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幸せな思い出  作者: 厚揚げさん
王都
37/43

5-2

「ノクティア王国騎士、セオドア・ヴァイス。

我が王の御前に、

《ネリネの円環》最後の闘技者アルド、

ならびにその世話役ミアをお連れいたしました。

王命に基づき、ここに参上を願います。」


セオドアの声が石壁に反響すると、

門番は二人を見やり、

手にした刀剣を地に打ち鳴らした。


低く、重い音とともに、

王城の門がゆっくりと開いていく。


アルドにはその音が、

地下に響く忌々しい低い鐘の音と重なって聞こえた。


ギラギラと意味無く輝く調度品、

何を誇っているのか分からない、

金色の杯や記章。

壁に掛けられた、年代物らしい“土塊のような芋”の絵。


全部全部興味がなかった。


"ルミ"は強ばった肩を必死に隠そうとしながら、

視線をさ迷わせている。


ああ。全部全部気に入らないな。

アルドは内心吐き捨てる。


砦で馴れ馴れしく"ルミ"に話しかける

有象無象共。

"ルミ"を俺を閉じ込めるモノだとでも思っていそうな、あの歳を食った錆びた声の男。

今も"ルミ"を心配そうに見つめる、

血を覚えない指を持った男。


薄々気づいてはいたが、

結局どこもネリネと同じだ。


外に出て良かったことなんてあったか?

陽の光に輝く"ルミ"は綺麗だった、

それだけだな。


これなら全部“終わらせる”だけですんだ、

あの地下の方が――

……いや。


数々の警護人がいるはずの王城でも、

揺るぎなく警戒する琥珀の瞳は濁りを増していく。



一体幾つの階段をかけ登り、

幾つの角を曲がったのか分からない道の先に、やけに煌びやかな扉が現れる。


「ここだ。」


静かに告げるセオドアの顔は、酷く辛そうに歪められていた。


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