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幸せな思い出  作者: 厚揚げさん
ネリネ
9/43

1-9

「セオドア。まだ揉めていたのか?」


重苦しい雰囲気を切り裂くように、

1つの声が地下通路に木霊した。


足音はひとつ分だけだった。

それなのに抜き身の剣を構えていた騎士たちが、

はっと背筋を正す。


ランタンの光の端に、長身の男が現れる。

白銀の外套、胸に刻まれた王家の紋章。

王国騎士団長――

この場で、ただ一人“王命そのもの”を帯びる存在。


「……団長。」


セオドアが息を呑む。


騎士団長は、まずミアを見た。

次に、血に濡れた青年を見た。

その視線には、嫌悪も恐怖もない。

ただ“理解しようとする目”だけがあった。


「君が、“鳴かないカナリヤ”か。」


ミアは言葉を持たないまま、ただ瞬いた。


そして団長は、アルドに向き直る。


「この娘は、ここには残さない。

 外へ連れ出す。

――生きたまま、お前と共に"光"の下へだ。」


アルドの瞳が、わずかに揺れる。


「だが、お前が剣を抜けば、

 この娘は“闇”に置かれる。

 それでも、構わないか?」


それは命令ではなかった。

脅しでも、取引でもない。


ただ一つの事実を、静かに置いただけだった。

膠着するかと思いきや、

剣に手をかけていることを気にせずに

血濡れの青年の袖をクイッと引っ張る細い指。


--アルド。

--ずっといっしょ。


青年の髪と瞳と同じ色の布を首元に。

頬に残る殴痕がある少女はいない。

変わっていることの方が多いはずなのに、

彼女はアルドを見てこれまでのように微笑んだ。


その微笑みを見てアルドは、


「絶対にミアと俺を引き離すな。」


そう一つだけ呟いて、剣から手を離した。



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