりに、レジ待ちの列が進むあいだ無になることができなかった。


後ろにドリンクさんが並んだらどうしようか。

何か声を掛けたらいいのかな?


ぶつかったこと?いつも買ってる栄養ドリンクのこと?

それとも無理に話しかけず、何事も無かったかのように振舞っていれば良いかな?

色んなことが廻ったがドリンクさんは自分より2,3人後に並んだようだった。

ホッとした気持ちと、ちょっと残念な感情が混ざる。



桃子もいつもの栄養ドリンクを手にし、シュークリームさんを追うようにレジ待ちの列に向かった。

あいだには3人。

シュークリームさんの後ろにはなれなかった。


後ろに並ぶことができたら・・・

(お仕事帰りですか?・・・当たり前か。)

(お仕事、何されてんですか?・・・突然すぎる?。)

(お家、お近くなんですか?・・・いきなりプライバシーなこと聞くのもどうかな。)

何を話しかけようか、いろいろ考えていたが杞憂に終わった。



二人とも不思議な感覚を持ちながらレジは進んでいく。

カズは店長のレジ、桃子はちょっと心許ない男の子のレジに。



桃子のレジの男の子は栄養ドリンクのバーコードがどこにあるか探していて、やっと見つけた時にはシュークリームさんはもうドリップコーヒーの機械の前に行っていた。


(シュークリームさん、席に座ったけど今日は混んでて空き席が無いな・・・)


レジを済ませた桃子はイートインの近くで栄養ドリンクの蓋を開け、チラチラとシュークリームさんを見ながら一気に飲み干し、駅に向かった。






お互いに存在を気にはかけているがそれを言葉として表現することができなかった。

でも挨拶はできた。

何か気持ちが触れ合ったような感触があった。



ほんの一瞬の出来事の中で、ほんの少しだけ何かが伝わったような感触があった。



次に会った時、話しかけてみようかなと思ったカズ。

次は挨拶以上の話をしたいなと思った桃子。



それぞれの夜が更けていった。


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