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3-4

馴染みのある食事のはずなのに、

何故か味のしなくなった料理を

セオドアは黙って噛み締めていた。


周囲の者は皆笑いながらパンを裂き、

湯気の立つ椀を傾けている。

それはこの砦にとって、

何一つ特別ではない“いつもの朝”だった。


--本当においしい!

--これどうやって作るのかな。

--私が作ったらアルドは食べてくれる?


「ミアが作るなら何でも食べる。」


娘の指は楽しげに弾む。

アルドは彼女の皿が空きかけているのを見ると、

自分の前に残った料理を静かに押しやった。

まるで、

最初から“彼女の分”であったかのように。

細い指が感謝の言葉を綴った。


セオドアの喉が、ひくりと鳴る。



突然アルドが剣の柄へと手をかけたその時、

食堂の空気が変わった。

騎士が一斉に立ち上がる。

背筋の伸びる音。

椅子が擦れる音。

低く息を飲む気配。


「…団長だ。」

「どうして朝から食堂に?」

「ほら、例の……」


誰かの囁きが波のように広がる。

その男はざわめきを連れて、

三人が座る机へと歩を進めてきた。


「食事は口に合うか?」

ああ、セオドア。

別に立たなくていい。

手を軽く振り、騎士団長が話す。


ミアは微笑んで頷き、

アルドは柄からは手を離したものの

何かあればすぐ動けるように警戒を緩めない。

セオドアは目礼を返した。


三人の様子を見て、

壮年の男は鷹揚に笑い、

食事中にすまないがと話しながら席に着いた。


「アルドに少し頼みがある。

ここでは朝食後に騎士達の鍛錬があるんだが、

そこで模擬戦をしてほしい。」


「どうも最近騎士達の力不足が目に付いてな。」


苦笑と共に頬をかく素振りをみせる男は、

抜け目なく青年の様子を見つめていた。


王宮は、

ネリネから連れてきた“闘技奴隷”の実力を、

具体的に示せと迫っている。

危険である以上、

曖昧なまま囲っておくわけにはいかない。

それに―

いつまでも正体の知れない存在が砦にいれば、

騎士達の緊張も緩まらないだろう。


そう踏んだ騎士団長は、

アルドを「未知数」のままにしておくことを

許さなかった。

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