3-5
「ミアは?」
自分に話が回ってくると思わなかった娘は、
思わずむせ込む。
その背中を無表情でさする青年は、
何を考えているのか周囲に悟らせなかった。
「騎士の力不足は目に付くが、
それでも腐っても王国騎士団花形の
本部にいる奴らだ。
年頃の娘には刺激が強くなるかもしれん。」
「その間は別室で簡単な健診でも—。」
「ダメだ。」
低い声だった。
だが、
その一言で食堂の空気が再び張り詰める。
「許さない。」
「彼女の安心は
王国騎士団長の名に誓って保証しよう。」
「その名が何になる。
ミアは俺の傍にいる。」
目も合わせず一刀両断する。
決して譲らない青年を見て、
壮年の男は少し眉をひそめた。
セルドアは、
どちらの立場に着くべきか動きあぐねていた。
もちろん自分は誇るべき騎士団員であり、
団長の意見に着くべきだーー。
しかし……。
静寂が流れる中、
手を動かす音がした。
ーーアルド。
ーー私が見ててもいいの?
「……。
…刃が潰れたものはあるか?」
壮年の男は一瞬言葉を選ぶ。
「いや模擬戦は木剣だ。
鍛錬で真剣を使うことはここでは許していない。」
アルドは、僅かに視線を落とした。
「…それならミアが見てもいい。」
--いいの?
--ありがとう、アルド。
視線を落とす青年の目をのぞき込み、
笑う娘。
その笑顔のまま目の前に座る
騎士の男達に向かって指を動かす。
ーーせっかく私を気遣ってくれたのに、
ーーごめんなさい。
ーー私も近くで見ててもいいですか?
邪魔はしないからと続ける、
剣を握ったことのないような細い指。
「無理が出るようなら、申し訳ないが
その時点で退いてもらう。
こちらとしても余計な混乱は避けたい。」
壮年の男は、少しの間の後大きく頷いた。
では、私は先に執務に戻らせてもらう。
引き続きゆっくり食べてくれ。
上衣の裾を揺らし、その場を去っていった。




