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「「いただきまーす!」」

「召し上がれ」


真正面には父、隣には母親が座り、3人揃ってご飯を食べる。


まだまだおぼつかない手なので、所々母親に手伝ってもらいながら、その横顔を盗み見る。


ツヤツヤの黒髪ストレートロングの髪の毛からみえる伏せた目には、影ができるほどの長くて濃いまつ毛。すっと鼻筋が通った綺麗な鼻。

口元は小さく可愛らしい。


「はい、愛、あーん。」


ぱっちり二重に少し目尻が上がった完璧な猫目と目が合う。


「…なぁに、ママの顔じいっとみて。何かついてるのかな?」


こちらがじっと見ている事に気づいた母親は少し恥ずかしそうにはにかむ。

はにかんだことで、隠れていたえくぼがこんにちはする。


(ーぐっ。かわいいっ。)


見た目はツンとした高貴な猫だが、意外にもコロコロとよく表情が変わるそのギャップに、これまでも何度かやられていた。


「…え、ほんとに何かついてる?」

「…ううん!ついてないよ。ママきれいだなぁと思って。」

「…もう。またそんなこと言って。」

「ね、そうだよね。比那(ひな)は世界一綺麗だもんね。」


ねー、と父親と2人で顔を合わせながら同調し合っていると、更に照れた母親は「2人とも遅刻しちゃうからね!」と話を終えようとする。

「俺は今日午後からだもんねー。」とおちゃらける父親にはいはいと適当にあしらいながら、こちらにご飯をやる手は止めない。


結婚報道の時、一般人女性と聞いていたが、前世を思い出して初めて母親と対峙した時、本当に一般人なのかと疑うくらいだった。


本人はその顔の良さに色々苦労したらしく、自分の顔面偏差値に良い気持ちを抱いていない様子だったが、(旦那)わたし()からの褒め言葉には、照れながらも素直に受け取ってくれている。それがまた、可愛らしい。


なんやかんやして身支度を整えて、玄関へと向かう。


「じゃあ、いってきます!」

「いってきまぁす!」

「いってらっしゃい。2人とも、気をつけてね。」


頭上でチュッとする音に盛大に照れながらも、何にも気づいていないふりをする。


(元々愛情表現が多いとは思っていたけど、やっぱり…やっぱり行ってきますのチューはする派なのね…!!!!)


何ならハグ付きである。

初めてその現場を見た時は、尊さでまた意識が飛びそうになった。


これ以外にも、(推し)は、惜しみなく妻と娘に愛情を言動で示してくれている。

自分がされることにはだいぶ慣れてきたが、目の前で美男美女がイチャつく姿は、いまだに慣れない。慣れないけど、全然もっとやって欲しい。


愛にもチュー


と何とも可愛らしい愛嬌を振り撒きながらほっぺにチューされ、そのまま手を繋がれる。

今日は、父親が幼稚園の送迎をしてくれるらしい。


(ーと、いうことは)


もう一度行ってきますをし、玄関を開けると、


「ーあ。」

「お!」


お隣の人と家出るタイミングが同じだったようで、目が合う。


(ーやっぱり。)


「おはよー(みなと)!」

「はよ、翔。やっぱ今日はお前だと思った。」

「俺も!」

「愛ちゃんも、おはよう。」


(ーぐっっ。)


「…おはようございます!」


キラキラ王道イケメンからの挨拶に何とか耐えながらも、挨拶を返す。

楽しそうに話している2人は、それもそのはず、同じアイドルグループ(LMS)のメンバーだからだ。


この全人類を虜にするような(している)天才的な顔面の持ち主は、翔の所属するグループのセンターを務める、湊である。基本的にLMSのメンバーは顔面偏差値が高い為、みんなセンターを務めるが、湊はその中でもビジュ坦と呼ばれるほどのイケメンである。背も1番高く、スタイルも良い為、センター映えするというのもあるだろう。


翔が午後からお仕事ということは、湊もそうなのではないかと思っていたが、その通りだった。


「ーほら、煌己(こうき)もおはようは?」

「……ぉはようございます…」


湊に気を取られており、全く気づいていなかったが、よく見ると長い足の後ろに隠れている人影がいることに気がついた。


おはようという声も、蚊の鳴くような声である。


「こーくんおはよう!」

「!!!………」


翔に声をかけられたのに驚いたのだろう。少し顔を見せてくれていたが、また顔をひっこませてしまった。


「ごめんなぁ。こうきも俺の人見知りが引き継がれたみたいで」


ー困ったように笑う顔も美しい。


「いやいや、俺あんまり幼稚園の送迎とか行けてないからさ。ごめんな。びっくりさせちゃったな?」


人見知りを発揮するこうきを怯えさせないよう同じ視線にしゃがみこんで話しかける、推し。


(この空間が尊すぎるっ…!!!!!)


メンバー間の仲は良いとは思っていたが、まさか住むマンションまで一緒、更に隣の部屋だとは全く想像していなかったため、お隣の家いこっかと連れられた先に湊がいた時は、驚きすぎて腰が抜けそうになった。


(想像以上の仲の良さでこの世のすべてに感謝したなぁ)


そう振り返りながら、この幸せすぎる空間にニヤついていると、ふと視線を感じる。

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