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初戦で、彼は勝った。
通例なら子どもは潰されるはずだったのに。
支配人に報酬を問われたとき、
彼は女も、酒も、薬も選ばなかった。
「……本。この国の字が分かるやつ。」
ただ、文字の読み書き本を望んだ。
その夜、
アルドは本を抱えて世話役が集う場所へ行った。
世話役達はアルドを見て、ミアを奥から呼んでくる。幼児と戯れていた少女は目を丸くし、
それから彼を見てにこっと笑った。
いつもの、全く光がささない、
古びた電灯だけが頼りの、薄暗い地下通路。
その下で彼女は本の頁を細い指でなぞり、
首を傾げ、地面にまた下手な線を引く。
その横で青年の琥珀色の宝石が眩しそうに瞬いていた。
-時同じくして、
支配人は暖かなオレンジの光を零す読書灯の下で豊かな毛を持つネコを撫でながら一日を思い出していた。
今までの勝者と違い、学を望む。
美麗な顔に濁った目を持つ年若き男。
「いい選択ですね。
言葉を持てば、守れるものも増える。
…君には、守りたいものがあるのでしょう?」
私の言葉に反吐を吐きそうな顔をしながらも、
人を一人殺したとは思えない手つきで、
彼はその本をそっと受け取った。
その無骨な手は、淡く柔らかい黄色を持つ少女
――ああ、
まるで鳴かないカナリヤのような存在だ――
を思う時だけ、優しくなるのだろう。
思わず笑えてくる。
「あれは化け物だ。
でも恐れることはありませんね。
私にはカギがある。そうでしょう?」
ネコは、眠そうにニャアと鳴いた。




