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ー俺の世界の中心には、いつだって、あの子がいた。


















俺達が出会ったのは生まれてすぐ、隣同士になったのは1歳と少しの時だったそうだ。


小さい頃から人見知りが激しく、幼稚園や小学校等々心配になった両親が、少しでも顔見知りがいる所に行けたら、ということで近くに引っ越したらしい。


ーまぁ、結局ずっと人見知りしてたけど。


物心がついてすぐ、会った瞬間ときの記憶は、今でも覚えている。


まあるく大きい目に、ふわふわとした綿菓子のような髪の毛。

白玉のように白くて透明感のある肌は、日焼けのひの字もない。




ー甘くて可愛い、お菓子の世界のお姫様みたい。




思わず見惚れていると、ミルクティー色の大きな瞳が、こちらをとらえた。


(っ)


目が合ったことの驚きと、ずっと見てしまったことに対する申し訳なさと気まずさもあり、咄嗟に目を逸らす。


(…め、そらしちゃった)


更に気まずさを感じてもじもじしてる俺を気にもせず、向こうからとことことこちらに寄ってくる。


思わず隠れて母親の足を掴んでいた俺の手がぎゅっと握られる。


またびっくりして顔をあげると、


「こんにちはっ。」


陽だまりのような笑顔が、目の前にあった。


「いっしょにあそぼっ」

--------------------------------------------

あれからも、なかなか人見知りがとけない自分にめげずに、彼女は毎日遊んでくれていた。


そんな日々が、段々楽しみになっていた。 



そんなこんなで幼稚園に入園した俺たちだったが、いつかの誕生日会で、将来の夢を発表する時があった。


「ぼ、ぼくのゆめは、アイドルになることですっ」


父親は、LMSという人気のアイドルグループに所属している。

幼い頃から父親のステージに立つ姿を見ていた自分にとって、「アイドルになりたい」という感情は、ごく当たり前のものだった。

まだ、アイドルがどういうものなのかはわかっていなかったけれど。


慣れない友人達の前で、自分の夢を話すという特大プレッシャータイムに挫けそうになりながらも、彼女のうんうんと大きく頷く姿に支えられ、何とか発表を終えた時だった。




「こんなんできんちょーしてるのにアイドルなんかなれっこないって」

「あいつ、いっつもビクビクしてるじゃん」

「おとこおんなみたいなかおしてるのにカッコイイアイドルになれるわけないじゃん!」





ーショックだった。


対人たいひとになるだけで緊張する、キラキラ輝くアイドルとは程遠い自分が果たしてなれるのか、という不安はあった。


…何よりも、女の子によく間違えられる自分の顔が、コンプレックスだった。




だって、アイドルはかっこいいから。




自分が密かに感じていた不安やコンプレックスを刺激され、言い返せずに溢れそうな涙を堪えていた時だった。


「っこーくんは、だれよりもやさしいからみんなにきらわれるのがこわくてきんちょーしちゃうだけなんだよ!」


(っ)


怒っているような、泣きそうな顔をし、滅多に出さない大きな声で彼女は話し始めた。



「っなんだよっ。」


「こーくんだってやるときはきめるもん!きょうのはっぴょうだって、とってもすてきだった!…それに、それに。おかおがかわいいことのなにがいけないの!?」

「はぁ!?」



「かわいいは、さいきょーなんだからね!!!」



(……!)


「なんだよそれいみわかんねー!」

「こっちだっていみわかんないもん!」


ワーワーと言い始める2人が先生に引き剥がされるのをぼーっと見ながら、先ほどの彼女の言葉を思い出していた。


(かわいいは、さいきょー…)


当時流行っていた戦隊モノだったり、ヒーローものは、みんな勇敢で逞しく、かっこよくて、頼もしい姿ばっかりだった。

アイドルも、キラキラ輝いてて、いつだってかっこいい存在だった。


「最強」って言葉は、そんな人達に使われる魔法の言葉だと思ってた。


--------------------------------------------

誕生日会も無事終えた帰り道、一緒に帰った彼女は珍く、しょんぼりとしていた。

そんな姿が気になりはしつつも、声も掛けられず、ましてや先程のお礼すら言えない自分にイライラしていると、


「…ごめんね。」

「………え」

「せっかくのたのしいおたんじょうびかい、わたしのせいで、だいなしにしぢゃ゛っ゛だ…っ」


そう言ってえんえんと泣き出した彼女は、どうやらあの時のことを謝罪してるらしい。


自分にとっては、一生忘れられない、嬉しい記憶だったのに。

自分のために怒ってくれたのに、雰囲気を壊したと、悔やみ泣いている彼女。




ーなんて優しくて、可愛い人なんだろう。




「なかないでっ」

「っ…でもっ」

「ぼく、とってもうれしかったよ」

「………えっ」

「ぼく、さいきょーなんてはじめていわれた!」


慰め方もわからず、次々と流れる涙を拭いながらそういうと、彼女はきょとんとした顔をした。



「……みんなは、」

「?」

「みんなはおんなみたいだってからかうけど、わたしはそのかわいくてきれいなおかおがだいすきだし、」

「…!」

「そんなおかおにまけないくらいやさしくてきれいなこーくんのこころもだいすき!」

「…っ」

「そんなこーくんはわたしにとって、いつだってさいきょーだよ!」


その言葉と、花が咲いたかのように綺麗で可愛いらしい笑顔は、自分が物心ついたときからずっとコンプレックスだったものを吹き飛ばしてくれるほどの破壊力だった。























ーそれからの俺の世界の中心は、いつだって、あの子()だった。
























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