表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸せな思い出  作者: 厚揚げさん
王都
38/43

5-3

天井から降り注ぐ、煌びやかな集合灯の光。

真紅の絨毯が敷き詰められた床。

荘厳な楽の調べが、玉座の間を満たしている。


「頭を上げよ。」

「よく来てくれた。」


仰々しく頷く、富を溜め込んだような腹を持つ男。

その隣にはアルドをギラついた瞳で見る女が控えていた。


「《ネリネの円環》での長年に渡る苦行、

誠に我らとしても遺憾である。

助けが遅くなったことへ謝罪を申し上げる。」


これからは、

ノクティアの平和を支える一人となることを期待しているぞ。


王の言葉に、玉座の間にざわめきは起こらない。

それは労りではなく、儀式の一部のように落ちてきただけだった。


「あら。噂通り"ネリネの輝き"はいい男ね。」


その沈黙を破ったのは、隣に座る女だった。

口元に扇を当て、値踏みするようにアルドを眺めてる。

その横に視線を移し、つい、と興味なさげに首を傾げる。


「それで、この子が“鳴かないカナリヤ”?」

「……思ったより、地味なのね。」


「その名で、ミアを呼ぶな!」


その時、低く重い怒声が玉座を切り裂いた。

楽の調べは途切れ、

君主夫妻を囲む騎士達が剣を抜く音が響く。


それに一つも動揺を見せない青年は、

殺気を隠さなかった。


誰も動けない、話せない中、

白い指が動く。


ーー陛下、ご挨拶が遅れ申し訳ありません。

ーー私は、アルドの"世話役"です。


その言葉を目にしたアルドの瞳は、

絶望の色を隠さない。


澱んだ琥珀の瞳に、娘は笑いかける。


ーー大丈夫。


指は動かないが、そう伝えているかのようだった。


彼女の言葉に、再度時間が動き出す。


「もうよい。この者たちを客室に案内しろ。」


動揺を隠そうともせず、ふくよかな男は手を払った。


欲に濡れた女は扇で顔を隠し、

もうこちらを見ることはなかった。


一人の騎士が、唇を噛み、

拳を固く握りしめたまま礼をした。


「こちらへ…。」


その声は低く、

震えを、意地で押し殺していた。


《ネリネの円環》の象徴の二人へ、

彼は騎士として退室を促した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ