3-2
鉄靴のコツコツと遠くから響く音と、
扉の前に立つ男の衣擦れの音を拾い、
アルドはスっと目を扉にやった。
軽いノックの音と共に
「おはよう。昨日は眠れただろうか?
疲れが強くなければ、砦の案内も含めて
食堂で朝食をとらないか?」
セオドアの少し緊張したような声が聞こえる。
娘からの一層キラキラした視線をうけ、
アルドは剣を携え、無言で扉を開ける。
「……。」
--すごく楽しみ!!!!
仏頂面の美麗な青年とキラキラした笑顔の娘の
注目を一身に浴び、
騎士の男は居心地悪そうに苦笑した。
「昨日は案内できなかったが、
この砦は王国騎士団の要になる場所で、
各地の砦よりもずっと広い。」
「初任の騎士が道に迷うのも珍しくない。
今は二人に監視をつけさせてもらっているが…
いずれ自由に歩けるようになった時は、
迷ったら遠慮なく近くの者に声をかけてくれ。」
三人は、
すれ違う者の視線を浴びながら食堂に向かい移動を始める。
娘は純粋に回廊を眺めているが、
青年はここでも視線を隈なく張り巡らせ、
脱出経路や対処方法を考えていた。
「ここの角を右に曲がってもらうと、
食堂に着く。」
--看板もあるんだ、親切だね。
--いい匂いもしてきた。
ネリネの皆もそろそろ朝ご飯の時間になったのかなと、嬉しそうに指を動かす彼女を見て、
セオドアは胸が疼くのを感じた。
騎士が食堂の扉に手をかける前に、
アルドはミアを自身の背後に下がらせた。
ミアもニコニコしながらそれに従う。
食堂の中は、多くの騎士達の活気で満ち溢れていた。
三人が入室すると、中の視線が入口に集中する。
ミアは居心地悪そうに肩を竦め、
それを感じたアルドの雰囲気が強ばるのを見たセオドアは、声を張り上げた。
「各々食事に集中せよ!」
「すまない、ここに騎士や職員以外の者がいるのが珍しいから……。」
--それはそうだよ!
--気にしないで。
頭を下げるセオドアを見て
慌てたように指を動かすミア。
その二人を他所にアルドは無表情で、
視線を受けていた。




