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「ノクティア王国騎士、セオドア・ヴァイス。
我が王の御前に、
《ネリネの円環》最後の闘技者アルド、
ならびにその世話役ミアをお連れいたしました。
王命に基づき、ここに参上を願います。」
セオドアの声が石壁に反響すると、
門番は二人を見やり、
手にした刀剣を地に打ち鳴らした。
低く、重い音とともに、
王城の門がゆっくりと開いていく。
アルドにはその音が、
地下に響く忌々しい低い鐘の音と重なって聞こえた。
ギラギラと意味無く輝く調度品、
何を誇っているのか分からない、
金色の杯や記章。
壁に掛けられた、年代物らしい“土塊のような芋”の絵。
全部全部興味がなかった。
"ルミ"は強ばった肩を必死に隠そうとしながら、
視線をさ迷わせている。
ああ。全部全部気に入らないな。
アルドは内心吐き捨てる。
砦で馴れ馴れしく"ルミ"に話しかける
有象無象共。
"ルミ"を俺を閉じ込めるモノだとでも思っていそうな、あの歳を食った錆びた声の男。
今も"ルミ"を心配そうに見つめる、
血を覚えない指を持った男。
薄々気づいてはいたが、
結局どこもネリネと同じだ。
外に出て良かったことなんてあったか?
陽の光に輝く"ルミ"は綺麗だった、
それだけだな。
これなら全部“終わらせる”だけですんだ、
あの地下の方が――
……いや。
数々の警護人がいるはずの王城でも、
揺るぎなく警戒する琥珀の瞳は濁りを増していく。
一体幾つの階段をかけ登り、
幾つの角を曲がったのか分からない道の先に、やけに煌びやかな扉が現れる。
「ここだ。」
静かに告げるセオドアの顔は、酷く辛そうに歪められていた。




