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「拒否された?」
壮年の男は片眉を軽く引き上げた。
月明かりがうっすらと差し込む厳かな部屋に、
騎士服を纏わないセオドアの姿は
ひどくそぐわない。
「必ず王都に連れて行けるようにするから、
伝える前に街に出る許可を……と言っていたは誰だったか。」
「……お言葉もありません。」
「なんてな。」
男は大きく声を上げて笑った。
「あの男が、
簡単に一人で王都に行くとは元々思っていない。」
「そのために"カギ"がある。」
そうだろう、と唄うように続けた。
「光を失えば、
あの化け物はただの刃だ。」
男はそれを、
人の命ではなく、
道具の扱いのように口にした。
「……“彼女”達を、
道具のように言わないでください。」
セオドアの声は低く、
だが、震えていた。
「ほう?」
団長は、初めて笑みを引っ込めた。
「何だ、セオドア。あの娘に惚れでもしたか?」
「お前はまだ、
あの娘を“娘”として見ているらしい。」
「……お言葉を。」
男は、机に置かれた書簡を指で弾く。
「王家にとっては、
彼女もまた“円環の残滓”だ。」
「闘技奴隷を縛る“鎖”。
あるいは、
化け物を飼い慣らす“鍵”。」
「それ以上の意味は、
この国にはない。」
セオドアは、言葉を失う。
昼間己の手が届く位置で、
幸せそうに瞳を輝かせるミア。
それを見守る、どこか雰囲気が和らいだアルド。
――それらすべてが、
“国家の部品”として再定義される。
「……それでも。」
絞り出すように、セオドアは言った。
「それでも、
私は――」
「騎士だろう?」
団長は、静かに言葉を被せた。
「ならば、
“国の光”を守れ。」
ふと気がついた時、
セオドアは一人松明が照らす回廊を歩いていた。
静まり返った砦内で眠っているだろう
2人を思い浮かべながら。




