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数日後に王都から届いた書簡は、
思っていたよりもずっと短く、
そして冷たかった。
「《ネリネの円環》、
最後の闘技者アルドの存在は、
すでに周辺諸国に漏れている。
このまま砦に留め置けば、
誘拐、暗殺、奪取の標的となる危険性は高い。
王都にて直接管理する。
それが、最も安全な処置である。」
紙を置いたセオドアの指が、
わずかに震えていた。
「……要するに。」
彼は言葉を選びながら続ける。
「ここにいる限り、
君は“狙われ続ける存在”だということだ、
アルド。」
アルドは黙ったまま、
ミアの肩に置いた手を離さない。
「王都に移せば、
王家直属の護衛と結界の中で管理できる。
砦よりも、はるかに……安全だと、
そう書いてある。」
沈黙。
ミアは、ゆっくりと指を動かした。
ーーアルドが、危ないってこと?
セオドアは、はっきりと頷いた。
「そうだ。」
「ここにいる限り、
君は“獲物”として見られ続ける。」
アルドの指が、わずかに強くミアを抱いた。
「……行かない。」
低い声だった。
「王家の檻になど入らない。」
ミアは、一瞬だけ目を閉じる。
それから、
アルドの胸に手を当てたまま、
ゆっくりと顔を上げた。
ーーねえ、アルド。
彼女は、真っ直ぐに彼を見た。
ーーアルドが危ないなら、
ーー私も一緒に行く。
アルドの瞳が揺れる。
ーー私が行けない場所に、
ーーアルドが無理に行く意味はないって言ったよね。
ーーでもね。
ミアの指は、彼の胸の中央をなぞる。
ーーあなたがいなくなる場所に、
ーー私が残る意味も、ないよ。
ーー私は、
ーーあなたの隣にいたいだけ。
ーーそれが砦でも、
ーー王都でも、
ーー檻の中でも。
ーーアルドが生きている場所に、
ーー私は行く。
アルドは、言葉を失った。
ミアは、静かに微笑む。
ーー王都に行こう。
ーーアルドが危ないなら、
ーー私も一緒に行く。
その言葉は、
希望ではなく、
祈りでもなく、
“選択”だった。




