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天井から降り注ぐ、煌びやかな集合灯の光。
真紅の絨毯が敷き詰められた床。
荘厳な楽の調べが、玉座の間を満たしている。
「頭を上げよ。」
「よく来てくれた。」
仰々しく頷く、富を溜め込んだような腹を持つ男。
その隣にはアルドをギラついた瞳で見る女が控えていた。
「《ネリネの円環》での長年に渡る苦行、
誠に我らとしても遺憾である。
助けが遅くなったことへ謝罪を申し上げる。」
これからは、
ノクティアの平和を支える一人となることを期待しているぞ。
王の言葉に、玉座の間にざわめきは起こらない。
それは労りではなく、儀式の一部のように落ちてきただけだった。
「あら。噂通り"ネリネの輝き"はいい男ね。」
その沈黙を破ったのは、隣に座る女だった。
口元に扇を当て、値踏みするようにアルドを眺めてる。
その横に視線を移し、つい、と興味なさげに首を傾げる。
「それで、この子が“鳴かないカナリヤ”?」
「……思ったより、地味なのね。」
「その名で、ミアを呼ぶな!」
その時、低く重い怒声が玉座を切り裂いた。
楽の調べは途切れ、
君主夫妻を囲む騎士達が剣を抜く音が響く。
それに一つも動揺を見せない青年は、
殺気を隠さなかった。
誰も動けない、話せない中、
白い指が動く。
ーー陛下、ご挨拶が遅れ申し訳ありません。
ーー私は、アルドの"世話役"です。
その言葉を目にしたアルドの瞳は、
絶望の色を隠さない。
澱んだ琥珀の瞳に、娘は笑いかける。
ーー大丈夫。
指は動かないが、そう伝えているかのようだった。
彼女の言葉に、再度時間が動き出す。
「もうよい。この者たちを客室に案内しろ。」
動揺を隠そうともせず、ふくよかな男は手を払った。
欲に濡れた女は扇で顔を隠し、
もうこちらを見ることはなかった。
一人の騎士が、唇を噛み、
拳を固く握りしめたまま礼をした。
「こちらへ…。」
その声は低く、
震えを、意地で押し殺していた。
《ネリネの円環》の象徴の二人へ、
彼は騎士として退室を促した。




