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見慣れた闘技場に出た。
地面につく赤は変わらずそこにある。
見慣れぬ点といえば、
騒々しい観客がいないこと、
いつまで経っても高い鐘の音が聞こえないこと、
何より"ルミ"が白い光の下に立っていること。
想像通り眩しげに目を細める彼女は、
--外だ。
--アルドが白く見える。
--私も白い?
と、いつもの微笑みで指を紡ぐ。
「お前はいつも眩しい。」
--またそれ?
--アルド、地下でもそれ言ってたね。
あそこは暗かったよと忙しなく動く指。
その指をなぞるように風が吹く。
地下では決して触れることのない、
空の匂いを含む風だった。
"ルミ"の束ねた淡い髪が揺れる。
これも地下では見れなかったなと一つ嘆息した。
ミアは一瞬目を見開き、
それから恐る恐る、息を吸い込む。
--うごいてる。
--空気が、うごいてる。
「これが外だ。」
アルドはそう言いながら、
彼女の肩にずり落ちた外套を無言で直した。
世界は変わった。
もうあの地下通路での2人きりの世界はない。
だが、彼の腕が彼女に触れる距離だけは、
地下と何ひとつ変わっていなかった。
「そろそろ馬車に行くぞ。」
2人のやり取りを静かに見つめていた騎士の声で、アルドは"外"の時間に引き戻された。




