シュークリームと栄養ドリンク
365日分の1日。
毎日、毎時間、毎分、毎秒、心の中は変化し続けている。
悪いことは見つけやすく、良いことは流れていく。
歳を重ねると流れは速く、若い時は明日までが遠い。
そんな日常の、ちょっとしたきっかけで何かが変わった2人の話。
「ピロリローン・ピロリローン」
自動ドアが開くたびになる音。
この時間はチャイムも鳴ることを諦めようとするくらい、引っ切り無しに鳴っている。
「チキンが揚げたてです。いかがでしょうか~」
店員の声と、揚げたての油の香り。
お弁当売り場に直行するサラリーマン、新商品を手に取りながらキャッキャと盛り上がる女子高生たち、チキンやアメリカンドッグを見つめる男子高生、たばこの番号を必死に見ようとしている紳士、みんなレジに並ぶタイミングを見計らっている。
どれだけタイミングを見ていても、この時間は混雑。
店の中央には帰宅を急ぐ人々が整然と列をなしている。
コーヒーマシンからは混雑の証明のように豆を挽く音が流れ続けていた。
このコンビニ、仕事帰りの人々や学生で17:00を過ぎるといつも混雑している。
カズがいつものようにシュークリームを手に持ちレジに並ぼうとした。
その瞬間、後ろから殺気というか圧というか何かの気配を感じ、チラッと振り返る。
と、そこには栄養ドリンクを今にも開栓しようかとするような勢いの女性が真後ろに迫ってきていた。
その女性はよほど慌てていたのか、何も見ていなかったのか、その勢いのままカズに軽くぶつかった。
ぶつかったことと、女性のあまりの勢いに押され、
「どうぞ、お先に」
と、レジ待ちの順を譲る。
「あ、すみません。ありがとうございます。」
と彼女はレジ待ちの列に並んだ。
レジが終わると彼女は一目散にイートインに行った。
キュッと蓋を回した瞬間、栄養ドリンクを一気に飲み干す。
なにかから解放されたのか、ホッとした顔。
カズはコーヒーマシンでドリップを待つ。
ミルクのポーションとスティックシュガーを2本準備。
ゆっくりと注がれるコーヒーを見つめていたが、途中なぜか彼女が気になる。
彼女は腕時計をチラッと見て慌てた様子で駅方面に足早に向かっていった。
(ああ、なんか忙しそうな女の子だなぁ)
そう思いつつ、淹れたてのコーヒーを手にイートインへ。
シュークリームと甘めのコーヒー。
人の流れ、車の流れ、信号の移り変わり。
順番に灯るブレーキランプ、先を争うように横断歩道を渡る人、青信号を何回も見送って話し続ける学生、忙しそうな彼女も、ゆっくりしている俺も、このコンビニも。
みんな、この町の一部。
その間も
「ピロリローン・ピロリローン」
チャイムがBGMのように流れ続けていた。




