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3-6

騎士団長が去った後、

朝食を食べ終えた三人が移動した時には

既に朝の鍛錬は開始されていた。


砦の訓練場には青空が広がる。

砦自体は高く積まれた灰色の壁に

囲まれているが、

頭上には雲が流れ、

風がそのまま降りてくる。


地面は乾いた土で、

踏みしめる度に軽く鳴る。

血の匂いも、跡もない。

代わりに、汗と革、

鉄と木の匂いが混じりあっていた。


木剣がぶつかり合う澄んだ音が響く。


「止め!そこまでだ!」


「もう一度お願いします!」


誰かが倒れても、

誰も剣を振り下ろさず、

血は流れない。

そして倒れた者も立ち上がり、

再開を願う。


「総員一度休憩しろ!」


三人が揃ったのを見た騎士団長は、

木剣を振るうもの達に号令をかける。


「さてアルド。すぐに動けるか?」


「ミアは私の隣へ。」


ーーアルド、気をつけて。


「何かあればー。」


ーー手を叩け、でしょ。

ーー私は大丈夫。


「……そうだ。」


少し心配そうに笑うミアに

アルドは短く応じ、

模擬戦のために準備された

円の中へと歩み出た。


訓練場の視線が、

一斉に彼へ集まる。


闘技場で“化け物”と呼ばれた青年。

王宮が危険視し、

騎士団長がわざわざ確かめようとした存在。


だが――

アルドの意識は、

そのどれにも向いていなかった。


円の外。

セオドアの隣で、

小さく背筋を伸ばして立つ彼女が、

こちらを見ている。


差し出された木剣を受け取ると、

軽すぎる感触が掌に残った。


木剣が打ち合う音は、

アルドには軽く乾きすぎて聞こえる。

骨が砕ける音も

喉が潰れる音もないことも

違和感として胸に残る。


倒れた騎士の喉元に、

刃は向けられない。

誰も、止めを刺さない。


それでは終わらないのに。


構えを取った騎士が、

緊張に喉を鳴らす。


「始め!」


合図と同時に、

騎士は踏み込んだ。


だが、

アルドの身体は既に動いていた。


一歩。

半歩。

間合いを読むというより、

“終わらせる距離”を測る癖がそのまま出る。


木剣が打ち合う。

アルドの腕がわずかに流れ、

騎士の剣を弾いた。


衝撃に倒れ込んだ相手に構わず

アルドは剣を振り下ろす。


木剣の先が、

喉元へと静かに触れていた。


騎士は息を呑む。


「……止め。」


騎士団長の声が落ちる。


その場に、

一拍の沈黙が広がった。


アルドは剣を下ろし、

円の外にいるミアへと視線を投げる。


彼女は両手を胸の前で握り、

目をそらすことなくこちらを見ていた。


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