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あれから血の滲むような努力をした俺は、立派な俺様系キャラへと変貌した。


本来の内面とのギャップがありすぎて、心のキャパを越えると熱が出るという弊害を抱えながら。


口調も態度も急変した俺に、愛も当初は困惑と動揺をしたものの、今では全く気にしていない様子だ。


愛も愛で、その秀でた外見から色々苦労したのだろう。

昔はコロコロとよくかわる表情を見せてくれていたが、今ではほとんど変わらなくなった。


(ーみんなの前では、だけどな。)



両親や身内の前では、また生き生きとし出す表情を見るたびに、愛おしいという感情が溢れそうになる。



そしてそれは、自分だけが見れる姿なのだとどこか優越感を感じていた。



感じていた、のに。


(ー何だよあいつ)


最近、そんな「特別」を脅かす存在が現れた。


瀬田理央。

俺と同じクラスのやつだ。


ザ日本男児イケメンという風貌で、背も高くガタイもいいその姿は、親父と同じグループの悠くんを思い出させるが、表情筋は皆無で、はしゃいでる姿もほとんど見たことがなかった。


なのに、



(…また、笑ってる)



愛も瀬田も、2人でいると、いつもの表情が嘘のように明るく楽しげになるだけでなく、特に異性間のパーソナルスペースを気にしている2人には珍しくガン無視で、わちゃわちゃと仲良さげに話している。


愛がケラケラと笑いながら、瀬田の肩をたたく。


ーズキン


(…?)


「…やっぱあの2人、付き合ってるのかなぁ」

「え?」

「橘さんと、瀬田くん」


(…!!!)

ーズキン


「…あー。確かにあの2人、2人でいると明らか表情とか行動違うもんね」

「うんうん。2人とも入学した時から美男美女だなって思ってたけど、あんなふうに笑うんだって、2人でいる時の様子見て初めて思ったもんね」

「わかる!!!元々綺麗でかわいいなとか……」


クラスメイトが話す内容も、これ以上聞きたくなくて、意識を逸らす。


もう一度、愛の方を見るが、こちらに気づく様子もなく、瀬田と楽しそうに話し続けている。


ーズキン


これ以上愛の方を見るのがしんどくて、顔を伏せる。


(こんなこと初めてだ。)


愛を見てると、いつも幸せな感情しか湧いてこなかったのに。


--------------------------------------------

「瀬田って、2組の橘さんと仲良いの?」


(っ。)


「え?なんで?」

「女子と積極的に関わろうとしないお前が珍しいと思って。さっきも体操服貸してたろ?」


(……え、)

ードクン


「…んー、まぁ…顔馴染み的な?」


ーズキン


愛と同じことを言っている瀬田の様子に、胸が痛む。

彼等の仲の良さが、あらわれてるみたいで。


「はーんなるほどねぇ。やっぱ顔面偏差値高いやつには顔面偏差値が高い人達が集まるんだなぁ。このイケメンめっ」

「ははっ、何だよそれ。」


ーズキン


自分の心臓の音がどんどん大きくなり、周りの音が聞こえなくなる。


(体操服貸したって…)


愛は、瀬田にお願いしたんだろうか。


(…俺じゃなく)


ーズキン


2人の楽しそうな姿が脳裏に浮かび上がって、さらに胸が痛む。


(…何なんだよ……)




愛の隣にいるのは、いつも俺だったのに。


--------------------------------------------

最近寝不足も相まって、授業に全然集中できていなかった俺は、いつの間にか放課後になってることにも暫く気づかなかった。


クラスメイトに話しかけられ、初めてホームルームが終わったことに気づく。


「ははっ。廣瀬、いつにも増してぼーっとしてんな。」

「……悪ぃかよ。」

「いや?……てかお前、クマ酷いけど大丈夫か?寝れてんの?」

「………いや、まぁ…」


「理央猫派なの!?…めちゃくちゃぽすぎておもろいんだけど!」

「…何だよ、笑うなよなー。」


クラス内に明るく大きな声が響いて、会話が中断される。

どうやら、付き合うなら犬系か猫系かで盛り上がってるらしい。


小学校のつきだんから始まり、どうやら女子はこういう話が大好きらしい。


(くだらな……)


どうか自分に会話が振られませんように、と存在を消すことに集中してる時だった。


「…あれ!愛じゃん!」

「明里ちゃん!」


(っ)


また意識をそちらに全集中させる。

どうやら江南は、愛にもどちら派なのか聞くことにしたらしい。

愛は戸惑いつつも、記憶の何かを思い出しながら考え始めていた。



(……猫派だろ。)


小学生の頃、俺様の西園寺の方が好きだと言っていたことを思い出す。

あれは猫ではないが、犬か猫かで言ったら圧倒的に猫に分類されるだろう。


答えを聞くまでもないなと、またクラスメイトとの会話に戻ろうとした時、




「…犬、かな。」





「…、は?」



(……今なんて言った?)



人違いだろうか。でも俺が、彼女の声を間違えるはずがない。


……なら、聞き間違いだろうか。


「愛は犬派なんだー!愛情表情真っ直ぐ伝えられたいってこと?」


間違いじゃなかったらしい。


「…うん、まぁその方が可愛らしいなって思うかな。」


(は?)


その言葉を聞いた瞬間、視界が真っ暗になる。



ー愛情表現を真っ直ぐ伝えられた方がいいんだ?


ーうん、まぁその方が可愛らしいなって思うかな。



先程の彼女らの会話を思い出す。



(………何だよ、それ)


ここ数年の自分の努力が、全て泡になった瞬間だった。

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