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あの後、愛と2人で帰っている時もショックがデカすぎて、返事をするだけで精一杯だった。




ー愛は、瀬田の方が良いんだろうか。



考えたくもないのに、無意識にその考えが浮かび上がってしまう。

普段はクールな存在だが、仲のいいやつには、恥ずかしげもなく、さらりと誉め言葉を言うやつだ。


…愛にも、きっとそうなのだろう。


ズキズキと痛む胸と、頭から離れない仲睦まじい2人の様子に気を取られすぎていて、気づいたら、家の前に着いていた。


「…じゃあ、また来週」

「…、おう」


愛の顔も見れず、家の中へ入ろうとすると、


「…こう」

「…ん」

「大丈夫…?」

「…っ」


大丈夫?と声をかけられ、思わず愛の方を見てしまう。


心配そうな表情を浮かべ、そう問われた俺は、ぐちゃぐちゃになった感情が一気に押し寄せ、涙が込み上げてくる。



愛の目が、驚きで大きくなる。


(…くそっ。)


そのままドアをバタンと閉めた俺は、そのままずるずると玄関のドアでしゃがみ込んでしまう。


ー最悪だ、何もかも。今の気持ちも、恐らく愛に泣きそうなことがバレたことも。


--------------------------------------------

「…こう!!」

「…なんだよ。」

「こうにね、話したいことがあるの。」


恥ずかしそうにもじもじしながら、愛が俺に話しかける。

心なしか顔が赤く、目も合わない。


ードクン


いつにも増して可愛らしい様子に、胸が高鳴る。そして目の前の彼女の行動にはひどく見覚えがある。


そう、まるで告白をする前の人みたいだ。


「…な、なんだよ」


内心動揺してることを悟られないよう、必死にポーカーフェイスをして返事をする。

下を向いてる彼女は、俺の様子に気づく様子もなく、あのね、と言いづらそうにしている。


暫く沈黙していた俺達だったが、やがて決心したかのように愛はキリッとした顔でこちらを見た。


「私、実はちょっと前から、理央と付き合ってるんだ。」

「……え?」

「…実は、そうなんだ。今まで黙っててごめんな、こうき。」


いつのまにか、愛の横に瀬田がいた。照れたように頭をかく彼に、彼女は愛おしそうな表情で見つめながら、腕を絡ませている。


「……なんで、」


思わず、心の声が出てしまう。


「…私、俺様キャラが好きって言ってたの、実は嘘だったの。」

「……え、」

「愛情表現がストレートで、表情もくるくる可愛い人が好きなんだ!」

「……ぇ」

「ふふ、理央みたいなねっ。」

「っ」

「っっな、やめろよ、恥ずかしい。」


あの、花が咲いたように綺麗で可愛らしい笑顔を、俺ではなく、瀬田に向けながらそう言う愛は、いかにも『幸せです』という表情をしていた。


「……そういうことだから、これからは一緒にいられないんだ。」

「……ぇ?」

「いくら幼馴染とは言え、こうも男の子だから。理央を不安にさせること、したくなくて。」

「……だから俺は良いって言ってるだろ。」

「…こうといると、明らかにテンション下がってるじゃん。耳と尻尾がだらーんって下がってるわんちゃんみたいだよ?」

「なっ、そんなことないし。全然余裕だし?」


仲良くイチャイチャする2人の様子を、ただ呆然た見ることしかできない俺に、愛は、こちらを気にする様子もなく、更に追い打ちをかけた。


「…だから、ごめんね?今までありがとう」

「これからは俺が愛のこと幸せにするから。…今までありがとな!」

「…まっ」


待って、


腕を組んで仲良く歩く2人の背中がどんどん小さくなっていく、


待って、置いてかないで、


俺の必死の叫びにも2人は振り返ることはない。


ー待って、


「待って!!!!!」

「ぅわっ。」


先ほどまで聞いていた声を身近に感じ、驚いて横を見ると、そちらも驚いた顔をしている、彼女がいた。


(………愛…?)


「…びっくりしたぁ。凄いうなされてたけど、大丈夫?熱がまだ高いのかなぁ。」


そう言って心配そうな顔を浮かべる彼女は、そのまま俺の方へと手を伸ばした。


(………愛だ、)


ひんやりとした感触がして、どうやら彼女は俺の額に手を当てて、熱を確かめてくれてるらしい。



ー心配そうに、こちらを見ている。


先ほどの愛は、途中からまるで俺なんていないかのように、目線が合わずにずっと、瀬田の方を見ていた。



ー愛おしそうな目をして。


でも、目の前にいる彼女は、俺のことを見ている。見て、くれている。


(………夢、だったのか。)


安堵したその瞬間、頬が濡れる感覚がする。



「…っ!?こう大丈夫!?やっぱしんどい?…私いない方が良いのかな」


額からするすると頬の方に移動した手は、優しく、流れる涙を拭ってくれる。

その優しい感覚が心地よくて、思わずすりすりと手の方に寄っていってしまう。


「……っ取り敢えず奈子ちゃん、呼んでくるね。」

「……!」


彼女の手が止まり離れようとした瞬間、気づいたら彼女の手を掴んでいた。


「……こう?」

「……いかないで、愛……」


先ほどの遠ざかっていく背中を思い出して、また涙が込み上げてくる。

自分はこんなに涙脆かっただろうか。…いや、きっと、熱のせいでこうなっているんだろう。


そのまま彼女の手をもう一度自分の頬へと戻す。

撫でてくれるのかと思いきや、固まってしまった彼女の様子を見て、仕方なく自分からぐりぐりと動かす。


また、眠気が襲ってくる。



いやだな、またあのゆめをみるのかな。

こんどは、おれのこと、



「……おいてかないで、」


--------------------------------------------

「……おいてかないで、」


そう言ってまた眠りに落ちたこうは、眠っているにもかかわらず、私の手をしっかりと掴んでいた。


ーまるで、逃がさないと言っているように。


(えっとちょっとまってちょっとまって!?)


先ほどから怒涛に訪れている驚きと胸キュンに心が追いつかない私は、内心パニックになっていた。


そんなことも露知らず、私の心を乱しに乱しまくった張本人は、すやすやと寝息を立てている。


ここ数年、ツンというツンを浴びに浴びまくっていた私は、突然のデレの供給に全く心が追いついていない。

先ほどからずっと、心臓の鼓動が鳴り止まない。


高熱も相まってかいつもより幼い様子のこうだけでも、母性本能がくすぐられまくって大変なのに、この、この可愛さはなんだ。


まるで、幼い頃のようだ。

ストレートに愛情表現をし、甘えん坊だったあの頃の。


今も無意識に、私の手にすりすりしているのもやめてほしい。その度に、幸せそうに口が緩んでいるのも、やめてほしい。


ードガン!


遂に、自分の心臓が弾ける音がする。


「はぁぁぁぁぁぁ。」


耐えきれず、思わずため息をついてしまう。

その拍子に、繋いでいた手がずるりと落ちそうになった瞬間、


「………ゃ」


眉根をぎゅっと寄せていやいやしたこうは、自分の方へと引き寄せ、また満足そうにスヤスヤと寝息を立て始めた。


「…………無理すぎる」


可愛さと尊さで意識が飛びそうになっていると、


ーガチャ


「…愛ちゃん大丈夫?…ってあらあら」


奈子ちゃんが、こちらの様子を見に部屋へと入ってきた。

私達が手を繋いでいるのを見て、ニコニコとしている。


「な、奈子ちゃん…」


(は、恥ずかしい…っ)


「こうに襲われてないか心配してたけど、その様子じゃまだ、大丈夫そうね。」

「お、おそ!?!!!!」


奈子ちゃんの爆弾発言にびっくりしすぎて思わず大声が出てしまい、慌てて口を押さえる。


起こしてしまったかと、ちらりとこうの様子を見ると、すりすりとこちらの手にすり寄り、幸せそうな寝顔を浮かべている。


「……ふふ、こうは相変わらず愛ちゃんが大好きねぇ。」

「えっ」

「あら、やっぱり気づいてなかったの?」

「あ、いや、ええっと…」


先ほどの、数々のこうの発言と行動を思い出し、ぼっと顔に熱が集まるのを感じる。


返事に困る私に、「あらあら」と嬉しそうに奈子ちゃんが笑う。


「こうってば、昔っから愛ちゃん一筋だったじゃない、」

「え、」

「そしたらいつからか、愛ちゃんの好みになるぞーって頑張ってオラオラし始めちゃって、」

「……」

「そのせいで、時々こうやって熱が出るのよねえ。」

「えっ」

「やっぱり無理してたのよねぇ。本来は誰よりも優しくて、気の遣える子だから。」


でもその様子じゃ、もう大丈夫そうね。それじゃ、お邪魔虫は消えるわねと、何か勘違いをしてそうな奈子ちゃんは、そのまま部屋を出ていってしまった。

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