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太陽の光を受けると僅かに茶を帯びる、
風に吹かれて揺れる黒褐色の髪。
日光の下で煌めく琥珀の瞳。
騎士の人と無愛想に話す低い声。
傷が増えることのない背中。
慣れない手つきで野菜の皮を剥く無骨な手。
「……失敗した。」
どこか困った顔で、
でこぼこな芋を差し出すその手の平には、
何度も血を吸った剣だこが刻まれていることを、
私は知っている。
ねえ、アルド。
こんなに幸せでいいのかな。
あなたの手が
私を守るために、
私がいるせいで、
誰かの命を終わらせ続けてきたことも
私ちゃんと知ってるよ。
それでも、
今、私に触れているその手が
世界でいちばん優しいことも。
ねえ、アルド。
何か話したいことがあるんじゃないのかな。
私には言えないことなのかな。
ノックの音が部屋に響く前に、
扉に向かうその背中をずっと見ていた。




